47・準備するつもりが、エラいモノを作ってしまいました……
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結局、あの受付のお兄さんに呼ばれて向かった先で言われた事は、ほとんどアストさんや俺の予想から外れる事なく、基本的にそのまんまのお話を頂いてしまった。
まぁ、幾つか異なる点を挙げるとすれば、まず俺達のランクが、参加する・しないに関わらず、今回こなした依頼によって、『鉄級』に上がる事が出来るようになっていた事。
これに関して言えば、別段俺達にデメリットは無い様に思えたので、その場で頷いておいた。
そして、俺達はあくまでも『戦力』としての参戦を期待されており、『小鬼』の巣(暴走が発生するまで群れが止まるポイントをそう呼ぶらしい)の位置特定だとか、どの辺に多く分布しているのか等の、斥候としての情報収集はギルドの方で人手を出すとの事で、俺達はタッチしなくても大丈夫なのだとか。
……てっきり、どの辺りで遭遇したのかを案内したり、その周辺の調査をしたりする程度だと思っていただけに、突然『戦力として~』とか言われてしまい少々面食らってしまい、何故にわざわざただの『銅級』でしかなかった俺達にそんな話を持ち掛けたのか?と質問したのだが、それに続いた説明で、納得せざるを得なくなってしまう。
なんでも、俺達が登録初日に持ち込んだ魔物の中に、普段はあの森の深部にしか確認されていない、かなり強力なモノが混じっていたらしいのだ。
最初は、ギルドの方も、ただの駆け出しにそんな大物が討ち取れる訳が無いし、そもそも遭遇しようが無いのだから、俺達と付き合いが有ったアストさんが持たせたのではないか?と思っていたらしいのだが、その後の依頼成績を見ていると、どうやら自力で討伐出来るだけの実力は有った、との判断が下ったらしく、その上で俺が一人で『小鬼』の小隊を壊滅させている事から、俺達は雑用に回すよりは、実際に戦線に向けさせた方が良い、との判断が出されたのだとか。
……まぁ、それに、俺達が倒して納品した魔物の中に、特定のエリアにしか本来出てこないハズの魔物が混ざっていた事から、おそらく俺達と遭遇した原因として、元々の生息域から『小鬼』に追い出されたのではないか?との推測から、おそらくはその魔物の生息域周辺に、『小鬼』の群れ本体が有るのではないか?との予測が既に立てられている以上は、戦力としても使えそうな俺達は温存しておきたい、って事も判断の材料の一部になっているみたいだけどね。
詳しい予定等は、まだ調査してみない事には詰められないが、それでもこの国の存亡の危機に魔王陛下も参戦されるとのお話だから、可能な限りの奮戦をお願いしたい。
そんな、後の方で出てきたギルドのお偉いさん(実はギルマスだったらしい)の言葉と同時に下げられた頭に見送られながら、銅製から鉄製に取り替えられたタグを受け取った俺達は、この日は一旦ギルドを後にするのであった。
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結局の処として、魔王も戦線に出てくるって話も有った為に、これからの調査次第にはなるものの、おそらくは発生するであろう強襲戦に参加する決意を話し合いの末に決めた俺達は、話を貰った次の日には参加する意向をギルドへと告げて、その準備をするべく細々としたモノを揃えた上で、定宿として利用させて貰っている『踊る一角獣亭』の一室に朝から籠っていた。
「……それで?これからどうするつもりだ?」
そう、俺達の中では、今回の役割的にも『まだ』手持ち無沙汰なタツが、レオと共にあれやこれやと買い出して来たモノや、採取してきたモノを準備している俺へと問い掛けて来る。
「あん?『どうする?』って聞かれても、具体例を挙げてくれないと答えようが無いんだが?」
乳鉢(大)と合わせて使う予定の磨り潰し棒(大)を手に持ったまま、俺へと主題の抜けた疑問を投げ掛けて来たタツへと振り返りつつ、逆に質問を返しておく。
「……今回の、暴走とやらに関して、だ。俺達が全力を出すと、面倒な事になるのは、先日の一件でほぼ確定しているのは、お前も分かっているハズだ。
……それを踏まえた上で、俺達は今回、『全力』を出すのかどうか、と聞いている」
そんな『質問に対して質問で返答する』みたいな俺の態度に、多少の苛立ちを覗かせながらも、自分の聞きたい事は確りと質問してくるタツ。
そんなタツの様子を、何時もの笑顔のまま眺めているレオだったが、その直後に俺へと向けられた視線には、誤魔化しの類いは無しだぞ?と、口には出してはいないが、確実に俺へと釘を刺しに来ている事は、まず間違いは無いと見て良いだろう。
……ぶっちゃけ、誤魔化そうと思えば誤魔化せなくは無いだろう。
俺達の中では、幸か不幸かいつも交渉役として表に立つのは俺だった為、煙に巻こうと思えば出来るだろう。『技能』にも、その手の事ばかりしてきたせいか、『交渉(詐術)』なんてモノも有った記憶が在る。
おまけに、これまでの関係性から、この場で誤魔化した事が後でバレたとしても、その程度で揺らぐ様なヤワな関係性では無いハズだし、揺らいだのならばそれはそれで構いはしない。
……が、それはそれで面倒な事になりかねないし、タツやレオもそれを理解した上で俺に聞いてきているのだろうから、ここは素直に答えておくとしますかね。
「……そうさね、ここはやっぱり『全力』で行くべきだと思う。敢えて『表向き』な理由を説明する とすれば、この国を比較的好ましく思っているし、この国の王である魔王にも、ある種の『借り』が有るからね。俺達が化け物扱いを受けたとしても、『全力』で事に当たっておくのが最適解だろうよ」
「……では、『表向き』では無い方はどうなんだ?」
「僕も~、『表向き』の世間様に対する言い訳よりも~、本心の方の理由が気になるかなぁ~?」
「そりゃ、お前さんら、決まってんだろ?」
そこで一旦言葉を切り、我ながら『黒い』と言うか『邪悪』と言うか、とにかくそっち方面の形容詞がつくこと間違いないであろう笑みを、間違いなく『ニヤァ……!』とでも擬音が出そうな感じで浮かべつつ、この二人だからこそ話せるある種の『本音』を続けて行く。
「実験だよ、実験。俺達が現段階で、『全力』かつ『本気』で大暴れした際に、何処まで出来るのか、何処まで殺れるのか、何処まで出来てしまうのか、それらの限界を見極め、そして、万が一俺達がその『限界』まで力を振り絞る様な場面に出くわした際に、それを見た周囲がどの様な反応を示すのかを確かめる事の出来る、良いチャンスだとは思わないかね?
幸いにも、今回大量発生しているらしい『小鬼』は、散々あの迷宮で『駆除』した相手だから、手の内は知り尽くしているし、何より直接相手にした感じ、あの迷宮のゴミ共よりも弱かったからね。まず間違いなく、俺達が不覚を取る事は無い相手だ。
丁度良いテストケースになってくれるだろうさ。
俺達がこの世界でも『怪物』として排斥されるのか、それとも『英雄』なんて面倒なモノに無理やり祭り上げられる可能性が存在するのか、はたまた『異常に強いだけの隣人』として受け入れて貰えるのか、お前さんらも気にならないとは言わせはしないぞ?
何せ、俺達の『計画』のある意味『要』の部分になるんだからな?」
そう、俺が企んでいた事の概要を打ち明けてやると、それまでは少しばかりの疑いの色を混ぜられていた視線には、その色は既に完全に払拭され、その上で俺に対して疑念を抱いた事を後悔するような、もしくはその企みを俺だけに構想させている事に罪悪感を抱いている、と言った様な印象を受ける視線を返して来る。
「これこれ、そんな顔するでないよ!どのみち、この手の事は、何時かは確認しておく必要の有った事柄なのだから、別段気にする必要は無い。
それに、今回の件を無事に切り抜けないと、そもそも実験的に反応を見ることも、この国に居続ける事すら出来なくなるんだから、クヨクヨしておる間に手を動かしたまえよ?
理想としては、あまり被害が出てはいないがそこそこの処までこちら側が追い詰められるけど、そのタイミングで俺達が大暴れして逆転勝利!ってのが最高だけど、そこに行き着かせようと思ったら、先制攻撃を失敗させない事にはどうにもならないだろうし、そうしてしまったら実験もクソも無くなってしまうしね。それに、どうせ考えた通りには物事は進む訳が無いのだから、少しでも最良の結果に近くなる様に、準備は念入りにしないと、ね?
……それと、お前らこの程度の事でへこむ程、柔で繊細な精神構造してたっけか?落ち込んだり、反省したりするのは構わんが、それは後にして今はとにかく手を動かせ!何時もの図太さは何処に行ったんだあぁん!?」
取り敢えずフォロー……の様な何かをしつつ、普段や戦闘時と比べて腑抜けた印象を受ける二人に対して、些か乱暴ではあるけれども発破を掛けてやる。
すると、発破が効いたのか、それとも単純に俺への反抗心かは不明だが、それまで雰囲気が沈んで手が止まっていた二人も、やや攻撃的な空気を纏いながらではあるが、それでも手や身体を動かして、その時に備えての準備を再開し始める。
そんな風にであれ、何時もの様に動き出した二人に満足した俺は、ようやく当初の予定でもあった調薬等を開始するために、目の前の作業台に置いておいた、もはや擂り鉢か何かですか?と突っ込みを入れたくなる様なサイズの乳鉢に、あれ(初依頼)から色々と比較した結果のデータとして、最高の薬効を発揮する……ハズの薬草を何束か放り込み、こちらは若干大きめ程度の磨り潰し棒を使って、ゴリゴリと音を立てながら磨り潰して行く。
ある程度磨り潰してペースト状に近くなってきた段階で、他の種類の薬草を幾つか投入し、少しずつ蒸留水で伸ばしながら、固形物が残らない様に丁寧に磨り潰し続け、完全に液体になるまでひたすらかつ念入りに磨り潰す。
そうやって、繊細かつ一気呵成にやり通してしまわなくてはならない工程を終え、取り敢えずは手を離しても大丈夫な状態まで加工した段階で、部屋の隅に設置していた止まり木からカーラが飛び立ち、作業台の上に置いてあったモノを倒したりしないようにソッと着地すると、散乱する器具や材料の隙間を縫って俺の近くまで移動し、俺の手元を覗き込んで来る。
「…………?」
少しの間、さも物珍しそうに乳鉢の中を覗いていたカーラだが、顔を上げて俺へとまるで
『何しているの?』
とでも聞きたげな視線を向けてくる。
それに対抗するように、それまでは興味の欠片も無い、とでも言いたげな雰囲気で丸まっていたリンドヴルムも作業台に降り立ち、同じ様に乳鉢の中身を覗き込んでから、俺へと声を掛けてくる。
『主殿よ?これは、一体何をしておるのかのぅ?』
「これか?これは、『回復薬』だよ。俺達には、回復役系の人材が居ないし、他の人の目がある時に、リンドヴルムにお願いする訳には行かないからね」
そう、俺が今までやっていたのは、回復薬の生成の前段階なのである。
薬草の類いは、今まで依頼の合間に散々集めたし、俺には『調薬』の『技能』が有るから作り放題なのである。
……まぁ、ある程度の品質のモノを作れるようになるまでは、多少苦労はしたけどね。
主な材料と、作るための技術は有った(多分)のだが、肝心の『レシピ』が分からなかった為、クラニアムの本屋の類いを探し回ってみたり。
ようやく見つけたレシピ本でも、必要な材料として『清純な水』が必要だ!とか言い出したり、材料の分量も適当(『一株の半分~』だとか、『二~三摘まみ~』だとか)で、結局自分で調べて調合するハメになったりしたのである。
……もっとも、どうやら実験的にやってみた結果として、あの『清純な水』とやらの正体は『蒸留水』だったみたいなので、それ以来はずっと蒸留水を使っているのだけどもね。
そうやってアレコレやった結果として、通常出回っている回復薬(そこそこ大きめな切り傷がジワジワと治る程度)よりも弱い効果しか持たないモノ(細かい傷や軽度の骨折がある程度治る程度)や、逆に強い効果を持つモノ(重度の骨折や深い傷でも即座に回復させられる程度)の開発にも成功しており、今回やっているのは更に上のグレードの回復薬の開発実験である。
『……では、今やっておった作業は、通常のそれとは異なる、と言う事かのぅ?』
「いや?まだ何も変えたりはしてないぞ?それこそ、レシピに書いてあった事そのまんまをやっていただけだ、『まだ』ね」
そう、今まで散々作ってきた通りの事しかしていない。
今手を止めているのだって、作業過程に於いて手を止められるタイミングだったから止めている、ってだけなのである。
後は、特定の魔物の素材を磨り潰しながら投入したり(弱回復薬になる)、魔核を磨り潰してその粉を入れたり(強回復薬になる)した後に、外部から魔力を通してやれば、それまで濁った黒緑色をしていた液体が透き通り、回復薬として使える様になるのである。
ちなみに、回復薬の色は基本的に透き通った薄い青、と言った感じなのだがその『青』色の濃さで効果が変わる、と言うか、『青の濃さ』でその効果を判断できるのである。
現に、俺が開発した強回復薬(骨折でもあっさり完治する)は、どれもこれも一目で判別出来るほどに濃い青をしているし、逆に弱回復薬は、よく見てみないと分からない程に薄くしか色が付いていなかったりする。
なお、魔力を通して完成させた回復薬は、基本的にほんのり甘い味がするのだが、魔力を通す前の液体は呆れる程に苦味とエグ味が強いだけでなく、その上で青臭さが目立ち、とても飲めたモノでは無い様な味がする。おまけに、傷を治したりする効果もまだ発揮してはくれないみたいなので、決して口にしてはいけない危険物である。
……正直、過去に戻れるのなら、興味本意で口にしようとしている自分を、殴ってでも止めている処である。
そして、今回は実験と称して、前段階まで作成しておいた草汁に、『コレ』を投入してみる事にしたのである!
そんな半ば好奇心に推し進められた形で使用を決意したモノを作業台の上に取り出して見せると、カーラは驚きからやや後退り、リンドヴルムは呆れた様な視線を俺へと向けてくる。
『……主殿の持ち物であるのだから、妾がとやかく言うつもりは無いのじゃが、それでも一言言わせて貰うのならば、確か『アレ』はもう無い、とか前に言っておらなんだったかのぅ?』
そう言いながら、リンドヴルムが指差したのは、俺達三人があの無人島で最初に遭遇し、この世界で最初に死を覚悟した相手である『兎公』……ではないが、その同種の魔物の、魔核が付きっぱなしで今だに鼓動を止めていない心臓であった。
そして、その心臓は、それまでの無人島生活や、あの船に乗った際の宴会の時に提供した分で、全部使いきってしまった、と、リンドヴルムには説明していたのである。
「別段、嘘は言って無いぞ?無くなったのは、俺達が『準兎公』級って呼んでいた連中のソレで、今俺が出したのは、最大級の『兎公』級のヤツだ。
こっちのは、最初の一体の分以外は食わずに、レオの『空間収納』に保存しておいて貰っていたから、全部残っているからね?」
何かしらに使えないかと、あの時食べてしまった最初の一つ以外は保存して有ったのだが、それを今使ってしまおう、と言う訳なのである。
そんな訳で取り敢えず魔核ごと粉砕するべく、取り出した魔道具に心臓(魔核付き)を放り込み、魔力を込めて起動させ、中の心臓が魔核ごと液状になるまで自動でひたすら磨り潰させる。
ゴリゴリと言う音を聞きながら、時折不自然に『ビクッ!』と震える魔道具を見守る事数分で、中身がペースト状になった事を確認したため、その薄ピンク色のペーストを、今だに乳鉢の中に入っている草汁へと投下し、パッと見にはよく分からない何かへと変貌を遂げた液体を、よくかき混ぜてから魔力を通してみる。
すると、それまで混沌としているだけだった液体が、一瞬だけ強い光を放ち、その後に乳鉢の中に入っていたのは、青よりもより深い青、もはや『蒼』だとか『藍』だとかと形容するべき色をしている、多分回復薬になっているハズの液体であった。
……しばらくはその液体を言葉も無いままに見詰めていた俺だったが、取り敢えずは乳鉢を開けてしまわないと、次を実験する事すら出来なくなるので、普段から使っていた回復薬用の瓶へと、手早く詰めて行く。
「……取り敢えずは出来たんだが、そもそもコレが回復薬なのかすら危ういからね。取り敢えず鑑定よろしく!」
そう言いながら、『看破』の特殊技能を持っているタツへと、瓶に詰めた内の一つを投げて渡す。
それを危うげ無く受け取るが、渡し方に多少の難が有ったからか、非難する様な視線を向けてくるタツ。
もっとも、文句の一つも言わずに鑑定している辺り、先程のやり取りが影響しているのかも知れないけど。
そんなことを考えながら、タツからの鑑定結果を待っていたのだが、しばらく瓶を見詰めていたタツが、まるで頭痛を堪えるかの様に米噛みを揉みながら、俺へと声を掛けて来た。
「……なぁ、タカ。コレ、名称が『命の水』ってなっているんだが、狙って作ったのか?
ついでに言えば、効果の方も名前に負けてはいないみたいだぞ?聞きたいか?」
……oh……。
思いつきでやってみたら、トンでもないモノが出来たみたいです……。
ちなみに、効果の方は
『基本的に死んでさえいなければ、五体満足で復活可能。死んだ直後であれば、蘇生も可能。四肢欠損や失明も対応して再生させる』
との事である。
……コレ、どうしよう?
死人を飛び起きさせる必要でも無い限り、ほぼ一滴で事が済むらしいが、既に瓶で十本程作ってしまっているし、まだ心臓も十個位残っているんだけどなぁ……。
本当に、どうしようか、コレ?
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