49・作戦会議に呼ばれたのですが……
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ギルドからの連絡を貰った俺達は、取り敢えず何時もの通りに武装を整え、指定されていた午後からの会議に間に合う様に、少し早めな昼前には到着しておくべく宿を出て、アストさんやリンドヴルム、カーラと共にギルドへと足を進める。
途中で見掛けた屋台で、早めの昼食代わりの軽食を摘まみながら道を行くと、何時もと変わらない位の時間でギルドへと到着し、そのまま入り口を潜る。
そうやってギルドの内部に入ってから、そう言えば会議室で行う、とは聞いていたが、その肝心の会議室の場所を聞いていなかったな、と言う事に思い至る。
だが、今更伝言をしてきたと二人から聞いている職員を探し出し、改めて会議室の場所を聞くのは不可能に近いし、持っている情報としては俺達と同じ様なハズのアストさんに訪ねる事も出来ない以上、自分で見付けるしかないか、と半ば諦めてキョロキョロと辺りを見回す。
すると、何時もはカウンターの奥に在って、表からはよく見えていなかった処に上階への階段があり、そこに入れる様にとカウンターの一部が撤去され、分かりやすい様に階段の前には『会議室この先』と書かれた立て看板が置かれていた。
なら、こっちかね?と通路になっている処を通り、階段を使って上階へと上がって行くと、入り口の上に『会議室』と書かれた札が付けられ、入り口の脇には『『小鬼』対策作戦本部』と書かれた看板?板?が取り付けられており、ここが目的の場所である事を如実に示している。
そんな会議室の中にそのまま入ろうとしたのだが、伝言を預かっていた二人からの注意である事を思い出し、慌てて扉に掛けた手を引っ込めてから、紐で纏めたギルドタグを懐から取り出して、二枚とも紐で通されていることを確認した上で首からぶら下げる。
何でも、今回は事態が事態故に、ランクでは無く実力を重視して冒険者に声かけをした為に、俺達の様に本来は呼ばれないハズの低ランクのモノもチラホラと混ざる事になっているのだそうな。
そして、今回の事態の関係上、複数のパーティーで固まって行動する必要性が出てくるので、ギルド側としては、下手に組み合わせに口出しして、変なバランスで組み合わせてしまっても、被害が拡大するだけと言う事を理解しているので、冒険者による自主的な組み合わせを推奨するらしいのだそうな。
しかし、既に高いランクまで登り詰めている者の中には、幾ら緊急事態とは言え低ランクの者と組む何てもっての他だ!と公言して憚らない者もおり、そう言う輩に限って強力だったりする事もあり、その方面への配慮として、予めタグを見える様にしておく事にしたのだとか。
そうすれば、幾ら実力が有れども低ランクと何て組むのはゴメンだ!と言う者は同じ様な連中や、能力的に噛み合う高ランクの者と組めば良いし、そうではない、実力さえはっきりしていればランクは関係無いんじゃ?のタイプは、好きに相手を探せる様になる、と言う訳らしい。
ついでに、予めそうしておけば、思っていたよりも実は相手のランクが低かったor高かったと言う事態や、自己申告でのランク詐称も防げるので、一石二鳥ならぬ三鳥を狙っての事らしい。
まぁ、極稀に、俺達の所みたいにランクがバラバラ(俺達三人は『鉄級』だがアストさんだけは『ミスリル級』みたいな状態の事)なパーティーも有ったりするが、基本的には似たようなランクで組むらしいし、アストさん目当ての輩以外は、基本的に俺達みたいな低ランクのパーティーには、声を掛けてくる様な奴は居ないだろうから、心配はいらないだろうけど。
そんな思いと共に、扉を開いて部屋の中へと入って行く。
どうやら、下階の酒場スペースと同じくらいの面積が確保されているらしく、かなり広々とした空間が広がっており、入り口から見て真っ正面の奥に、会議の際に議会進行を務める人や、発言する人なんかが立つのだろう机と台が置いてあり、それ以外にはある程度通路として使える程度の隙間を開けて、幾つもの机と椅子が並べられており、かなりの人数を収容し、大人数での会議を行う事が可能となっている様に見える。
まだ時間には早いながらも、既に何人かは席に着いている室内を見回し、何処ら辺が適当か?と座るべき処を探していると
「おお!タカ達にアシュタルトじゃあねぇか!?お前らも呼ばれていたのか?まぁ、お前らの実力を考えりゃあ、ここに呼ばれて当然ってモンだがな!」
と、突然に声を掛けられる。
そちらへと振り返って見ると、そこには、俺達へと声を掛けてきた本人である、全身鎧に身を包み、その上で身の丈程も有ろうかと言う大楯を背負い、それと比べると頼り無い様にも見えてしまう短めな長剣を腰に差した、俺達の基準では三十代後半から四十位に見える、タツ程では無いにしても十分に大柄なおっちゃんが手を振って居た。
その隣には、トンガリ帽子にローブを纏い、手には先端に宝玉(?)をあしらった杖を持った、時にはまだ少女の様にあどけなく、時に成熟した大人の色気や艶を感じさせる女性と、細身で整った顔立ちで、背中には弓、腰には細身の長剣を二本下げ、その反対側には矢が満載された矢筒を付けた、周囲の人達と変わらない褐色の肌を持ちながらも、一人だけ耳の長い外見年齢が二十歳位の青年が立っており、同じくこちらへと軽く手を上げて挨拶してきている。
「べリスのおっちゃん!?何でおっちゃん達がここに居るんだ?」
「……待て。さっき『お前らも』と言ったか?」
「そのセリフの上に~、ウェパルさんとレライエさんまで居るってことは~、べリスさん達のパーティーも参戦を持ち掛けられたって事かな~?」
俺達への声掛けや、それに対する俺達の反応から既に分かっているとは思うが、この三人は一応俺達の知り合いだったりする。
「うるせぇ!『おっちゃん』じゃあ無くて、ちゃんと他の奴らみたいに『べリスさん』って呼べって言ってんだろうが!?」
この煩いのが、このパーティーのリーダーであり、前衛として相手の攻撃を受ける役割である『壁役』のベテランでもある、『鉄壁』とか言う二つ名が付いているらしい、見た目の通りにオッサンであるべリスだ。
元々、アストさんが現役で冒険者をやっていた時の知り合いだったらしく、アストさんが復帰手続きをした事を聞きつけて見に来たのだが、そこで俺達と行動を共にしようとしている姿を目の当たりにし、俺達を『寄生』(強い冒険者に寄っ掛かって依頼をこなそうとする連中の事)と勘違いして声を掛けてきたのが発端となって知り合い、そのまま顔を合わせれば挨拶したり、タイミングが合えば一緒に食事をしたりする間柄に落ち着いたのである。
ちなみに、『二つ名』と言うのは、特定の偉業を達成した冒険者へと、ギルドの方から贈られるある種の称号の様なモノであり、『二つ名』を持っているとそれだけで色々な方面からの依頼が増えたり、ギルド内での尊敬を集めたりする様になるらしい。
「あらあら、そうカッカしないの。あの子にとっては、ある種の親しみとして言っているってことは、アナタにだって分かっているでしょう?
それに、アナタだってこの前、他の皆さんが『二つ名』を貰ってからはあまり親しく付き合ってくれなくなったのに、あの子だけは自分が『二つ名』持ちだと知っても、態度を変える事無く親しくしてくれている、って嬉しそうにしていたじゃない!」
そう、ある種の暴露的発言をしながら、怒れるおっちゃんを宥めているのは、外見的な年齢で言えば、十代と言われれば十代に、三十代と言われれば三十代にも見える、年齢不詳な美人魔法使いであり、このパーティーの後衛にして、べリスのおっちゃんの奥さんでもあるウェパルさんだ。
……正直、この特に露出が多い訳でも無く、スタイルが飛び抜けて良いと言う訳でもない(整ってはいる)のに、時にはアストさん以上の色気を振り撒く美魔女(文字通り)が、こんないかにもなおっちゃんと結婚していることには、顔を合わせる度に疑問を呈したくなったとしても、責められはしないのでは無いだろうか?
……やっぱりアレか?脅迫でもされているのだろうか?
「……タカ君。その気持ちは分からないでもないけど、流石に穿ち過ぎた見方だと思うよ?あの人でも、流石にそんな外道みたいな事はしないハズだ。……多分」
そんなことを言いつつも、自分の言い分に自信が無い事が明らかな微妙な表情を浮かべているのが、べリスのおっちゃんとウェパルさんのパーティーメンバーであり、弓を使っての遠隔攻撃や双剣による斬り込み、果てにはスカウト職の真似事(自称)までオールラウンドにこなすイケメンさんが、このパーティーの良心にしてバランスの要である自称『ダークエルフ』(俺達命名)のレライエさんだ。
何でも、このレライエさん。実はここ魔王国を活動拠点としてはいるが、別段生粋の『魔族』と言う訳では無いらしい。
それと同時に、他の国を主な所属国としている『妖精族』の一種であるエルフでも無いらしい。
そう、このレライエさんは、『魔族』であるバンパイアと『妖精族』であるエルフのハーフであるのだとか。
幸いにも、種族的特性としては母方であるエルフの血が強く出たらしく、バンパイアとしての特性は肌の色と鋭い犬歯程度であった事もあり、本人的にはあまり気にしておらず、普段は『魔族』として生活してたのだが、以前酒の席でポツリと
『ハーフである自分には、確固たる拠り所が無いのだけど、それが少し寂しいかな……』
と漏らしていた。
それを聞いた俺達が、だったら新しい種族として、エルフやバンパイアではなく『ダークエルフ』とでも名乗ってみれば?と、冗談半分に言ってみた処、案外と気に入ってしまったらしく、それ以来は『ダークエルフ』と名乗る様になったのだとか。
ちなみに、エルフの血が入っているだけあって、外見からは考えられない程長く生きているらしい。(本人曰く、『二百から先は数えていない』とのこと)
そんな彼らが俺達と同じくここに居ると言う事は、やはり俺達と同じ様にギルドの方から参戦を促された、って事なのだろうね。
一応は顔見知りなのだから、取り敢えずは一緒に座っておくか?とおっちゃんが提案した事を切っ掛けとして、適当に後ろ過ぎず前過ぎずな処の席を確保し、計七名と二頭で席に着く。
その際に、おっちゃんの首もとからぶら下がっていたギルドタグが目に入って来たのだが、それはアストさんがぶら下げているのと同じ様な青み掛かった銀色をしたタグであった。
「……おっちゃん、それ……」
震える指先でそのタグを示してやると、若干ドヤ顔ながらも、何処か寂しげな色を滲ませた表情で、自慢するかの様にタグを掲げながら返事をしてくる。
「おう、これか?どうだ、スゲェだろう!?やっぱりお前ら、俺のランク知らねぇで絡んでやがったな?」
そんな反応を見て、あることを確信した俺達は、図らずとも同時におっちゃんの肩に手を置き、悲しげな視線を哀れむ様におっちゃんへと降り注ぐ。
「……確か、ギルドタグの偽造は重罪だったハズだ。悪いことは言わないから、早めに自首した方が良いぞ?」
「……今ならまだ間に合う」
「綺麗な奥さんも居るんだから~、そんなことしちゃダメでしょ~?今自首すれば~、まだパーティーの二人には迷惑掛けずに済むからさ~?」
「うるせぇ!!別段、偽造した訳でも無いっつうの!!全部実力で勝ち取ったモンだって言ってんだろうが、コラァ!?」
そうやって、恐らくは本物だと分かった上でからかっている俺達と、半ば本気で額に青筋を浮かべているおっちゃんの姿を見ながら、まるで微笑ましいモノでも見るかの様な視線を送ってくる二人の首もとからは、金色のタグがぶら下がっている様に見える。
まぁ、話を聞く限りだと、二人のソレは本物だろうから、特にイジるつもりは無いけどね?
そんな感じでやや騒がしくも駄弁っていたり、一緒に連れてきていたカーラをモフったり(ウェパルさんが意外と食い付いて来た)、リンドヴルムをプニったり(こっちにはレライエさんが食い付いた)しながら時間を潰していると、少ししてから続々と冒険者らしき感じの連中が集まりだし、次々に空いていた席へと座って行く。
そして、大体の席が埋まったかな?と言った感じになってきた時、ギルドの職員と思わしき人達が中に入ってきて、会議の開始を宣言するのであった。
……さて、どんな感じになることやら……。
******
「ーーー以上を持ちまして、連絡を終了致します。解散して頂いて結構ですが、その前にレイド登録をして下さると助かります。お疲れ様でした」
そうギルド職員が締めくくった事により、それまで基本的に静かになっていた会議室が俄に騒がしくなり、チラホラと席を立つ冒険者が出始める。
一応、会議の内容としては、予め伝えられていた通りに、基本的には最初はボスを放置に近い形で足止めだけして、先に周りの雑魚や指揮官である上位種から討伐すると言う流れの説明から始まり。
『小鬼』共の現時点での拠点の位置が割れた為、最初に考案していた通りに、暴走が起こる前にこちらから仕掛ける事。
その際に、魔王を含めた魔王国軍は、俺達が仕掛けた強襲によって周囲へと散らばるであろう『小鬼』を掃討し、周囲への被害を拡大させない様に抑える事を第一として行動するため、基本的には俺達冒険者で『小鬼』共を殲滅……まではする必要は無いが、それでも基本的には俺達でどうにかする必要が有る事。
その為に、現在参戦を促した冒険者の中で、実際に参加してくれている最高ランクである『アダマンタイト級』のパーティーを核として現時点で揃えられる限りでは、戦力的に最高のレイド(複数のパーティーを合わせた集団の事)を編成し、他のパーティーで編成したレイドで周囲の戦力をある程度削ぎ落とした後に、その最高戦力のレイドを敵本陣へと投入しボスを討伐する予定である事。
一応、ギルドの側でも、何処と何処のパーティーが組んでレイドを編成しているのかを把握しておく必要が有るため、予めレイド登録をしておいて欲しい事等を伝達されたのである。
そして、そうやって説明が終えられた会議室の中では、早速とばかりに元よりの顔見知りであったパーティーに声を掛けたり、能力やランク的に見てバランスが取れそうなパーティーを誘ったりと、そこかしこでレイドパーティーを組もうと声を掛け合っている。
中には、無謀にも最精鋭のSSランクである事を示している、黒みを帯びた緑色のタグをぶら下げているパーティーへと、声を掛けに行った者も見受けられたが、大抵はバッサリと『お呼びじゃない』と断られ、それ以外は実力等を見るためか、登録はせずに一旦下階へと降りていったりしているのを見ることが出来る。
そんな感じで周囲では、着々とレイドパーティーが編成され、ギルドの方にも登録する者達が増え始めているのを尻目に、俺達はまだ何処にも声を掛けず、席に座ったままでそれらの光景を眺めているだけであった。
……別段皆さんが思っている様に、誰からも声を掛けてもらえていないだとか、こちらから誘ってみたけど全て断られた、とか言う訳では無い。
現に、大概がアストさん目当てで声を掛けて来たりだとか、べリスのおっちゃん達に声を掛けた序でに俺達も誘ってきたりと言う連中以外にも、俺達のタグを見て、鉄級だと承知した上で声を掛けてきてくれた人達も居ることには居たのだが、今回は全て断らせて頂いているのだ。
何故に断っているのかと言えば、やはり俺達の『技能』やら何やらを、あまり面識の無い人間の側で使いたく無いから、と言うのが正直な処だろう。
一応、俺達がこの世界では受け入れられる程度のモノなのか?を確かめる為の実験として、ある程度の『本気』や『全力』は出す予定ではあるが、それでも常に行動を共にする以上、そこで発揮した『以上の力』を持っている可能性について広言される可能性は、極力排除しておきたいからね。
しかし、そうなると、俺達のアレコレを目撃したとしても、お願いすれば黙っておいてくれる程度に親しい人間とレイドを組む必要性が有るのだが、そこで一つ問題が発生しているのだ。
……なんと、その基準を満たせる程度に親しい人間の大半が、今この場に居ないのである。
そして、居たとしても、そのほとんどが既に他のパーティーとレイドを組んでいたり、俺達とは編成が著しく噛み合わない様なパーティーだったりで、組むことが難しくなってしまっているのである。
故に、まだ俺達は何処ともレイドを組めていないのだが、良く良く考えてみれば、このレイドを組む目的は冒険者の生存率を引き上げる事がそもそもの目的であり、戦力的にはあまり関係が無い、と言う事を三人同時に思い出し、なら俺達だけで良くねぇか?と言う結論に至った為、じゃあこのまま登録だけ済ませてしまうか、と腰を浮かせ掛けた時、まだ何処とも組んだ様子の無かったべリスのおっちゃんから、こんな言葉が掛けられた。
「……お前ら、他に組む奴らが居ねぇのなら、俺らと組むか?」
「……いや、それは別に構わない処か願ったり叶ったり、って感じだけど、おっちゃん達はアッチのボス撃破用の組じゃないのか?俺達は、どのみち雑魚掃除に回される事になると思うけど?」
「ああ、そっちは断った。俺らはどっちかって言うと、デカイのを一体より、ソコソコのを沢山、って方が得意だからよ、どのみち最初からそっちに回される事になっていたのさ。んで?どうすんだ?」
そう言いながら、からかう様に俺達を見ているおっちゃんだったが、近くにいた為、俺達と組む予定だから、と言って他のパーティーからの誘いを断っていたのを聞いていたし、俺達が立とうとするまでチラチラと俺達の方を見ていたのも知っている。
……だから、ここは一旦断った方が面白くなりそう、かな~?なんて考えながらも、提案自体は嬉しいし、このパーティーならば、迂闊な事は外部に漏らさないだろうから、と結論を出し、目の前のおっちゃんへと右手を伸ばす。
「……じゃあ、ご好意に甘えさせて貰いますね?『べリスさん』?」
「……やっぱり、お前にそう呼ばれると、気持ち悪くなってくるから、何時もの通りで構わねぇよ」
そう返事をしながら、俺の右手を握り返そうとしたおっちゃんだったが、そこに横から『待った』を掛ける声が割り込んで来た。
「待たれよ、べリス殿!その程度の輩と組まれるのでしたら、某のパーティーと組まれた方がよろしかろう!」
そう、完全に俺達を見下した発言をしてくれながら割り込んで来たのは、下半身が馬の四足となっている、『獣人族』の一部族であるケンタウロスの女性であった。
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