154・調査開始します
ブックマークや評価ポイントにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m
道中幾度か夜営をしていた事もあり、仲間との夜営が初めてだったらしくだったらしいルィンヘン女王(世界樹の調査の為に単独での夜営なら経験が在ったらしい)のテンションも、そろそろ下火を迎えつつ、それでも尚楽しそうに女性陣とアレコレとやり取りをしている様を眺めながら、こう言う処は結構可愛げが在るんだよなぁ、と思いながら一夜を明かした今日。
俺達は、本格的に依頼の通りにこの『アンドレアルフス大森林』の調査へと乗り出すべく、各人での装備の調整等を行ってから森の縁へとやって来ていた。
「はーい、注目!じゃあ、本格的に森へと入る前に、不要だとは思うけど一応目的の共有を済ませておくぞ~!」
何故か、未だにこの集団に於いてリーダーを任せられてしまっている俺は、各自で装備や消耗品のチェックをしていた面々に対して、手を叩きながら声を掛けて注目を集める。
「今回の目的は、依頼でもある『『アンドレアルフス大森林』に於ける魔物の分布図の変化、及びにその原因の調査と究明』を達成する事に在る。依頼内容から分かる通りに、最低でも変化している魔物の分布図の割出はしないとならないし、完全達成を狙うならば、今回の事態の原因を究明しそれを取り除く必要が在る。
ここまでは良いか?」
皆が皆、何を当然の事を、とでも言いた気ながらも、それでも直前のブリーフィングと言う事もあって素直に反応を返してくれる。
恐らく、理解していないのだろうけど、リルとカーラも皆のマネをして頭を上下させている。……可愛い。モフりたい!
……っと、イカンイカン。続けねば。
「理解して貰えている様で何より。そこで、取り敢えずは俺達は何処までやるのかを決めておきたいと思う」
その言葉で、頷く者とそうでない者とに半々ぐらいで別れ始める。
言うまでもないだろうが、当然タツとレオの二人は頷いている方だ。アストさんも、苦笑いを浮かべながら頷いている。
「主様?『何処までやる』とは、どう言うことでしょうか?最後までやるべきなのでは?」
俺の言っている意味が分からない、と言うよりも、むしろそうするべきなのでは?と言う疑問から手を挙げて発言するサーラさん。
「まぁ、もし達成出来そうな事柄なら、それに越した事は無いんだけど、今回は原因の予想すら出来ていない状況だし、何より『要護衛対象』まで連れているんだから、何時もみたいに無茶が出来ない、って事は分かってますよね?」
対外的にも、ルィンヘン女王は『戦えない』って事になっている以上、戦闘要員としてカウントするのは不味いだろう。故に、彼女は現時点ではまだ護らなければならない対象である、と言う事になる。
まぁ、実際にヤバくなったら速攻でそんな能書きは捨てて貰うし、多分ネフリアさんとアストさんは彼女の戦闘力に気付いているだろうから、いざと言う時は多分どうにかなるんじゃないか?
もっとも、そうなってしまった場合、ほぼほぼ依頼失敗みたいなモノだろうけど。
俺の言葉にサーラさんが頷いたのを確認すると、今回俺が言いたかった事を皆に伝えて行く。
「それ故に、確実にこなすのは何処までか、と言うのを決めておく必要が在ると俺は思っている。
例えば、最低限の分布図を予め制作し、それをボーダーラインとして原因の究明にも試みる。コレならば、もし万が一原因の究明に失敗したとしても、依頼主である魔王へと渡せる成果が在るからある程度は心理的に余裕が持てるだろう。
もし仮に、原因の究明までは絶対にやる、と決めて行くなら、途中途中で魔物は適当に間引く程度で良いだろうし、分布図にしても原因さえ分かっているのであれば、最低限の情報を纏めた状態で依頼主である魔王に投げてしまっても、規約違反とはならないだろうから、そうしてしまうのも一つの手だ。
絶対に原因の究明だけでなく、根本的な解決までやる!と言うのであれば、万が一ルィンヘン女王でも分からない事が原因だった場合はお手上げだし、諸々の危険は桁外れに高まるだろうけど、そうした場合は今回の依頼の評価も桁外れに高まる事になるのは間違いないだろうね。
……さて、軽く例に挙げてみたけど、どうする?俺としては。別に評価を求めている訳でも無いし、ある程度情報を掴んで魔王に投げてやれば良いか、程度にしか考えていないから皆の意見を尊重するけど?」
要するに、依頼されたからと言って何でもかんでもやらねばならない訳じゃあ無いからね?と言いたかったのだが、どうやらそれは皆にキチンと伝わってくれていたらしく、それぞれで考え込んだり話し合ったりする様子がチラホラと見受けられた。
そして、暫くするとどうやら意見が固まったらしく、それぞれで発表していった。
やはりサーラさんを始めとした『獣人族』組は、最後までやりきるべき、との意見を出して来たが、俺達三人の『取り敢えず分布図だけでも作っておく』案と、ルィンヘン女王とアストさん、ネフリアさん、リンドヴルムによる『原因の究明を第一目標として据えておくべき』と言う意見に押され、結局の処としては『積極的に魔物の分布図等の情報は収集するが、最低限のラインとしては原因の究明を優先。可能であればそれを除去・解決して事態を終息させる』と言う事に着地する事となった。
「良し!なら、そう言うことで決まりだな?なら、そろそろ調査の為に出発!……と言いたい処だけど、その前に皆にはコレを配っておく。無くさない様にね?」
既に、昨日下見を行った辺りに到着していた俺達は、冒険者らしき連中が数人で固まって何かしている様子を横目に大森林へと入ろうとしていたのだが、その直前にてとある事を思い付いたと言うか、思い出した為に、一旦待ったを掛けて皆を留め置きレオを呼ぶ。
「なぁ、夜の内に作っておいたアレって、まだ配って無かったよな?」
「あ~!?忘れてた~!!ごめんね~、すっかり忘れてたよ~。じゃあ~、取り敢えず配っちゃうねぇ~」
慌ててレオが『空間収納』から、内部に青い液体の入った小瓶を取り出すと、作った際に取り置いておいた俺とそもそも使えない従魔達を除いた他の面子へと配って行く。
一応、他の人目も在る以上、その美貌に驚愕の表情を浮かべながらも特に騒ぎ立てる事も無く、その『通常の回復薬よりも色が濃い液体』を受け取ったルィンヘン女王は、どうやらその反応を見る限りだと中身に気付いてはいるっぽいかな?
まぁ、他の面子は慣れすぎているせいか、またかぁ、だとか、過保護だなぁ、だとか言いたげな表情を浮かべているけど、そこはスルーしておこうかね。下手に指摘してやぶ蛇するのもアレだし。
「取り敢えず、何が起こるのか分からないのだから、必要に駆られたら真っ先に使って下さいね?死んだら元も子もないですからね?」
俺の指示により、各自で取り出し易い場所へとしまって行く皆。
幾ら本物ではなく、あくまでも劣化品とは言え一応『命の水』の類いではあるので、周囲にバレたりパカパカ使われると少々困るが、いざと言う時に使えないと宝の持ち腐れになりかねないので、サパッと使って貰った方が有難いと言えば有難い。
何せ、本当に死なれると、俺も本物を使わざるを得なくなるからね?
「良し、じゃあ、今度こそしゅっぱ「おいおい、良い女ばっかりじゃねぇか!お前らも来いよ!!」……あん?」
渡すモノは渡してしまった為に、出発の号令を掛けようとしたその時、突然横合いから聞いた覚えの無い声が飛び込んで来た。
何事かと思ってそちらへと視線を向けると、昨夜俺達が片手間に仕留めてほぼ放置していた魔物に群がっていたらしい冒険者らしき連中の、リーダーと思われる大柄な『人族』らしき輩がこちらへと下卑た視線を向けつつ、他の連中へと声を挙げながらこちらへと近寄って来る処であった。
その足取りはゆっくりとしたモノだったが、こちらの力量を推し測っている訳でも、こちらの動きを警戒している訳でも無いらしいのは、俺達三人を見下し、女性陣へは好色的なソレを向けて来ている視線から容易に察する事が出来た。恐らくは、俺達に対して威圧感でも与えたかったのだろう。多分。
……まぁ、あまりにも行動が三下のチンピラ過ぎて、欠片も威圧感を感じられないんだけど、どうしたら良いんだろうか?
そんな風に分析していると、どうやらこちらがびびっている、と勘違いしたらしいチンピラ共は、顔に喜色を浮かべながらこちらを囲み込もうと広がりながら近付いて来る。
「おいおいおい!お前らみたいな雑魚ガキが、そんな良い女達連れて粋がってんじゃねぇよ?
どうせ、ギルドで話題になってた森の異常でも解決して、テメェの力でも示してやろうって魂胆なんだろう?だが、残念だったな?テメェみたいな『実力の伴わねぇバカ』が余計な事をしねぇ様に、俺様がこうして森を見張ってたって訳だ!しかも、テメェと違って、正式にギルドから依頼を受けた上でな!」
そう言って、偉そうにふんぞり返ったチンピラは、胸元から青銅製のタグを取り出して見せ付ける様に掲げて見せる。
「テメェらみてぇな実力もランクも無い雑魚ガキは、さっさとその女置いてママの処にでも逃げ帰るんだな!言っておくが、あそこに転がってるA級の魔物は俺が仕留めたヤツだし、ギルドの方からも無理矢理入ろうとするバカには実力で排除する許可は貰ってんだぜ?痛い目見たく無きゃ、さっさと女置いて消えるんだな!お前らも、そんな先のねぇガキ共なんざと一緒に居るより、俺達と居る方が愉しませてヤるぜぇ?イロイロとよぉ!!」
俺達を嘲笑う様に言葉を放つそいつは、ニタニタとした下卑た笑みを口元に浮かべると、自ら腰の得物を抜き放つだけでなく、部下と思わしき他の冒険者連中にも指示を出して得物を抜かせ、俺達へと突き付ける様に切っ先を向けてくる。
その様子に俺達は、特に言い訳を聞いてやる必要も、手加減をしてやらなければならない理由も無いと判断を下し、最早言葉を交わしてやる必要すら無いとばかりに、無言で排除に動くのであった。
……そして、その数分後。
周囲のゴミ掃除を終えた俺達は、目的を果たす為に森へと踏み入って行くのであった。
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「……しかし、さっきの連中は弱かったなぁ……」
「……あぁ、そうだな。弱すぎて驚いた」
「元々外に出る様な連中は~、大した事はなかったみたいだからアレで十分だったんじゃないの~?それに~、どっちかって言うと~、外から入れない様にする為の配置だったっぽいんじゃないかなぁ~?」
「そうですね。むしろ、そうでないと流石にあの程度の連中に、ギルドが依頼を出すとは思えませんからね。恐らくは、こう言う時に捨て石として使う為に、わざと粛清せずにいたのでしょう」
「しかし、主様も仰られた様に、少々質が悪すぎたのでは無いでしょうか?以前の某達と一つしかランクが違わなかったと言うのに、あそこまで呆気なく蹴散らされてしまっていては、ランク相応の力量すら無いと言わざるを得ないのでは無いでしょうか?」
「……いやいや、流石に『獣人族』のボク達と、徒党を組んでいたとは言えただの『人族』とを比べてあげない方が良いと思うよ?でも、まぁ、アレだけ自信満々だったのに、あっと言う間に片付けられたあいつらの間抜け面は、見ていて笑えはしたけどね?」
「確かにぃ、あの時の呆気に取られた顔はぁ、中々面白かったわねぇ。特にぃ、私達全員のタグがぁ、金以上だったと知った時の表情は見物だったわねぇ」
「品性も実力もカケラも無い連中ダッタケド、ソコだけはナカナカ面白かったネ。マァ、だからとイッテも、あの程度の連中カラ、種をモライタイとは思わないケド」
「まぁまぁ、その辺にして差し上げる方がよろしいのでは?幾らあの方々が無知蒙昧にして愚鈍極まる愚者の集まりだったとしても、あの方々にとってはコレまでは上手く行っていた手段だったのでしょうから、それに頼りたくなるのも仕方無いのでは無いでしょうか?もっとも、私としましても、欠片も許して差し上げるつもりは在りませんけれど、ね?」
調査に入る際に少々問題が発生しはしたが、その問題を速攻で片付けた俺達は、こうして愉しく(?)お喋りしながら、ある意味ピクニック気分にてこの『アンドレアルフス大森林』の中心部を目指して進んでいた。
当然、こうして大人数にて移動していれば、放っておいても勝手に向こうから魔物が寄ってくる為に、本来ならばこうしてお気軽気分では居られないのだが、今回は『とある理由』にてそう成らざるを得ない状態となっているのである。
とは言え、別段何かしらの不具合が在ったと言う訳ではない。
むしろ、俺達の調子は万全だし、装備面でも一切の妥協をせずに、最強装備にて今回の依頼に挑んでいる状態だ。当然、俺達三人も、最初から相棒をその手に携えて、この森へと足を踏み入れている。
故に、油断とは無縁の状態であるし、その上で強襲を仕掛けられるであろう魔物が出現する程に深くまで潜っている訳でも無いので、そちらもやはり有り得ない。
ならば、何故そんな状態となっているのか。
主な理由は二つ。
一つ目の理由としては、現在地がまだ森の浅い部分である為、出現する魔物が大した事は無い雑魚ばかりである事もあり、あまり自主的に近付いて来ないと言う事。
もう一つは……
「……!……!!」(ヒュン!スパッ!)ギャイン!?
『グルルルルル!グォン、ウォォォォオオオオオン!!』(ガブッ!ゴキボキッ、ブチッ!!)ブォォォオオオ!?
『ほっ!(バキッ!)せい!(メキッ!)とりゃ!!(ゴオオオオオオ!!)……まったく、出て来ぬよりはマシとは言え、こうまでも雑魚ばかりじゃと、些か飽きて来るのぅ……』
……もう一つの理由としてはこの様に、森へと入るなりテンションを上げながら周囲に散開し、数少ない自ら近付いて来た魔物を従魔達が自主的に狩り尽くしてしまっている為に、俺達の処まで到達する魔物が絶無の状態となっているから、である。
只でさえ戦闘力の高いフェンリルであるリルがテンション高めで暴れている上に、最近地味に強くなりつつあるカーラ(サーラさん程度なら最近は必勝に近い戦率を叩き出せる様になっている)も少々ストレスが溜まっていたらしく、ソレを解消せんとばかりに爪で引き裂いたり、嘴で擦れ違い様に急所を抉ったりして確実に一体ずつ片付けて行っている様子である。
それに加えて龍であるリンドヴルムも、地味にストレスが溜まっていたらしく、ソレを解消する為か八面六臂の大立回りを繰り広げてくれているので、俺達の処まで魔物が入り込める隙が無い、と言うのが正しい処だろうか?
もっとも、戦闘に酔いしれて暴走している訳ではないらしく、ある程度以上に綺麗な状態であり、それでいて予め受け取っていた魔物の分布図に出ていた魔物の死体は、全てでは無いにしても資料として扱える様にこちらへと回して来てくれている。
まぁ、渡しに来る際に、どいつもこいつもまるで『誉めて誉めて!』と言わんばかりにアピールして(リンドヴルム含む)くるので、俺だけはその対応に追われる形で少々忙しい事になってはいるけれどね?可愛いから良いんだけど。
そんな訳で、特に何をするでもなく、勝手に魔物のサンプルが集まって来る事もあり、俺達は現在予め過去のデータとして渡されている魔物の分布図と周辺地図を片手に、ひたすら深部を目指して進んで行くのであった。
全体的に、まるで深部に居る『何か』から遠ざかろうとして、そのまま表層部へと押し上げられて来た様な生息地を横断しながら。
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