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174・どうにかして色々と聞き出します

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 


「……素材、だと……?テメェ、一体何をするつもりだ……!」



 ケンドリックからの言葉の中に、聞き逃せない台詞が混ざっていた為に、思わず反射に近い状態にて聞き返す。

 どうやらルィンヘン女王とリンドヴルムの二人もそこは聞き逃してはいなかったらしく、どうにかして不可視の力にて押さえ付けられている現状から脱却しようともがきながらも、俺とケンドリックとのやり取りに意識を割いているのが感じられた。


 しかし、俺としては、どうせケンドリックの野郎がそんな事を答えて来るとは思っておらず、僅かにでも俺へと意識が集中すれば良い、程度の考えに基づいての発言だったので、そうやって集中されても多分無駄になると思われる。

 ……なので、あまりこっちにばかり集中する意味はあまり無いと思いますよ、女王陛下?何なら、無視してそっちに集中した方が良いまで在るかも知れないですからね?リンドヴルムも、さっさと脱出しちゃってくれないと、後々支障が出る可能性も否定出来ないんだからね?だから二人とも、俺が加重に耐えている処を、頬を赤らめてぽーっと眺めていないの!!


 そんな俺の内心を見通したのか、それとも俺達の様子が余程面白かったのか、はたまた最初からそのつもりだったのかは定かではないが、俺の発言に応じる形にてケンドリックが口を開く。



 ーーー何を、とは、随分と間の抜けた質問をするものですねぇ。私の言ったまま、貴方達の見たままの事をすると言うだけですよぉ。

 見れば解る通りに、私の蘇生は未だ不完全でしねぇ?予め、命を落とした時に備えてのつもりで、この大森林の地脈に細工し、大規模魔方陣を分割設置し、中心点であるここにて私の身体を錬金術にて再構築を行い、ソレが済み次第死霊術の応用にて私の魂を再定着させる手筈となっていたのですがぁ、何故かこんな中途半端な状態にて止まってしまいましてねぇ?恐らく、魔力が集中し過ぎた事で『迷宮』が発生してしまった為に、そちらで魔力が消費されてしまい、術式が中途半端にしか発動しなかった、とも考えられますがぁ、それは今は関係無いので省きましょうかぁ。

 そんな訳で私は私の身体を造る為の材料を欲している、と言う訳なのですよぉ。そこに、丁度良く材料になりそう(・・・・・・・)な貴方達(・・・・)が現れてくれた、と言う事ですよぉ。

 ……これ以上は、言わなくても理解して頂けますよねぇ?


「……じゃあ、あの入り口の罠は……」


 ーーーアレですかぁ?その口振りから察するとぉ、既に理解されているみたいですが、アレは元々この『迷宮』が持っていた『ボスを据える』と言う目的に沿った機能の内の一つを私が(・・)少々弄くって、私の身体を造る為の材料としてここに連れて来させる為に設置したモノですよぉ。もっとも、中途半端な素材では私が求めていた基準には達しなさそうだったのでぇ、発動する際の基準を高めに設定していたらぁ、ソレを満たすだけのモノが掛かる事はまず無くぅ、掛かっても逃げられたりしてしまい、結局貴方達がこうしてここに来るまでに素材を揃える事が出来なかった、と言う訳ですけどねぇ?


「……機能を、弄くって……?なら、俺達に掛けられているこれも……?」


 ーーーえぇ、大当たりですよぉ。偶然とは言え、こうして『迷宮』の核と隣り合わせな状況に在るのですからぁ、研究者としては調べない手は無いでしょう?その結果としてぇ、先程も言った『罠の設置』や『出現する魔物の調整』、あとは貴方達に仕掛けているモノの大本である『内部環境の調整』は私の意のままにする事が可能になったのですよぉ!

 因みにですがぁ、貴方達に仕掛けているのは魔法の類いでは無いですよぉ?ただ単に『重力』、貴方達をこの大地に縫い付けておく為の力を、普段の数倍に設定し直したと言うだけですがぁ、自分の身体が急激に重くなった様で中々に新鮮な体験だとは思いませんかねぇ?


「……では、急激に体重が増えた、と言う訳ではないのですね!?」


『うむ、どうやらそのようじゃのぅ。やれやれ、女に無用な心配をさせるとは、あやつさては童貞じゃな?』


 ケンドリックの言葉を聞いて、何故か安堵の溜め息を漏らすルィンヘン女王とリンドヴルム。

 そして、何故か放たれた強烈な言葉の刃によって無い胸を貫かれ、遠目に見ても分かる程に表情を歪ませるケンドリック。

 ……完全に悪いのはケンドリックで、流れ弾でも何でもないのだが、この場で唯一の同性としては僅かながらにも同情を禁じ得ない。まぁ、この後殺すのは確定だけど。


「……それで?俺達を素材にして、新しく身体を造る、とは言うが、具体的にどうするつもりなんだ?腑分けでもする気か?」


 気付かれ無い様に、少しずつ身体を動かしながら、再度ケンドリックへと声を掛ける。

 通常であれば、敵対している相手の言葉に耳を傾けるなんて事はしないのだろうが、どうやらこいつは自身の行いを他人に披露する事に快感を得るタイプらしいので、取り敢えず時間稼ぎも兼ねてもう少し情報を引き出せないかと試みてみる。

 ……流石に、乗ってきたりはしないかな……?


 そんな俺の内心とは裏腹に、半ばノリノリにてテンション上げめで乗ってくるケンドリック。


 ーーーおやおやおや、それは心外と言うモノですねぇ。そんな事をしてどうなると言うのですかぁ?入り口の罠で魔物を引き込んだのならともかくぅ、既に人の形をとっていて、おまけに丁度良く男女で揃っている貴方達を『今の段階』で色々と弄くり回す事にあまり意味は無いですよねぇ?


 実質的に、取り敢えず『身体を新しく造る』事が終わったら、それに近しい事をする予定だと言外に言っているケンドリックへの嫌悪感を新たにしながら、何となく先程の台詞の一部が引っ掛かり、思い返して精査してみる。


 ……アレ?そう言えば、何でこいつ『丁度良く男女で揃っている』なんて言ったんだ?俺は半分人間辞めてるし、そもそもこの世界基準だと『人間』判定が出るかどうか微妙なラインだ。それに、ルィンヘン女王はエルフ族。こいつが例の人族至上主義とやらに傾倒しているかは不明だが、少し前の発言からして確実に下に見ているのは間違いないだろう。

 だから、と言うのも少し変な話だが、そんなエルフ族であるルィンヘン女王を、自らの身体を造る際の材料として使う事に躊躇しない、と言うのも何だか変な感じがする。……様な気がする。


 まさか、俺の龍成分を引っこ抜いてリンドヴルムに足した状態から色々と弄って……とかやるつもりじゃあるまいな?もしそうだったら、確かに『新しくて強い身体』は出来そうだけど、そもそも人間成分が0%まで低下する事にな……あ、そう言えば、元々こいつ魔物を素材にする予定だった、とか言っていた位なんだから、その辺あんまり気にしなさそうな予感も……。

 ……もしかして、コレが当たり、か……?


 だとしたら、厄介な事この上無くなるだろう。

 何せ、両方共に一度だけずつしか戦った事は無かったが、それぞれの長所を兼ね備えた存在として再誕されるとなると、物理的に超が付く程に強靭で空すらも縦横無尽に駆け回れる肉体と、無尽蔵の魔力を狡猾なまでの知能を土台として周囲へと雨の様に魔法を降り注がせる事が出来る、超級の災厄が発生する事になりかねない。


 そんな化け物が誕生してしまったのであれば、ぶっちゃけ通常の軍隊では相手にすらならないだろう。

 高位の冒険者を揃えたとしても、被害が無駄に大きくなるだけだ。


 ……可能性が在るとすれば、世界最強格の三人が集まって協力する事だろうが、それもこのままでは不可能になってしまうだろう公算が高い。

 何せ、その一角であり、三人に中で唯一の遠距離特化であるルィンヘン女王は、この場をどうにか乗り切らないと、冗談抜きに薄い本展開よりも悲惨な目に逢わされた後に落命する事になるのは免れないだろう。

 そうなると、ほぼ止められる目処が立たなくなる事になりかねない。


 ……アレ?考えれば考える程に、俺の予想が全当たりしていたらヤバい事になるんじゃないのか?もしかしなくてもなりかねない処か、多分間違いなくなるよねこの流れ!?

 ……いかん、コレは、マジでいかん。

 ここは、可能な限りの情報収集だとか、一撃で決着を付けるだとかに拘っている場合じゃ無さそうだ。あまり好きな考えじゃあないけど、この場は俺の生死は気にせずに、後先考えずあいつの命脈を断つ事だけに注力しないと、冗談抜きに国が幾つか消し飛びかねないぞ!?流石に『世界滅亡』とまでは行かないだろうが、それでも発生する被害は考えたく無くなる程のモノになるのは、間違いないだろうしね。


 そんな訳で、ソレ以上悠長にしてはいられない、との判断を下した俺は、それまで密かに続けていた呼吸法によって貯めた『気』を全身へと巡らせ、何時でも『練気』を発動して飛び出せる様にと徐々に体勢を変えて膝や足首をたわませて行く。



 ……次にヤツが口を開いたら、その隙を突いて確実に()る……!



 以前の戦いでもそうだった様に、ヤツは自身の功績を語る際には周囲への警戒が薄れる癖が在るみたいなので、そこを突くべく力を貯めながら機を待っていたのだが、それもヤツの次の一言にて呆気に取られる事により、敢えなく瓦解する事となる。



 ーーーなので、貴方達にはここで『子作り』して貰う事になりますが、別段構いはしませんよねぇ?そもそも、拒否権を上げるつもりも無いですけど、ね?



「……そのお話、もう少し詳しく……!」


『さぁ、キリキリとそなたの計画とやらを吐くのじゃ!場合によっては、協力してやらぬ事も吝かでは無いかも知れぬぞ?』


 唐突過ぎるケンドリックの発言と、それに続くルィンヘン女王並びにリンドヴルムによる想像の斜め上を突っ走った返答により、思わず込めていた力が抜けて絶好の機会を逃してしまう。


 この重大な状況で何を!?との意思を込めて視線を送ると、何やら考えでも在るのか、何故か力強い視線を返されたので、取り敢えず様子を見る為にこの場は第三者に徹する事にする。

 ……決して、ルィンヘン女王の半ば血走った目に気圧されたと言う訳でも無く、もうどうにでもな~れ♪と言った自棄に走った訳では無い。……無いったら無いのだ。


 ーーー……な、なにやら、先程までとは雰囲気が異なりますが、そこまで知りたいと言うのであれば、教えて差し上げるのも吝かでは無いですねぇ。


 そんな俺の内心を知ってか知らずか、ルィンヘン女王の剣幕に圧され、若干引き気味ながらも説明を続けるケンドリック。


 ーーーなに、簡単な話ですよぉ?そこの異世界人と女王陛下に『子作り』して頂いてぇ、その結果出来た新たな命と身体を私のモノとして再誕する、と言うだけですからねぇ。

 どうせ、貴方達の距離感等から考えてぇ、既に肉体関係位は在るのでしょう?その延長だと思えば大した苦痛でも無いですよねぇ?

 あぁ、当然、異世界人にはその前段階として私の魂の入れ物となって頂きますけどねぇ?何せ、私の魂との繋がりが無いと、出来たての無垢なる魂とは言え抵抗されかねないですからねぇ。

 では、説明は終わったので早速……




「お断り致しますわ!!」




 言いたい事は言った、とばかりに何かの作業(操作?)に移ろうとしていたらしいケンドリックに対し、いきなり大声を挙げて一喝するルィンヘン女王。

 その表情は憤怒の色に染め上がっており、元々の美貌と合わせてこの世のモノとは思えない様な、神秘的な雰囲気すら纏っている様に感じられる。


「タカ殿の身体を乗っ取り、私と子供を作らせる?その上、出来た命を糧にして新たな身体にする?ふざけないで頂きたい!

 私はあくまでも、タカ殿と愛を交わす事を望んでいるのであって、タカ殿の外見をしている別人や、タカ殿の身体だけを望んでいるのではありません!ましてや、愛の結晶たる赤子を世に産み出す事もさせずに、その言祝われるべき無垢なる魂を私利の為に犠牲にするなどと言う、そんな非道の極みの為に差し出す身体は持ち合わせてはいません!!

 貴方の様な外道に触れさせる様な、安くて穢れた身体は特に、です!!恥を知りなさい!!!」


 そう言い切ると、まだ重力操作は解かれていないハズ(現に俺の身体は重いまま)なのに、いつの間にかその場で立ち上がっていただけでなく、両腕を組んで足を開いた仁王立ちの状態にてケンドリックを睨み付け、貴様の思う通りにはなってはやらない、と啖呵を切る。


 ……ヤベェ、普段の清楚で儚げな雰囲気のルィンヘン女王も綺麗だったけど、こっちの闘争本能剥き出しなルィンヘン女王も超が付く程美しい。下手に気を抜くと惚れてしまいそうだ。いや、マジで。


 そんなルィンヘン女王に釣られたのか、同じ様に床へと押し付けられていたリンドヴルムもその身を起こし、真っ直ぐにケンドリックを睨み付ける。


『まったく、主殿と交わえるのかと期待はしたが、それも無駄に終わったと言う事かのぅ。聞くだけ聞いてはみたが、時間の無駄であったわ。

 ……古来より、妾達古龍種は絶対的に個体数が多くは無い。多くはなれぬ。故に、産まれ出し新たな命は血族総出で祝福し、全力をもってその道行きを照らし出さんと奔走する。それが、妾達にとっての常識であり、産まれて来てくれた命に対する最低限の感謝の気持ちでもあるのよ。

 ソレを、貴様は踏みにじり、汚し尽くすと公言しおった。なれば、妾は古龍の一個体としても、かつての『黒龍女帝』としても、貴様を見逃してやらなければならない理由は、一片たりとも在りはせぬ。せいぜい足掻いて、その命永らえさせて見せるが良いのぅ!』


 普段からおちゃらけている印象が目立っているリンドヴルムが、最早誰がどう見たとしても『キレている』事が解る程の剣幕と怒気に、思わず背筋が伸びる心持ちにさせられる。


 流石に、女性二人が確りと二本の足で地に立ち、敵に対して宣戦を布告している様な状況で、唯一の男である俺が何時までも地面に膝を突いているのは格好が付かない為に、膝に手を置いて無理矢理全身の筋力を総動員させて関節を伸ばし、普段の数倍以上らしい重力を掛けられた状態のままに立ち上がって見せる。


「……悪いな、ウチの女性陣はお前の提案が気に食わないらしい。かく言う俺も、お前の提案なんぞは糞喰らえ、としか返事は出来かねるから、やはり意見は同じだ。

 だから、こうして何かの間違いで墓の下から這い出てきた糞野郎を、もう一回墓穴の中に蹴り落としてやるから、大人しくこのままブチ殺される事を薦めるぞ?そうすれば、極力痛くした後に今度こそはキッチリ息の根を止めてやるからよ!!」


 俺からも、そうやって言葉を投げ掛けてやると、遠目に見ても呆れている様な表情を浮かべながら、器用にポッドの周辺へと無数の魔方陣を展開し、その照準をこちらへと合わせてくる。



 ーーーやれやれ、ここまで愚かだとは思いませんでしたねぇ。ですがぁ、まぁ、良いでしょう。偶然とは言え『迷宮』の核を取り込みぃ、無限に近い魔力を得た私の力を目の当たりにし、絶望の中で死ぬと良いでしょうねぇ!私はその後、ゆっくりと貴方達の死体を弄って身体を造り、気儘に世界を蹂躙(実験)する事にしましょうか!!



 そしてそのまま、特に合図となる『何か』も無いままに、俺達の闘いの火蓋は切られるのであった。

面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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