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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第六章・大森林編

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169・一方その頃

今話は三人称視点で少々短めです。


ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 

 タカとリンドヴルムとルィンヘン女王とが『迷宮』と思われる孔へと突入し、地下にて魔物と激闘を繰り広げている頃、各陣営もそれぞれの思惑や行動理念に従っての行動を開始していた。



「行くぞ!我らの国を、我らが守らずして如何にする!かの英雄『黒槍』へと全てを押し付けて、何が魔王国軍か!何が魔王か!!

 この魔王バアルと共に、英雄がその身を挺して抑えし我らが国の危機を打ち払わんと志す者は立ち上がり、武器を手にして余に続け!出陣だ!!」



「「「「「「「うぉぉおおおおおお!!!」」」」」」」



「やってやる、やってやるぞ!」「あの英雄『黒槍』と、我らが魔王陛下が付いているんだ!絶対に守りきって見せてやる!」「そうだ!『魔族(イヴル)』ですら無い彼に、これ以上俺達の国の問題を押し付けられるか!」「俺達の国は、俺達で守ってやる!そうだろう!?」「そうだ!俺達で守るんだ!!」



 ……タカへと依頼を出し、その上で正式に冒険者ギルドへと『アンドレアルフス大森林』の監視並びに周辺に出没した魔物の駆除を依頼として出していた魔王バアルは、結果的に一月程の時間を稼ぐ事に成功していた。

 その時間の殆どを費やして、予め送っていた調査員を大幅に増員し、自身でも『アンドレアルフス大森林』の調査を進めると同時に疲弊していた軍への梃子入れも平行した甲斐もあり、こうして国内ながらも再度の遠征を行う事が出来るまでになっていた、と言う訳である。


「……陛下」


「……フルカスか、どうした?」


「ご指示の通り、私とアスモディアも参戦し、首都には残りの『六魔将』を残す手筈となっております。指揮権はレアンドラに固定。同じ『六魔将』でも、陛下からの指示か、もしくは私とアスモディアの両方からの承認が無ければ動かせない様にしてあります」


「……うむ、そうか。苦労を掛けるな」


「……いえ、私程度の働きでは、彼の御人の苦労には欠片程度も届きはしないでしょう。私達には、それだけの恩が彼の御人には御座います故に」


「そうだ。その通りだ。彼は、元々何の関係も無く、我らを倒さんとして、無理矢理この世界へと連れてこられた被害者だった。故に、我らを害する権利は在れど、我らを助ける義理は無かった。

 ……それなのに、我らへと恨み言を漏らす事もせず、助けて貰えたからそれで良い、と全てを水に流して見せた。それだけで無く、(えん)(ゆかり)も有りはしない我らに対し、一度ならず二度までも多きな手助けを買って出でてくれた。そして、今現在三度目の大いなる手助けを行っている真っ最中なのだろう。感謝してもしきれぬよ。

 ……今ほど、この安い頭を地に擦り付け、我らがどれだけ感謝の念を抱いているのかを示せない事が煩わしいと思った事は無い。全く、ままならぬモノだな……」


「……心中、御察し致します。しかし、コレだけ多大なる貢献を、連続して寄与して下さっている彼の御人に対し、これ以上特別な褒賞を贈らない、と言うのは、些か問題が在るとこの爺めは愚考致しますが、如何なさいますか……?」


「……うむ。問題は、そこなのだ。彼は、全て自分達がやりたいと思ったからやった事、だから特別な何かは必要ない。もし何かをくれてやりたいと思うのであれば、それだけこの国を『良い国』にしてくれればそれで良い、としか言わぬからな……。彼は、正確に言えば我が魔王国の臣民と言う訳では無い。故に、命じて何かを受け取らせる様に仕向ける事は出来ぬ。

 ……当然、命ずれば否とは言うまいが、これまでの様に気安い関係では居られなくなるのは、間違いあるまい。余とて、対等に接してくれる貴重な『友』を失いたくは無いのだ。分かってはくれぬだろうか?」


「……それは、私も理解しているつもりであります。ですが、これ以上何も下賜なさらないと、他の者が功績を立てても何も受け取れなくなってしまいますし、何より示しがつかなくなってしまいます。

 ですのでどうか、此度の一件が終わり次第、彼の御人をどうにか説得して頂けると大変有難いのですが……」


「…………考えては、おこう。それよりも、今は目先の危機をどう凌ぐか、だ。状況は、判明しておるのか?」


「はい、陛下。現地に赴いた部下と冒険者達からの情報によれば、まだ表層付近の魔物が外へと出て来ている程度の様ですが、大森林に慣れたレンジャーや狩人の話によれば、やはり普段は出てこない様な魔物が表層の比較的浅い場所にも徘徊する様になってきたとの事であり、既に予断を赦さない状況へと移行しつつあると考えられます」


「なら、なおの事急がねばなるまい。フルカス、アスモディア、行くぞ!タカが原因を解決してくれたとしても、我らが魔王国に被害を出してしまっては彼に申し開きが出来ぬからな!」


「「はっ!!」」



 そうして、『アンドレアルフス大森林』へと軍を率いて魔王が向かっているのとほぼ同時刻、所代わってこちらは彼らが目指している『アンドレアルフス大森林』の深層に在る里。

 人の分類にて『古代種』と称される二種類の魔物達によって作られ、彼らが巡らせた魔物避けの結界によって守られている、深層に於ける数少ない安全地域の一つ。


 そんな、文字の通りに『人外魔境』であるその里にて、纏め役でもある二頭の魔物が自らの血族を周囲に侍らせながら、会談と言うには物々しく、密談と言うにはオープン過ぎる微妙な雰囲気にて口を開く。


『……さて、では改めて問うが、客人への対応を変えるつもりは無い、との事で良いのよなぁ?』


『そらぁ、当然やわぁ。元々旦那はんの人柄見るのも目的の内やったんやから、それで『良し』と出たんならそのままで行くのがえぇんちゃうん?少なくとも、旦那はんはウチらの事は警戒してないみたいやし、下手打たない方がえぇと思うけどなぁ?』


『……しかし、相手はあくまでも人間だ。そこの一点にて相容れぬと主張する者の言い分はどうする?無視するのであれば、要らぬ風波を立てる事に繋がるのよなぁ』


『それこそ無視しはったらよろしおす。そもそも、里の危機や言うのに文句だけ抜かして何もしはらなんだ連中に、四の五の言わせてやる理由は有らへんのとちゃうん?少なくとも、ウチはウチの孫助けてくれはった旦那はんの事を贔屓にさせて貰いますえ?そっちはどないするん?』


『ふむ。まぁ、お前さんにそう言われては、ワシもそうせざるを得ないのよなぁ。どの道、彼らがしくじればワシらとてどうなるかは分からぬ。あの孔の中へと入っては行けぬ以上、彼らにどうにか『して貰う』しか無いのだから、それについてどうこうと抜かすだけの連中なんぞ、考慮に入れてやる必要は無いと言えば無いのよなぁ』


『なら、あの子達がこっちに戻ってきぃはった時に決めた通りでよろしおすなぁ?』


『うむ、それで良かろうよ』


 そう二頭が決定を下した事により、周囲の血族達が俄に騒がしくなる。

 中には、若干思うところが在る様な反応を見せる個体の居はしたが、だからと言って二頭の決断に異を唱えるつもりも、タカ達への敵意を露にする訳でもなく、それらの中ではどちらかと言うと複雑そうな表情を浮かべている個体が大半を占めていた。


 そして、特にタカ達へと思うところが無い個体、特にまだ『幼い』と言っても良い程に若く、彼らと直接的に触れ合った事の在る世代の者達は、その瞳を期待で輝かせながらソワソワと落ち着きを無くして身動ぎし、二頭の次なる言葉を待ちわびる。




『ほな、旦那はん達にあの子達が今後も同行する事に許可出して、その上で旦那はんがウチらに言うてはった『もふもふしたい』って希望を叶えてあげはる、って事でよろしおすな?』



『うむ。ワシとしても、それで異存は無いのよなぁ。……しかし、こんな爺と婆なんぞ触って何が楽しいのかのう?それならまだ、自分にくっついて来ていた幼子達を触っておれば良いと思うのよなぁ』




『……まぁ、そこは旦那はんなりに拘りが有らはるんちゃう?それに口出すのは野暮言うんやないの?それに、旦那はんが望まれるんやったら、好きな子を好きに撫でさせてあげはったらよろしおす。その上で、宴の一つも開いて漸くトントン言う処やないん?』


『落とし処としては、それが最適よなぁ。もっとも、それを成す為には全て狩り尽くす(・・・・・・・)必要が在る訳だが、ソコは心配要らぬみたいよなぁ』



 ワフワフワフワフキャンキャンアウアウヘッヘッヘッ!!



 チュンチュンチュンチュンピーピーチチチッ!!



 二頭が出した結論。

 それは、タカ達をあくまでも『救ってくれた恩人』として迎え入れ、『敵対していた人間』としては扱わないと言う、人間に追われてこの場所に里を構えた経緯を持つ彼らにとっては決して有り得るハズの無い、半ば『異例』と言っても良いであろう程の事態。


 しかし、それに異を唱える者はおらず、むしろその決定が下された事を祝福するかの様に、幼子達はそのモフモフの尻尾や翼を振り回して自らの歓喜を周囲に示している。

 それに吊られる形にて、やや年かさの層から始まり、終いには胸の内にて思う処を抑えていた者すらも、その決定を受け入れる様に表情を和らげ、緩やかにその尾を振り翼をはためかせていた。


 そんな中、外へと繋がるアーケードから、一組のフェンリルとカラドリウスが飛び込んで来た。

 その尋常ならざる様子に、スコルとカンタレラの周囲に居た者達は俄に騒がしくなるが、当の二頭はそれを見越していたのか、特に慌てる事もなくその場から立ち上がり、皆へと号令を掛ける。




『では、行くぞ皆の衆!客人にばかり戦働きを任せ、肝心の場所に近付けぬからと何もせぬのはワシらの恥と知れい!!』



『ウチ達の里はウチ達で守る!それすら出来ひん言うんやったら、フェンリルの名折れと心得よ!ほな、あんじょう気張りや!!』




『『『『『ウォォォォォォォオオオオン!!!』』』』』



『『『『『……………………!!!』』』』』



 二頭の号令に呼応し、成体に近い年頃の者から順にアーケードを潜り抜け、例の孔の方へと走り出す。

 それを見送る事で、タカとの約束の内の一つを果たせた事に満足した様に一つ頷くと、自身も戦線へと加わる為にアーケードへと向かって行くのであった。

次回かその次位からまた主人公視点に戻る予定です。


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m


あ、そう言えば、何時の間にかネット小説大賞の1次予選を通過していました。

皆さんの応援に感謝です(^^)

……2次も通ると、良いなぁ……(´・ω・`)

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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