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20・ボス戦開始です

ブックマーク感謝ですm(__)m




「カチコミじゃぁあぁぁぁあああああ!!!!!」




我等が故郷たる日本国に伝わる旧き善き伝統(注※違います)に従い、討ち入りを宣言しつつ内部への突入を果たす。


先陣を切った俺に続いて残りのメンバー達も突入するが、突入した先はどうやら明かりが無いらしく、居ると推測されたボスの姿は確認する事が出来ない。だが、ここ(ボス部屋)に至るまでの戦闘にて磨かれた(身に付けざるを得なかった)危機察知能力にて、敵が居ない訳では無いとこの場に居る全員が察知したことにより、それまでの戦闘経験に従い即座に陣形を組んで周囲の警戒に当たる。


すると、まるでこちらが戦闘態勢を整えるのを待っていたかの様なタイミングで、部屋の奥に「ボッ!」っと灯りが灯る。

ここまでの灯りの様に直接光っている壁が有るのでは無いらしく、遠目にも明かりが揺らめいている事や、灯った際の音等から松明の類いで有ることが予想出来る。


そして、その最初の松明が灯ってからそれほど間を置かずに、ある程度の距離を離して左右で松明が灯り出す。


一本着いたらその隣、またその隣と連鎖的に灯って行き、あっという間に俺達が陣を敷いている所の後方、丁度俺達が入ってきた扉の有る辺りまで明かりが灯り、この部屋の中の光景を明らかにして行く。


それは円形の闘技場。


観客も無く、勝者に栄光を、敗者には死を与える皇帝も無く、未だに闘うべき相手(ボス)もこの場には見てとれない。


だがそれでもなお、この真円を描き、数多の怨嗟が刻み込まれ、そして幾多の英雄達の血が染み込んでいるのが容易に想像できる程の妖気漂うこの場は、まず間違いなく『闘技場』と呼ぶのに相応しい場所であろう。


そんな闘技場の端から中心部分を目指し、陣形を崩さず進んで行く俺達。


だが、中心付近まで進んでも、一向に居ると思われていたボスが姿を現す事は無い。


「……はてさて、予想を間違えたかね?」


「……いや、おそらくはここがボス部屋(終点)で合っているだろう。何処かに居るハズだ」


「そうだね~。姿は見えないけど~、気配だけは物凄くするからね~」


この会話からも理解出来るだろうが、俺達はこの場にボスが居る事を確信している。


今現在まで姿を見せてはいないが、それでもなお放たれている絶対的な『強者』の気配がこの闘技場には満ちており、これだけ濃厚に漂わせているのであれば、ほとんど確実と言っても過言では無い程度の確率で、この部屋の何処かに居るハズなのである。


なので、その気配の出所を探っている事を悟られない様に静かに、なれども確実に気配の出所を見付けつつ、先に行動に出られない様に迅速に探って行く俺達。


そして、俺達三人が、ほとんど同時に自らの過ちに気付き、探る方向を切り替えた直後に、また同時に気配の出所兼持ち主を関知し、そちらへと視線を向け対象を確認したのと同時に、ほぼほぼ反射で声を上げる。



「「「全員散開しろ!!上だ!!!」」」



その掛け声で俺達が散らばるが、まるで行動を見通し、そしてそれを待っていたかの様なタイミングで上空から現れたソイツは、その背に生やした翼が立てる羽ばたき音を周囲に響かせつつも、その巨体では到底あり得ない程に静かに闘技場の真ん中へと降り立った。



その身体は漆黒で在りながらも何処か暖かみの有る光沢を宿し、周囲に点在している松明の明かりを反射してギラリと光りを放つ。



その見るだけで鋭く強靭だと理解出来る爪は、この場に居合わせている者など意図も容易く切り裂く事が出来るのであろう事が、容易に予想出来るだけの『存在感』を放っている。



その巨木を思わせる四肢と長くしなやかな尾は、ソイツの巨体を支えてなお揺らぎもしないだけの力強さと秘めると同時に、何処か芸術品染みた調和とバランスを持ち、ある種の美しさすら感じられる。



その凶悪と表現しても間違いは無いであろう牙の列と、その間から焔を溢す(アギト)の収まっている(かんばせ)は、見る者に恐怖と威厳を感じさせるのだが、同じく存在する金色の瞳による視線には、何処か穏やかな印象をも同時に感じさせる。




そう、俺達の前に飛来したソレは、二翼四足で全身を漆黒の鱗で覆われた、元の世界では『西洋竜』に分類されたであろうドラゴンだった。




……やべぇ、コレ、勝てるのか……?


そんな思いが頭を過るが、それでも一方的になぶり殺しになるつもりは更々無い俺達は各々武器を構える。

しかし、元より試合・死合・殺し合いに慣れ親しんでしまっている俺達は兎も角としても、元々そんな経験の無かった女性陣は初めて目にする『死の驚異』に驚きすくみ、膝や手の震えが防具や武器に伝わりカチャカチャと音を立てている。


そんな俺達の事を遥かな高み(物理)から見下ろしていた眼前のドラゴンだったが、すくんでいる女性陣を気にする余り先手を取り損ねた俺達を、その強大な手足で叩き伏せに掛かる訳でも、樹齢数百年の古木に匹敵するであろう長さと太さを持った尾で凪ぎ払いに来る訳でも、ましてやその顎から溢れ出る焔の吐息で一思いに消し炭にしようとする訳でもなく、ただただ俺達の行動を観察し、その上でその金色の瞳を細め、何処か『嬉しそう』な雰囲気を醸し出している。


その様子に俺達が困惑し出すと、おもむろにその顎を開き出すドラゴン。


その行動に対して咄嗟に警戒を強める俺達だったが、それと同時に、俺達の耳を聞き覚えの無い声が叩く。



『……人の子らよ……』



その、無機質ながらも何処か暖かみが有り、抑揚に乏しく中性的でありながらも何故か女性的に感じられるその声を聞いたと認識した瞬間、違うとは分かっていながらも反射で後ろに振り返り、俺達の背に隠す形で再集合させていた女性陣へと確認の意味も込めて視線を送るが、当然の様に誰も話してはいなかった。



『……よくぞここまで辿り着いた、人の子らよ……』



そうやって無駄な確認をしている間にも、先程と同じ声が聞こえてくるが、視線の先の女性陣は、誰も口を動かしてはいない。

……それに、よくよく考えてみれば、この聞こえてくる『声』って、どうやら耳で聞いている音としての『声』ではなくて、思考に直接語りかけてきているみたいなのである。


当然のように、そんなことが出来る様な人物は、この面子の中には存在していない。

……一人、いや、『一体』を除いて。


そんな確信と共に正面へと振り返ると、バッチリとドラゴンと目が合ってしまう。

それはもうがっつりと、これでもかと言わんばかりにしっかりと。


そんな状態だった為に、次に声が聞こえてきた際にバッチリとドラゴンの口元を見てしまったのである。

……見えてしまったのである。



『……幾多の試練を乗り越えて、よくぞここまで辿り着いた、人の子らよ。さぁ、掛かってくるが良い。お主らが求めて止まぬ『最終試練』は、この首ぞ。なれども、ここまで辿り着いたお主らならば、落とすことも可能であろう。されども、容易く落とせるとは思わぬ事だ。

さぁ!掛かってくる良い、人の子らよ!!』



そこで聞こえてきた『声』と、目の前のドラゴンの口元の動きがぴったりと一致してしまっているのを。


それを認識した瞬間に、奇しくも俺達の思考は見事にシンクロし、同じことを同時に口走り始める。



「「「……き……」」」



『……?……『き』?』




「「「……キィアアァァァァァァァァア!!シャベッタァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」」」




『……えぇ?何故に驚く?そもそも、お主ら、驚く処そこ……?』



と、追加で半ば呆れた様な声が聞こえた様な気がするが、多分気のせいだろう。




******




『……つまり、お主らは妾の待っていた者達では無い、と?』


「……多分、そうかと。それに、そもそもの話として、俺達は落とし穴に嵌まってここ(ダンジョン)に来た口だから、さっき言っていた『試練』云々に関してはサッパリなんだかね?」


一通り驚きの声を挙げた俺達だったが、それを見て何やら互いの認識に齟齬が有るらしいと判断したリンドさん(ドラゴンさんの名前。正確には『リンドヴルム』と言うらしい)によって持ち掛けられた話し合いの末に判明したのだが、どうやらここは本来力を求める者を試し、そして仕掛けられた幾多もの試練の数々を乗り越えた者に、『力』と『栄光』を与える場所であるのだとか。

そして、本来の入り口からのルートには、ダンジョンの踏破よりも先に達成しなければならない試練(謎解き等の知恵比べに始まり、特定の物品を規定の期間内に持ってくる等まで様々)が幾つも有り、それらを達成出来なければそもそもこのダンジョンに入ることすら叶わないのだそうな。


「……そんな訳何で、俺達は外に出たいだけなんだがどうにかならんか?別段、ここの『力』とやらが欲しくて入った訳では無いからね」


『……と言ったところで、妾にはどうしようも無いぞ?確かに、『最終試練』たる妾を倒せばここのシステム上、入ってきたのと同じ処に送還されるようじゃが、闘わずにそのシステムを利用するなどとは考えたことも、やったことも無いのでのぅ。それに、初代のここの主ならば兎も角として、あくまでも代理に過ぎぬ妾には到底分からぬことよのぅ』


実はリンドさん、ここのダンジョンで発生したのでは無いらしいのだ。

ここの『最終試練』の性質上、達成される=ボスが討伐される事になる以上、頻繁に……とは行かないまでも、確実にボスが居なくなってしまう。

その為、このダンジョンのシステムとして、ボスが倒されたと認識した際に、このダンジョンの外に生息している強力な魔物をボスとして召喚する様になっているのだとか。(このダンジョンについての知識や情報等については、その際に伝達されるらしい)


よって、このダンジョンに直接産み出された初代のボスならば兎も角、そうではないリンドさんにはシステムの裏技的な使い方は良く分からないのが正直な処なのだとか。


……その上、一度中に入ったのならば、正式な方法でしか脱出する事が出来ないらしく、その正式な脱出方法はどうやら『『最終試練』を達成する』事のみのようである様で、ソレ以外はリンドさんの知っている限りでは存在しないのだとか。


のであれば、取るべき行動は一つに搾られてしまう。


「……で、結局こう(・・)なるのか……」


『ふむ、まぁ仕方無かろう。脱出したければ、妾を倒して『最終試練』を達成するしか有るまいて』


そう、言葉を最後に交わして俺達は、その手に携えた武器を構えて彼女へと突っ込んで行くのだった。




******




先陣を切るのはやはりタツ。

戦闘スタイル的に近付かなければどうにも出来ない以上は、多少無謀でも突っ込んで行く必要が有るため、少々強引に距離を詰めに行く。


そんなタツに続いて距離を詰め出す俺達を、闘技場の中央部にてただ待ち構えるリンドヴルム。


そんな彼女に先頭のタツが肉薄しようか、と言ったタイミングでリンドヴルムが口を開く。


『……そう言えば伝え忘れておったが……』


そう、言い掛けたリンドヴルムに対して、レオと先生が遠距離からの攻撃を開始する。

狙いは当然のように、目だ。


その着弾どうやらほぼ同時にタツの打撃が、それに少し遅れて久地縄さんの抜刀術と阿谷さんの鉄塊による斬撃がそれぞれ左右の前足に叩き込み、攻撃手段の削減と、本体へのダメージを試みる。


しかし、それらを受けてもまだリンドヴルムに動きは無い。


それを好機と見た亜利砂さんと音澄さんが動きを早め、腹の下へと潜り込み、それぞれ心臓が有ると思わしき胸の中央部と、肺を狙っての脇の下からの突き込みを刊行する。


それらを見た俺は、違和感を抱きはしたが、それでも攻めねば倒せないので前へと出ようと足に力を込めた。


その次の瞬間。


何か(・・)が俺の防衛識別圏内に高速で飛び込んで来た為、前進の為に蓄えた足の力を逆に後退するために使用する。


すると、ほんの一瞬前まで俺が居た場所に、黒光りする巨大な柱が突き立つ。


何かと思って視線で辿ると、ソレはリンドヴルムの後ろへと繋がっており、どうやら彼女の尻尾であった模様だ。


おいおい、マジかよ。


そう、呟きそうになった時、何かが弾き飛ばされた様な音と共に、タツに続いて突っ込んで行った面子の苦鳴が響き、それに少し遅れて人数分の人体が地面に叩き付けられる音が聞こえてくる。


そちらへと視線を送れば、音から想像した通りの光景が広がっており、即座に立ち上がったタツを除けばほぼ全員が少なくないダメージを負っていた。


その光景を目の当たりにし、脳が理解するのとほとんど同時に正面へと向き直り、相対するリンドヴルムの状態を確認するが、そこには驚愕の事実が存在していた。



なんとそこには、投擲物と矢によって射られたハズの目からも、質量兵器や斬撃、打撃の三種類の攻撃を受けたハズの前足からも、急所である胸部の内臓を狙われて突き込まれたハズの胸部からも、ほんの一滴たりとも出血することなく、丸っきり無傷で変わらず佇み、それらの攻撃を仕掛けた面子を弾き飛ばしたと思わしき右前足をゆっくりと元の位置へと戻しているリンドヴルムの姿が在った。



『……そう言えば、伝え忘れておったが、妾はそこそこ強いからのぅ?それこそ、妾よりも前に在った『最終試練』達のどれよりもなお、妾の方が強いからのぅ。……どれ、戦闘も久方ぶり故に、加減を忘れてしまっておるが、コレで終わってはくれるでないぞ?』



そう、途切れていた言葉を繋げ終わると同時に、こちらへと向いていたリンドヴルムの胸元が微かに膨らみ、まるで軽く吐息を漏らすかの様な手軽さでその顎から焔が解き放たれ、俺達の目の前を紅蓮に染め上げた。

ボスが何なのか、予想していた方は当たりましたか?取り敢えず、後一~二話位で戦闘は終わる予定です。


面白いと思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等をよろしくお願いしますm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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