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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第六章・大森林編

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170・一方その頃 2

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m


今回も三人称視点になっております。ご注意下さいm(_ _)m

 

 タカナシがリンドヴルムとルィンヘン女王を連れて推定『迷宮』内部を蹂躙し、魔王バアルが軍を率いて『アンドレアルフス大森林』を目指して出陣し、スコルとカンタレラの両管理者がタカナシ達に対して里を上げての全面支援を行う事を決定したのとほぼ同じ頃。


 この『アンドレアルフス大森林』にて複数張られている最前線の内の一つ。ある意味に於いて、ソコを突破されてしまっては全てが無駄になる(・・・・・・・・)と言っても良いであろう状態となっている場所。


 現在タカナシ達が決死の吶喊により死闘を繰り広げている孔の外。


 そこでも、タカナシ達の居る場所と変わらない処か、むしろある意味に於いてはこちらの方が激しい戦闘を繰り広げていた。



「……ぬん……!!!」



 ドッッゴン……!!!



 相も変わらない普段通りの掛け声と共に拳が放たれ、何時もの通りに人体が叩き付けられたモノとは思えない様な鈍く重い音が周囲へと響き渡る。

 まるで鉄塊にて生肉を叩き潰した様な鈍い音の発生源であるタツは、その拳を叩き込んだ魔物から引き抜くと油断する事無く意識を向けながら周囲へと視線を配る。


「……これで、お終い!」


「終わりなさい!!」


 するとその先では、レオとアシュタルトとが今回(・・)の襲撃に於ける担当最後の魔物への止めを刺しており、見回す限りではもう付近には敵影は無い様に見受けられる。


 ……が、少し前にソレで痛い目を見ている彼らは油断する事無く周囲へと視線を巡らせ、気配を探る。


「……どうだ?終わったと思うか……?」


「……どうだろうね~?少なくとも~、近くにはもう居ないみたいだけど~?」


「……私も、近くには居ないと思いますが、まだ判断は出来かねますね。少なくとも、彼らが戻るまで気を抜くのは早いと言わざるを得ないでしょう。現状では特に、ですが」


 軽口になっていない何かを口をしつつ、それでも神経は弛める事無く尖らせたままで周囲を窺う三人。


 暫しそのまま周囲を窺っていた三人だったが、不意に全員が同時に同じ方向へと視線を向ける。


 すると、その視線の先には、例の孔を迂回する様な軌道にてタツ達の方へと向かってくる三つの影が存在していた。


「……トリアエズ、見て廻ってキタヨ」


『……!』


『ウォン!』


「……戻ったか……」


 その影の正体は言わずもがなでネフリア、カーラ、リルの従魔組であり、ソレを目視によって把握したタツが、安堵の吐息と共に言葉を漏らすと、漸く意識を『戦闘時』のソレから多少弛めて『戦闘準備状態』へと移行させる。

 タツと同じく、レオとアシュタルトも構えを解いて緊張させていた身体から力を抜き、レオはタツと共にネフリアからの報告を聞く為にその場に残り、アシュタルトは疲労の窺える足取りにてそれまで背にして守っていた木立の元へと急いで行く。


「……それで?どうだった……?」


「ここ数回(・・)で何となくパターン化している様に思えたけど~、本当にそうなっていたのかなぁ~?」


 そう、ネフリアに訊ねる二人の口調は普段のソレと大して変わりはしていないが、その表情は真剣なモノであり、その問い掛けの重要度を物語っていた。


「ウン、そうだネ。トリアエズ、今回も回りにソレタのは居なかったみたいだネ。これまでの傾向カラスルト、もうキマリでヨイんじゃナイカナ?あの孔から出てキタヤツラは、トリアエズ近くに居る生物を優先シテ攻撃シテ来る、って事で」


「……まぁ、流石に毎回同じ様な行動をされれば、な……」


「さっきので何回目だったっけ~?僕が数えていた限りだと~、確か十二回目位だったと思うんだけど~?」


「……惜しいな。さっきので、もう十四回目だ……」


 ……そう、彼らは、既に同じ様な魔物の襲撃を、数えておくのが面倒になる程度には受け続けていた、と言う訳なのである。



 事の起こりは今から二日前。

 タカ達が『迷宮』へと潜り始めてから、凡そ三日程が経った時に、それは突然発生した。


 何と、ソレまでは近付かなければ何もしては来なかった例の孔が、突然魔物を大量に吐き出し始めたのだ。


 その時には既に、『もしかしたら起こるかも?』と予想されていた事柄ではあったので、孔の近くにて野営しながら待機していたタツ達によって撃滅されはしたのだが、悲劇はソコから始まる事となる。



 そう、例の孔から発生した魔物の襲撃は、その一度きりでは無かったのだ。



 凡そ一定の間隔を開け、定期的に孔から這い出して来て襲撃を仕掛けて来る魔物共。

 幸いな事に、それなりの数が一度に出てくるものの、毎回種類は同じ魔物が出てくるので、一度対処の仕方を覚えてしまえば後は楽なのだが、その際に何故か近辺へと野営地を設置して留まっているタツ達目掛けて襲い掛かってくるばかりで、他の方向へとバラける様子が見えなかったのだ。


 それを不審に思ったアシュタルトが、もしかしたら一番近くに居る生物目掛けて襲い掛かってくるのではないか?と言う予想を立てた為、その確認をするべく比較的相性の良いネフリア、カーラ、リルの計三名が一時戦線を離脱し、魔物の流れを観察していた、と言うのがつい先程の戦闘の裏で行われていた調査の事実である。

 もっとも、その発想に至るまでに二日も要している以上、流石のアシュタルトも想定内とは言え突発的な出来事かつ長期間に於ける戦闘にて、思考力が低下していたのであろう事が予測出来るのだが。


 そんな訳で、最低限の情報と共に魔物の行動原理の一端を入手したタツ達だったが、その表情は芳しくは無い。


 現状、幸いにして魔物の行動原理は『至近の生物へと攻撃を仕掛ける』となっている為に、必然的に彼らへとターゲティングは集中し、他へと漏れる事は無くなっている。

 そのお陰で、周囲へと無駄に索敵を行ったりする必要が無くなり、手間が省けている免も確かに存在している。



 ……が、それは、裏を返せば、孔から発生してきた魔物を全て彼らだけで処理する必要に駆られている、と言う事にも繋がるのだ。



『迷宮』内部の魔物の強さは、周辺のマナの濃度に比例する。

 それ故に、元から高い魔力濃度を誇る『アンドレアルフス大森林』の最奥であり、それに加えて例の祭壇によって強制的に集められたマナによって無理矢理濃度を高められているその場所では、当然の様に強力な魔物が発生する事となる。


 もちろん、倒せない程の凶悪な個体が出て来た事は、今の処有りはしない。

 それに、深層序盤にて彼らが戦った『タイラントワーム』の様な、巨体による物理力にてゴリ押ししてくる様なある意味『特殊』な連中も、出てくる事は今の処有りはしていない。


 しかし、個体個体の力量はかなり高く、それでいて一回毎にそれなりの量が同時に吐き出される為、必然的に一回の戦闘にてかなりの消耗を強いられる事となるのだ。


 今の処、タツとレオはまだ言う程疲労が溜まっている状態では無いし、アシュタルトもまだまだ戦える。

 ネフリア、カーラ、リルも、実質的に『一回休み』に近しい状態だっただけに、まだまだ元気だと言っても良いだろう。



 ……しかし、誰も彼もがそうとは限らない、と言う事だ。



 現に、アシュタルトが足早に歩み寄ったその先、タツ達が背にし続けていたその木立の根元にてグッタリとしながら倒れ込んでいる、一行の仲間として『獣人族(ベスタ)』組と呼称されるサーラ、シンシア、サーフェスの三人の姿があった。


 もちろん、彼女らも果敢に戦ってはいた。

 この『アンドレアルフス大森林』へと足を踏み入れた当初であれば、その実力から途中で命を落としていた事は間違いないだろう。

 だが、これまで倒してきた魔物から得た力と、常に命懸けで勝てるかどうかギリギリの強さの魔物を宛がわれる事によって発生する死闘により、彼女らの力量も必然的に鍛え上げられ、現在に於いては相手を選ぶ必要は在るものの、一人で討伐適正ランクSの魔物を討ち果たす事すら可能になっている。


 そうして必然的に鍛えられた彼女らは、仲間との巧みな連携により次々に孔から這い出して来た魔物を撃破し続け、ここ最近の様に戦線から遠ざけられる事もなく、立派に一戦力として活躍して見せていたのだ。


 ……しかし、そこで思わぬアクシデントが彼女らへと襲い掛かる事となる。それは、体力面での問題。所謂スタミナの問題だった。


 当然、種族傾向として『獣人族(ベスタ)』である彼女らは、普通の『人族(ヒューマン)』よりも遥かに体力は多い。

 少なくとも、一昼夜程度であれば、普通に戦い続ける事はそこまで負担の大きな行動とは言えない、と言う位には。


 だが、一体一体が凶悪極まりない程の戦闘力を持ち、常に死と隣り合わせな状態での戦闘を強いられるだけでなく、二日に渡って一定間隔とは言え絶えず湧き出続けて来る魔物を相手に戦い続ける事は、肉体的な体力だけでなく精神的な物にも大いに負担を掛ける事となり、実際の消耗よりも多く早く体力を削り取って行く事となったのである。


「……これは、一回下げる必要が在る、が……」


「流石に~、それはそれで少し厳しいんじゃないかなぁ~?分かっているとは思うけど~、僕とタツとだけじゃあ二回が限度だと思うよ~?」


「サーラ殿方を下げるのであれば、最低でも運搬と護衛として私とネフリア殿は必須となってしまいます。流石に、カーラ殿とリル殿がいらっしゃればどうにかなるとは思いますが、例の罠が発動するリスクを考えますと、少々厳しそうではありますね……」


「……しかし、それではどうする?このままでは、次の波までに回復は出来ないだろう。それに、俺達とて、そこまで余裕綽々とは言い難い状態だ。少なくとも、貴女達はそうだろう……?」


「……それは……」


 思わず言い澱むアシュタルト。

 しかし、タツからの指摘に間違いは無かった為に否定する事も躊躇われ、思わず言葉が出てこなくなる。


 そしてそれは、荒げた息を整える事に専念していた『獣人族(ベスタ)』の三人も同様であるらしく、自らの力不足を嘆く様に拳を握り締め、奥歯を噛み砕かんとするばかりに食い縛っている。


 思わず項垂れる女性陣に、内心で罪悪感を募らせながらも、タカに最も近しい人間の一人として、言わねばならない事を言うのが自身の仕事だと認識している以上、些か重くなってきていた口を自ら無理矢理抉じ開ける。


「……ヤツ(タカ)が作って行った『回復薬(ポーション)』も、残りはそこまで多くは無い。既に、気付けやドーピングとしても使用し、残りは半数程だ。ヤツから『封印指定』されているモノを投入するならまだしも、このままでは確実に回復手段が無くなる。ルィンヘン女王とは違い、貴女は回復魔法がそこまで得手では無いだろう。……なら、ここは一時的にでも下げねばならない。そうしないと、次の波で命を落としかねない。もし大丈夫だったとしても、その次やそのまた次まで守りきれる保証はしてやれない……」


「ここにタカも居てくれれば話は別だったんだけど~、僕達だけじゃあそれが限界かなぁ~。それで~、どうするの~?無理をして命を落とすのは~、僕達は勿論だけどタカも褒めてはくれないと思うよ~?」


「……少なくとも、俺達は足手まといだなんて思っちゃいない。ただ、今のままでは戦えないのだから、少し休んで早く復帰してくれればそれで良い。もちろん、俺達だけでどれだけ持たせられるか分からないから、早めに戻って来てくれる方が有難いが、ね……?」


 レオのフォローと、タツ本人による心情の吐露により、渋々ながらも漸く後方に下がっての休息の提案を受け入れた三人。


 それに安堵して胸を撫で下ろし、これまで通りならまだ大丈夫なハズ、と思いながらも、一応孔の方を警戒しながら準備を始めたタツとレオが、突然下げていた顔を上げ、同じ方向へと視線を集中させ始める。


 しばらくそうして意識を集中させていると、タツはその厳めしい顔を僅かに綻ばせ、レオは普段浮かべていたふにゃりとした笑みを再び口元へと浮かべ直す。


 そんな二人に見惚れているのか、何処かポーっとした視線を送るシンシアとサーフェスを尻目に、二人は準備の手を止めて何処か安堵した様な表情を浮かべ始める。



「……どうやら、下がらなくても良くなったみたいだな……」


「……え?それはぁ、どう言う事でしょうかぁ?」


「何で来てくれたのかは知らないけど~、これでどうにかなりそうかなぁ~?」


「……え?『来てくれた』?こんな処に、一体誰が??」



 言葉だけを拾ってしまい、若干混乱しかけていた二人へと説明する事無く、タツとレオの二人は援軍として来てくれた、この場には居ないアイツが見たら狂喜乱舞しそうだな、と予想出来る光景を目指して、一歩大きく踏み出すのであった。

次回から主人公視点に戻る予定です


あと、前回の後書きにも書きましたが、当作品がネット小説大賞の1次予選を通過しておりました

一重に皆様の応援のお陰だと思っております。

これからも変わらない応援をして頂けます様心からお願い致しますm(_ _)m


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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