37・今後の身の振り方を考えます
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『今後の身の振り方を考えたい』
その俺の言葉に、渋い顔をしている魔王と変わらぬ微笑みを浮かべるアストさん、そして、俺がそう言うだろうと予想……と言うよりも、もはや確信していたのであろう、全く驚いた様子の無いタツとレオを除いた女性陣+リンドヴルムが、俄に騒がしくなり始める。
……まぁ、それも無理は無いのかも知れないか……。
何せ、『もしかしたら』ではあるが、元の世界に戻れる可能性が、希望が見えてきたその時に、この世界での身の振り方をどうするか?等と聞かれているのである。
可能性はまだ低い上に、何時になるのかをまだ分からないながらも、いずれ『居なくなる』予定の世界での、己が身の立て方何て聞かれても、どう答えるべきなのか、また、リンドヴルムの様に、元よりこの世界の存在からすれば、何でわざわざそんなことを聞いてくるのか?と言った困惑や疑念と言った感情が生まれている事だろう。
そんな女性陣の混乱に追い討ちする様に、先程俺がゴニョゴニョしていた結果として半ば無理やり魔王から勝ち取った案件を、魔王の口から説明させる。
「……余としては、そなた達には彼の国が潰れるまでは当然として、その後の術式解析に成功し、そなた達が元の世界に帰れる様になるまでは、このゲーティア城にて滞在してもらって構わないと思っておるし、そなた達をこうして保護した者としても、そうして当然だと思っておったのだが……」
そこで魔王が言葉を切ってしまったので、仕方なく俺が後を引き継いで話を進める。
「……まぁ、アレだ。いずれ元の世界に『帰る』にしろ、そうでないにしろ、何時までも厚意に甘えて世話になっているのも座りが悪いだろうし、世話になるとしても、その間ずっとゴロゴロしっぱなしってのも、あんまり具合がよろしく無いだろう、ってね?
まぁ、そこまで難しく考えずに、ここにいる間、何で暇を潰すのか?程度に考えれば良いさね」
そう言いながら薄く笑みを浮かべて見せると、どうやら聞いていた方も一応は納得したらしく、女性陣で固まってアレやコレやと騒がしく姦しく相談しだす。
そんな女性陣に混じりながらも、『何か』を察したらしいリンドヴルムは、こちらへといぶかしむ様な視線を向けてくるが、別段何か確信の置ける様な根拠には思い至っていないらしく、何か聞きたげな目をしながらも、何も言わずに女性陣の相談の輪へと戻って行く。
……やれやれ、勘の鋭い奴は面倒だねぇ……。
そんなことを内心で呟いていると、おそらく長年の付き合いからそれを察したらしいタツとレオからは、まるで『お前が言うな』とでも言わんばかりの視線を、一応は『計画』の内容を話してある魔王からは、本当にそれで良いのか?とでも問い掛けて来る様な、ある種の心配する様な色を含んだような視線をそれぞれから向けられてしまう。
……そして、その苦い顔をしている魔王の態度からか、それともここ最近、所持している疑いが濃くなって来ている『読心』系のスキル?を使用して、俺の考えを読んだのかは不明だが、表情こそは微笑みのまま変化はさせていないが、その雰囲気と言うか空気と言うか、とにかく周辺に『歓喜』の感情を発露させているアストさん。
まぁ、表情やら何やら自体はパッと見変化していないので、アストさんの雰囲気が変化したのに気が付いたのは、向けられている対象である俺を除いては、魔王を含めた数人程度しか気付いた様子は無かったのだけれども。
……まぁ、どちらでも良いか。
どの道、このままの流れであれば、俺の提案の通りに各員で何かしらの活動を開始する事になるだろう。
そして、一度そうなってしまえば、俺の、俺達の目的に沿うように行動したとしても、他の面子にバレる事は無くなるだろうし、仮にバレたとしても、彼女達では俺達の行動を止められ無いし、止めさせてやるつもりも無い。
それに、仮にそうやって止めるために動き出したとしても、アストさんは確実に俺達の側に付くことになるだろうし、リンドヴルムは……どうだろう?ある種の賭けになりはするが、俺達がこれからやろうとしている事の内容を知れば、おそらくは俺達の側に付くことになるだろう。戦力としては十二分……いや、明らかに余剰火力過ぎるか……?
まぁ、何れにしても、女性陣では俺達を止めることは不可能に近いのだから、何も心配は必要有るまい。
そんなことを、意図せず口元に黒い笑みを張り付けながら考えていると、話し合いが終わったらしい女性陣から乾が立ち上がり、話し合いの結果を伝える為に口を開く。
「一応、私達の方でも話し合ってみたのだけど、やっぱり小鳥遊君の言う通り、何時までも魔王様の厚意におんぶに抱っこでお世話になっているのも申し訳が無いと思うんだ。だから、小鳥遊君の提案に乗ろうか、って事に纏まり掛けたんだけど……」
と、そこで一旦口を閉じてしまう乾。
……おかしいな。
そこで口ごもる要素が、何処かに有ったか?
それとも、俺達の計画がバレたのか?
だとしたら何故に?何処からだ?
そんなことを、表面上は何時もと変わらずに、されども内面では計画について知っている者の中で、乾達へと情報を流出させる様な可能性を持っている奴何て居たか?と思考を回すが、それでも直ぐには思い至らない事にプチパニックを起こし掛けていたのだが、次なる乾の言葉を聞いて、その懸念が完全に的外れであった事に安堵する事となる。
「……でも、正直に言って、私達にはまだ、この世界で『何をしたい』だとか『何をしても良い』のだとかも分からないし、それに、そもそもどんな職業選択が出来るのか、とかも、全く知らないから、そもそもの話として、答え様が無いんだよねぇ……。だから、『例えば』で良いから、何かしらの具体例を上げて貰えると有難いんだけど、お願い出来ない、かな?」
……いやはやごもっとも!
そして、そう言われてみて思い出したけど、何だかんだ言って、俺もその辺の事何も知らねぇや!?
そして、そんなことを考えていたからか、それとも事前に何も言っていなかった事への当て付けかは定かではないが、この場でその手の事柄に一番詳しいであろう魔王に、呆れた様なため息を一つ突かれてしまったのであった。
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あの後、俺に対して呆れた様な視線を送ってきた魔王によって出された指示によって人が送り出されると、それから暫くしてから、俺達が引き続き使っていた部屋の中へと、初見では何に使うのか今一良く分からないモノが運び込まれて来た。
「陛下、お客様方、アシュタルト様、皆様のご所望のモノをお持ち致しました」
そう言いながら、魔王→俺達→アストさんの順番で軽く頭を下げながら、魔王へと手に持っていた運び込んだモノを恭しく渡しているのは、少し前に俺達を魔王の処へと案内してくれていた執事のじい様であった。
実はこの渋いじい様、本名を『フルカス』と言うらしいのだが、見た目の通りに魔王直属の執事であり、この魔王城ゲーティアに於ける執事統括でもあるだけでなく、それと同時に魔王に対する直接的な脅威(主に暗殺等)から護る事を事を主な任務とする最精鋭の者のみで構成されている『近衛隊』の隊長でもあるのだとか。
そして、魔王国でも最精鋭の部隊である『近衛隊』の隊長であるだけに、その戦闘力も非常に高く、いざ戦闘となった際に振るわれる剣と魔法の腕前は『凄絶』の一言に尽き、それらの絶対的な技量の前では如何なる敵であろうとも、その背後に護られている護衛対象には傷一つ付ける事は叶わない、と謳われる程であるのだとか。
そんな最終兵器的なじい様から、謎の道具(?)を受け取った魔王は、俺達が集まり固まっている方へと向き直ると、その謎物体を手に持ったままでこちらへと歩いて来る。
「さて、ではそなた達に選択可能なモノを列挙していっても良いのだが、それらの名前だけを聞いた処で、自らに適性が有るのかどうかすら判断も出来まい。なれば、まずは『コレ』にてある程度の本人の適性と、その方向性を探ってみるのが良かろうよ」
そう言って、俺達が集まっていた机に、その手に持っていたモノを置いてから、それを指差す魔王。
それは、パッと見た感じとしては、何やら薄めで平たく、広い面は30㎝四方位で狭い面は3~4㎝程度のサイズの箱の様なモノので、その平らで大きな上の面と接している下の方の面に、5~6㎝程の何に使うのか良く分からないスリットが入っている。
俺達の全員が全員(リンドヴルム含む)、何やら意味ありげにしている魔王に対して『何それ?』と言って意味合いの視線を向けて、その先の説明を促す。
……まぁ、もっとも、実際には『そんな溜めは良いからさっさと説明しろ!』と言った感じの視線によって、向けられていた視線の大半が占められていたのだけれども。
その無言の圧力に負けたのか、それとも元よりその予定だったのかは定かでは無いが、それでもその謎アイテムを指差したままに、それについての説明を俺達に向けて開始する。
「これは、個人の所持している『技術』や『能力』と言った、目に見える訳ではない個人の『技能』を可視化させる為の魔道具だ。これを使うことにより、自身が何を持っていて、何を持っていないのか?をある程度把握出来る様になるから、そなた達の様に、これからの事についての選択肢を、ある程度狭めたい者には丁度良いのではないか?
もっとも、これを今使ったとしても、『将来的に獲得するであろう技能』や魔道具等による『外的な要因で獲得されている技能』、そして、『この魔道具では解析しきれない技能』までは可視化させられる訳ではないから、これを使えば全てに置いて大丈夫、と言う訳ではないのだがな」
……フム?
つまりはアレか?
この手の小説やらゲームやらでホイホイ出てくる、いわゆる『ステータス』って奴の、技能部分限定版、みたいなモノなのかね?
確かに、そんな便利なモノがあれば、自分の今持っている『技能』によって、それぞれで向き・不向きを判断できるし、特定のモノを持っているのかどうかで、ある程度選択肢を削る事が出来るだから、今の俺達にとっては、天啓並みの福音となりうる可能性が有る。
……だが、それと同時に、最大限に警戒するべきモノでもある事は、まず間違いないであろう。
「……そいつを使う条件と、使った場合のデメリット、並びに『何処まで』可視化させられて、そうした後はどうすれば良いのか、等の説明をする予定は?」
多少、この期に及んで今更ながらに、魔王に対して威嚇するような口振りになってしまっているが、そこのところに関しては、出来れば見逃して貰いたい処ではある。
……まぁ、あの魔王の事だから、万が一にも無いとは思うが、アレを実際に使った場合、俺達に見えるのは極一部で、その他の重要な大部分は魔王達にしか分からない様になっていたり、そうでなかったとしても、俺達の情報を別の誰かが見れるようになっていたりだとか、最悪の場合、アレに触れた瞬間に、有るのかどうかすら定かじゃ無いが、『隷属』だとか、『洗脳』だとか、はたまた『魅了』だとかの効果が発揮され、何処かの誰かさん達に、本来俺達が召喚されたと思わしき目的の通りに使い潰される可能性も、『無い』とは言い切れないのだから、取り敢えずは聞くだけ聞いておきたい。
そんな俺の考えを知ってか知らずか……いや、魔王の事だろうから、多分知った上での行動なのだろうが、とにかく魔王が俺の発言を受けて俺へと近付いて来る。
「……いやいや、そんな大それた事が出来るのであれば、最初からやっておるからな?
余としても、そなた達が持っているであろう『この世界とは異なる世界の知識』や、そなた達異世界からの来訪者達は高確率で所持しており、それぞれ個人によって異なるとも言われておる『特殊技能』が、そなた達のモノは何なのか、どの様なモノなのかについては、中々に興味が尽きぬのだから、実際にそなたが言った様な事が出来るのであれば、とっくにやっておるからな?
まぁ、そなたであれば、頼むか正当な報酬を用意するかすれば、普通に見せてくれそうな気もしはするが、そこら辺の交渉は可能かね?」
「……まぁ、俺のだけで良ければ、見せても良いけど?報酬として、各種『技能』の説明と、その後の職業斡旋もコミコミでお願いしても良いよね?魔王サマ?」
まぁ、そりゃ疑うよね?と言った感じの、若干寂しさや諦念の色が混ざっていた魔王に対して、別に見せても良いけど報酬よろしくね?と返してやると、些か驚いた様な表情を浮かべながらも、力強く肯定の意を表して、報酬の支払いを確約してくれる魔王。
なれば、俺が先陣を切ってまず使って見せるとしますかね。
そう提案してから、多少使い方等の指導を受けるが、特に何か変わった事をする訳ではないみたいなので、取り敢えずやってみる事にする。
「……んで?この、一番大きな上の面の真ん中辺りに手を置けば良いんだったか?」
「正確には、置いた上で魔力を少量流す必要が有るが、それは大丈夫なのだろうな?」
「了解っと」
言われた通りにやってみると、手を置いていた箱状の謎アイテムが淡く光り、その光が収まった後に気の抜ける様な軽い『ポン』と言った感じの音が鳴ると、俺から見て手前側の面に入っていたスリットから、何かカードの様なモノが飛び出して来た。
「そのカードに、そなたの『今』持っている『技能』が書かれておる。まぁ、あくまでも、その魔道具で解析出来たモノに限られるが、大抵の一般的な『技能』については解析出来るハズであるし、そうでない特殊なモノでも、余程のモノでなければ解析出来ておるハズだぞ?
それと、そなた達の様に、この世界の文字が読めない者達にも安心な、解析した者に最も馴染みの深い文字で表示される様になっておるハズだから、そなた達でも安心して読める様になっておるハズだ」
フム?なら、安心……かな?
まぁ、見ない事には始まらないから、取り敢えず見てみるとしますかね、どれどれ?
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小鳥遊 博正/17/♂
『技能』
工作(木工)・調理(簡易)・設営(野営)・調薬(上級)・解体(獣)・短剣術(小太刀)・体術(無手)・交渉(詐術)・算術・儀礼
『特殊技能』
武器創造・練気・身体能力強化(極)・飛鷹流古式槍術(皆伝) ・龍の因子(1/6)
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……取り敢えず見るだけは見てみたが、ぶっちゃけた話、良く分からん。
一応、事前に約束しておいた通りに魔王に見せてみるが、そもそもコレの文字が日本語になっていたので読めなかったらしく、逆に翻訳して寄越せ!と突っ返されてしまった。
だが、モノの試しに読み上げてみても、当の魔王ですら首を捻る様なモノだらけであったみたいである。
「……フーム、理解出来ぬ。普通、只の『技能』の欄に載るハズの『身体能力強化』が『特殊技能』の処に載っているだけでなく、普通は誰でも持っているハズの『魔法適性』と『魔力操作』が載っていないのも気になるな……。『練気』とやらが、『魔力操作』の代わりなのか?そして、それらよりももっと気になるのが、『特殊技能』の欄に有る『武器創造』と『龍の因子』であろうな……。両方共に聞いたことも有りはせぬし、この『龍の因子』とやらに付いているこの(1/6)とは、一体何の事なのであろうか……?」
……一応、心当たりは有ったりするので、現物を見せながら軽く説明しておいたりしてみる。
「フム、一応、謎は解けたと言えば解けたが、あまり外では使わぬ方が良いだろうな。特に『龍の因子』については分からぬ事の方が多い故に、あまり多用しない方が良かろう」
「まぁ、そっちについては、使い方すら知らないけどね?
それで?この一覧だと、何であれば適性が有りそうか判断できるかね?」
「うむ。そなたは『調薬(上級)』を所持しておるから、『薬師ギルド』に所属を申し込んだとしても、即座に採用されるであろうが、総合的に見れば、やはり『冒険者ギルド』に登録するのが、最も活躍し易いかも知れぬな」
……oh、やっぱり有ったんですね、この手のファンタジー定番の『ギルド』って。
しかも、この手のブツでお決まりの、『冒険者ギルド』まで有って、職業(的なモノ)にも、『冒険者』って有ったんですね。
……うん、やっぱり、選ぶのならば冒険者かな?
だって、俺だって男の子だもの、冒険したいじゃん?響きも何となく格好良いし。
取り敢えず、今回は主人公の分だけ。次回で全員分出る……予定です。
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