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209・事情を説明してみます

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 


「それで?何でまた、そんなに愛らしい姿になっているんだい?我が同胞にして盟友たる『黒龍女帝リンドヴルム』よ。それと、そこの彼から君と似た様な気配が感じられる理由についても、キッチリ教えて欲しいんだけど?」


『それは、当然構わぬよ。むしろ、ソレを語らずして妾達の願い事を告げるのは不可能故に、元よりそのつもりじゃったから丁度良かろうのぅ。あと、妾の主殿に手出しは無用故、努忘れるで無いぞ?『土砕龍妃アンフィスバエナ』よ。妾も、友にして同胞たるそなたを喪いたくは無いのでのぅ』


「クハハ!君がそこまで言うとなると、本当に興味が湧いて来たよ!ここだと少々拓け過ぎていて落ち着かないだろうから、あちらに行こうか。一応、拠点として使える様に整えてあるから、ね」



 そう笑顔で話し合いながら、俺達に背を向けてさっさと移動を始めてしまった二人(二頭?)の背中を、半ば呆然としながら眺めていた俺達だったが、リンドヴルムからの急かす声にて正気を取り戻し、少々小さくなりつつあったアンフィスバエナさん(仮定)の背中を目指して皆で移動を開始する。


 漏れ聞こえて来る会話の内容から察するに、恐らくは既にここに来るに至った経緯と、リンドヴルム本人も言っていた『囚われていた期間』についてのアレコレを話している処だろう。


 幸いにして、先程のやり取りから察するに、彼女とリンドヴルムは親しい間柄だったのだろう。

 そのリンドヴルムの連れている者達だから、と言う事で、取り敢えずは敵意の類いを向けられてはいない為に俺達はまだ無事でこうして立っていられるが、恐らくその気になれば一瞬で俺達は全滅させられる事となる。


 もしかすると、俺自身が興味を持たれた様な雰囲気だったのでそうはならないかも知れないが、『そうなるかも知れない』と言う状況に在る以上はやはり警戒するべきだろう。

 そうなると思っていなかった、と言う理由にて全滅してしまっては、笑い話にもなりはしないのだから。取り越し苦労万歳である。

『結局何も無かった』で済むのなら、それに越した事は無いのだから。



 そんな思いと共に、同じ様な認識を持ち合わせているタツやレオと一緒に周囲へと警戒しながら進んで行くと、特に何をされる訳でも無いままに、それまでの広場とは別の目的で拓かれたのだろう事がありありと解る場所へと到着した。

 ……まぁ、早い話がキャンプ場である。


 石組みの竈やタープ式の天幕。

 就寝用と思われるテントに、何処からか水の牽かれた溜め池と飲料用と思われる浄水槽。

 少し離れた場所に建てられた簡易的な小屋は、恐らくはトイレの類いなのだろう。


 丁寧に払われた下草と言い、適度に枝を払われつつも覆いになる様に整えられた枝葉と言い、何処ぞのキャンプ場か、もしくは定期的にキャラバンが利用する野営地かと錯覚しそうになってしまう。

 もっとも、ここは『未開領域』の奥深くである為に、そんな場所が自然と人の行き来で出来上がる訳が無い。


 恐らく……と言うか、ほぼ確定で目の前でリンドヴルムと笑顔で言葉を交わしながら、竈を火掻き棒にてかき混ぜて火種を取り出しているアンフィスバエナさん(仮定)が拵えたモノで間違いはあるまい。そうじゃなかったらむしろ驚く自信が在る。


 まぁ、もっとも?帝龍なんて言う、話半分に聞いておくだけでもトンデモ生物認定は免れないだろう存在が、普通の人間が必要とする様な施設や道具の類いを必要とするのか?って事にはなるのだけどね?

 普通にその辺でごろ寝したり、食材の類いも生のまま齧っているイメージが在るだけに、ちょっと想像しにくいと言わざるを得ないのが正直な心情だ。

 更に言えば、あいつらって食事の必要な存在なのか?生物であるかどうかすら怪しいって言うのにか?



「……いやいや、流石の吾達も、生きている以上は食わねばならないからね?確かに、その気になれば年単位で食わなくても生きてはいられるが、それでも空腹が気にならない訳ではないよ?君達だって、一日二日程度なら飲まず食わずでいられても、乾きも餓えも感じるでしょう?それと一緒だよ。その他の設備に関しても、在った方が快適なんだから当然使うよ?その方が便利だからね」


『それに、散々主殿達が食事をしておる時に、横で妾も食事しておったのを見ておるじゃろうに。流石に『帝龍』だ何だと言われておっても、生きておる以上は必須じゃぞ?』


「まぁ、そう言う事さ。と言う訳ではい、どうぞ」



 またしても、俺の阿呆極まる思考を読み取ったのか、若干呆れの含まれた声色にて反論してから、何かしらを差し出してきたアンフィスバエナさん。

 反射的に受け取ってから確認すると、それはマグカップに入れられた、まだ湯気の立っているお茶だった。


 手元に持った携帯用ポットから、皆に差し出したカップに対して淹れたてのお茶を手ずから振る舞ったアンフィスバエナさんは、少し前に興したと思われる竈の焚き火にポットを戻すと、一番最初に浮かべていた柔らかに見える微笑みを浮かべながら、俺達全員に向かって口を開いた。



「……さて、皆の手元に飲み物も回った事だし、詳しく教えてはくれないかな?一応、リンドヴルムの方から概要は聞いたけど、やっぱりこう言うケースの場合は、事の当事者達からも聞き取りをしないと全貌が見えないからね。と言う訳で、一つ宜しく」



 俺達は互いに顔を見合わせてから、その言葉に従う形でこれまでの経緯を説明して行くのであった。





 ******






「――――って経緯があって、現在こんな感じに収まっています」


「……一応、俺達二人掛かりなら、止めるだけなら止められる。止める、が……」


「流石に~、毎度毎回そうなってこっちの手を止められる事になると~、色々と面倒な事になるから~、こうして対処する為にここまで来た、って訳です~」


「戦闘の度にそうなっては面倒に過ぎますし、何より毎回毎回戦力を回している余裕が在るのかすら不明です。なら、取れる選択肢としては、そうならない様にするか、もしくはそもそも前線に出さないか、位になるでしょう。

 ……そうなる位なら、俺はこのまま人間を辞めたとしても、仲間達と共に戦える様になりたいんです。なので、どうか協力しては頂けないでしょうか……?」



「……ふーん、成る程、ねぇ……」



 軽くリンドヴルムが説明はしているのは聞いていたので、それに詳細を加えるとどうじに当事者たる俺達の心情等も加味して、俺達がこの世界に召喚されてから今に至るまでを説明して行く。

 途中途中で質問が入ったり、詳しい説明を求められる場面が在りはしたものの、それでも特に大きな問題や引っ掛かりは無かったらしく、比較的順調に説明が進んで今に至っている、と言う訳だ。


 少々下手に出過ぎている様な気がしないでもないが、あくまでもこちらは協力をお願いする側だ。強気になんて出られるハズが無い。

 おまけに、こうして相対して話を聞いてくれている以上多分『無い』とは思うが、相手は見た目は俺達と同じく人間だがその正体は『帝龍』なんて言う超生物だ。いつ気が変わって、もしくは気紛れに俺達を皆殺しにすると決定しても可笑しくは無い。

 それだけの力量差が、彼女と俺達には存在している、と言う事だ。


 まぁ、さっきも言ったけど、こっちがお願いする側なんだから、高圧的になんて出られる訳が無いよね?って言うのが正直な処。

 そんな事して、気分を害して断られたら、わざわざ苦労してここまで来た意味がなくなってしまうんだから、そんな事する必要在る?無いでしょ?


 そんな事をとりとめも無く考えながら、腕を組み目を閉じて何やら思考している体を取りつつ何度も頷いているアンフィスバエナさんを眺めていたのだが、どうやら何かしらの答えが出たらしく、一つ大きく頷いてから目を開いてこちらへと視線を向けて来る。



「……うん、事情は大体分かったよ。リンドヴルムと事を構えるに至ったのは言わば事故みたいなモノだし、そもそもそんな所に捕らえられていたリンドヴルムが悪い。だから、例え彼女を倒した相手だから、と言っても、吾が君達を害する事はしないと誓おう。結果的に、とは言え、こうして彼女を解放してもくれているしね」


『……いや、妾とて、好き好んであんな所に捕らえられていた訳では無いのじゃが……?』


「そこはほら、帝龍としての意地だとか根性だとかで、無理矢理にでも脱出出来なかった君が悪い。吾達帝龍が『帝龍』と呼ばれ畏怖される所以を示さないで、そんな甘ったれた事を言う方が悪いと思わない?」


『…………ぐ、ぐむぅ…………』


「まぁ、流石に同情はするがね?だからと言って、そんな所に捕らえられる君の方が悪いと思うよ?そこに関しては、幾ら君が朋友とは言え弁護出来かねるからね?」


『………………ぎゃふん………………』



 横から余計な口を出したリンドヴルムが、珍しく言いくるめられて撃沈し、地面に項垂れて沈み込んでいる。

 しかし、それに誰一人として構うこと無く、再度アンフィスバエナさんへと視線が集中し、彼女も中断させられた会話を再開させる。



「…………さて、話を再開させようか。さっきも言った通りに、吾としては、別段君達を害したり、ここから排除するつもりは『今の処』は無いよ。リンドヴルムを討ったからと言う理由では、少なくとも、ね。

 それに、吾の朋友の眷属であり主人でも在る君達が困っているのなら、その原因が彼女である以上、手を貸すのは吝かでもない。朋友の尻拭い位なら、まぁ良いか、と思えるからね」


「……それは、本当ですか……!?」


「あぁ、もちろん。本当だとも。吾達帝龍は、別段嘘を吐いてまで、自身に優位な状況を作らなきゃならない程か弱い存在じゃないからね。嘘を吐かなきゃならない理由が無いさ。

 …………ただ…………」


「……ただ……?」



 協力を快諾してくれたのは大変喜ばしいのだが、最後だけは煮え切らない様子にて言葉を濁されてしまう。


 ……もしや、何か協力にたいして消極的にならざるを得ない理由が在ったり、そもそもあまり乗り気では無いって事なのだろうか……?

 そうなのだとしたら、わざわざ話を聞いて貰ったばかりではあるけど、あまり迷惑も掛けられないのだから、アンフィスバエナさんに協力して貰うのは諦めて、他の帝龍の人(?)達が来るのを待つしか無い、か……?


 なんて事を考えていたその時だった。

 それまで言い澱んでいた彼女が、唐突にその理由を俺達へと向かって言い放って来たのは。




「……ただ、ここまで面白い状況になっている彼を、特に何も調べる事もしないで変異させるのはつまらないだろう?せめて、何で彼だけこんな状態に陥っているのか位は調べるべきじゃないかな?少なくとも、吾は何も調べずに実行するのは反対だ。それだと、面白く無い(・・・・・)からね。

 まぁ、他の連中にお伺いを立てる前に変異させて新しい帝龍を完全に誕生させると、後で煩い事になりそう、って言う懸念は有るけど、そっちは大した事じゃないからどうでも良いだろう?」




 その物言いに、思わず、と言った感じで頭を抱え



『……そうじゃった。こやつは、こう言うやつなのじゃった……』



 と言う呟きを溢すリンドヴルムを尻目に、俺に対して好奇心を漲らせて爛々と瞳を輝かせて(物理的に輝いて見えるのは気のせいだろうか……?)いる彼女を目にした俺は、そこはかと無い不安感に襲われるのであった。

 ……と言うか、どちらかと言うと、前半よりも後半の方の懸念の方が大事なのでは?俺の気のせいじゃないよね!?

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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