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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第二章・魔王国編

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50・何故か決闘する事になりました

ブックマークしてくださった方々に感謝ですm(__)m


「さぁ、構えよ下朗!某が貴様に、己の力量と言うモノを教えてやる!」


そう、ギルドの地下に造られていた広大な練習場(運動場?)の中心にて、全身を鎧で固め、右脇には長大な円錐に取っ手として柄を付けた様にも見える突撃槍(ランス)を構え、左腕には自身の上半身がスッポリと隠れてしまいそうな程、巨大な縦長な長方形をした盾を持った、ケンタウロスの女性であり、『銀級(Bランク)』の冒険者でもあるサーラが、俺に対して敵意剥き出しにした状態で、その右腕の突撃槍の穂先を、俺へと突き付けて来る。


そんな光景を、さも面白いモノを見るかの様に、そして、自分達の仲間が負けるはずも無い、と断言するかの様な目で見ている、サーラのパーティーメンバー達。


そして、そんな彼女達を、愚か者を見るような、もしくは全く面白くも無い様な道化師を眺める様な目線で眺めているのは、オレのパーティーメンバーであり幼なじみでもあるタツとレオ、そしてサポーター兼アドバイザーとして参加してもらっているアストさん、それと俺のペットとして周囲から認識されているリンドヴルムとカーラを含めた計三人と二頭と、べリスのおっちゃん率いるパーティーメンバーの三人を合わせた、計六名と二頭であった。


そして、それらを観察している当の俺は、何故か練習場の真ん中で相棒を片手に、俺の喉元へとその穂先を突き付けているサーラと相対し、彼女から強制的に申し込まれた(無理やり受けさせられた?)決闘の相手として、これから彼女と戦わなければならないのである。


……何でそんなに面倒な状況になっているのか?


そんなもの、この中で一番知りたいと思っているのは、間違いなく俺だろうし、そもそもの原因を理解していたのならば、最初から全力で回避しに行っていたのは、まず間違い無いと断言してもよいだろうね。


そんな訳なので、何故こうなったのかを解明する為に、ほんの十数分前の事を思い返してみる事にしますかね。





******





「待たれよ、べリス殿!その程度の輩と組まれるのでしたら、某のパーティーと組まれた方がよろしかろう!」


突然、そんなことを言いながら、俺とおっちゃんとの会話に割り込んで来たのは、一目で『獣人族(ベスタ)』の一部族であるケンタウロスだと判断出来る女性であった。


その首からは銀製のタグがぶら下がっており、彼女の後ろに控えている仲間と思わしき『獣人族(ベスタ)』の面子も、首から銀製のタグを下げているが、それが彼女が無駄に発散している自信の拠り所なのだろうか?


「某のパーティーは、そこな輩とは違い全ての局面に於いて、最高の働きが出来ることを自負しております!更に、その『人族(ヒューマン)』共とは違い、某達だけで上位種であろうとも、容易く討ち取って見せるだけの腕前を持っている自信があります故、そこな弱小パーティーが幾つ集まろうとも、某一人の活躍にも及ぶ事はーーー」


などと、聞かれてもいないのに、唐突に自分達の売り込みを初め、それをおっちゃんが最後まで聞き取り、それに感銘を受けて俺達が自主的に去る事を確信している空気を振り撒いているが、当然の様にそうしてやらなければならない理由は無いし、わざわざ聞いてやらなければならない理由も無いので、そちらは無視して気になっていた事をおっちゃんに尋ねる。


「……なぁ、おっちゃん。この無駄に自尊心の高そうな『駄馬』は、おっちゃんの知り合いか何かか?だったら、もう少し友人は選んだ方が良いんじゃないか?」


「……確かに、俺にもケンタウロスの知り合いは何人かいるが、そのどれとも違うしここまで頭悪くもねぇぞ?……それと、友人が選べんだったら、まず真っ先にお前をどうにかしてんだがなぁ……?」


「さいですか。んじゃ、コレどうすんの?ぶっちゃけ、俺はコレと組む位なら俺達の処だけで行くけど、おっちゃんはどうするんだ?」


「……俺も、コレと組む位なら、普通にお前のトコと組むかなぁ……。何か、こいつらと組むと死にそうだし」


「なら、さっさと登録だけでもしておきますかね?」


「それもそうだな。ついでに、下の酒場で何か摘まみながら動きの擦り合わせでもしておいた方が良いだろうよ。一応知ってるっちゃ知ってるが、それでも確認はしておかねぇとな」


「了解。……ちなみに、おっちゃんの奢りで?」


「……チッ!ガキに出させるのもダセェし、仕方ねぇからこっちで持ってやるから、有り難く思いやがれ!」


「よっしゃ!」


「……感謝する」


「ゴチになりま~す」


そう、俺達の会話が締め括られ、俺達が聞いていないにも関わらずにまだ演説を続ける駄馬を無視し、会議室から出て行こうとしたのだが、それに気付いた駄馬の仲間に回り込まれ、仲間に促されて正気に戻った様に見える駄馬に追い付かれる。


「この下朗!よくも某を無視する様に、べリス殿を誘導してくれたな!その様なふざけた行為、万死に値するぞ!!

……だが、この場で大人しくべリス殿に付きまとうのを止めるのであれば、今回は見逃す事にしてやらぬでもないがな。慈悲深き某に感謝するが良い。

さぁ、べリス殿!これで、邪魔な下朗は居なくなり、某達と組むのに何ら支障は無くなるでしょう!そして、某とべリス殿に加えて、『腐れ姫』の二つ名をお持ちのアシュタルト殿まで居られるこのレイドであれば、彼の精鋭部隊を差し置いて敵の首魁を討ち取る事も可能と成りましょう!

それに、二つ名をお持ちの方が、お二人も居られるレイドであれば、まず間違いなく対首魁用の戦力として回される事になりましょう!

そうなれば、もはや首魁の馘は取ったも同然!某達への褒賞は、文字の通りに『望むがまま』となりましょうぞ!!

ささ、某と共に栄光を掴むため、彼方の受付まで参りましょう!!」


そう、一切こちらの事情やら感情やらを考慮せず、自らに都合の良い事だけを優先して説得出来ていると勘違いしている駄馬が、自らが言いたかった事だけを一方的に言い切って、さも自分に着いてくるのが当然!とでも言いたげな態度で、ギルドの職員がレイド登録の為に待機している受付へと移動しようとする。


……が、当然の様に、自分達が組もうとしていた相手である俺達を馬鹿にされ、その上で他のメンバーを『居ないもの』扱いされた事で半ギレ状態のおっちゃんと、俺達(特に俺)を馬鹿にされ、その上でおっちゃんの方のパーティーメンバーと勘違いした扱いを受けたアストさんが、それについて行く訳も無く、ただただ温もりや興味と言った感情の消え去った視線を、その無駄にデカイ馬尻に向けるだけである。


そんな、ある種の殺気とも取れる様な感情を、自分達のリーダーに向けられている事に戸惑いを感じた、駄馬のパーティーメンバーがざわめく事で、ようやく自分と共に来ていない事に気付いた駄馬が、困惑の表情を浮かべるが、何を考えたのかは定かでは無いが、即座に憎悪の感情を浮かべると同時に、凄まじい形相で俺へと詰め寄って来る。


「……この下朗!さては、貴様が某達に対する悪評でも、お二方に吹き込んだのだろう!?そうでなければ、実力でもランクでも貴様らを上回っている某と、お二方が組もうとしない理由が無くなるのだからな!!

そうまでして、己よりも強い者に寄り掛かりたいか!恥を知れ、虫酸が走るわ!!」


そう、臆面も無しに言い放ってくれた駄馬に対して、もはや殺気すら込めず、なんの感情も乗せてはいない、ある意味最も冷たい視線を向けながら、駄馬の発言を鑑みた場合、この場に於いて決定権を持っているらしい二人に


「……で?こう言っているみたいだけど、結局どうする?俺達切って、こいつらと組む?」


と、半ば投げ遣りに聞いてみる。


すると、案の定何の感情も込められていない様な声色で、返答が送られて来る。


「……お前ら切って、こいつらと組む?ハッ!冗談キツいぜ、マジで。

そもそも、実力は下手すれば俺ら以上で、ある程度動きなんかも予測や把握出来ていて、ターゲットにする予定の奴らも同じお前らから、まともに名前すら聞いちゃいない上に実力もイマイチで、俺らを自分の踏み台としてしか見てねえ連中に切り替えなきゃならねぇ理由がねぇんだが?」


そう、吐き捨てる様に言い切り、蔑みの色を隠そうともしなくなったおっちゃんと


「タカナシ殿?そもそも、私は貴方のパーティーメンバーなのですから、貴方を切り捨てる様に仕向けているあのアバズレと組まねばならない理由が無いのですが?

……それとも、もう私に飽きてしまわれましたか……?」


もはやあの駄馬を『どうでも良いモノ』として、視界に入れることすら止めてしまい、何時もとは違ったやや不安げな表情でありながらも、その立派な山脈を押し当てて俺を誘惑する方向に切り替えたアストさんの返答により、一気に表情が欠落し、ワナワナと震えながら俯く駄馬。


……そりゃ、本人達の目の前で、その知人や友人を馬鹿にすれば、そう返されもするわなぁ……。


と、何処か他人事の様に考えていた俺だったのだが、その時、突然にそれまで伏せていた顔をガバッ!と上げて俺を見据えた駄馬が、俺へと指先を突き付けながら、こう宣言したのであった。




「貴様の卑劣な行いには、もううんざりだ!貴様が余計な事さえせずに、素直に離れればこの様な事にはならなかったのだ!怨むのならば、自らの卑怯極まりない行いを怨む事だ!!


サーラ・ブレイトなる某が、貴様に決闘を申し込む!


貴様も仮にも冒険者であるのならば、この決闘、逃げ出せると思ってはいないだろうな!?」




と、一方的に難癖にもなっていないナニカを突き付けられ、あれよあれよと言う間に、周囲を巻き込まれてしまって、結局受けざるを得なくなってしまったのであった。





******





……そして、あの駄馬改めサーラから、ほとんど一方的かつこちらには利益の無い状態のままに、敗者はあの二人が所属するパーティーとは関わらない、との条件で決闘を『受けさせられ』現在に至る、と言う訳なのである。


……うん、思い返してみても、こうなったのはほとんど一方的に因縁を付けられたからなのだから、回避は不可能だった、と見て間違いは無いだろう。


……でも、こうして、相手からわざわざ申し込まれた決闘なのだから、こちらが負けてやらねばならない理由は皆無だし、負けたとしても、前提条件からして破綻しているのだから、最初から無効試合にならんかね?

まぁ、あの駄馬の事だから、意地でも決闘自体は続行させようとしてくるのだろうけど、最初から負けるわけが無い!とか思っている様な阿呆相手に、そもそも手加減もしてやらねばならない理由も、してやるつもりも無いのを理解しているのだろうかね?あの駄馬は。


……しかし、幾ら頭が悪い事しか仕出かしてくれていないとは言えども、この数日後位には本命との決戦が控えているのだから、正直戦力は幾らでも欲しい処だろう。

幸いにも、外見年齢で二十歳ソコソコなのに、既に銀製のタグを下げていると言う事は、『銀級(Bランク)』にはなっているハズなのだから、普通に戦力としてカウントしても良い程度には、戦えると見て良いだろう。……オツムの方は、イマイチ出来がよろしく無さそうだけど。


ならば、戦力確保の視点からも、あまり『肉体的』には傷付けず、精神的な方面で『ポッキリ』と行く方向にしておくのが良いだろうね。

……まぁ、幾らこちらに迷惑しか掛けて来ていないとは言え、別段極限状態に在る訳でも無いのだから、積極的に女性を傷付けたいと思えない、と言うのも無いでもないけどね?ホントダヨ?


そんなことを考えていると、どうやら相手の方の準備が整ったらしく、ギルドの方から公正な判断のため、との名目で出された審判が中央に立ち、今回の決闘のルールについて説明をして行く。


まぁ、基本的には『降参するか気絶するか戦闘不能になったら負け』、『殺しはダメ絶対』、『乱入もダメ絶対』程度のモノでしかないから、裏をつこうと思えば幾らでもつける程度にガバガバだったけどね。


当然、この話(決闘)を持ち掛けてきた駄馬の方も、やり様によっては幾らでもダーティーな事が出来るのは承知の上らしく、俺が何時相手曰くの処での『卑怯な行い』をしてきても良い様に、既に盾を前面に構えた上で、開始の合図と共に最速で突っ込んで来るために後ろ足で地面を引っ掻きつつ、全身に力を込めた状態で重心を前に傾けている。


恐らくは、開始の合図と同時に飛び出して、俺が何か仕掛けて来る前に速攻で距離を詰め、加速を乗せた突撃槍(ランス)による突撃攻撃(チャージアタック)を決めるつもりなのだろう。

確かに、あの巨体(体高約3m、体長も約3m)でそんな事をされてしまえば、そうそうは止める事は出来ないだろうし、受けてしまえば普通は一撃で血の海に沈む事になるだろう。


……まぁ、『出来れば』の話だろうけどね……。


そうこうしている内に、審判が中央から退出し、離れて睨み合う俺達から離れた処から決闘の開始を宣言する。


すると、案の定、先手必勝!とばかりに合図と共に突撃を仕掛けるべく、下半身の馬体をグッと沈め、前方へと飛び出そうとするサーラ。


……しかし、そうやって飛び出そうとした時には既に、突撃の対象である俺は少量の『気』によって強化した脚力と、初動から最高速度を出す『縮地』の技術によって、彼我の距離を0まで詰めており、駆け出すために一瞬目線を切ってしまっていたサーラには、正しく瞬間移動でもしてきたかの様に写ったらしく、驚きによって目を見開き、一瞬とは言えども動きを止めてしまう。


そして、そもそもこの決闘に大した思い入れも無く、更に言えばあまり時間をかけるつもりも無い俺からして見れば、そんな分かり易すぎる隙を見逃してやる必要性は皆無である以上、遠慮の欠片も無く全力で突かせてもらう事にする。


まず下段に構えていた相棒の刃を振るって、人と同じ見た目をしている上半身を覆っている鎧だけ(・・)を一振りで両断し、防御力を著しく低下させておく。

……これで一回。


そして、振り上げた穂先を、今度は回転させる様に返し、刃自体を盾の内側に滑り込ませ、盾を腕へと固定しているベルトや取っ手を切断して盾を使い物にならなくしてしまう。

……これで、既に二回。


さすがに、ここまで一方的にアレコレされると正気に戻るらしく、使い物にならなくされた盾を手離し、全力で後方へと下がって一旦距離を取ろうと試みる。


だが、俺がそんな時間稼ぎをさせてやる訳も無いので、後ろに下がられた分だけ距離を詰め、追撃を加えようとする。


すると、どうやらそれはフェイントの類いのつもりだったらしく、勝ち誇った様な顔をしながら、まだ右脇に固定していた槍を、俺に対してカウンター気味に突き出してくる。


当然そうしてくる事は分かっていた俺は、一切慌てずに視線で先端を捕らえ、下げていた相棒によって下から掬い上げる様に穂先を合わせ、巻き込む様な形で動きを誘導し、サーラの槍が当たる予定だった場所を、俺の心臓から運動場の地面へと移し変えて深々と突き刺させてしまう。

……これで、三回。


文字の通りに一瞬で狙いを移し変えられ、その挙げ句に獲物まで地面に囚われて愕然とするサーラに対して、そのまま無造作にも見える形で近付き、ソッとその首筋に穂先を添えて


「……これで、お前が実戦だったら死んでいた回数は四回目だ。その程度の実力しかない癖に、よくもまぁあれだけ俺達を罵倒出来たモノだなぁ……?」


と囁いてやる。


すると、今になってようやく、自分が扱き下ろしていた相手の力量が分かったらしく、顔を青くして腰を抜かし、地面にへたり込んでガタガタと震え出すサーラ。


そんなサーラの姿を見た審判が、これ以上は続行不可能である、との判断を下し、顔面を蒼白に染め上げたままで地面に固まっているサーラに対して、サーラのパーティーメンバーが駆け寄った事により、この決闘は一切の『予想外』の無いままに、俺にとっては順当に幕を下ろしたのであった。


……さて、おっちゃんの奢りらしいしね。何を頼んでやろうかねぇ……?

面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等頂けると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[一言] ここまではおもしろかったんですが、、、 非常時に呑気に決闘などさせているギルドって、いくらなんでも設定無茶苦茶、、、 なんでこんな下手うつのかなぁ、、、
[一言] ケンタウロスの寄生種とは珍しい! どこぞの錬金術士みたく、肛◯から石突きを差し込むくらいはやるかなぁ?ともw アレは黒竜相手でしたが。 相棒がバッチクなっちゃいますね。
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