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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第七章・獣王祭編

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199・第一試合を終えての報告と接触

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 

 見舞いを済ませて救護室から退出すると、会場の方から試合終了のアナウンスと共に、何処か盛り上がりに欠ける様な、聞いている限りでは何だか微妙そうな歓声が耳に届く。


 一体何が起こったのか?との疑問と共に、気配を限界まで薄くしてから会場の方へと向かって行く。


 途中で、観戦帰りの観客と思わしき人波に遭遇した為に、一旦脇道に逸れて人混みを回避しておく。

 レオならば、この位の集団に対しても、真っ正面から歩み寄って誰一人にも気取られずにすり抜ける、なんて所業も可能だが、流石に俺やタツではそこまでは出来ない為、不必要な接触をして騒がれては面倒なので取り敢えず隠れておく。


 一応、狙い通りのタイミングにて正体を明かしたとは言え、流石に今の段階で群がられるのは遠慮したいからね。

 ……まぁ?群がって来られた際に?片っ端からモフっても良いって言うなら話は別だけど?一人残らず蕩けきったアへ顔タレ獣人になっても良いって言うなら、幾らでもどうぞ?むしろウェルカム??(←錯乱中)


 そうやって人波を回避し、一人待避しながら、時折近くの通路で立ち止まり、鼻をヒクヒクさせながら周囲をキョロキョロ見回す何だか見覚えの在る様な人達(多分軍属の人達か、もしくは冒険者)から隠れていると、俺と同じ様に気配を潜ませながら移動している存在が近付いて来る事が感じられた。


 思わず身構えるが、その気配が通路を自然な動きで曲がり、誰にも気付かれる事無く俺の居るポイントに向かって来ている事から緊張を解き、思わず胸を撫で下ろす。


 すると、それとほぼ同時に、俺にとっては至極見慣れたやや低めの身長と、常時口元に浮かべられている笑みが特徴的であり、恐らくは俺と同様に観客達から探されているであろう人物が、俺の目の前へとその姿を現す。



「やっほぉ~。中々戻って来なかったから~、僕が代表として迎えに来たよ~。それで~?タカはちゃんと目的通りに『お見舞い』出来たのかなぁ~?」


「あぁ、一応な。『回復薬(ポーション)』は渡して来たし、事情の方も聞き出せた。大分長くなるし、あまり聞いてて面白い話でも無いから、後でまとめての方が良いだろうよ。

 レオの方も、俺の迎え以外に何か用事でも在ったか?」


「いや~?特には無いよ~?わざと(・・・)追跡させてる位で~、他は特に用事って言う程の事は無いかなぁ~?」


「なら、他の皆と合流で良かろう。『不粋な客』が来訪するよりも先に、情報の共有だけでも済ませておきたいからな」


「はいは~い、了解~。じゃあ~、行こっか~。皆はこっちで待ってるよ~」



 そうして俺は、レオの先導に従って通路を通り抜け、会場の一室を借り受けてそこで待機していた皆と合流し、一般人やある程度以下の腕前の冒険者達では気付けない程度に気配を消しながら、拠点として確保してある建物へと向かって行くのであった。


 ……一丁前に気配を消す真似事をしつつ、俺達を追跡している連中に気付かない『フリ』をしながら、だったが。





 ******





「ーーーって事だったらしい。だから、って訳じゃないが、出来るだけ協力してやりたいと俺個人としては考えてているんだけど、皆はどうする?」



 ラプスから聞き出した事情をかいつまんで説明した俺は、皆の顔をグルリと見回す。

 一応問い掛ける形で確認をとったが、彼ら彼女らの顔を見る限りであればこの場に居る全員が腹に据えかねているのだろう事が、容易に見てとれていた。



「……まぁ、聞くまでも無かったな。じゃあ、取り敢えずは全面的に協力するって方針でよいな?一応、例の黒ローブ共の件も協力を仰がれてはいるが、どうせもうすぐ(・・・・)進展する(・・・・)から、まだ放って置いても良いだろう。

 ところで、話は変わるが、お前さんらは決勝どうだった?ちゃんと勝てたか?」



 取り敢えずの結論を出した俺は、俺と同じく決勝へと駒を進めていた三人へと視線を向ける。


 タツとレオは、俺と同じく縛りプレイの様な状態にて決勝まで進んでおり、直前の取り決めではあの決勝第一試合から正体を明かす+相手を殺さない程度の『全力』で挑む、と言う事になっていたのだが、生憎と俺は彼らの試合の際には救護室にて彼女の話を聞いていたので、試合を直接見ていた訳ではない。

 なので、こうして結果がどうなったのか、を問い掛けている、と言う訳なのだ。


 もちろん、最初は確りと観戦するつもりだったのだが、彼女の話が思った以上に長く重いモノであり俺が消化するのに時間が掛かってしまった事と、思った以上に他の試合が早く終わってしまったので、結果的に見逃してしまったと言う訳だ。


 そんな俺からの問い掛けに、凡その事情を予想してか苦笑いを浮かべているタツとレオの二人と、何処か不満そうな表情を浮かべるネフリアさん。


 それだけで、何となく結果の予想は付いたのだが、一応確認の為に三人へと促すと、各自で別々の反応を示しながら口を開いた。



「じゃあ~、一人だけ離れてた僕から行こうかなぁ~?僕は~、当然勝ったよ~?流石は十二獣将ってだけはあって~、それなりに手強かったかなぁ~。まぁでも~、既に本選で一人倒していたし~、その時は縛り有りでやり合って勝てた位だから多分どうにかなるだろうとは思っていたけど~、思いの外『本気』を出しちゃうと殺さない様に立ち回るのが面倒だった、って言うのか正直な話だったかなぁ~?」


「……なら、次は俺か。取り敢えず、勝ちはしたぞ。実際、次にお前と闘うのは、俺になっている。ただ、俺の勝ち方は彼女を含めた皆からは不評らしく、お前の時の様な歓声は挙がらなかったが、な……」


「……イヤイヤ、流石にあのレベルの接戦と、開幕ワタシがハナッタ糸ヲ掴んで無理矢理手繰り寄せ、そのまま結界の外ニポイ捨てしたのとジャ盛り上がりニ差が出るノハ当然だと思うケド?

 確かニ、ワタシ相手だと手数ヲ稼がせたくないノハ分かるケド、流石にアレは無いンジャナイ?アッサリ終わり過ぎて、放送してイタ人も何が起きたノカ解ってナカッタみたいダケド?」


「……いや、しかしだな……」


「流石に~、その辺は弁えておかないと不味かったんじゃないの~?あくまでも~、お祭りとしての側面が強いんだから~、誰も何が起きたのか理解出来ない速攻戦なんてしちゃったら~、それはブーイングの一つや二つはされて当然なんじゃないの~?」


「……まぁ、タツの性格考えれば、予想出来なかったオチじゃあ無いが、幾ら手の内の解っている身内故の速攻戦とは言え流石にそれはどうよ?」


「……ぐっ……!?」


「……ワタシだって、もう少しクライはやり合うツモリかと思ってイタのに、いきなり振り回されるンダモノ。ビックリしちゃったヨ」


「……それは、大変申し訳無く……」



 俺の予想通りの報告ではあったものの、やはりと言うかなんと言うか、タツの勝ち方は戦闘者としては至極真っ当ではあったのだが、それでもエンターテイメントである『祭り』としては些か問題有りな戦いを見せてしまった事もあり、その点を俺を含めた決勝出場者達から弄り回されてしまう。

 その光景を、タツの恋人であるサーフェスさんは何処か羨ましそうに、他の面子は微笑ましそうな表情にて見守っている。



 ……が、そんな和やかにて穏やかな団欒の状態に在ったとしても、俺達の誰一人としてこの部屋へと侵入を試みようとしている存在の気配を感じ取れていない者は居らず、同時に即座に戦闘へと入れない様な者もまた存在していなかった。



 そうと気付いていないのか、天井裏から俺の背後に位置する場所へと降り立った侵入者は、音も立てずに着地するとほぼタイムラグを発生させずに短剣を引き抜き、俺の首もとへと見せ付ける様にして刃を添えて来る。



「……動くな。この者の命が惜しければ………………は?……ガッ!!?」



 俺を人質に取って俺達に対して何か命令したかったのだろう、喜悦の滲んだ声色にてそう告げようとしていた侵入者だったが、その言葉は途中から様々な要素にて遮られる事となる。


 まず、俺の首もとへと刃が添えられたと言うにも関わらず、従魔達ですら俺に対して心配したりする素振りを見せていなかった事。

 誰一人として、突然の侵入者に対して驚愕の表情や感情を抱いていなかった事。


 それらについて訝しむ暇もなく、俺が気配も無く左手にて首もとへと添えられていた刃を無造作に掴み、そのまま握り潰してしまった事。

 それとほぼ同時に、刃を握り潰した左手にて侵入者の腕を掴むと、背負い投げの要領にて投げ飛ばし、部屋の中央付近に据え付けてあったテーブルへと受け身を取る事も許しさずに叩き付けてしまった事。


 それらの要素が重なった事により、碌に目的を果たす事も出来ずに人質にしようとしていた俺の手によって行動不能へと陥らされる侵入者。

 それと同時に、まだ天井裏等からこちらを窺い、隙を突いて同じ様に人質を確保しようとしていたのであろう他の侵入者達も、気配にて潜んでいた位置を割り出されて特に何をさせても貰えないままに表へと引き摺り出されて無力化されてしまう。


 一応、一通り無力化し終え、後は扉の向こう側にいる首謀者と思わしき連中だけかしらん?と思っていると、何故か勿体振った様な感じで扉が勝手に開かれる。

 そして、まるで自身こそがこの部屋の主であり、自らの口から出た言葉こそが法となって絶対順守されるのは当然の法則である、とでも言いたげな雰囲気を纏った中年の『獣人族(ベスタ)』と、それに付き従う様にして何処かで見た覚えのある黒いローブを纏った連中が六人程部屋の中へと踏み入って来た。


 そして、部屋の中の状態(侵入者一同俺達によって拘束なぅ)が目に入っていないのか、それとも最初から見るつもりが無かったのかは定かではないが、そのまま部屋に備えられていたソファーへと真っ直ぐ歩み寄ると、大変偉そうにドカリと腰掛け、まるで自らこそがこの部屋の主である、とでも言いたげに脚を組んで俺達を睥睨(へいげい)するかの様に視線を向けて来る。


 が、やはり状況が良く理解出来ていないのか、如何にも『こちらから命令してやるから死にたくなければ素直に頷く事だ』とでも言い出しそうな表情にて、俺達全員をグルリと見回す。

 他の黒ローブ共は、流石に回りが見えていない事は無いらしく、戸惑った様な、困惑した様な空気を発しながら、雰囲気的には恐らくそのローブの奥にて顔を引き吊らせているのだろう事が感じられた。



 ……と、なると、この目の前の推定『大人物』(笑)は、こうなる事を予め予期していたのか。それとも、まだ俺達の気付いていない札が場に伏せられているのか……。

 もしくは、本当に現状が理解出来ていない阿呆なのか……。



 思わず、俺達の間にも緊張が走り、各自が手にする得物を握り込む音が微かに響く。

 そんな最中、ここまで勿体振った様にしてニヤニヤとした笑みのみを浮かべていた中年の『獣人族(ベスタ)』が、漸くその重い口を開いた。




「……クククッ、さて、これで私の力は理解して貰えたかと思うが、まだ愚かにも逆らうつもりかね?もし万が一、そう言う愚かな事を口にするのであれば、誠に残念だがウォーラビット(・・・・・・・)達の様に(・・・・)君達の目の前で彼女らを凌辱しながら、同じ事を聞かなくてはならなくなるのだが?

 もっとも、君達程の実力が在れば、私に逆らうのがどれだけ愚かしいのかは理解出来ているだろう?なら、私からの提案に従いたまえ。そうすれば、近々私がこの国を統治する際には、それ相応の地位に着けてやっても良いぞ?当然、彼女らにも、だ。

 ……いや、むしろ、それだけの美しさが在るのなら、君達は私の妾にでもしてやろうか?うむ、それが最善と言うモノだろう!私のモノになるなら、彼らといるよりも、余程良い目を見せてやるぞ?何せ、私はこれから一国の王になる男だからな!」




 ……はい、状況の読めていない阿呆決定。

 名前も名乗られていないから知らないし、もう『大人物』(笑)で良いかな?良いよね??


 そんな空気が俺達の間で流れるが、どうやらそいつはそれに気付いていないらしく、俺達が頷くのは当然だ、とばかりにソファーへとふんぞり返りながら、女性陣へと好色そうな視線を向けていた。


 ……もう、言動からしてアウト臭いが、それでも見るからに魔王国だとかヴァイツァーシュバイン王国だとかだと貴族等に相当する様な身分の存在なのだろう事は理解出来る。

 なので、その手の権力構造に詳しいアストさんや、正にこの国の権力構造内部にて生まれ育った『獣人族(ベスタ)』組の三人に対し、目の前の存在が口にしている事がどの程度『真っ当な発言』なのかを視線にて問い掛ける。


 所変われば常識も変わる、とは良く言うモノだし、俺が知らなかっただけで、この辺の常識からすれば割りとまともな事を言っている可能性も、否定出来はしないからね。


 そんな期待も僅かに込めた俺の視線も、嫌悪感丸出しで全力にて首を横に振って否定の意を表明している四人の姿を目の当たりにしてしまえば、流石に最初の予想通りに外道や屑の類いであったのだろうと納得する。

 まぁ、考えてみれば、ついさっきまで俺達の間でホットな話題であったラプスの部族である『ウォーラビット』に対して何かしら含みを持たせて言及している以上、恐らくは彼女達を追い詰めている屑領主の関係者なのだろう。

 その時点で既に、問答無用で首を獲りに行っても良いであろう外道の累計であることは確定しているのだから、わざわざこうして確認する必要も無かったかね?


 一応タツとレオにも確認の為に視線を向けると、そこには視線だけで人を殺せそうな程に激怒している二人の姿が。

 もっとも、自身の恋人やパートナーを『自分の妾にしてやっ(・・・・)ても良い(・・・・)』だとか抜かされれば、そうなって当然と言うモノだろう。



 ……うん、これは、満場一致で『アウト』って事でよいかね?



 そう結論を出した俺は、未だに掴んだままにしていた侵入者の腕を音を立てて捻り折ると、同じく椅子に腰掛けたままの状態にて侵入者一同に対して殺気を解放し、時たま言われる『笑っていない笑顔』にて屑領主(推定)に中指を立てながら



「返事?そんなの、決まってるだろう?

 貴様が俺達に何をさせたいのか何ぞ知った事ではないし、貴様の立場にも興味は無い。だが、貴様は俺達を怒らせた。俺達は貴様に従う事も、貴様の配下になる事も有り得んだろうさ。

 故に、俺達の応えは『NO』だ。今すぐ殺されたくなけりゃ、他の連中共々さっさと失せる事だ」



 と告げるのであった。

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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