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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第五章・王国編

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136・対『シュロスベルグ』攻略戦 2

ブックマークや評価によって応援してくれた方々に感謝ですm(_ _)m

 

「取り敢えず、先鋒同士のぶつかり合いご苦労様でした。これにより、大分『流れ』はこちら側に引き寄せられたハズです。

 ……先鋒を勤めた『人族(ヒューマン)』の方々の被害報告をお願いします」


「ハッ!報告によりますと、戦死者は全体の一割半から二割程、重傷者と合わせますと約四割の戦力低下が見込まれるとの事です。重傷者の内、少々時間が掛かっても良いのであれば、半数程度であれば再度戦場へと出せる様になる、と医療班からの報告も上がって来てきます」


「…………了解しました。では、即座に戦力として参戦できる者のみ選出し、他の部隊に組み込む形で再編します。先鋒を勤め上げた彼らには少々酷かも知れませんが、相手はあの(・・)ヴァイツァーシュバイン王国ですので、何時何を仕掛けて来るのか分かりません。それ故に、急ぐ様に、と伝えて下さい」


「ハッ!承りました!!」


 そう言い残して前線へと駆け出して行く伝令を眺めつつ、先鋒を勤め上げてくれた彼らを何処と組み合わせるのが最適かを思考する。


 一応、お飾りとは言えども総指揮官の地位に居るのは俺なので、この手の伝令からの情報は、一度俺の所を経由して関係各所へと伝達されるのだが、どう見ても時間のロスが発生しているのだから見直した方が良いのでは?と言ってはいるのだが、そう言うと皆不思議そうに


『しかし、総指揮官は貴方ですので』


 と返して来るので、諦めて俺が受け取って判断する様にしている。

 事前に、皆には俺がお飾りだと言う事は伝えて有る以上、知らないハズは無いのだがどうなっているのだろうか……?


 と、そんな関係無い事を考えていると、どうやら予め伝令を送っておいた人達が来てくれたらしく、仮設の本陣内部の司令部へと入室の許可を乞う声が掛けられる。

 それに対して許可を出すと、俺が呼び出した人物が他に二人連れてやって来た。


「お呼びと聞いて参上しましたが、私を呼ばれるとは如何なさいましたか?それに、私だけでなくケイルオンとセルフェンテまで声掛けをなされるとは、どの様な事態でしょうか?」


「ああ、急に呼び立てて悪かったね、レオンハルト殿。そして、レオンハルト殿と同じ『十二獣将』の地位に在るケイルオン・ブレイト殿とセルフェンテ・サルペリア殿も呼び立てて申し訳無い。

 実は、貴殿方にやって頂きたい事が有りましてね」


 そう、俺が呼び出したのは、『獣人族(ベスタ)』側の最高位人物にして元総指揮官、そして獣人国の最高戦力の一角でもある『十二獣将』の地位に居るネメアーさんと、その副官として共に派遣されていた同じく『十二獣将』の地位に居るケイルさんとセルフさんの三人だ。


「レオンハルトだけならばともかく、某まで呼ばれても特には役立てぬと思うがね?某に出来るのは戦働きが精々故に、主の望みに添えるとは思えぬぞ?」


「そうよぉ。暗殺と諜報が得手の私をこの期に及んで呼び出されてもぉ、あまりお役に立てるとは思えないわぁ。私が一番輝くのはぁ、こうやって直接的な戦闘が始まる前か終わった後だって事はぁ、言っておいたハズよねぇ?」


 そう、口では文句を溢しつつも、その目は『何を企んでいる?』と問い掛けると同時に、俺がどんな突拍子も無い事を言い出すのかを期待してワクワクしている、と言わんばかりの表情を浮かべながらこちらへと視線を向けてきている。

 流石はサーラさんとサーフェスさんの親御さんだなぁ、と思いながらも、ネメアーさんを含めた三人に対して口元に苦笑いを浮かべながらこう言うのであった。



「こちらもあちらも、そろそろ先鋒の再編が終わった頃合いでしょう。よって、こちら側の次鋒として貴殿方にお任せしたいと考えております。一時的に再編し終わった『人族(ヒューマン)』の方々の部隊もお預けしようとも考えていたのですが、如何でしょうか?」



 そんな俺からの提案に、驚いた様な表情を浮かべる三人だったが、それも一瞬だけの事であり、次の瞬間には獰猛さが滲み出る様な笑みを浮かべ、何も聞くこと無く頷くのであった。





 ******





 平地でのぶつかり合いから約一時間。


 先鋒として差し向けて来た戦力の半数以上を文字の通りに喪い、更に残った戦力の約三割程が負傷等にて戦力外となった『シュロスベルグ』側だったが、その程度の損耗ではどうと言う事はない、とでも言いたげに、撤退の合図を出して兵士達を収用してからは閉ざしていた城門を再び開き、再度戦力を展開し始める。


 双眼鏡(の様な遠くを見る為の魔道具)にて観察する限り、再度展開された敵兵力の総数としては前回と同程度で、装備の損耗具合や手当てを受けた痕跡の見られる兵が多く見受けられたので、恐らくは先鋒の歩兵戦力を再編して戦力の嵩増しに使っているのだろう事が予想される。

 そして、当然先程破られた戦力をそのまま使う訳もなく、今回こうして出撃させて来た軍勢の主戦力と見られるのが、歩兵戦力の背後にて守られる様に展開しつつ在る、恐らくは魔法使いのみで編成されたと思わしき全員が何かしらの杖を携えた一群である。


 元より魔力を高水準で精製するのが種族的に苦手で、尚且つ一度に大量に精製する事にも向いていない為、『人族(ヒューマン)』で魔法が使える者はそこまで多くはないし、魔法使いと名乗れるレベルに到達出来る程の才と修練を積める者も同時にそう多くはない為、人的資源として見たとしても、それらを育成する為の期間を鑑みたとしても、あの一群だけで先程の先鋒を勤めた軍勢と同等の価値が在ると見ても良いだろう。

 そしてそれは、戦力的な視点で見た場合、遥かに大きな価値を持ち、遥かに大きな戦果を上げる事を約束されている、と評価するに値するだけのモノである、と言っても良いだろう。


 そんな、ある意味一種の『決戦戦力』と言っても過言では無いであろう部隊を投入したと言う事は、恐らくは先程までの様にこちらを嘗めて掛かる事を止め、本格的に相手にすると言う決断を相手方が決めたのだろうと予測出来る。

 ……これは、皆にとっては最悪の状態に等しいかも知れないが、俺としては割りと最善に近い状態に在る、と言っても良いだろう。


 何せ、こうして敵方が本気になったと言う事は、わざわざ敵方の戦力を誘きだしてチマチマと叩く必要が無くなり、相手から勝手に阿呆みたいに頑丈な城壁の中から出て来てこちらへと目掛けて突っ込んで来てくれる様になるのだ。

 実際に戦う皆には悪いが、指揮官としてこの上無く楽な状況になりつつあると言っても良いだろう。

 それに、いざ戦線が不味そうだ、となったら、最悪俺達が出撃すれば多分どうにかなるだろうから、まぁ、大丈夫なんじゃないかな?


 そんな事を考えながら双眼鏡の方向をずらし、既に展開を終えている自陣へと視線を向ける。


 するとそこには、初戦の先鋒として戦った『人族(ヒューマン)』の兵達と共に、今回の戦闘でのこちら側の主戦力となる『獣人族(ベスタ)』の皆が、『シュロスベルグ』側の展開が終わるのを今か今かと待ちわびながら、静かに戦意を高めている。

 ……ぶっちゃけた話をすれば、俺なんかはこう言う一方的に展開が済んでいる様な状況に在るのなら、相手の都合何て考えずにさっさと仕掛けてしまえば良いんじゃないのか?とも思うのだが、ソレ(一方的に叩く様な行動)は『獣人族(ベスタ)』としての誇りが許さない!との返答を、どうにか解って下さいと言わんばかりの表情でネメアーさんに言われてしまったので、流石にソレ以上は突っ込みはしなかったけど。


 そんな彼らの編成としては、半数近くをコボルト族の歩兵戦力が占めており、他はケンタウルス族の騎兵やミノタウロス族の重装歩兵、ウェアウルフ族の斥候やナーガ族の特殊工兵と言ったモノが残りの約半数を占めている。

 当然、彼らも兵站を確保する為だけに人員を割かねばならない程に種族が貧弱ではない為、一部の技術者(医師や鍛冶師等を含む)と、種族的には珍しいと言っても良い程に居ない極一部の魔法使いを除けば、基本的に全員が前線に出て殴り合いが出来る程度には頑健な種族である(その反面基本的に魔法の適性がほぼ無い)ので、従軍している人員が殆ど全て戦力としてカウント出来るだろう。

 それに加えて先鋒として戦った『人族(ヒューマン)』の兵士達の内で比較的軽傷であり、その上で本人が志願した者が追加される形となる為、総戦力としてこちら側は約一万と五千程になるだろう。



 ……数の上では前回よりもマシとは言え、それでも倍近い数の開きが在るが、多分イケちゃうんだろうなぁ……。



 割合と冷静に計算した答えを内心で呟いていると、どうやら『シュロスベルグ』側も展開が終わったらしく、それまでまごまごしながら待機していた城壁の近くを離れ、再度こちら側へと進軍してくる。


 それに対してこちら側は、最前線に近しい場所にて敵勢力の進軍を確認したネメアーさんが軍勢へと振り返り、後方に居る俺には聞こえなかったがどうやら号令の類いを掛けたらしく、ネメアーさんに応える形で一斉に雄叫びを挙げると、最低限の装備のみ(簡単な革鎧と各自の得物)を纏ったコボルト族の人達がその愛嬌の良さからは想像も出来ない程の速度で突撃して行く。


 そんな彼らの行動に対し、何やら嘲笑う様なアクションを起こしながら、歩兵達の背後にて隠れる様に配置されていた魔法使いの部隊が彼らに向かって魔法を放つ。


 幾ら頑強な肉体を持つ彼らであっても、流石に魔法の直撃を受ければ決して軽くはない怪我を負うことになるのだが、それはあくまでも『当たれば』の話であり、彼らにはそんな間抜けは存在せず、魔法の着弾地点を限界ギリギリの処まで見切ってから確実に回避しており、憐れなる脱落者は今の処はまだ誰も出ていない。

 ……と言うよりもむしろ、その魔法の着弾点にどれだけ近付きながらも負傷せずに済むか、みたいな遊びをやっているらしく、放たれた時には少し離れた処に居たハズの人がわざと接近して着弾時の爆風で笑いながら吹き飛ばされている、と言う光景が何ヵ所かで見受けられた。

 もっとも、それをやらかしている人は、近くの上役らしき人に拳骨を落とされて、頭を抱えて踞る羽目になっているみたいだけど。


 そんな、些か緊張感に欠けるやり取りを何処かほのぼのとしながら双眼鏡越しに眺めていると、ようやく自分達の攻撃が当たっている訳でないと気付いたらしく、にわかに『シュロスベルグ』側の陣地が騒がしくなり始めたので、双眼鏡をそちらへと向けて見る。


 どうやら虎の子として投入された魔法使い部隊が『このままでは不味い』と騒いでいるらしく、魔法使い部隊の隊長と思わしき輩から絡まれている指揮官が、何やら面倒そうな顔をしながら歩兵達に前進する様に指示を出している様に見える。

 どうやら、歩兵達によって作った壁を利用し、自分達へと近付けさせない様にすると同時に、歩兵達を相手取っている状態の『獣人族(ベスタ)』の人達を味方である歩兵達ごと攻撃してしまおう、と言う作戦なのだろうと思われる。


 確かにそれは、足を止めて一人一人相手にしなければならない様な相手であれば、絶対的に数の多い相手側が圧倒的に優位に立てる戦法であるだろうし、それが今回の様に少数の敵を相手にする場合は非常に有効な手段であると言えるだろう。

 少なくとも、先程の戦闘にそれが投入されていた場合、こちら側の先勝は代わりはしなかっただろうが、それでも軍勢に対してとても大きな被害が出ただろう。



 ……もっとも、それはあくまでも『先鋒戦に於いて』と言う話であり、根本的な大前提の段階で彼らには効かない事が確定しているのだけどね?



 何せ、こうして実際に眼前にて展開されている事だが、まず彼らは止まらない(・・・・・)

獣人族(ベスタ)』であるコボルト族の皆の身体能力に掛かれば、目の前で立ち塞がる様に構えている『人族(ヒューマン)』の一人や二人では障害物として機能し得ない程に身体能力が高く、それ故にすれ違い様に相手へと軽く拳を振るってやると、まるで何かの不思議映像を見せられているかの様に、随分と呆気無く天高く殴り飛ばされている様子が伺える。

 おまけに、俊敏性だけでなく、その優れた五感による危機察知能力と感知能力により、どのタイミングでどんな攻撃が飛んで来るのか、またそれを放った相手が何処に居るのか、をほぼ本能的に理解出来るらしいので、現在の様に乱戦へともつれ込まれると、真っ先に一番に厄介な相手を探し出して強襲を仕掛ける為、虎の子のハズの魔法使い部隊が真っ先に襲われて行くのが遠目から見ても明らかであった。

『そもそも放たせない』。それが、最大の攻撃であると同時に最大の防御でもある彼らの手法である。


 そうやって、こちら側が出していた軍勢の内、実に半数程が敵方の前衛部隊に取り付いての乱戦により、敵側の前線戦力が乱れ始めたのだが、その隙を突いてケンタウルス族の軌道部隊が敵陣を突き破る為に突撃を敢行する。


 ソレによって更なる動揺が『シュロスベルグ』側の陣地に走り、その状態に焦って指示を出そうとしていた指揮官連中を狙い撃ちにする様な形で、ケンタウルス族からの騎射によって射抜かれたり、ナーガ族の暗殺者によって気付かぬ内に刈り取られている為に指示が回らず、益々混乱が広がって行く。


 そうして散々に内部から引っ掻き回された前線がほぼ崩壊した事を見て取ったネメアーさんが、自分達の旗下である『獣人族(ベスタ)』の皆さんへと前進の合図を送り、更なる動揺を誘って容易く刈り取れる様に、と圧力を掛け始める。


 それを受けた『シュロスベルグ』側の魔法使いが、味方ごと敵も吹き飛ばしてやろうと魔法の行使を開始するモノの、それに気が付いたコボルト族の人達や普通に突撃してくれたケンタウルス族の人達によって狙われ、結局は大火力の魔法を行使する間も無く排除され、戦場から退場する事を余儀無くされてしまっている。


 そうやって次々に決定打を奪われ、選択肢の幅を狭められて行く内に『獣人族(ベスタ)』達の本隊が接敵し、ネメアーさんの様に突出した個人戦力が戦場へと投入されて行く。


 その身長を遥かに超える程の大きさの大剣を振り回し、まるで草刈りでもするかの様に死者を量産して行くネメアーさん。


 遠距離からは馬体に括り付けていた弓による狙撃にて、近距離では背負っていた突撃槍(ランス)による突撃によって死体で通り道を作って行くケイルさん。


 自称『直接戦闘は不得手』と言うセルフさんも、その長大な下半身による締め付けや変幻自在な動きによる死角からの奇襲等により、その身を鮮血で装いながら不思議なオブジェを作り出して行く。


 そうした個人戦力である彼らに率いられた部隊によっても次々と倒されて行き、その数を半数よりも大きく下回らせる結果となった『シュロスベルグ』軍は、再度撤退の合図と思われる花火を一発打ち上げると同時に城門を開き、どうにか生き残っていた兵士達を内側へと引き込んで行くのであった。

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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