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168・突入開始します

ブックマークや評価にて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 

 俺とルィンヘン女王とが『迷宮』への突入要員へと選出されてから早数日。


 俺達は、全員で揃ってあの孔の付近へとやって来ていた。


『では、よろしく頼むよなぁ』


『あんじょうよろしゅう、お願いしますぇ?』


 一応、案内役兼道中の護衛として二頭に同行して貰ってはいたが、以前とは違い『獣人族(ベスタ)』組の三人もこの辺りである程度戦える様にはなってきていたので、恐らく必要無かっただろうが、二頭の要望により見送りも兼ねているので、断る理由も無かったからお願いしたのだけどもね?


「分かってます。最善は尽くしますが、いざとなったらお願いしますね?」


 俺のその言葉に頷く二頭。

 まぁ、そこは断られるとは思っていないので、一応念押ししておくか?程度なのだけど、しないよりはしておいた方が良いだろう。多分。


「……そら、持っていけ……」


「手持ちで出来るだけ嵩張らない様に工夫してみたけど~、それでもそこまで量を確保出来ている訳じゃないんだから~、そんなに長持ちはしないからね~?多分~、戦闘をこなしながらだったら~、もって一周程度のハズだから~、注意してよ~?」


 同じく見送り兼突発的な事態への対応人員であるタツとレオが、俺とルィンヘン女王とに纏められた荷物を渡して来る。

 その中身は基本的に食料であり、携帯性に優れたタツお手製の諸々がこれでもか、と詰め込まれている。


「おう、サンキュ。幸いにして、水の心配はしなくても良いみたいだから、その分食料に回せたのは有難いよな」


「えぇ。魔力さえ有れば、飲み水の確保程度幾らでも可能ですので♪」


「……クッ!そう言う処は、精霊に愛されし『妖精族(アルヴ)』故のアドバンテージですか……!」


 ……何故かアストさんが悔しそうにしているが、そこは種族的な相性なのだから仕方無い。気にしない気にしない。


「じゃあ、行ってくる。その間の事はお願いしますね?」


「はい、任されました♪タカ殿の『婚約者』として、確りと務めさせて頂きますね?」


 他の面子とも別れを済ませ、暫定的な司令官モドキとして任命したアストさんと最後に言葉を交わす。

 ……いや、確かにそう言う関係モドキであるのは否定しないし、もう『そう言う関係』になっちゃったのも否定しないけど、だからってルィンヘン女王を煽る様な発現しなくても良くないかい?


「……クッ……!もっと、私が早く出会えていれば……!ですが、考え様によってはここからの逆転が最もし易いのはこの私!目指せ!『迷宮』内部での既成事実!!」


『……まぁ、目指すのは構わぬが、妾もおる事を忘れぬ様にの?せめて、同意の上でヤるのじゃぞ?』


 ……ほ~ら、何か変な方向で要らない気合い入れちゃってるじゃないのよ。どうすんのよ、コレ……。


 そんな内心を無理矢理誤魔化し、ルィンヘン女王と共に荷物を背負ってから例の魔法を掛けてもらい、孔へと近付いて行く。


 この数日間にて、物資の調達だけでなく孔の調査も進められており、俺とルィンヘン女王とで近付いても、例のトラップが発動しない事は既に確認してある。その上でリンドヴルムを加えたとしてもギリギリ大丈夫だと言う事も把握してある為、リンドヴルムを何時もの様に頭にへばりつかせた状態にて孔へと接近し、躊躇う事無く飛び込んで行く。


 明かりの無い暗闇へと飛び込むのに少々恐怖心が沸き起こらないでも無かったが、事前の調査にて影になっている部分に足場が在る事は分かっていた為に、少々の落下感を除けば特に何が在る訳でもなく、危なげ無くルィンヘン女王と共に着地する。


 光を求めて視線を上げれば、普通は助走やロープの補助が無ければ脱出する事が出来なさそうな高さに孔の縁が確認出来たが、どの道最低限内部を掃除する位の事をしなくては外へと出られはしないので、あまり気にしない事にする。

 気にしなくても良い事は気にしない。コレ意外と大事。


 上げていた視線を下げ、隣にいたルィンヘン女王の様子も確認してみるが、当然俺と同じく無事に着地しており、その指に嵌めていた指輪型の魔道具を外して戦闘態勢へと移行しつつあった。

 それに倣う形で、俺も背負っていた相棒を片手に構え、穂先の鞘を腰に差して収納し、何時でも戦闘に突入出来る状態へと移行し、頭部のリンドヴルムも同じく飛び立たせて周囲の警戒へと移らせておく。


「では、一応確認をば。今回の目的としては、通常の『迷宮』になれば存在するハズの核を探索し、発見と同時に調査へと移行。破壊しても周囲への影響が大きく無い、又は今回の一件で良い方向へと影響をもたらせる事が判明し次第核を破壊し、速やかに脱出するのが最善。

 最悪でも、この『迷宮』がどの様な意図や術式にて創り出されたのかの把握、ないしこの『迷宮』の構造を一定割合以上把握する事、で良いですね?」


「えぇ、もちろんです。それに加えて、内部にて発生している魔物の掃討まで出来れば言う事無しなのですが、流石にこの人数と限り在る物資では高望みと言うモノでしょう。

 ……ついでに、私との仲を進展させる為に、一線を越えて頂いてもよろしいのですよ?そうなれば、今回の一件で得られる結果の内、考えうる最善の中の最善となること間違い無しかと……!!」


「ハイハイソウデスネー」


 あんまりと言えばあんまりなルィンヘン女王の発言を、全力での棒読みにて回避しながら周囲へと視線を巡らせる。

 一応、頭上の孔が入り口となっているからか、今居る場所が『迷宮』のスタート位置となっているみたいだが、以前に潜った事の在る『迷宮』の様に壁が光っている訳ではないので、周囲の情報が視覚的には入って来ない。まぁ、要するに真っ暗で良く見えない、と言うだけなのだけど。


 取り敢えず、こっちに進め、って事なのだろう、一本道の通路の入り口が辛うじて頭上の孔から入ってきている陽光によって確認出来ているけど、その奥まで見えている訳でも無いので、何が出てくるのか、そもそも何か居るのか居ないのかすらも良く分からない状態だ。



 ……どうしようかな~。取り敢えず、通路に向けて『風切り』でもぶちかまして様子を見てみるかな~……?



 そんな事を考えていたからか、それとも何時までも進もうとしない俺を見かねたのかは定かではないが、俺の後ろに居たルィンヘン女王が手を一つ叩く音が聞こえたのと同時に、背中から強めの光が発生したのが感じられた。


 思わず振り返ると、そこには手の上に光球を浮かべたルィンヘン女王の姿が。


「お困りの様でしたので、こちら等如何でしょうか?初級魔法『ライト』の術式ですので、大して魔力は使いませんし、灯りがないと不便かと思いますが、如何でしょう?」


「…………じゃあ、お願いしますね……?」


 俺の返事に笑顔を浮かべると、手を振って光球を放ち、俺達の頭上に来る様に浮かべて両手を空にするルィンヘン女王。


 一瞬、心を読む様な魔法でも使っていたんじゃあるまいか……?と若干疑いの念を浮かべながらも、視界が確保出来た事により留まる理由も無くなった俺は、周囲を警戒しながら目の前の通路へと足を踏み入れて行くのであった。





 ******





「……ふっ……!!」


 呼気を鋭く吐きながら、中段に構えていた相棒を素早く突き出す。

 それにより、飛び掛かろうとしていた魔物の心臓を貫き突撃を止める事に成功するが、それと同じ種類の魔物がその背中を踏み台として跳躍し、俺の頭部を標的として牙を剥いて襲ってくる。


 前に居た魔物が目眩ましとなっていた為、ほぼ完全に不意を突かれる形での奇襲を受けてしまうが、気配にて事前にソレを察知していた俺は、慌てる事無くそちらへと視線を上げて目視にて確認を行い、その上で相棒を引き戻してその襲撃に対して備えようとする。

 ……が、何故か大きな抵抗感によって相棒が固定され、動かそうとしても手元へと引き戻す事が出来なくなっていた。


 突然の事態に驚愕して視線を戻すと、そこには心臓を貫かれながらもまだ息絶えず、その両手にて相棒の柄を掴み、両手の筋力と貫かれている胸部の肉の締め付けにより半ば無理矢理相棒を固定し、その口元から吐血を溢しながらも、同時に笑みの様なモノを浮かべている魔物の姿が在った。



 ……こいつ、死なば諸とも、だと……!?



 これまで遭遇した魔物とは一線を画し、自身が死んでも相手を倒せればそれで良し、と出来る精神性に戦慄すると同時に、コレさえ押さえれば仲間であれば(てき)を倒せる、と言う信頼性を築いていた事に衝撃を受け、一瞬であれ意識に空白を作らされてしまう。


 次の瞬間には正気に戻り、瞬時に脳内にて『突き込んだ穂先をもう半回転させて倒しきってしまってから対応する』、『一旦相棒を手放して『技能』にて新たに創り出した得物にて防御する』、『相棒は手離さずにその場で回避してから着地時を狙って蹴り飛ばす』等の無数の選択肢を思い浮かべるが、如何せん既に一拍遅れの状態となってしまっていた。

 このランクの魔物が相手となると、一拍の遅れが致命的な隙へと直結してしまう為に、どの選択肢を選んだとしても僅かな差でこちらが先に獲られる未来が見えてしまう。

 当然、相手が魔物であり、その上でここまで思い切り良く爪を振りかぶっている以上、直前にて躊躇う様な事態には期待するだけ無駄と言うモノだろう。



 ……ヤバい、殺られる……!?



 そう判断を下した俺は、回避や防御の選択肢を全て捨て、相棒の柄から離した手の中に小太刀を創り出して握り締める。


 俺の認識不足にて殺られるのだから仕方無いとは割り切れるが、だからと言って大人しく殺られてやるつもりは毛頭有りはせんぞ!最悪でも、相討ちには持ち込んでくれるわ!!


 覚悟を決めた俺は、飛び掛かりつつあった魔物の爪牙が届くのと同時に突き立ててやろうと手にした小太刀を振りかぶる。



 ……しかし、そんな俺の覚悟は、俺の背後から飛来した二つの影によって無駄なモノとして切り捨てられる事となる。



 何故なら、俺へと目掛けて飛び掛かろうとしていた魔物は、俺の目でも霞んで見える程の速度にて突撃してきたリンドヴルムにの体当たりによって弾き飛ばされ、その先にてルィンヘン女王が放った魔法によって跡形もなく消し飛ばされる事となったからだ。


 あまりと言えばあまりな展開に、先程とは別の意味にて固まってしまった俺の意識は、同じく突然の展開にて固まっていた魔物がモノのついでとしてリンドヴルムに蹴散らされ、それによって固定から解放された相棒が『迷宮』の床へと落下した際の金属音にて漸く解放される事となる。


 …………そうねぇ~、いたねぇ~二人とも。

 すっかり忘れていたけど、ちゃんといたんだよねぇ~……。

 ……今までの俺の覚悟、一体何だったんだろうねぇ~……。はぁ……。


 思わず内心にて呟きを漏らしてしまうが、それも仕方無いと思って頂きたい。

 ……頂けると、良いなぁ……。


『主殿!妾達も居るのを忘れないでもらいたいモノよのぅ!』


「そうですよ!ここに居るのは私達だけなのですから、もっと頼って頂いても良いのですよ?」


  一人で黄昏ていると、周囲の魔物を殲滅したリンドヴルムとルィンヘン女王が声を掛けて来た。

 既にこの『迷宮』に潜って数時間は経っているハズなのだが、踏み込んだ当初と変わらないテンションにて魔物を殲滅し続けている一人と一頭に、若干ながらテンションが着いて行けずに内心引き気味の俺だが、そこは問題ではないから敢えて無視する事にしておく。


 そう、この場での問題点とは、俺がリンドヴルムとルィンヘン女王の二人との連携が上手く取れていない、と言う事だ。


 以前であれば、こうして連携を取る様な相手はタツとレオしか身近には居なかった。故に、放っておいても半ば勝手に動きが調律され、自然と連携が取れる様に調整されていたのだ。


 乾達転移組が居た時は、常に傷付け無い様に、危険になるべく晒さない様に、と言う点に半ば無意識的に気を配っていた節が在り、その上で俺達が彼女らに合わせる形での調整をしていたので、どうにか連携の様な体裁を整える事が出来ていた。


 アストさんや従魔の皆、『獣人族(ベスタ)』組の皆と組む時にも、大概はあの二人も一緒に居た為に、互いに調節しあってどうにか合わせる事が出来ていたのだ。



 ……ここまで言えば察して貰えたとは思うが、俺は戦闘時に他人(ひと)と連携を取るのが苦手だ。

 特に、実力が大きく離れておらず、互いに相手に合わせ合う事が必要な相手と連携を取る際に、それが顕著に現れる事になる。

 さっきのやり取りが良い証拠と言っても良いだろうね。



 もっとも、タツやらレオやらに言わせたり、俺本人としての所見としては、どちらかと言うと『連携が出来ない』のではなく『仲間の存在を忘れる』傾向が強いみたいなのだけど。


 ……意味が分からない?

 まぁ、だろうね。

 俺本人としても、タツやレオ以外の人や、実力的に意図的に気を掛けておかなければならない相手では無い、実力的に近しい相手の場合は、何故かその存在が頭からすっぽ抜けてしまう理由は分からない。ほぼ無意識的な行動みたいだからだ。


 だからと言って敵として認識したり、間違って攻撃したりはしないみたいなので、多少困りはしても矯正する程でもない、と今の今まで放置していたのだが、コレを機に矯正するべきだろうかね?


 そんな事を決意しつつ、結局使う事無く手持ち無沙汰になってしまっていた小太刀をルィンヘン女王目掛けて投擲し、膝の動きだけで相棒を拾い上げてからリンドヴルムの飛んでいる方へと大きく振るう。


 突然行われた俺の奇行に、驚愕の余り固まってしまう二人。


 しかし、そうして振るわれた刃により、自身の背後から断末魔の叫びと共に生暖かい血飛沫が僅かながらに浴びせかけられる事によって事態を把握したらしく、驚きに目を見開きながら各自背後へと振り返る。


 するとソコには、眉間に小太刀の突き立った魔物と、相棒によって首を断たれた魔物の死体が分解されて行く様だけが広がっていた。


「……俺も、次からはもう少し頼りにさせて貰いますので、二人も背中にご注意を。流石に、背後からバッサリ、って終わり方は嫌でしょう?」


 少々嫌味に聞こえたかな?と心配になりつつも、それで注意が向くのならまぁ良いか?と判断し、再度相棒を構えながら『迷宮』の探索を続けるのであった。



 ……何故か潤みを増した瞳に、ある種の熱情の様なモノを浮かべているルィンヘン女王の事は全力でスルーしながら。

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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