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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第六章・大森林編

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185/251

180・取り敢えず、提案を受け入れてみます

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 


「……それで?その後、どうなったんだ……?」


「そこを話してくれないと~、流石の僕らでも話が急過ぎて付いて行けないんだけど~?」



 一旦口を閉ざした俺に対して、聞き手に専念していた他の面子の内、昔からの付き合いであるタツとレオが突っ込んで来る。


 流石に、俺と長い付き合いが在るこの二人とて、あそこまでの情報では特にその後の展開を読み解く事は出来なかったらしく、その表情には微かな困惑が混じると同時に、早く先を話せ、と促す色が強く現れている。

 他の面子に至っては、基本的に興味が無いリル(絶賛俺の首筋に鼻先を突っ込んでイタズラ中。流石にくすぐったい)とカーラ(俺の膝にて爆睡中)を除いては、表情には怪訝そうなモノと困惑の色のみが浮かべられている。


 ……まぁ、そうなるわなぁ……。


 実際に目の当たりにし、提案された本人である俺としても突飛に過ぎる出来事であり、それをこうして後から報告と言う形にて聞かされている皆としても『良く解らん』事態になっているのであろう事は、俺としても良く理解出来る。

 もっとも、事の発端としては、魔王に対しての報告に行ったハズの俺が、帰ってくるなり皆を集めて『もう少ししたら魔王国から離れるぞ(・・・・・・・・・)』なんて言い出したのだから、その発言の真意を問い質したくもなると言うモノだろう。

 仮に俺が逆の立場だったら、まず間違い無く締め上げてから問い質しているだろうしね。


 ……ただ、言い出した人間が人間だし、そもそも俺達の現状としては割りと有難い事態では在るんだよねぇ……。


 そんな、俺の無茶振りされた人間特有の諦感に満ちた表情に何かしらを感じ取ったのか、詰め寄りかけていたタツとレオの二人も、困惑しているだけだった他の面子も改めて聞くだけは聞いてみる気になったらしく、姿勢を改め視線のみをこちらへと向けて来る。


 それを有り難く思いながら、俺としても伝えなければならない事柄であるだけに、ここで思いきってキッチリと伝えておいた方が良いだろうとの判断から、些か重くなりつつあった口を開いて皆へと告げる。




「……まず、結論から言おう。俺達の行き先は『獣人国ゾディアック』で、表向きの目的としては近々開催される武闘大会への出場となる。

 ……そして、俺が皆に対して碌に相談もしないで断定形にて話している理由としては、俺達の出場は既に確定されて(・・・・・)しまっている(・・・・・・)からで、それを決めたのも、魔王城でそれを俺に提案して来たのも全て獣王陛下本人(・・・・・・)が直接して来たことなので、現時点での俺達の身分としては絶対に断れない誘いなのでそうなってしまっている、と言う事だ。……誰か、何か質問でも在るか?」




 唐突かつあんまりと言えばあんまりな俺からの発言により、豪胆なタツも飄々としたレオも、そして比較的こう言う事態に慣れているハズのアストさんまでもが驚愕に目を見開き、一番俺の言葉の意味を否応無しに理解したのであろう『獣人族(ベスタ)』の三人は、そのあまりの衝撃の大きさにその場で固まってしまう。

 そんな皆の様子を、比較的人の社会に疎いネフリアさんが不思議そうな表情にて眺め、まだ妖精国へと帰還していなかったルィンヘン女王が視線を険しいモノへと変え、我関せずとリンドヴルムが欠伸を漏らしながら眺めていた。


 そして、そうなってしまうであろう事を予測していた俺は、半ば諦めの境地に足を踏み込みながら、つい数時間前の魔王城の執務室でのやり取りを思い返すのであった。





 ******





「話は聞かせて貰った!!!」



 半ば叫び声と化していたそんな掛け声と共に、大きく執務室の扉が勢い良く開かれた。


 それに対して俺達は、直前までそれを察知出来ていなかった為に半ば反射で振り返り、その闖入者を迎撃せんと飛び出し掛けたが、入ってきた人物の姿を視認した事により意思の力にて反射を捩じ伏せ、無理矢理身体の動きを停止させる。


 俺は魔王に会いに来ただけだったので相棒は持って来ていないし、魔王も執務中であった為に無手の状態だったので軽く手が動く程度で済ませる事が出来たが、フルカスさんは執事としてだけでなく魔王の護衛としてもこの場に居合わせていた為に、仕込んでいた得物を手にして斬りかかる事を止められずに、そのまま飛び出してしまう。


 そんなフルカスさんに対して闖入者は



「呵呵呵!主の為であればその命、惜しくは無いと見た。その忠義は天晴れだが、儂の相手をするのであれば少しばかり実力が足らなかったのう!」


「……グハッ!!?」



 と、呵呵大笑して見せた上でフルカスさんの得物を素手で軽く弾いて見せただけでなく、流れる様な動きにて彼の懐へと潜り込むと腹部へと拳を一撃捻り込んだ。

 すると、そのたったの一撃にて、この国に於いての最高戦力の一角であるフルカスさんが気絶させられ、そのまま床へと崩れ落ちてしまう。


 それを黙って見ていた俺と魔王だったが、流石に気絶している人間に向けて無駄に追撃をするつもりが無いらしく、フルカスさんを近くに在ったソファーに寝かせてからこちらへと近付いて来たのを見て、俺達の時と違って(・・・・・・・・)理性が働いている(・・・・・・・・)と判断し、軽く安堵の息を漏らしてからその闖入者へと声を掛ける。



「……それで?何でまたあんたがこんな処に居るんだ?自分の国は良いのかよ?獣王陛下」


「幾ら設置してあるからと言って、勝手に二国間の転移魔方陣を使われるのは些か『イタズラ』にしてはやり過ぎなのでは?それに、来訪時には予め相手方へと通達しておくのが取り決めだったハズ。それすらも忘れてしまったと言うのであれば、そろそろ王位を退いては如何かな?獣王カニス殿」


「呵呵呵、久しいのタカナシよ。まぁ、『久しい』と言う程も顔を突き合わせておらぬ訳でもないが、そこは気にするでないのぅ。それと魔王バアルよ。流石にそれは言い過ぎであろう?確かに、決まりを破ったのは儂であるのは間違いないが、じゃからと言ってそこまでネチネチと言われる程のことかのぅ……?」



 そう、その闖入者こそが、他国の王であり、この場に居るハズの無かった獣王『カニス・ルプス・ファミリアリス』その人であったのだ。


 最近会っていなかっただけに、接近されると反射でその毛並みを堪能しそうになってしまうが、こんな相手でも一国の国家元首である為に出そうになっている手を無理矢理引っ込め、意思の力を総動員して全力で耐えて行く。


 が、それが不満だったらしく、顔をしかめながら俺に近付いて来ると、無言のままで俺の懐へと頭をグリグリと擦り付け始める。そして、暫く無言でそれを続け、俺の服が毛だらけになってから漸く満足そうな表情を浮かべながら俺から離れ、魔王と俺とに相対する。


 そんな獣王カニスに対し、俺は服に着いた毛を(はた)き落としながら困惑の色が強い視線を向けていた。


 これまでの付き合いから、彼の獣王がかなりの自由人である事は解っていた。

 割りと神出鬼没な面も見られた為に、二国間を結ぶ様な転移魔方陣が設置されているのならば、こう言う突然の訪問もまぁ有り得ない事ではないのだろう、とも理解は出来る。



 ……だが、それ以外の部分。『どうやって』ではなく、『何故』『どうして』と言った、今回の行動に於ける理由の部分はサッパリ理解出来ないでいた。



 確かに、彼の獣王は自由人だ。

 おまけに、その地位に反してフットワークが異常に軽く、必要が在れば一人で何処にでもフラフラと行ってしまう、とはシンシアさんの父であり、獣王カニスの側近の一人でもあるライアーさんから聞いた事が在る。


 ……しかし、あくまでもそれらは『必要が在る』故の迷い無さ、即行動であり、そこには確かな『理由』が存在する。

 それが周囲へと知れ渡るのが遅いか早いかの差は有れど、確実に目的を遂行する為の行動であり、そこに『目的の無い行動』は存在しない、とも言われているらしい。

 もっとも、その『理由』が『興味が湧いたから~』だとか『好奇心が疼いて~』だとかのパターンが無い訳ではない点が、彼を孤高の王ではなく人望篤き王として君臨させれいる一端なのかも知れないが。


 それ故に、今回の来訪にも、何かしらの目的有りきで望まれているハズなのだが、その『目的』が何なのかがイマイチ理解出来ない、と言う訳だ。


 チラリと魔王へと視線を向けて見ても、どうやら彼の方にも心当たりはあまり無いらしく、困惑した表情を浮かべたままであった。

 俺としても、別段何かしらの約束の類いが在った訳でもないので、これまた心当たりの類いは無いと言えば無いし、有るとしてもほぼこじつけに近い様なモノしか思い当たらない。


 しかし、だからと言って何の目的も無しにこうして突撃をかまして来たとは、俺としても魔王としても考えてはいなかった為に、自然と獣王カニスへと訝しむ様な視線が向けられる事となる。

 まぁ、先に得物を抜いて仕掛けていたとは言え、魔王の側近であるフルカスさんに手を出して伸している以上、言い訳無用でブタ箱にぶちこまれても仕方無い事をしているのだから当然だろうけど。


 そんな俺達の視線に気が付いたのか、気不味気な様子にて頭を掻いていた獣王カニスだったが、このままでは話が進まないと判断したらしく、思いきった様子にてその意外なまでのバリトンボイスを周囲へと響かせる。



「……まぁ、なんだ。確かに、あの者には悪いことをしたとは思うが、流石にアレは儂悪くないと思うがのぅ?先に得物向けられておったのじゃから、お主らでもああするであろうよ?」


「……例えそうだったとしても、予め来訪を告げておけばそうはならなかったのだから、やはり責は獣王殿に在ると見るべきだと思われるが?

 それで?この突然の来訪と、いきなりの無体は如何なる理由に基づいて行われた蛮行なのか、いい加減説明して貰っても?」


「流石にコレは俺もフォロー出来ないから、早いところ吐いちまった方が身のためだぞ?

 それとも何か?言えない様な恥ずかしい理由だったりするのか?ん??」


「戯け!!そんなハズが無かろうがよ!?わざわざお主らの事を思ってこうして来たと言うのに、些か扱いが酷すぎぬか!?」


「……ん?その『お主ら』と言うのは、余とタカナシの事を指していると見て間違い無いのか?だが、何故に?」


「ふん、今更惚けぬでも解っておるわ。お主、タカナシらに対して出す褒美で悩んでおるのであろう?」


「…………何故、それを?」


「だから、言ったであろう?『解っておる』と。詳しくは儂もまだ知らぬ。じゃが、大方またしてもタカナシに国を救われて、その褒美として何を出すかで頭を抱えておったと言う処であろう?」


「一応、『何で解った?』って聞いておいた方が良いですかね?」


「だから、知らぬ、と言っておるじゃろうに。ただ、ギルドの方から、お主らがここ二月程たった一つの依頼で出ずっ張りになっておるらしい、と聞いた故に、そこから連想して恐らくは陥っておるであろう問題を逆算したと言うだけなのじゃがのぅ?故に、細かい事は一切知らぬぞ?例えば、お主らが受けていた依頼の内容じゃとか、どの様な危機であったのじゃとかのぅ」


「「………………」」



 本人は『知らぬ』と言ってはいるものの、殆ど俺達の現状を言い当てられてしまっていた為に、思わず言葉を失ってしまう俺と魔王。

 そんな俺達の姿を目の当たりにしたからか、何処か満足そうにその秋田犬その物な顔をニヤつかせていた獣王カニスだったが、その表情を引き締めて再度口を開き始める。



「バアルよ。お主の葛藤は理解出来る……と言うつもりは無いが、ある程度は儂にも理解出来ているつもりじゃ。確かに、望まぬモノを親しき間柄の者へと押し付ける様な真似はしたくは無かろう。じゃが、それをせねば最悪国の基盤が緩みかねんと言うのであれば、迷い無くそれをせねばならぬのが王たる者の務めと言うモノではないのか?」


「…………それは、そうではあるが……」


「そして、タカナシよ。お主も、確かに嫌なモノは嫌とも言えぬ様な環境では息も詰まると言うモノであろう。己が最も欲したモノを手離さねばならぬのであれば、尚の事であろう。じゃが、親しき友が悩んでおるのじゃから、たまにはその友の為に折れてやるのも友情と言うモノではないのかのぅ?」


「…………だが、そうなるのは……」


「まぁ、バアルもタカナシも受け入れ難いのは承知しておる。あくまでも、取りうる手段の一つ程度に思っておけば良かろうのぅ。とは言え、早急な問題としては、『魔王国の英雄』として認識されておるタカナシらが、またしても魔王国を救ってしまったが為に褒美を出さねば民意が乱れる、と言う事であろう?

 なれば、儂に一つ案が在るのじゃが、聞くだけは聞いてみるかのぅ?」


「……『案』、とは……?」


「なに、簡単な話よ。民や貴族に対して、タカナシは『魔王との個人的な友宜によっては動く』が『魔王国の戦力ではない』と説明した上で、一旦国の外へと(・・・・・)出してやれば(・・・・・・)良かろう(・・・・)のぅ。そうすれば、自ずとタカナシらに対して『自国の戦力(所有物)』である、との認識をする者は居なくなろうて」


「……しかし、王命にて国外に出すとなると、下手をしなくとも『追放』と取られかねぬぞ?それに、そう命ずる理由も無ければ褒美の件もまだ解決しておらぬのだが?」


「うむ、解っておるよ。実は、丁度我が獣人国にて儂主催の武闘大会が開かれる予定となっておってな?通常であれば一月程前までに参加を申し込み、その上で予選を勝ち抜く必要が在るのじゃが、幾ら他国を拠点として活躍しておる者であれ、『英雄』と呼ばれる程の武芸者であり、尚且つかつて我が国を救った実績を持つ者を、更に一国の王が強く推薦してくるともなれば、流石の儂とて多少譲歩せざるを得なくてのぅ……。

 あとは、言わぬでも解るであろう?」


「……つまり、俺が褒美としてその武闘大会への推薦を魔王に願って……」


「……そして、余がそれを承諾してそちらへと申請を出し、その上で『魔王』としてではなく『バアル』として優勝してくる様に頼んで送り出す、と?」


「まぁ、儂としてはそのまま獣人国(ウチ)に居着いてくれても構わぬし、何ならお主に気がある妖精女王の治める妖精国の方に行くのも選択肢としては無くはなかろうのぅ。どの道、儂としては提案するだけじゃし?参加したとしても特別扱いは出来ぬから、選ぶのはお主らになるが、どうするのかのぅ?」



 結局、他に何か良い案が浮かんでいた訳でもなかった俺達は、その提案を受け入れる事となるのであった。





 ******





 そして、実際に皆へと洗いざらい全てを伝えた上での話し合いも、ルィンヘン女王の細やかな抵抗(自分も参加する、どうせなら妖精国(ウチ)に来れば良いetc.)が見られはしたが、概ね受け入れられた為に、獣王の思惑に乗る形になるのは些か癪では在るものの、結局俺の出した方針の通りに獣人国へと赴く事になるのであった。

予定通りに今回で六章はお終い

次回からは七章となります

もしかすると、読者の皆さんが望んでいたor気になっていた展開が待っている……かも?


あと、PVが1,000,000を突破しました!読んで下さった方々に感謝です!ブクマも1,000目前なので、そちらの方もよろしくお願いしますm(_ _)m


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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