02・取り敢えず、周辺探索してみましょう
一応は、佐藤先生にも声を掛けたので、早速探索するために森へと入る……前に、各員の装備をざっと再確認しておく。
確認大事。
何が有るのか把握していないと、いざと言うときの反応に困ることになりかねないからね。
そんな訳で、自分のモノを含めた三人分の装備品へと視線を向ける。
俺達の装備の基本は、狩猟胴着や多目的胴着……要は『ポケットや道具を引っ掻けるタグが沢山付いているベスト』を使用する形であり、それに対して色々な道具を取り着けたり、ぶら下げたりする感じになっている。
その他にパッと見で共通している装備としては、腰の両サイド後方に着けている軍用水筒×2と、纏めて括ってあるザイルに、胸元のタグに着けているカラビナ。それと、腰の真後ろに付いているポーチに入れてある救命キット位だろう。
それと、各所に仕込んである携帯食料位のモノか?
……あ、塩も有ったか。
でも、まぁ、ぶっちゃけた話をすると、今挙げたモノ以外のその他の装備品に関しては、各自が使いやすい様に取捨選択しているハズなので、自分のモノ以外に関しては、詳しく知っている訳では無い。
……まぁ、予想は出来るのだけどね?
取り敢えず、比較のために俺の装備から確認すると、共通のモノ以外では、
・作業用ナイフ(刃渡り20㎝程)×1
・小型ナイフ(刃渡り10㎝程)×1
・ロープ(1m程度)数本
・ロープ(50㎝程度)数本
・ワイヤー(1m程度)×2
・小型蒸留器
・簡易方位磁針
って所である。
比較的万能に対応出来る様に用意したので、まぁ暫くは死なずに済むだろう。
タツの場合は、俺の所からナイフとワイヤーを抜いて、代わりの武具として籠手を着け、空いたスペースに携帯食料を多目に詰めた、って所だと思われる。
まぁ、タツは俺達の中でも一番動くし、一際身体もデカイからな。
当然と言えば当然か。
食料は大事。
これ絶対。
それと、タツが刃物の類いを持ち込んでいないのは、こいつの流派がそう言うモノだからだろう。
曰く『剣に出来て拳に出来ぬこと無し、なれば、刃物は不要なり』だとか。
……まぁ、実際に、タツが手刀で木を斬り倒したり(折らずに斬りました)、狩った獲物を素手で捌いたり解体しているのを見ているので、本当に必要が無いのだろうな~とは思うのだが、ちょっと人間辞めすぎていないかね?
タツの方の分析は終わったので、お次はレオの装備の予想だが、あくまでもこいつの場合は『多分』でしか分からない。
何せ、こいつはリアル『忍者』だからね。
レオが仕込まれているのは、戦国時代に有名になった『伊賀』や『甲賀』、『風魔』と言った忍者達の、それぞれの里に別れる前の大元、忍者達の諜報・暗殺技術だとかの『原型』となっていたモノが発祥であり、ソッチ系の人間からは『日本最古の暗殺術』とも言われている……らしい、文字通りの『古流暗殺術』である。
良く忍者モノとかで出てくるような『クナイ』だとか『手裏剣』だとかは使っている処を見たことが無いが、それに似たようなブツならば、全身に常時仕込んでいる、と、本人から聞いたことが有るが、本当の話かどうかは定かでは無いのだけどね。
更に言えば、ガチの暗殺者も真っ青な手口での追跡術や、罠の構築から仕掛け。それと、口の固い相手に対しての『お願い』の仕方何かも、一通り習得しているらしい。
もちろん、真っ正面からの殴り合いも出来る様に、体術やら短剣術やらの近接戦闘術も修めており、飛び道具有りならば、タツとも普通に戦闘出来るだけの戦闘力は持っている。
……実際に、この間、二人で殴り合いしていたし。
そんなレオの装備だが、俺の装備のナイフを、長さが15㎝程度のモノ二本に変えて、ロープを無くした上で、タツとは逆に食料を減らし、その空きスペースに投擲用の棒杭(棒手裏剣の様なモノ)や小柄(和拵えの投擲用ナイフ)等を仕込んでいる……と思われる。
それと、罠用に使うワイヤーが地味に増量されていると思われる。……多分。
そんな事を考えながら二人の様子を見てみると、片や籠手を嵌めた拳を開閉したり、手首をグリグリと回しながら不満そうな顔をしているし、もう片方も、腰に着けた鞘からナイフを引き抜いて、軽く構えてからまた戻したり、身体の各所から仕込みのブツを取り出しては戻してを繰り返しながら、こちらも不満そうな顔をしている。
「どうしたよ、お前ら?さっきから、同じ様な動きばかりした上に、不満そうな顔をして」
そう、声を掛けると、二人は不満そうな顔を隠そうともせず、よりによって俺に向かって不満を垂れ流す。
「……いや。流石に、『予備』だと、な」
「使えない訳じゃあ無いんだけど~、やっぱり手に馴染んだ『相棒』が欲しいよね~。贅沢だとは思うけどさ~」
その言葉に、思わず額に青筋を立てながら、眼前の阿呆共に呆れの視線を向けてやる。
「……贅沢を抜かすな、このリアルチーター共め。それはあれか?お前らが不満を漏らしている『代用品』すら持ち込めなかった俺に対する皮肉か何かか?あぁん?」
その言葉を聞いて、二人は顔を見合わせたが、直ぐ様俺に向かって『何言ってんだ?こいつ』って視線を向けてくる。
「……真のチーターはお前だろうに……」
「……慣れた得物さえ有れば~、僕とタツ二人掛かりでも抑えるのがやっとなのに~、それで良く人の事をチーターだの何だのと言えたよね~?」
その得物が無いと、お前らどっちか一人にでも普通に負けるだろうが!と返しつつ、装備の確認も終わったので、さっさと探索に行くとしますかね。
……最悪でも、水場位は確保しておきたいからね。
******
……海岸から森へと入り、道なき道を突き進む事早数十分。
未だに俺達は、未開の森の中を駆け続けていた。
流石に、人の手が入った様子が一切無い森の中では、この手の状況に慣れている(慣らされている?)俺達でも駆け抜ける事は難しく、未だ森の中を走り続けていた。
……走り続けていたのだが、少々おかしな事態となってしまっている様だ。
「……なぁ、お前ら、気付いているか?」
重心移動と足首でのステップだけで、平地での全力疾走に等しい速度を出しながらも、端から見ると普通に歩いている様にしか見えない(らしい)歩法で森を駆けながら、同じ様な速度で移動するタツとレオに声を掛ける。
「無論」
とだけ、言葉短く答えるのは、パワー特化らしく両手両足の全てを使い、時に木を手で掴んで遠心力を利用しながら加速し、時に足元の障害物を回避すると同時に踏みつけて加速する、と言った様な移動法を使用し、その見た目に違わぬゴリラめいた力強さで森を疾走しているタツ。
……言ったら間違いなく殴られる(ゴリラパンチ)から言わないけどね?
「流石に~、ここまで身体が軽いのに気が付かないのは~、おかしいって~」
そう、何時もの通りに、何処かのんびりした口調で返してくるのは、ガチ忍者らしく、太めの木の枝から枝へと飛び移ったり、手頃な枝が無かったら幹を蹴り着けたりしながら、地上を移動する俺達と同じだけの速度を維持しているレオだ。
……毎回見るたびに思うけど、一体どうやっているのだろうか?少なくとも、俺やタツでは無理だろう。
確実に、枝が折れるからな。
で、何でこのタイミングで移動方法云々を言い出したのかと言うと、一応は理由が有る。
取り敢えず、考えても見て欲しい。
さっき俺が言った様な移動方法を、何もない平地で全力疾走しているのと同じ位の速度を出しながら、人の手が入っておらず鬱蒼と生い茂り、足元に下草が絡み付く、傾斜の付いた山道を数十分走り続けているのだ。
いくら俺達が、古流武術の類いをそれぞれ仕込まれ、そろそろ人間辞めてるよね?って突っ込みを普通に受けそうな位鍛えて、それに見会うだけの身体能力を獲得しているとは言え、現在やっている事は流石に出来なかった。
いや、正確に言えば、『出来ることには出来たが、それでもほんの十分程度だった』のだけれど。
なのに、現在は、事実としてそれを遥かに上回るだけの時間を実行出来てしまっているのである。
最初は、何だか身体が軽い様な気がするな~、これだけ緑が濃いと、空気も濃いのかな~?なんて考えていたのだが、流石にここまで劇的な変化が有ってしまうと、無視しても居られなくなる。
それに、今更な話では有るけど、ぶっちゃけ何で俺達こんな所に居るのだろうか?
確実に、あの紋様が光るまでは、こんな未開の地丸出しの所に来る予定は無かったのだし、家の祖父達だって、ここまで急かつ大胆な拉致行動には移らない……ハズである。多分。
それに、師匠たる祖父がやらかしたのであれば、ここに来る事になったのは、俺達の誰か、もしくは俺達だけになるハズであり、クラスにいた人間を丸ごとこんな所に放り込む程非常識では無かったハズなのだ。
故に、犯人はあの人外(祖父達)では無く、その他の何か、と言うことになるのだが……。
「で、現状も含めて、それらの原因は何だと思う?
俺的には、何処かの国の実験って事だと楽で良いかと思うんだけど?」
床が光ったのは、新型のフラッシュ・バンか何かで、それにより強制的に気絶させられ、その隙に新種の薬か何かを打たれたか、もしくは改造手術でもされたかして、それの実験データを採るために、こうして何処かに隔離、何処かから観察している、って感じかね?
だとしたら、監視しているであろう誰かを取っ捕まえて、ここが何処なのかを吐かせてから脱出し、二度とする気が起きない様に『お願い』するだけで済むしね。
「……いや、それよりはむしろ……」
「最近流行りの『異世界召喚』だとか『異世界転移』とかじゃあ無いのかな~?」
……それは、アレか?
小説だとかで良く有る、『別の世界に呼び出されました~』って奴か?
……いやいや、むしろそっちの方が『無い』だろうに。
確かに俺も、今時の高校生らしく、ゲームもするしマンガも読む。小説も好きだし、その手の設定の本も読んだことが有る。三人で、あれは良かった、これはつまらなかった、って話し合った事も有ったのは、記憶に新しい。
だけど、現実にそんなこと有るめぇよ?
それに、だとしたら、俺達召喚した奴ら何処よ?
普通は近くに居てアレコレ言って来るんじゃ無いのんけ?
それに、流石にこんな未開の地にわざわざ召喚なんぞせんだろうに。
それならば、まだ、俺の『国家陰謀説』の方が説得力が有ると思うぞ?
そんな感じで意見交換をしながら走り続けていると、海岸から大体一時間弱位で、目指していたポイントに到達した。
そう、海岸からも見えていた、森の奥に聳えていた山の頂上部分である。
流石にここまでの高さが有れば、近場の地形情報だけでなく、人里のまでの距離だとか、水場の有無だとかの確認まで一気に出来るので、面倒が少なくて済むのだ。
そして、その頂上部分まで上り、その上で見回した結果、俺達にとってはそれほどでもないが、他のクラスメイト達からすれば、ほぼほぼ致命的であろ事実が判明する。
どうやらここは、道や村落等の目的の為に切り開かれた場所が無く、更に炊事や作業の為に上がるであろう煙の類いが何処からも上がっていない事から、無人島である可能性が高い。
また、周辺の海域には、似たような島々は見受けられるが、それらに人が住んでいる様子も無い。
そして、見渡す限りでは、人が住んでいるであろう『大陸』を発見する事は、終ぞ出来なかったのである。
あ、一応、水場らしき光の反射は確認できました。
ヤッタネ!
注・作中で出てきた『忍者の~』は、ほとんど作者の妄想ですので突っ込まない方向でお願いします