236・情報の整理と作戦の立案をします
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「――――って感じになったから、尻まくって逃げて来たって訳だ」
「…………そうか。そなたも、災難だったな……」
「まぁ、災難だったと言えば災難だったけど、こうして魔王城から締め出されているお前さんよりは大分マシだろうよ」
乾達との再開から約一時間後、俺達は再び魔王の居るテントへと訪れていた。
何故にこうしているのかと言えば、話は割りと簡単かつ単純だ。
形勢が不利そうだったから、一旦トンズラかまして態勢を建て直しに来た。
ただそれだけな事である。
だが、考えてもみて欲しい。
相手の能力も戦術の組み立ても知っているから、今更どうなるものでも無いだろう、と思いながら行ってみたら、全然思ってたのと違う事をされてしまった上に、余裕ぶっこいて最初に手を抜いていたせいでヤバそうな展開になってしまったのだ。誰だって逃げる……もとい態勢を立て直す為に戦略的撤退を選択すると言うモノだろう。
何せ、あいつらに負けると何されるか分からないからな!主に俺が!より正確に言えば俺の『息子』が!!(注※予想外の敗戦により少々錯乱しております)
まぁ、でも、こうやって撤退出来た事だとか、実際に戦ってみて分かった事が幾つか在るし、それらを共有出来ていない仲間も居るのだから、一度は逃げたって別に良いよね?
最後に勝って立っていれば、そいつが『勝者』なんだから。
「取り敢えず、あいつらの要求は俺の身柄と、ハッキリそう言っていた訳では無いが一定の広さの領地だろうな。もっとも、領地と言うよりもデカイ屋敷でも用意してやればそれで納得しそうな気もするが」
「……まぁ、余にも国王としての尊厳が在る為にそのまま呑むのは有り得ぬが、もしその要求を呑んだ場合はどうなる?」
「……俺がその領地ないし屋敷で監禁され、性的に蹂躙される事になる。ほぼ間違いなく……」
「……お、おぅ……。そ、それは、大変だな……。よし、分かった。こちらでも、対策を考えておこう」
「おぅ、よろしく頼んだ。俺の貞操が賭けられているんだから、慎重に頼んだぞ?」
取り敢えず、魔王への報告を終わらせてから皆が待っている場所へと足を向ける。
そして、全員が揃っている事を確認してから、俺の所感として感じた事を皆へと向けて報告して行く。
「……取り敢えず、前置きとして言っておく。ほぼ戦力としてはこちらが上回っているが、無策に攻めても多分今回の二の舞になると思う」
「そこまで、でしたか?某の記憶では、乾殿達の実力は某達を多少上回る程度だったと思うのですが……?」
「……以前は、な。今は、条件さえ揃えれば、俺達とも互角に近い闘いが出来る様になった様だ……」
「あらぁ?それはぁ、全力の旦那様達と互角に闘えていた、って事ですかぁ?」
「そうなるかなぁ~?タツは『練気』まで使っていたのに阿谷さんに力負けする羽目になったみたいだし~、僕は僕で音澄さんに速度で負けちゃった面もあるからねぇ~。
多分『技能』の組み合わせとかのせいだと思うけど~、結果だけ見るなら僕らが負けてきたとも言えるから~、互角に、って言うのはちょっと語弊が在るかもねぇ~」
「……え?ご主人負けちゃったの!?最近、漸くではあるけど、ちゃんと『ミスリル級』に相応しいだけの実力を付けたボク達を、軽く一人で捻れるご主人達が!?マジで!?!?」
「そう、ですね……。タカ殿は、複数人相手になされても、普通に渡り合っておられましたが、私を含めて自身の得意分野にて競り勝たれた、と言う状況が最も的確で端的な表現ではないでしょうか?」
「……デモ、ソレってヤバくない?俄にハ信じられ無いンダケド、本当にソンナ事在ったの?本当に在ったノナラ、ソレって本当に勝てるの?少なくトモ、私には勝てる未来ガ予想出来ないンダケド?」
「そうじゃのぅ。確かに、結果だけ見るのであれば、妾達に勝ち目は無さそうではあるが、だからと言って勝てぬ訳でも無いみたいじゃぞ?現に、主殿らはまだ本気は出しておらぬ様に見えたし、戦場になっておったのは狭苦しい上に周囲へと気を配らねばならぬ室内であったからのぅ。
それに、あやつらのアレはどちらかと言うと実力と言うよりはドーピングの類いであろう?もしくは、時間限定での大幅な強化、と言った処かのぅ?」
『ウゥ、グルルルルルル?』
「その推測が合っている根拠、かい?そうだねぇ。吾には、彼女らに対する情報が圧倒的に不足している。それは認めよう。
でも、リンドヴルムの解析力は信頼出来るし、言葉にはしていないけど彼も同じ見解の様だ。吾としても、見ていた限りだと、突然戦闘力が跳ね上がった様に見えてはいたから、多分間違ってはいないだろうね。
これでも、それなりに永く生きているからね。似た様なケースの情報は、実体験として経験した時に得ているし、その情報も同じ様な結論を導き出しているから間違いは無いだろうねぇ」
「……?…………!……??」
「だからって、勝てるとは限らない?
まぁ、そこは実際に当たってみて分かったんだけど、多分あいつら戦闘力自体は上がってるけど、戦闘経験って意味合いでは殆ど成長してないと思う。だから、やり方さえ間違えなければどうにかなるんじゃないのか?」
「「まぁ、そうなるんじゃないのか(な~)?」」
「「「「『「…………???」』」」」」
皆へと一通りの説明を終えた後に放たれた俺の発言と、ソレに同意するタツとレオの二人の姿に、部屋の外にて待機していて直接戦闘には参加していなかった面子の皆が不思議そうな顔をしながら首を傾げる。
口には出していないが、アストさんは何となく解っている様な感じで、リンドヴルムとアンフィスバエナさんの龍二人は、どちらかと言うと解っていない方になりそうな雰囲気だ。表情だけはさも『解ってますよ?』と言いたげにしているから、ここで俺の代わりに答えさせてやるのも面白そうだが、そうすると話が進まないから我慢して俺が続けることにする。
「あいつらとやり合って分かったんだけど、どうにもあいつらまだ『処女』から卒業してないっぽいんだよね。だから、一々行動に迷いが生まれ、俺達みたいに即座の判断からの迅速な行動が出来ないでいる。
もしかしたら、わざとやっているだけかも知れないから油断は出来ないけど、仕掛け方とタイミングさえミスしなければどうにかなるんじゃないのかな?」
「……ちなみに、今タカが言っていた『処女』とは、性経験が在るかどうか、じゃないからな……?」
「今言っているのは~、殺人経験が在るかどうかについてだね~。それが在るか無いかで~、いざと言う時に思いきった行動や選択が出来るかどうかが変わるから~、見ていれば割りと判断は付くよ~?
……でも、あの師匠達が手解きしていて、そこら辺を経験させてないなんて有り得るのかね……?」
タツとレオの追加説明により、首を傾げていたり赤面していたりした面子の表情にも、理解の色が広がって行く。
「……しかし、だからと言ってそこまで変わるものでしょうか?事実、私達はこうして一度は撤退を選択する羽目になっている訳ですし……」
「でも、ほら。そうして撤退してきた俺達だけど、誰も大怪我する事も無く、無事にこうして撤退出来ているでしょう?ソレって、割りと奇跡に近いとは思わない?」
「……!それは、確かに変ですね……」
「そう、通常なら、一番犠牲と被害が出るハズの撤退戦をやらかしたのに、誰も犠牲になってない。逆に言えば、最も戦果を挙げられる追撃戦を展開しておきながら、こちらに被害を出せないでいた、とも言える訳だ。ソレってつまり、机上の戦術や実際の戦闘はこなせても、実際に戦術規模での判断を下す事に慣れてない、って事なんじゃないの?
だから、初動でも思いきった駒の動かし方が出来ずに俺達を抑えきる事が出来ず、その後に来た絶好の機会にも動く事が出来なかった為に、結果的に俺達を全員見逃す羽目になった、って言うのが俺の予想なんだけど、どうだろう?そこまで大きく外してはいないと思うんだけど?」
「……まぁ、大方そんな処だろうさ……」
「こればっかりは~、実際に戦場に出て自分で闘ったりだとか~、誰かに指示を出して動かした体験がモノを言うから~、流石に慣れてなくても仕方無いとは思うけど~、やっぱり中途半端だよね~。もっとも~、そのお陰で付け入る隙が沢山在るみたいだから良いんだけどさぁ~」
「って訳で、俺としては皆が不足無く展開出来て、それでいて戦闘に支障の出ない様な場所に誘い出せれば、後は実力行使でどうにでもなると思っているんだけど、皆の認識もソレで大丈夫かね?
なら、あいつらをどうやって俺達にとって都合の良い場所まで誘き寄せるか、についてなんだが――――」
その後、暫く侃々諤々の議論を繰り広げた俺達なのだが、タツとレオによって提案された『とある作戦』が最も効率的かつ効果的なのでは?との意見が、俺を含めた若干名の反対を除いた圧倒的多数の賛成票によって可決・実行される事となってしまった。
「……いや、やれと言うならやるし、いざと言う時は助けてくれるのだろうけど、本当に頼むぞ?でないと大変な事になるんだからな?主に俺が」
「……大丈夫だ、問題無い……」
「大丈夫大丈夫~。いざヤバくなったら飛び込んででも助けるから~、安心して毒餌付きの釣り針になって頂戴な~♪」
「いや、マジで頼むからな!?冗談抜きに、ガチで!!?」
そして、その一見アホの極みにしか見えず、それでいてあいつらの事をある程度理解している俺達からしてみれば、一定の確率での成功が約束されていると言っても過言では無い作戦は魔王へと俺の口から伝達され、相当悩んで悩んで悩みまくった挙げ句に他に取れる作戦が無いから、との理由から魔王が涙を流して謝って来る中採用され、結局実行する羽目になるのであった。
……神様。存在自体信じちゃいませんが、どうか無事に成功します様に……!!いや、マジでお願いしますよ!?
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