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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第六章・大森林編

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179・漸く終わったので報告に行きます

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 


「ーーーって訳で、取り敢えずあそこでケンドリックの野郎が復活する事はもう無さそうだし、術式の要となっていた祭壇も全部ぶっ壊して来たから、後は深層付近に溜まった魔力が散るのを待てば元に戻るんじゃないか?少なくとも、ルィンヘン女王とアストさんの見解としてはそうなっていたし、俺達も少なくない量の魔物を道中で間引きしたから、その内収まるんじゃない?多分だけど」



 毎度お馴染み魔王城の執務室にて、この城の主にそう報告を上げる。


 長期に渡る遠征とそれに伴う野営時の諸々から解放され、未だに疲労は抜けきっていないものの、比較的表情は晴れやかなモノとなっているだろう。

 ……まぁ、漸く安全な場所にまで戻って来れた事もあり、アストさんと『昨晩はお楽しみでしたね!』状態に突入していたのも理由の一つかも知れないけど。


 しかし、そんな晴れやかな表情の俺とは打って変わって、何処か苦々しげな表情を浮かべる魔王ことバアルと何時もの執事のフルカスさん。


 ……はて?諸々片付けて撤退しようとしていた時、大森林を出たタイミングで遭遇していたからついでにと軽く概要だけは報告を上げていたのだから、本当に初耳な事柄は無かったハズだ。おまけに、何かしらの問題点でもあったのなら、二人の性格上既に手を打っているものとばかり思っていたのだけど、何か不味い点でも在っただろうか……?


 そんな事を考えていたからか、それとも完全に表情に出ていたのかは定かではないが、こちらへと視線を向けてきた魔王が『何でも無い』と言わんばかりに手を振ってから口を開く。



「……いや、なに。彼の宮廷魔導師長に不当に我が国へと侵入されていただけでなく、危うく蘇られる処であったとなると、流石に一国の責任者としては頭の一つも抱えねばならぬ事態であった故な……」


「えぇ、国防の責任者としましても、あの人物は彼の亡国に於ける最重要危険人物としてリストに載っておりましたので、そんな人物が知らぬ間に密入国を果たしていたとなりますと、今後の国境警備の体制を見直す必要が在りますからね……」


「おまけに、そんな隠された危機を、本来であれば手を出す必要すらも無かったそなたにまたしても救われてしまったとなると、流石にいい加減何かしらの形にて報酬でも支払わぬと、周囲へ示しが付かなくなってしまう故、どうしたものか、とな……」


(わたくし)としましても、本来であればこの様な事態は発生させず、もし万が一発生した場合には速やかにそれを排除する事を目的としているハズの軍が、ここまで腑抜けた状態になっている現実に、少々衝撃を受けてしまいまして……。

 これ以上醜態を晒す様であれば、一度(わたくし)が現場に復帰して訓練からやり直させるのですが、流石に(わたくし)の代役を中々見付ける事が出来ていないのが現状でして……」



 成る程、確かにそれは苦い顔の一つもしたくなるだろう。


 そんな思いから頷いていると、魔王からはジットリとした視線を、フルカスさんからは微笑ましさと呆れが半々と言った何とも微妙な視線を向けられてしまい、思わずその場でたじろいでしまう。



「……な、何よ?俺が何かしたかよ?覚えは……無いとは言わないが、それでもそんな目をされる様な覚えは無いぞ!?」


「……そなた、本気で言っておるのか?」


「……陛下、恐らくは本気で仰られておられるのかと……」



 今度は二人揃って呆れ顔にて溜め息を突いてから再度口を開く。



「……これは、今の今まで何度も言って来たことだが、そなたが余からの褒美を受け取ろうとせぬのが問題の大元なのだからな?」


「自覚は無いかと思いますが、タカ様とお仲間の皆さんは、既に都合二回、今回も合わせれば三回この国を救っておられます。そして、その名声は我らが魔王国に留まる事はなく、既に獣人国、妖精国にまで轟き渡っておられます。そこまではよろしいですね?」


「……まぁ、一応、やらかした覚えが無い訳でもないですけど……」


「……なれば、そなたに対しての注目が、国内外を問わずに集まっておるのは承知しているだろう?」


「で、あれば、タカ様に対してどの様な褒美が国から贈られたのか、と言う情報は、あっという間に広まってしまいます。それも、結果だけが先行して、です」


「つまり、そなたが辞退して受け取らなかったのであれ、余が出し渋って支払わなかったのであれ、その『大したモノを渡さなかった』と言う結果だけが辺りを駆け巡る、と言う訳よ」


「けど、それは……!!」



 思わず口を挟みそうになった俺に対して手を掲げ、更に視線も加えて魔王が制止を掛けて来る。

 咄嗟に口をつぐむ俺だったが、それでも勝手に対してアレコレ言われているのはあまり気分がよろしくは無いのが正直な話だ。


 それもどうやら魔王にはお見通しらしく、だから言いたく無かったのだ、と言わんばかりの表情にて再度口を開く。



「そなたの言わんとしている処は余も重々承知しておる。それに、そなたと関わりの在った者達であれば、余が与えなかったのでは無く、そなたが受け取らなかったのだろうとも予想位は出来ていよう。現に、このクラニアムに住まう余の臣民達には、その様な邪推をする様な者はおらぬからな」


「ですが、そうではない諸外国の方々や、中途半端に力を付けてしまっている国内の貴族等はそう思ってはくれないのです。

 正当な報酬を支払う、との条件による引き抜きや、現在の待遇に不満が在るのだろう?と決め付けての交渉未満の押し付け等によるタカ様への過干渉や、タカ様の働きを無理矢理基準として部下の働きの評価を不当に下げたり、報酬を削減したりする扱いの不当性が今後生じて行く事が予想されますし、残念ながら有り得てしまうと言うのが現状となっております」


「そうならぬ様に、そうはさせぬ様に、断られるとは解っていながらも今まで褒美を与えようとしていたのだよ。まぁ、幸いにして、前者の引き抜きはともかく後者に関しては、まだ特には報告が上がって来ておらぬ故に、恐らくはそこまでやらかしておる者は居らぬのだろう。……頭に多分、と付けざるを得ぬがな」



 魔王とフルカスさんとの言葉を耳にし、思わず唸りながら黙り込む羽目になってしまう。


 確かに、こうなるであろう事を、一切予測していなかったと言えば嘘になるだろう。

 だが、ほぼ偶然の積み重ねによって辿り着いた現在故に、こうしなければ良かった、とは言えない事だらけ故に、ほぼ自業自得とは言え口をつぐまざるを得なくなる。


 最初の『対『小鬼(ゴブリン)』戦線』の時は、まだこの世界に馴染めていなかったし、特定の勢力や国に取り込まれる事を警戒していた事も在った。それに、そもそも俺達自体に実績が欠片も無かった為に、まだ特別な報酬の類いを受け取らなかったとしても大丈夫だった。


 その次の『対ヴァイツァーシュバイン王国戦線』では、既に諸々の実績を上げた状態かつ、魔王直轄での部隊として参戦してしまっていた上に、幾つもの戦果を上げてしまっていた為に、周囲から受け取る様に、とのプレッシャーの様なモノを掛けられる羽目になりかけもした。

 だが、この時はまだ、俺達が『魔王国所属の戦力である』との認識はそこまでではなく、あくまでも『義憤に駆られた冒険者』として参戦していた為に、ギルドを通しての特別報酬を受け取らざるを得なくなる程度で済ませていた。多少強引ではあったが。


 ……しかし、こうして一国の危機を三度も救ってしまうと、ほぼ周囲からの印象としては『魔王国所属の戦力』ないし、『魔王直属の冒険者』としての認識が、否応なしに高まってしまうのだ。それが、別段本人が周囲にそう言っていた訳でもなく、また他の国でも似た様な功績を挙げていたとしても、だ。


 一度そう言う認識になってしまうと、どうしてもそれまでの様な関係性にて接して行く事が難しくなってしまう。

 何故なら、そうして『国に所属している』と認識された者が手柄を立て、その者がそれに対しての褒美を断ってしまった場合、先程魔王が言っていた様に、次からそれ以下の手柄しか立てていなかった者は何も受け取る事が出来なくなってしまうのだ。

 何せ、周囲から『その程度の働きでそんなに貰えるとは~』みたいな嫌みの類いを向けられるだけでなく、その者の評判や名誉にも影響が出かねなくなる。そうなってしまうと、その者はまともに表を歩けなくなってしまうだろう。憐れな事に、だ。


 そして、更に悪い方向へと考えるのならば、上の者がそれを押し付けるだけでなく、働く側の者まで『どうせ何やってもそこまでの手柄は立てられないんだし~』となってしまい、労働意欲等の低下や立身出世への妨げとなる可能性も無いとは言い切れなくなるだろう。

 ……それは、流石に俺としてもあまり望ましい事態では無い。


 個人的には、あの無人島に召喚された俺達の事を、真っ先に救助に来てくれたこの国と魔王にはまだ恩義を感じているし、一番最初に俺達を受け入れてくれた場所でもある為に、わざわざ環境が荒れて欲しいとは思ってはいない。何より、未だに魔王への忠義も、この国への愛国心も忘れてはいないアストさんが悲しむ様な事態にはなって欲しくは無いしね。


 ……が、しかし……



「……そっちの事情は理解出来たと思うけど、だからと言ったってどうするつもりよ?あまり派手に動けはしないんじゃないのか?」


「……一番簡単な話としては、余がそなた達を貴族として取り立てる事なのだが……「却下」……で、あろうよ」



 俺の食い気味な否定を、まぁ当然よな、とばかりに受け止める魔王。



「そんな面倒極まりない様な地位に付けられても困るし、そもそも俺達に貴族としての振る舞いだとか領地運用だとかを求められても困るんだが?それに、もし俺達を貴族にしたとしても、以前みたいに絡んでくる貴族の連中を上手くあしらうなんて出来やしないからな?多分、下手な事を言われたらその場でそいつらぶち殺す事になるぞ?国内の不満を解消したいんじゃなくて、『草刈り』がしたいなら最初からそう言えよ?それに、貴族になんてなっちまったら、もう冒険者出来なくなるだろうがよ?折角『金級(Aランク)』まで上がって、もうすぐ『ミスリル級(Sランク)』まで上がれそうだって言うのに」


「……しかし、そうでないならどうする?余に娘でも居れば、形だけでも輿入れさせるなんて手も使えたかも知れぬがそれも出来ぬし、家や土地も既に持っておる。武具や防具も既に最高峰のモノを揃えておるし、勲章の類いを贈ろうにも軍属でない故に少しばかり無理がある。が、だからと言って何も出さぬでは、先程言った通りの展開になりかねん。そう考えると、名前だけでも貴族になってくれた方が、色々と楽なのは間違いないのだが?」


「領地を差し上げようにも、規定として領地を持てるのは爵位を持っている貴族のみとして決まっておりますし、役職にしましても付属の品として最下級ながら爵位が贈られる規定となってしまっております。また、これまでのやり取りから察しますと、領地経営等についての興味や知識もあまり無い、と言った処かと思われます。かと言って、つい先日までのアシュタルト嬢の様に陛下専属での契約を結ぶ、と言うのも悪手でしょうな。幾ら爵位を贈られていないとは言え、ギルドの方から何かしらの口出しが無いとも限りませんからね」


「だが、そうでもしないと流石に不味いぞ?余個人としても、タカナシは失い難い友人であるし、この魔王国の王としても、彼を手放すのは惜しい。かと言って、他の国にでも渡られたら、目も当てられぬ事になるぞ?何せ、自国の英雄が他国に渡ってしまったとなれば、その批難の矛先は余かタカナシかにしか向けられはしないだろう。余の方で、明確な犯人でも吊し上げ無い限りは、な」


「……でも、そんな事をすれば、むしろ余計に人心が離れて行く事になるんじゃ……?」


「しかし、そうでもしないと納得はせぬぞ?」


「そうなりますと、タカ様に拠点を他の国へと移して頂く他に無くなりますが……」


「流石に、それはちょっと。あの拠点にも、この国にも愛着な在りますから……」


「なら、どうすれば……」



「「「う~ん……」」」



 三人揃って頭を抱え、知恵を絞ろうと唸っていたその時であった。

 突然




「話は聞かせて貰った!!!」




 との声と共に、大きく執務室の扉が勢い良く開かれる。


 あまりにも突然かつ、気配を感じなかったにも関わらず、それでいて敵意や殺意の類いが感じられ無かった為に判断に迷い、咄嗟に反応する事が出来ずに固まってしまっていた俺達に対し、その闖入者は何処かイタズラ好きな子供の様な笑みを顔に浮かべながら執務室へと入って来ると、徐に口を開くのであった。

果たして、闖入者とは一体誰だ!?

一応、次回で今章は締めて、その次の話から次章に入る予定です


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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