表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/251

36・取り敢えず、現状を把握します

ブックマークや評価してくださった方々に感謝ですm(__)m

魔王様……もとい魔王の野郎から、各人が婚約している云々と言っていた事の根拠を聞き出して見たのだが、どれもこれも『ソレってどうなの?』と突っ込みを入れざるを得ない様なモノばかりであった。


……確かに、アストさんに対しての誤解は、あの時のアレが、偶然にも『この世界での正式な婚約申し込み』であった為に発生したモノであり、この件に関して言えば全面的に俺に責任が有るのは確かだ。それに、その誤解から、アストさんとの関係を、他の面子に誤解された上で、あの結婚云々を目の当たりにした結果として暴走したのであろう事も、まぁ理解出来なくは無い。うん。


理解するだけならば、だけれども。


だが、だからと言って、あの時言っていた『婚約している』発言に対する、『何故婚約しているのか?』と言う魔王による調査に対しての回答が、揃いも揃って色物だらけと言うのは、さすがにどうなのか、と突っ込まざるを得ないだろう。


まだ『初めて肌を合わせた殿方と婚約し、添い遂げるのが家の仕来たりなので』とか『危険な相手から守ってもらった上に、素肌を見てしまった以上は婚約しなくてはいけない仕来たりが有った』だとかは、まぁ、理解出来なくは無い。出来なくは。

……もっとも、コレらにしたって予め説明の一つもして欲しかったし、そもそも誰とも肌なんて合わせた覚えは無いし、裸も見せた覚えも無いのだけれども?俺の気のせい?


だが、他の『命の危機を好みの年下に救われてキュンとしたから、それはもはや婚約していたと言って間違いない』だとか、『タカナシから貰った太くて固くて大きいモノが忘れられないから、結婚して責任とって貰うしかないので、現状では婚約状態』だとか、『互いの血肉が混ざりあっているのだから、これは既に婚約処か『既成事実』が有ると言っても間違いは無い!』だとかは、もうどうしたら良いのか理解出来ない位に訳がわからない。


しかも、それらの言い訳?でっち上げ?を解説していた魔王のニヤニヤとした笑い顔が、もう素晴らしくムカついたので、思わず拳骨を脳天にプレゼントしていたりもする。

まぁ、無意識的に攻撃するほどに苛立たしい笑顔だった事は、確実に保証出来るけれどもね。


ついでにもう2~3発魔王をボコしてから、他の面子と合流する。


魔王の案内で元居たと思われる部屋に到着し、扉を開くとまず真っ先に、心配そうな顔をしたアストさんが飛び込んで来たので優しく受け止ると、もう大丈夫なのか?と言ったニュアンスの質問を浴びせかけてくるが、それらにもう大丈夫だ、と答えつつも、コレだけは言っておかなくてはならないので、頭を下げつつアストさんへと言葉を掛ける。


「……すみません、アストさん。あの時、あんなに紛らわしい言葉と行動をしてしまって……。

正直に申し上げますと、現時点では自分に貴女との婚姻を結ぶ心積りは有りません。……ですが、貴女に対する好意は、変わらずに持っているつもりです。

……こんな謝罪と、安い頭を下げただけで許してもらえるとは思っていませんが、それでも、誠意だけは受け取って貰えませんか……?」


静寂に包まれる周囲の空気に、こうなれば、我等日本民族の最終奥義たる『DO・GE・ZA』を再度披露するしか無いか……!と、半ば自棄っぱちになりながらも覚悟を決めていた時、クスりと小さな笑い声が一つ頭上から降り注ぎ、下げていた俺の頭に、柔らかな感触が添えられる。


「……正直な話、魔王陛下からは、タカナシ殿からお話を聞きに行かれる前には既に


『もしかしたら、互いに思い違いが有るのかも知れぬぞ?』


と釘を刺されておりましたので、覚悟はしておりましたから、謝意を拒むつもりはございません。また、あの時のお言葉は、純粋に一人の『人』として、とても嬉しく思っております。……そのまま貰って頂ければ、もっと嬉しかったのですが、それはこの際言わないでおきましょう。

だから、そんな『安い』等と卑下せずに、その頭を上げては下さいませんか?

……それに、『今』は受けるつもりが無いのでしょうけど、『アレ自体を取り消して欲しい』と仰られないと言う事は、まだ『目』が有ると言う事だと思って今後(・・)も同行させていただきますね?タカナシ殿♪」


そのセリフを脳内で咀嚼し、理解し、衝撃を受けながらも頭を上げてみると、そこには、己が焦がれ、待ち望んで居たハズのモノを取り上げた相手であるハズの俺を、まるで愛しさが溢れて来る様な慈愛の視線で見詰めている女神様(アストさん)の姿が有った。


……ヤベェ……今すぐにでも、さっきの発言取り消して、このままこの(ひと)とゴールインして、最大限の幸せをプレゼントするのが最適解に思えて来たぞぅ……?


……もしかしなくても、俺がこの世界に呼び出されたのって、この(ひと)に出会う為だったんじゃないのか?うん、そうだ!そうに違いない!!(錯乱)


そんなことを考えながら、女神様(アストさん)と視線を絡み合わせていると、今回の騒ぎを更に拡大させた馬鹿者達が騒ぎ出した。



「あーーー!?顔を赤くしながら、師匠と愛しそうに見詰め合ってるーーー!!?

小鳥遊君!私達と師匠との扱いが違いすぎると思うのだけどーーー!!?」



「「「『そうだ(じゃ)、そうだ(じゃ)!!』」」」



「私達とも、師匠とのソレみたいな、甘酸っぱくて切ない空気を振り撒いたり、私達にも、師匠にしたみたいな情熱的な口説き文句と熱いキス(ヴェーゼ)をプレゼントすることを要求する!!」



「「「『ヴェーゼ!ヴェーゼ!!ヴェーゼ!!!ヴェーゼ!!!!』」」」








「………………あ″ぁ″ん!?」







ビクッ!!?×5



あまりの雰囲気を読まない騒がしさに、『温厚』な俺でもさすがに半ギレになって、少々……と言うにはちょっと多過ぎる量の殺気を放出し、騒音の元を半ば強制的に黙らせる事にした。


そして、殺気で強制的に静かにしてから、先程まで騒がしかった処に目を向けるとそこには、予想を覆す様な事象も無いままに、最初に声を上げていた乾と、ソレに合わせて騒いでいた先生、久地縄さん、阿谷さん、リンドヴルムが、半泣きになって壁際で一塊になりながら震えている様子であった。


「……ちょっ!今の何!?声だけで本当に殺されるかと思ったんだけど!!?」


「……今のは、もしかしなくても、殺気による『気当たり』でしょうか……?だとしたら、小鳥遊殿はその気になられれば、今の拙達でも瞬殺出来るだけの力量をお持ちと言う訳ですか……!」


「怖っ!めっちゃ怖っ!!何今の!?マジで死ぬかと思った!?てか、マジでチビるかと思ったぞ!!?…………アレ?……何か、冷たい……?」


「うぅー……。ぶわーって、一瞬で全身がぶわーってしたけど、結局なんだったのかな?今のは?……何だったのかは、良く分からないけど、今小鳥遊君の機嫌がすこぶる悪いってことは、言われなくても分かるかな!?」


『……あ、主殿……?こ、これは……そう!主殿の愛しい使い魔による、オチャメなイタズラに過ぎぬのじゃよ!主犯のそこな雌(乾を指差し)からの誘いに乗っかっただけの妾には、そこまでの罪は無かろうに!?じゃ、じゃから……じゃから、そうやって妾にだけ個別で殺気を追加してくるのは止めてーーー!!?』


……そう言えば、ここに来るまでの道中の空気が悪かった事の原因だとか、俺がさっき意識を吹っ飛ばす事になった原因だとかもこいつらなのだし、いい加減に我が儘を通して良い相手とタイミングって奴を、身体に教え込んでやるべきかなぁ……?

うん、やるべきだよねぇ……?


そう心に誓った俺は、両手の関節をパキポキと鳴らしながら馬鹿者達へと近付いて行き、命乞いの声や赦しを乞う叫びを全て無視した上で、なにも考えずに騒ぐとどうなるのかを、その身に刻んで覚え込んで貰ったのであった。



「「「「『お、お助けーーー!!?』」」」」



馬鹿者に掛ける慈悲は無い!!!





******





「……さて、では、そろそろ本題に入るとしようか?」


そう言いながら、手を叩いて皆の注目を集めたのは、この部屋に入って来た時よりも、明らかにボロボロにされている魔王バアル。


……何故にボロボロにされているのか?


それは、俺が追加でボコったからである。


その原因となった事が起きたのは、あの後、騒動のある種の原因であった女性陣に、それぞれ一発ずつ拳骨を落っことした上で正座させ、各人の瞳から光が消え去るまで説教してから、もう似たような騒動は起こしません、と言質を取った時であった。


そのときは、既にもうしないとの言質も押さえてあったので、もうそろそろ反省しただろう、と判断し解放してやろうかな?と考えていたタイミングで、それまで黙りを決め込んでいた乾が突然に


『……今回の事は、確かにやり過ぎだったと思っているし、私達が悪かったとも思ってる。だけど、それでも私達は小鳥遊君の事はまだ諦めていないし、これからもアプローチは続けさせてもらうからね?

……何時か、必ず私達の誰かのモノになって貰うから、その覚悟だけはしておいてね?』


とか言い出したのである。


そして、その乾の言葉には、他の面子も了承済み……と言うか、元よりそっちの方向で結託しているらしく、全員が納得した上で、戦意や覇気とも取れる様なモノを瞳に浮かべているのであった。


内心『え~!?』とか思いながら、アストさんの方を見てみると、それまでと変わらぬ微笑みを浮かべながら乾達の方を見ていたので、おそらくではあるがアストさんもソレに同意しているか、もしくはソレに近い状態に有るのだろうと思われる。


……正直、こんな男としては最低に近い様な対応を女性に対して行っている様な奴(自覚は当然有る)に、何故にこんなにも好意を寄せてくるのかは不明だが、誰一人として諦めるつもりが無いと言っている以上は、何時か覚悟を決めねばならないのだろうなぁ……、なんて思っていた時であった。


それまでの俺達のやり取りを、さも不思議なモノを見るような目で見ていた魔王が唐突に口を開き、こんなことを言い出したのである。




『……先程から、そなた達は、タカナシ殿と結ばれる相手が一人だけだと仮定して話を進めているみたいだが、別段このメレゲトンや周辺国では『伴侶は一人』と法で決まっておる訳ではないのだが?むしろ、養えるならば、との条件が付きはするものの、複数名との婚姻を推奨すらしていたはずなのだが?』




……この爆弾発言により、収まり掛けていた女性陣の暴走が再燃したり、その様子を見て戸手も面白そうにしていた魔王が


『……で?本当の処の『本命』は何人いて、その内の何人とヤッたんだ?お?いい加減ゲロっちまえよぅ?』


とか、他の面子にも聞こえそうで聞こえない様な、絶妙な声量での卑猥な問い掛けを、俺の肩に手を回した上でしてきたのだ。


そして、それにイラッと来た俺の手で再度魔王がしばき倒され、魔王の発言によって再び暴走しかけた女性陣にも、俺が同じところに再度拳骨を落っことす事で沈静化を図った結果、先程のボロボロの状態の魔王の発言へと至る訳である。


そして、そのボロボロの状態の魔王の発言で、それまで頭の天辺に多段アイスクリームの如きたん瘤を拵えながらも、何処か嬉しそうにしていた女性陣も、それまでだらしなくしていた顔を引き締めて、ボロボロになったままの魔王からの次なる言葉を心待ちにする。……たん瘤を頭にこさえたままで。


そんな女性陣へと呆れと僅かに蔑みの色を混ぜた視線を送りつつ、片手で魔王の発言を促しながら、もう片手では軽くシャドーボクシング……のフリを行い、先回りして魔王のおふざけ発言に対する制裁が何になるのかを示しておいて、真面目にお話する事を軽く強要しておく。


「……心配せずとも、今回はきちんと真面目にやるよ。

さて、まずはそなた達の現状の再確認から行わせて頂こう。


既にアシュタルトより説明されて知っておるとは思うが、そなた達は『人族(ヒューマン)』が統治しており、『人族至上主義』なるものを国標として掲げておる『ヴァイツァーシュバイン王国』によってこの世界へと召喚されたと推測されておる。

これは、彼の国の動きや、そなた達がこの『ソフィア』へと召喚されたと観測されたのと時を同じくして、大規模な魔法の発動が彼の国でも観測されている事、それに、そなた達が召喚された島へと彼の国も人員を派遣していた事が確認されておる事から、まず間違いは有るまい。


そして、そなた達を召喚した理由とその方法だが、前者はおそらく……と言うよりも、ほとんど確定なのだが、軍事的に利用する為、と言った処であろう。今彼の国は、このメレゲトンを含めた幾つもの周辺国に対して、自国の国標である『人族至上主義』を押し付けて服従を迫って来ており、そのために複数の方面で開戦直前まで緊張感が高まっているのだが、その割りには戦力が心許ないらしく、積極的に傭兵やギルドの方へと働き掛けておるらしい。

そして、そなた達を軍事利用しようとしておった理由としては、そなた達の様に、他の世界から呼び出された者、或いは自ら渡ってきた者達は、過去に戦闘訓練を受けていない者でも、ただ他の世界の出身と言うそれだけで、高い戦闘能力を高確率で保持していると言う事が統計的に判明しておるのだよ。

故に、手っ取り早く、かつ確実に使い物になりそうな戦力として、そなた達を呼び出したのではないかと、余は考えておるのだが、まぁそこまで派手には外しておらぬだろうな。


それと、そなた達をこの『ソフィア』へと呼び出した手段であるが、大方何処ぞの魔法使いが試作した術式か、もしくは過去に使われたモノが伝わっておったのかのどちらかであろうが、あの時に観測された魔法規模から判断するに、そうそう連発して使える様なシロモノでは無いであろうから、しばらくは使用できないと推測されておる。

……そして、そなた達には朗報となる……のかは、少々心許ないが、そなた達を呼び出すのに使われた術式を解析出来れば、その逆、つまり、そなた達を元の世界へと送り返す事も可能にもなる……可能性が有る……かも?


まぁ、最後の送還については、このままの流れで彼の国との戦争まで発展するか、もしくは政治的な駆け引き等で入手するかのどちらかの方法でしか解決出来ぬだろうから、期待せずに待っておく方が良いだろうな。

ここまでで何か質問は?」


その一言で締め括られた魔王の長話だったが、俺達の中でそれをまともに聞いていたのは何人居ただろうか。




……帰れるかも知れない……。




その可能性に、俺達(・・)を除いた面子全員が沸き立ち、少しの間部屋のなかが騒然となる。


魔王は、説明の際に『可能性は低い』とも言っていたようだが、それでも帰還の可能性が今までの『0%(不可能)』から、『1%~(可能)』に変化したのだから、それも当然では有るのかもね。


もっとも、そうなるにしても、あれから続けられた魔王の説明によれば、どちらの手段を使ったとしても、入手には後一年は掛かるだろうし、その後に解析するのにも、下手をすれば年単位で時間が掛かるだろう、との見込みであるのだとか。


それを聞いた女性陣は、多少落ち込んでは居たが、それでも帰還できる可能性が出てきた事で、再度盛り上がりを見せ始める。


そんな女性陣を尻目に、俺は魔王と個人的に内緒話をしていたのだが、俺からの要求に渋々ながらも魔王が『諾』の意を表したので、先程まで魔王が皆へと説明をしていた所に立ち、手を一つ叩いて皆の注目を集めると、俺の考えを聞いてもらう為に口を開くのであった。





「皆、これからの俺達の『身の振り方』を考えたいんだが、良いかな?」





……さて、どんな反応が返ってくるかね?

……皆さん、そろっと、感想とかくれても、良いんですよ?


面白いかも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等頂けると大変ありがたいですm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[一言] レオ「聞かれないから言ってないけど、地球と此方の往き来は普通に出来るんだよねー」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ