18・落とし穴の先には、ダンジョン(仮)が広がっていました
ブックマークや評価等をしてくださった方々に感謝ですm(__)m
注※末尾に一部凄惨な表現が使用されているので、苦手な方は*で仕切られている所までで切り上げられる様にお願いしますm(__)m
「フッ!!」
鋭く息を吐きながら相棒を振るい、眼前で粗末な武器を手に飛び上がった間抜けな緑色の小人共を、数体まとめて凪ぎ払う。
『小鬼』
ゴキブリもかくやと言った勢いで、殺しても殺しても沸いてくるこいつらを、タツのスキルで見た事で判明した、こいつらの種族だが、それと同時に嫌な情報まで仕入れられてしまっている。
『異種交配にて爆発的に増える』
……もう、ね?
何処のウ=ス異本か、と突っ込みを入れたくなる様な内容だが、現に隣に立って戦っていると、必ずと言っても良い位の確率で、女性陣が狙われるので、多分間違いではないのだろう。
ちなみに、女性陣を前に出すと、余計に寄ってくる事が判明した上に、女性陣から蛇蠍の如き嫌悪感を抱かれているので、主に俺達野郎共が相手をする事になっている。
……まぁ、ぶっちゃけ俺達も気持ち悪いから、相手にはしたくないのだが、それでも倒さなければならないので、仕方なく相手している訳である。
そして、あの落とし穴に落っこちたハズの俺達が、何でこんな害虫駆除染みた事をしているのかと言うと、答えは簡単だ。
俺達は今だあの穴の中、正確に言えば、あの落とし穴と繋がっていた横穴として広がっていた『ダンジョン(仮称)』の中を、外を目指してさ迷っているのだ。
あの時、無事に穴の底へと辿り着く(落っこちる?)事に成功した俺達だったのだが、その後も壁の崩落が有ったのか、もしくはそれ以外の何かなのかは知らないが、何故か落岩が続いており、流石の俺達でも、上部から降ってきた岩が当たれば無事では済まないので、穴の底に開いていた横穴へと避難したのだ。
……そして、横穴に避難したのは良いものの、その後本格的に崩落が始まってしまい、降り注いだ土砂によって入り口が埋まり、落ちてきた穴から出ると言う常套手段が、いの一番に潰されてしまったのである。
幸いにしてこの横穴は奥へと続いており、速攻で生き埋めによる全滅endは回避出来たが、それでも先の見えない地下空間にて、サバイバルをする羽目になってしまったのだ。
……今回、こんな事態(生き埋め未遂+地下生活)になった原因は、ここに行こう、と言い出したタツと、ここに落っこちる原因のトラップを調べてみよう、と言い出した俺なので、崩落が収まった段階で速攻で土下座して謝罪したのだが、意外なことにアッサリと赦されてしまった。
……俺としては、放送規制が入りそうなレベルでの罵詈雑言に、拷問的な落とし前も追加で来る位は覚悟していたのだが、それでも俺達に助けられたのは間違いないのだし、こっちに来てからは何だかんだでお世話になっているから、と一人一言ずつお小言を頂いた上で、地上に出られたらできる範囲で『何でも』一つ願いを叶える事を約束する事になっただけで済んだのである。
……何となく嫌な予感がしないでもないし、発案者兼権利行使者の乾さんがその事を言い出した時のギラギラとした瞳だとか、権利行使者として名乗り出た他の女性陣に対するプレッシャーを感じる笑顔だとかを思い出すと、背筋に氷柱を突っ込まれた様な悪寒が走るが、別段殺されはしないだろうし喰われる訳でも無いだろうから、どうにかなりはするのだろうと期待したい。
もっとも、『出来ること』と指定している以上は、余り無茶振りはされない……と思いたいのだけれどね。
ちなみに、これはあくまでも『女性陣』に対するケジメと賠償であり、形的に見れば、完璧に巻き込まれた形であるレオには、また別口でのアレコレが有ったのだが、結果から言えば、俺達の間で付けられている『貸し借り』のレートで、レオに対して『借り一つ』を付ける事で手打ちとなった。
これで、俺とレオ間での貸し借りは0で清算され、タツとレオの間での貸し借りは、タツがレオに対して『借り一つ』となっている。
なお、俺とタツとの間では、タツが俺に『借り二つ』なので、早めに返してほしいモノである。
そんな経緯を挟みつつ、完全に横穴の入り口を塞ぎつつあった落岩や、それに伴って流入してきた粉塵等を避ける為に、横穴の奥へ奥へと移動していったのだが、それまで人一人がギリギリ立って歩ける程度(阿谷さんやタツは頭がつかえていた)の高さしか無く、横幅も二人歩けば肩が当たる程度しか無いこれぞ『THE洞窟』と言った内装だった狭苦しい空間が、とある処を境として段々と地面は平らになって『床』となり、歪な楕円を描いていたハズの側面も、徐々に滑らか且つ垂直に変化を遂げ、挙げ句の果てには高さや横幅も広がりを見せて行き、気が付いた時には、床と天井、両サイドの壁のそれぞれが平行且つ垂直に交わった正方形を描きながら仄かな明かりを灯し、見ただけでは岩とも金属ともつかず、それでいて試しに壊してみても、数分もすれば修復してしまう様な謎材質で出来た通路に変化していたのだ。
そして、その試しに砕いてみた破片をタツがスキルで見てみた(壁や床を見てみても、外の岩と同じく何も情報は得られなかった)結果として得られた素材名である『迷宮鉱』と、目の前の何もない空間から突然に沸いて出てきた『魔物』や、複雑に入り組んで進行を阻む通路等を見て、俺達はとある判断を下す。
『……ここって、所謂『ダンジョン』って奴なんじゃねぇのか?』
と。
その証拠……と言うのかは定かじゃないが、ここで出てきた魔物を倒しても、死体は塵になって消滅してしまい、後には魔石と低確率で何かしらの道具が入った宝箱(木製の箱。『宝箱』は仮称)しか残らない。
おまけに、通路には確率でトラップが仕掛けられており、その中には致死性の高いモノも結構な割合で混じっていたりした。
……突然床が割れて、底が剣山になっている落とし穴に落とされかけた上、その直後に上から吊り天井が落ちてきて、剣山に押し付けられそうになった時は、流石に死ぬかと思ったけどね。
そんな訳で俺達は、冒頭の様に出会った魔物を凪ぎ払いつつ、出口を求めてさ迷い歩いている訳なのだが、既にこのダンジョンに閉じ込められてから、7日が過ぎている。……いや、6日だったか?それとも、8日だっただろうか?
……まぁ、良いか。
太陽の無い地下故に、正確な日付は分からなくなってしまっているが、別段、日付が分からなくなった処で、死にはしないのだから。
幸いにも、食料となる外の魔物の肉は、ここに入る前に仕留めた分が有ったので余裕がまだまだ有るし、飲み水に関しても、暇と燃料(薪)に余裕が有れば取り敢えず作っておくか、で量産しておいた湯冷ましが大量にレオのスキルでストックされているので、量的には、後一月位地下生活を続けても、餓死も渇死もしないで済む。
……もっとも、そこまで俺達はともかくとしても、他の女性陣の精神が持つとは思えないのが、現状での懸念事項ではあるのだけど。
そうして、遭遇した小鬼共を殲滅し、相棒にこびり付いた返り血や肉片を一振りで振るい落としてから、女性陣の代わりに今回の戦闘を行っていた二人に声を掛ける。
「おう、そっちは無事か?」
「……当然だ」
「この程度で~、一々負傷する様だったら~、今まで軽く百回は死んでいたでしょ~?……主に修行とかで~……」
直前まで戦っていた小鬼を、纏めて2~3匹蹴り飛ばし、その全部を汚い壁の染みに変えていたタツと、護衛も兼ねて女性陣の近くから棒杭や小柄を投擲して必中必殺を成し遂げていたレオが返答する。
……レオよ。ガチレスは止めてくれ。その攻撃は俺達全員に効く。自爆攻撃は誉められたモノでは無いぞ?
……おっと、血涙が……。
「……それで?わざわざ声を掛けてきたのは何でだ?」
「聞かなくても分かる事を~、聞くためじゃあ無いでしょう~?何か有ったの~?」
それぞれ虚ろな目をしながら、血涙や吐血の跡を拭いつつ、俺へと問い掛けて来る二人。
そんな二人へと、俺の立ち位置からだけ見えているであろう、今居る通路の曲がり角の先に見えているソレを教えてやる。
「おう、喜べ。また、下り階段だ」
「「……またか……」」
そう返事をした二人だけでなく、その後ろで何事か、と期待するような目をしていた女性陣と、その事実を告げた本人でもある俺も含めて、この場にいた全員が『もうウンザリだ』と言わんばかりの表情や、内心でそう思っている事を雰囲気で周囲に伝える。
「また、『下り階段』ですの?」
「……もう飽きた。いい加減太陽が恋しい……」
「……そ、外に出るには、上りの階段が必要なのに……」
「う~ん、これはアレかな?最下層にボスが居て、ソレを倒さないと出られない、ってパターンの奴かな?」
「……で、あるのでしたら、確かに順調なのでしょうが、それが正解だと言う保証も無いのですよねぇ……」
「まぁ、下まで行って駄目だったら、今度は上に登れば良いんじゃないか?ってか、今何階だったっけ?」
「えーっと、確か……30回は階段を降りたと思うけど、正確な数は覚えて無いかなぁ……」
他にも、出てくる相手の種類によって戦闘に参加出来ない(小鬼等)事への不満や、各人が見つけた宝箱(時折通路や小部屋に設置されていた。見つけた人のモノとする約束)の中から出てきた、俺では出すことの出来ない防具の類いや、皆が使っている『スキル(仮称)』と似たような謎効果を帯びた武器を自慢しあったり(それまで使っていたモノは、レオのスキルで収納中)しながら、目の前に有った階段を下って行くのであった。
そして、それから3日程の後、穴の底に有った横穴と繋がっていた階層を一階層とした場合、丁度五十階層となる処にて俺達は、今までの階層には存在しなかった、ソレっぽい雰囲気を放つ大扉へと辿り着くのであった。
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「……なっだって?もう一度言ってはくれないかな?」
「だっ、だから!もう手持ちの食料が無くなってきたって言っているんだ!この湖の近くのヤツラは強過ぎて、俺達じゃあ狩れないって事は分かっていただろう!おまけに、道具もなしじゃあ魚も取れやしない!一体どうするって言うんだ!」
「……何を言っているのかな、君は?『食料』だったら、有るじゃないか。僕の目の前に、さ……」
「……え?大神……?お前何を言って……グフッ!?」
「……ふぅ。さて、猪戸君。コレの解体を頼めるかな?」
「おう!任せておきな!へっへっへ!新鮮な肉は久し振りだぜ!見てるだけでヨダレが出てくるってモンよ!!」
「あぁ、僕も楽しみだよ。さて、巳道寺君?皆に、新しい『食料』が手に入ったと伝えては貰えないかな?」
「……承知したよ。何せ、口減らしと食料確保が同時に出来たのだから、皆に知らせてあげるべき吉報だからね」
「では、お願いするよ。……ふぅ。全く、紗知にも困ったモノだよ。僕の気を引くためにあんな男の処に行き、その上迎えに来た僕をこんなにも待たせるのだから。帰ってきたら『恋人』である僕が、タップリとお仕置きを上げないとねぇ……ククククク!!!」
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