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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第七章・獣王祭編

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192・本選開始しました

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 

 俺達が本格的に嘴を突っ込むと決めてから二日が経過した今日。


 俺達の姿は、またしても闘技場に在った。


 と言っても、別段俺達だけ、と言う訳ではないし、俺達にしても面子が全員揃っている訳でも無い。


 寧ろ、俺達以外の連中の方が圧倒的に多いし、その中にはこちらに対してよろしくない感情を込めた視線を向けて来ている連中も、少なからず散見されている。


 まぁ、割りと派手に出場者を蹴散らして予選を突発した面子で固まっているのは自覚しているし、その中の半数が仮面で顔を隠していてもその美貌までは隠しきれない様な美女(約一名は隠してもいないけど)であり、他の男連中と親しげに接している様を目の当たりにしていれば、その手の感情の一つや二つは沸き起こって来ても仕方無いと言えば仕方無いだろう。多分。


 そんな風に怨嗟や嫉妬や殺意の込められた視線を浴びながら、こうして俺達がこの闘技場へと訪れている理由だが、大した事は無い、と言うと脱落した二人に申し訳無くなるが、それでも大した用事が在る訳でも無いのは本当だ。


 ただ単に、先日全ての予選試合が終了し、晴れて試合での本選出場者の選出が終了したので、こうして本選の開催宣言が行われる場所へと強制的に招待されたから、と言うだけの話だ。


 一応とは言え、国が主催しての祭典である上に、国の重鎮である十二獣将が参加し、優勝者は獣王へと直接言葉を交わす事すら出来る可能性の在るイベントでもあるので、こうして節目節目にて派手目に色々とやる必要が在るのだとか。


 当然、この開催宣言も一般へと公開されており、客席は見物客にて大いに賑わっている様子だ。

 当然、シンシアさんとサーラさんも、仮面にて偽装した上で観客として参加している。先程、互いに見付け合って手を振り合ったりしたのだから、間違いは無いハズだ。……多分。


 若干の不安を内心にて覚えつつ、何やら演説染みた事をしている『偉い人』 (確か、ナントカ大臣……だった、かな……?)の話をほぼ完全に聞き流しながら周囲へと視線を走らせる。


 すると、やはりと言うか、最早当然と言うべきか迷うが、当たり前の様に視界へと黒いローブを纏って顔や体型を隠している連中が写り込む。

 それこそ、右を向こうが左を向こうが、必ず何人かは視界に入ってくる程だ、と言えばどの程度いるのかは理解して貰えるかと思う。



「……一応、ざっと数えた限りでは全員居るっぽいな」


「……流石に、来ないのは目立つだろう。それは、組織としては避けたいハズだ……」


「それに~、この後『組分け』もやるって聞いてるから~、流石に真面目に本選で戦うつもりが在るのなら~、来ないって選択肢は無いんじゃないの~?」



 台所や部屋に突然発生する黒い悪魔の如く、一人見付けたと思ったら何人も視界に入る様になってきた黒ローブを尻目に、タツやレオと会話を交わす。


 まだ目的の類いが見えていない為に敢えて放置しているが、一応獣王の方にも参戦の許可は取ってあるので、恐らくは遅かれ早かれ何かしらの激突をする羽目になるだろう。もっとも、それよりも先に試合でぶつかる確率の方が高いだろうけど。


 そんな風に思っていると、いつの間にか演説風の何かが終わり、本日のメインイベントであり、先程の俺達の会話にも出てきた『組分け』が開始される事となったらしい事がアナウンスされ始める。



『それでは、予選試合を通過した順番に籤を引いて頂きます。まず、初日の第一試合にて予選を通過された出場者の方からお願い致しますので、壇上までお越し下さい!繰り返しますーーー』



「……じゃあ、呼ばれてるから先に行くわ。本選で当たらない事を祈ってるよ」


「……そうだな。その方が良いだろう……」


「僕も~、その方が良いかなぁ~?だって~、そうでない方が面白くなる(・・・・・)からね~!」


「……私は、当たるのでしたら出来るだけ早めに当たりたいのですが……」


「私もぉ、それは同じだけどぉ、それは言わぬが華ってヤツじゃないかしらぁ……?」


「どの道アタルなら、ある程度進んでカラのホウガ良いンジャナイノ?そのホウガ愉しめるデショ?両方共に、ネ?」



 悲喜交々に感情の入り乱れた会話を切り上げ、アナウンスによって真っ先にご指名頂いた俺は、他の出場者達の間を縫う様にして進んで行き、今回の『組分け』の為に誂えられた壇の上へと上がって行く。


 そこには既に、俺と同じ試合にて勝ち残り、本選への出場資格を得ていた女性(ウサギ耳の『獣人族(ベスタ)』で何の種族かは知らない)が居り、こちらへと手をヒラヒラとさせて挨拶してきたので、こちらからも軽く手を掲げて挨拶を返しておく。


 すると、それで彼女は満足したのか、特に気負う様な様子も見せずにアッサリと籤の入れられた箱の方へと振り返り、上部に設けられた穴から手を差し入れて中から一枚の板を取り出して見せる。


 掌サイズのその板には、中央付近に三種類の数字が書かれており、係員の者がそれを確認すると、特にその板を回収したりする事も無しに彼女の元から離れ、壇上に大々的に設置されていた八枚のボードの内の一つであり、まだ埋まっていなかった百二十一箇所の内の一つへと数字を書き込んで行く。


 それを確認した彼女は、可もなく不可もなく、と言った感じの微妙そうな表情を一瞬だけ浮かべると、そのままボードに背を向けてこちらへと歩み寄り、スレ違い様に俺の肩へと手を置いて



「……あんたも頑張んなさいよ!」



 と声を掛けて壇上から降りて会場を後にしてしまう。


 そんな彼女の後ろ姿をなんと無しに眺めていた俺だったが、順番的には俺の番となっていたので、そのまま歩み出て無造作に手を箱に突っ込み、適当に一枚掴んで腕を引き抜く。


 すると、俺が手にした板には



『6/7/97』



 との数字が書かれていた。



 はて?一体なんじゃろな?



 そんな思いから首を傾げていると、係員の人が板を確認しにやって来たので、特にごねる理由も無い為に素直に提示しておく。


 すると、俺の時もさっきの彼女の時と同じ様に、数字を確認するだけ確認して、特に板の方は回収すること無くボードの方へと移動してしまう。


 そして、右から数えて六枚目のボードに在る、計十六枠の空枠の内の七つ目の枠に『97』と書き込んで行く。


 良く良く見てみると、既に埋まっていた七つの枠と、俺の直前に埋められた枠にもそれぞれ数字が書き込まれているのが分かる。


 恐らく、板に書かれていた三つの数字はそれぞれ


 左端←何番目のボード

 真ん中←何枠目

 右端←出場者個人の識別番号


 と言った感じなのだろう。

 当然の様に、それぞれで振られている番号が違うみたいだから、そこまで間違った認識でも無いんじゃないかな?多分だけど。



 そうこうしている間に次々と籤が引かれて行き、徐々にボードの空枠が埋められて行く。


 幸いにして、と言うべきか、俺の入ったボードにはタツもレオも振られる事は無かったが、特に面白そうな出場者も振られて来る事も無かったので、正直拍子抜けと言う感じが強い。

 まぁ、俺の振られていた六つ目のボードには、最初から一つ埋まっていた枠が在ったので、恐らくは『当たり』の内の誰かさんが入っていると見て間違いないだろう。


 それを他の出場者達も察しているらしく、俺と同じボードに振られてた連中は、一様に顔色がよろしくない。

 まぁ、その内の半数近くが例の黒ローブなので顔は隠れているし、この本選からトーナメント方式に試合形式が変更される為、俺が『当たり』の誰かさんと戦うのは、枠の位置から逆算すると一番最後の決勝進出者を決める戦いになるだろうから、関係はあまり無いんだけど。


 暫くして漸く『組分け』が終わり、移動する前に本選へと出場しないサーラさん達を含めた全員で一旦集合する。



「……それじゃあ、ここからは全員バラバラで行動する事になるけど、各員悔いの無い様に確りと行動する様に。いざとなったら制限解除も許可するから、無事にまたここで必ず再集合する、って事でよろしく!以上、解散!!」



「……うむ……」


「はいは~い!」


「解りました!」


「精一杯務めさせて頂きます!」


「ボク達も、頑張っちゃうよ!!」


「頑張っちゃおうかしらぁ」


「マァ、精々負けない様ニハ努力してクルヨ」



 その後、それぞれで馬車に乗り込んだり自前の足で移動するなりの移動手段によって、各自の目的地へと向かって行くのであった。





 ******





 本選の開催宣言がなされた次の日。

 俺は、首都であるアルカントからそれなりに離れた獣人国の主要都市の一つであり、レオルティアと同じ様に十二獣将の一人が治める都市でもある『ピスクシス』へと到着していた。


 俺が獣王祭の真っ只中にも関わらず、こうして首都であるアルカントから離れている理由だが、それは至極単純なモノだ。



 俺の振られた枠での試合本選が、このピスクシスで行われる、と言うだけの話。



 なんでも、獣王祭の決まりとして、予選は首都に集めて一気に、本選は各地に散らばらせる事で宣伝も兼ねて、そして決勝は首都で行う事で盛り上がりを最高潮に!と言う流れの規定が在るのだとか。

 ……ぶっちゃけ、予選のバトル・ロワイアルを各地で手早く済ませた方が、一気にイベントを盛り上げるには良いんじゃないの?と思わなくも無いんだけどね?


 そんな事を考えながら、一日中馬車に揺られたお陰で痛む尻を擦っていると、こちらへと見下した感じを隠そうともしない視線を向けて来ていた、俺と同じ枠に入っていたらしい出場者と見られる、ミノタウロス族の男が嘲笑うかの様に声を掛けて来る。



「ふっ!俺様の初戦で当たるのはどんな奴かと思って来てみれば、とんだ期待外れだな!高々一日馬車に乗っていた程度で音を挙げる程度で、この俺様に勝てる道理もあるまいよ!

 精々、無様な負け様を世間に晒すことだな!何、心配は無用だ。お前の連れていた女達は、この俺様が『面倒』を見てやるからな!!ガハハハハハハハハ!!」



 ……どうやら、対戦表で自分の隣にいた俺を、馬車に乗っていた程度で音を挙げる様な奴だ、と認識して、精神的にもマウントを取りたいが為に声を掛けて来たらしい。

 その証拠に、俺が何を言い返すよりも先に踵を返し、他の出場者達へとその長身を生かして同じ様に威圧する様に言葉を投げ掛けているのだから、まず間違いは無いと思われる。


 ……が、ぶっちゃけ、普段俺達が使っているのは、ある程度俺達の手で改造の施されたモノだから、普通の馬車よりも振動は抑えられているし、その辺はリルもサーラさんも気を使ってくれているので、普段ならあの程度の時間乗っていた所で尻が痛め付けられる事は無い。

 それに、あの程度の速度でえっちらおっちら走らせている位であるなら、俺達は自力で走った方が早いし疲れないのだから、身体能力云々を言いたかったのかも知れないが、そんなモノ欠片も基準になんぞなりはしないからな?

 あと、『お前の連れていた女達』とか言ってるけど、俺にもし勝てたとしても彼女らがお前程度に靡くとは思えないし、そもそも半数近くは俺に対してそう言う感情を抱いていないのだから、本気で奪うつもりなら他にも倒さないとならない奴が二人ほどいるんだけど??


 俺の内心としては、不快感や怒りやらは当然在るにしても、寧ろその自信は何処から来ているのか?と言う疑念の方が強く、そこまで自信を抱ける根拠は何処!?との驚愕が最も強く抱いた感情と言っても良いかも知れない。


 もしかしたらもしかして、俺が感じ取れないだけで達人級の腕前だったりするのだろうか?もしそうなら、初戦から一気に面白い事になりそうなんだけど!?



 そんな期待を胸に、ピスクシスにて最大らしい闘技場へと到着する。


 この本選からはトーナメント形式での試合となるが、既に対戦表は籤を引いた時には決まっている為に特には何をすると言う事もない。


 俺が引いたのは『7』の番号だったので、トーナメント形式で言う処では、第四試合で『8』の番号を引いた先程のミノタウロスと戦う事になる。

 なお、例の『当たり』は『9』以降での枠に入っていたので、途中で互いに脱落すると言う情けない状態にならなければ、この本選の決勝にて対戦する事になるだろう。


 決勝には、各ブロックの決勝者のみが進出する事が出来るので、ブロック事態が離れ離れになっている他の面子と戦いたかったら、嫌でも勝ち進む必要が在る、と言う事になる。

 まぁ、当初の目的から鑑みるに、嫌でも勝ち進む必要はあるのだけどね?


 通された出場者控え室にて暫く待機していると、どうやら先の三試合は既に終わったらしく、本日の最終試合であり、俺の出場する第四試合がもうすぐ始まるらしい。


 前半の四試合が今日、明日に後半の四試合を行い、明後日を出場者の休息に充てて疲労を抜き、その後に一日で四戦して準決勝進出者を決定。

 同じ流れで一日空けて準決勝、また一日空けて決勝戦を執り行い、その後獣王祭決勝の行われる首都アルカントにまた集められる、と言うのがこの本選の大まかな流れとなっている。


 些か予選と比べると性急に過ぎるとも思えるが、そもそも戦いに於いて敵は待ってくれる存在ではない。わざわざ休息に充てられる日を作れるだけまだマシな方だろう。

 何が狙いなのかは定かではないが、まぁ、それがルールなのだからそれに従う他には在るまいて。



 そうして係員の誘導のままに俺は、この獣王祭本選を十二分に愉しむ為に、アルカントにて見た覚えの在る様な結界を張られた会場と、その中央付近にて佇み早くも勝利を確信している風な対戦相手の元へと歩み寄って行くのであった。





 ……なお、あれだけ自信満々だった対戦相手なのだが、俺が開始の合図と同時に仕掛けた先制攻撃に反応する事も碌に出来ず、一撃の元に意識を刈り取られて結界から叩き出される結果となってしまったのであった。

 あの自信は結局何処から来たモノだったんだろうか……?

面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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