38・他の面子はどんな感じでしょうか?
ブックマークしてくださった方々に感謝ですm(__)m
俺の『技能』一覧(俺が読み上げたのを書き留めた)を睨らんだまま唸り声を挙げている魔王を尻目に、俺で安全が確認されたからか、続々と他の面子も『技能』の解析を行い出した。
……何だか、実験動物として利用された様な気がしないでもなかったが、その結果として、一応全員分の『技能』詳細が手に入ったのであった。
一応俺だけでなく、他の面子の分も見せてもらっておくとするかね?
どれどれ?
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藤井 辰郎/17/♂
『技能』
工作(木工)・調理(上級)・設営(野営)・採集(食料)・解体(全般)・伐採・直感・投擲・算術
『特殊技能』
看破・練気・身体能力強化(極)・蛟流組古式手術(皆伝)・金剛体
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神埼 礼於/17/♂
『技能』
工作(木工)・調理(簡易)・設営(建築)・調毒(上級)・解体(獣)・罠製作・罠察知・罠解体・隠蔽・算術
『特殊技能』
空間収納・練気・身体能力強化(極)・暗殺術(皆伝)・殺戮技巧
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タツとレオの分はこんな感じである。
どうやら二人の分は、俺のとは少々異なる様子を見せているみたいである。
俺のには有った『体術』だとか『小太刀術』だとかは、タツやレオも習得しているハズなので、二人の処にも表示されそうなモノだが、タツの処に『投擲』が有って、俺とレオの処には無い事を合わせて考えると、どうやら『特殊技能』の欄に有る、それぞれの流派の処に統合されている……と思われる。多分。
まぁ、二人の処の流派の事までは詳しく知らないので、確たる事は言えないが、それでも俺の『飛鷹流』を参考にして考えてみると、確かに『体術』の類いと『小太刀術』何かは、元から『飛鷹流』に組み込まれていた訳では無く、どちらかと言えば後付けされた技術である側面が強く、その反面『投擲』何かは、『風切り』みたいな技が有る位なので、おそらくは『飛鷹流』の技術の一部である、と判断されたのではないか?と思われる。
他にも、多分有るんじゃないかと予想される『気配察知』だとか、『隠密行動』だとかも、同じ理由から統合されているんじゃないかと考えられると思う。
もっとも、多分そんな感じなんじゃ無いのかなぁ~?程度の推測でしかないから、当たっているかは不明だけど。
まぁ、考えても分からない事は考えないとして、二人の『技能』傾向を改めて見てみると、それぞれタツが『調理』の、レオが『調毒』の上級を所持している。
ちょっとレオの方のはどうなのか?とも思わなくも無いが、先程の魔王の口振りからすると、『技能』で上級を所持していれば、それを専門的に扱う様な『ギルド』からすれば、是が非でも確保したい人材、として写るらしいから、それぞれでバラけるのであれば、手に職を持つのはそこまで難しくは無いのだろう。
だが、やはりと言うかなんと言うか、俺も含めて三人が三人ともに、戦闘系統に寄った『技能』構成になっているし、そもそも身を立てる手段として選ぶのであれば、まず間違いなく、この身に染み付いた武術を用いるのが、最も効率的かつ確実な手段となるだろう。
……それに、そもそもその手の生産系(?)の『技能』なのだが、何故にこんなモノ持ってるんだ?と言った感じのモノも混じっているので、出来ればメインに据えたくは無い。
……何ぞ、『調薬』って?
そんな大層な事した覚えは無いんだがね?
強いて言えば、三人でやらされた『修行』の最中は、基本的に俺が薬作りを担当していたって位だが、それとて『なんちゃって漢方』の更にモドキみたいな程度のモノでしかないし、それ以外で言うと、あの浜辺でやった日焼け止めクリームモドキ位のモノか?
……そう言えば、あのクリーム、女性陣からはやけに評判がよろしくて、何回か作り足して渡したりしたっけか……。それか?
……いや、流石に無いだろう……。
無いよね?
「……いや、お前の方は、まだマシだと思うが?」
「そうだよ~。僕の何て~、『調毒』に『罠製作』と『罠察知』と『罠解体』だよ~?完全に~、ゲームで言うところの『シーフ』だとか~、『レンジャー』職になるか~、もしくは『暗殺者』に分類されるかしか無さそうな構成じゃないか~!確かに心当たりは有るけどさ~、流石にこれは無いんじゃないかなぁ~?」
「……おまけに『殺戮技巧』だってよ?」
「それは言わないで貰えないかなぁ!?心当たりが無いでも無いんだからさぁ!?
それに、僕のを言うんであれば、タツの『金剛体』も大概じゃあ無いかなぁ!?」
「地味に人が気にしている処に突っ込むでないわ!!」
……正直、意味不明さでは、どっちもどっちだと思います。
そう、心の中で突っ込みを入れながら、口論から殴り合いに発展しそうな二人は放置して、今度は女性陣の方へと移動し、見せてもらう様に交渉してみる。
……途中で、やや交渉が難航した(交換条件として剥かれそうになった)が、結果的には無事開示してもらえる事となった。
さて、まずは俺にホの字らしい四人組から見せてもらうか。
どんなモノが有るのかねぇ?
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乾 紗知/16/♀
『技能』
家事(全般)・解体(獣)・魔法適性(高)・鎚術・拘束・魔力操作・算術・儀礼・精神攻撃耐性
『特殊技能』
術式改変・魔法強化(極)・身体能力強化(中)・戦闘思考
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久地縄 時雨/16/♀
『技能』
調理(簡易)・裁縫(簡易)・清掃(簡易)・魔法適性(中)・精神統一・気配察知・追跡・算術・礼儀作法・精神攻撃耐性
『特殊技能』
遠斬・久地縄流抜刀術(奥伝)・身体能力強化(高)・血化粧
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阿谷 美樹/17/♀
『技能』
調理(中級)・解体(獣)・魔法適性(低)・魔法耐性(高)・世話・算術・精神攻撃耐性
『特殊技能』
重量軽減・身体能力強化(極)・限界突破
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佐藤 寧子/24/♀
『技能』
家事(初級)・採集(植物)・魔法適性(中)・弓術(和弓)・気配遮断・狙撃・教授・算術・儀礼・精神攻撃耐性
『特殊技能』
分裂(矢)・身体能力強化(高)・狂乱怒涛
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……何だろう、これは……。
確かに、見せて欲しいと言い出したのは俺なのだけれども、四人の『技能』欄を見ていると、そう言い出した事を後悔してきた様な気がするなぅ……。
何故に、三人共に揃いも揃って『追跡』に『気配遮断』に『拘束』何て持っているのだろうか?
……いや、確かに、乾はリンドヴルムに指導されたお陰で、魔法が使える様になっており、それを用いての足止めや脚を攻めての機動力低下、魔法そのものによる敵の拘束と言った感じでの戦闘をしていた記憶が有るから、『拘束』を持っていても不思議は無いのかも知れないし、久地縄さんの『追跡』にしても、こちらの攻撃から逃げようとした敵への追撃や、狩猟の際に獲物を追う追撃戦を担当する事が多かった様にも思えるから、おそらくは妥当なのだろう。
同時に、後衛かつ狙撃手である先生が、敵に気付かれない様に『気配遮断』を習得していたりするのも、まぁ、納得は出来る。うん。
そして、阿谷さんの『世話』にしても、兄弟の面倒を見ざるをえなかったとの事らしいので、その時から持っていたのだろう。
……だが、今まで散々彼女達がアレコレしている姿を見ている者としては、どうしても『気配遮断』の状態で『追跡』されて、他に誰も居ない処で『拘束』され、その状態のまま『世話』される、何て事になりかねない様に思えて……。
……いや、無い無い。
無いと思いたい。
……無い、よね?
不安を拭う為に、一応聞いてみる。
「……まさかとは思うけど、やらない……よね?」
「「「「……アハハハ~、そんなことする訳が無いじゃ無いですか~、やだな~もぅ!…………(何でバレたんだろう?)」」」」
……おかしいな、不安を拭い去る為に質問してみたのに、開かなくても良かった扉を、自らの手で開いてしまった様な、手遅れな感じが有るぞぅ……?
そして、最後の呟き。俺は『鈍感』かもしれないが、『難聴』では無いから、確り聞こえているからね?
そんな思いと共に視線をぶつけたのだが、残像が残るほどの勢いで首ごと視線を反らされて、物理的に誰とも視線を合わせる事が出来なくなってしまっている。
その事態に、咄嗟に視線の種類を責める様な攻撃的なモノから、ジットリとしたモノに切り替えて、精神的に居心地を悪くする方向へと、作戦を変更する。
……こちらに攻撃の意思が無くなったと見た途端に、まるで掌を返す様に態度を変えたみたいだが、それでも許すつもりは無いぞ?
あと言っておくと、その『テヘペロ☆ミ』って感じのソレ、女性が思っているよりも俺みたいな男には効果が無いし、逆に苛立たしくなるだけだから、使う相手は選んだ方が良いんだよ?
……でも、キャラクター的に絶対やらなさそうな阿谷さんや、年齢的に大丈夫かな?と思っていた先生がやっているのを見ても、そこまで『やっちゃった感』が感じられず、逆にそのギャップで可愛らしく見えていたのは、俺だけの秘密である。
そして、互いの『技能』を見せ合いながら、やれまずは私から~だとか、いやいやここは拙がお試しで~だとか、ならオレがまず先鋒として~だとか、こう言うときはまずは歳上から~だとか、そんな感じの言葉が漏れ聞こえて来る、聞いていると背筋が冷たくなる謎の話し合いを開始した乾達を放置して、残りの三人の分を見せてもらう。
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亜利砂 レイヴンクロー/17/♀
『技能』
採集(植物)・剣術(刺突剣)・短剣術(守護剣)・魔法適性(中)・算術・儀礼・作法・矜持
『特殊技能』
連撃・身体能力強化(高)・高貴なる務め・不倒
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音澄 京香/16/♀
『技能』
採集(食料)・解体(獣)・長柄術(長刀)・魔法適性(低)・気配察知・算術
『特殊技能』
分身・身体能力強化(高)・並列思考・高速機動
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桜木 奥留/16/♀
『技能』
家事(全般)・裁縫・解体(獣)・採集(食料)・短剣術・魔法適性(高)・回復魔法適性・魔力操作・算術・儀礼
『特殊技能』
魔力供給・身体能力強化(中)・高速演算・無詠唱
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……フム。
やはりと言うか、なんと言うか、亜利砂さんと音澄さんは戦闘型、桜木さんは完全後衛……と言うか支援を通り越して後方型と言うか、非戦闘型と言うか、とにかくそんな感じである。
まぁ、とは言っても、俺達みたいな戦闘集団にとっては欠かせない人材では有るし、古今東西どんな戦闘力の高い部隊であったり、集団であったとしても、桜木さんみたいな後方支援タイプの能力を持っている人が居ないと、必ず内部から崩壊するか、又は自然と空中分解するかの二択になるから、感謝しかないのだけれどもね?
「……そ、そう言って貰えると、こ、こんな私でも、皆さんの役に立てている実感が持てて、と、とても嬉しいです!」
「……もう!私も、以前から何度も申し上げておりますけれども、奥留さんはとても優秀な方なのですから、もっと堂々と胸を張るべきですわ!」
「……ん。桜木さんには、いつも助けられているから、そんな風に言わない。皆感謝している」
そんなことを言い合いながら、一塊になってワチャワチャとしながらも、二人掛かりで頭をなでこなでこされる桜木さん。
その光景は、端から見ていると、久しぶりに会った親戚の子供を愛でている、歳上のお姉さん二人と親戚の子供、と言った感じである。
……正直、見ていてホッコリしました。
そんな訳で、全員分の『技能』を一通り確認し終えた俺は、少し魔王に聞きたいことが出来たので声をかけに行ったのだが、当の魔王は、未だに俺の『技能』を書き写した紙とにらめっこしており、こちらの世界への帰還を果たしていなかった。
なので、いい加減帰って来させる為に、ブツブツ言いながらウロウロしている魔王の尻へと、腰の回転を入れた本気の蹴り(全力では無い)を叩き込み、こちらの世界への帰還を促す。
当然の様に、考えに没頭していた魔王が俺の蹴りを防御する事は叶わず、綺麗に決まった蹴りにより、良い音と共に軽く吹き飛び、着地の際のダメージと蹴りによる尻の痛みで悶絶している。
それを見たフルカスさんが、驚きに目を見開きながら反射で飛び出して来ようとしたが、当の魔王から『怒気』も『殺気』も感じられない事から、寸での処で踏みとどまる。
「おぉぉぉぉぉう……。タ、タカナシ殿?次からは、もう少し痛くない方法で呼んではくれぬかな?」
「それで反応するならな。処で聞きたいことが有るんだけど、良いか?」
「……抗議するだけ無駄そうであるし、別に良いが、何を聞きたいと申すか?」
「俺達の『特殊技能』の欄に、全員が全員『身体能力強化』を持っていたんだけど、これって只の偶然かね?それとも、俺達みたいなのは必ず持っているものかね?」
「……フム?『全員が『特殊技能』の欄に持っていた』?
……もしかして、そなた達は基本的に『魔法適性』や『魔力供給』を持っていなかったりしなかったかね?」
「……?確かに、二人はそれらをセットで持っていたけど、他の面子は『魔力操作』を持っていなかったり、俺みたいに『魔法適性』そのものを持っていなかったりしたけど、ソレがなにか?」
「……フム。となると、そなた達の元居た世界は、もしかして魔法が無かった、或いは普遍的なモノではなかった世界なのでは無いかね?」
「……確かに、俺達の元居た処では、『魔法』なんてモノは、基本的に伝説やお伽噺の中に出てくるか、もしくは空想の産物扱いだったが、それが何か関係しているのか?」
「ウム。そなたならば既に察しておったとは思うが、この世界に他の世界から人々が呼び出されるのは、今回が初めてでは無い。むしろ、何度目の事かすら良く分からぬ程に行われて来た過去が有る。
そして、それらの過去の召喚の際のデータとして、呼び出された人々が、元々の世界で魔法を扱えた場合、その魔法が強大なモノへと変化したり、それまで使えなかったモノでも使えるようになっていたりと言った事が確認されておるのだよ。
そして、それらのデータの中に、極少数ではあったが、そなた達の様に元の世界に魔法が無かったケースが存在したのだが、その時に呼び出された人々は、とても高い身体能力を誇ったと言われておる。
故に、おそらくは元居た世界に魔法が有れば、魔法が強化され、無ければ身体能力が強化されるのであろうな」
……フム?
成る程?まぁ、納得出来なくも無い……か?
「まぁ、そう言う傾向が有ると言うだけで、現にそなた達の中にも、魔法を扱える者が居るのであろう?あまり気にせずに『そう言うモノ』だと思ってしまうのが良いのではないか?」
……そんなものかね?
……まぁ、良いか。
さて、では一通情報も出揃った事だし、そろそろ各人で考えて行きますかね?
……思った以上に説明回が長引いているでござる。あと一話か二話位で確り動き出すハズなので、もう少し辛抱してくだされ。
尚、各人が『自覚していた』能力の詳細を順番に軽く説明すると
タカ・武器創造……自身が『武器である』と認識しているモノを造り出せる。ただし、鈍器よりも刃物を、木製よりも鉄製のモノの方が成功し易い。又、知っているモノ→触った事が有るモノ→使った事が有るモノ→所持し熟練しているモノ、の順で創造の成功率が上昇する。
モノによって造り出せる限界数が異なる。
余談では有るが、フライパンや中華鍋をこの能力で出せたのは、本人の認識ではあれらは『打撃武器』にカテゴライズされているからである。
※今回はここまで、次回はタツの能力を解説予定。
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