14・汗を流す為に水浴び(意味深)します
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あれから暫く時間が経ち、日が傾き始めて『夕刻』と言っても間違いではなくなって来た頃合い。
その時俺達は、拠点にあつらえておいた竈の前に三人で集まり、火を起こしていた。
「……流石にやり過ぎだ」
「確かに~、知らなかったとは言え~、あの物言いは僕でもキレ掛けるとは思うけど~、アレはちょっと虐め過ぎだと思うよ~?」
「……確かに、少々頭に血が昇っていたらしい。まぁ、反省も後悔もしてないけど」
あの一連の『手合わせ』の後、半ば強制的に彼女達を組手に付き合わせ、彼我の戦力差を『確りと』認識するまで『遊んで』いたのだが、流石にサバイバルな現環境では、これ以上は少々危険と判断した為に、少し前に今回はここまでとして一応は終わりとなっていた。
そして、現在の女性陣なのだが、今現在俺達と一緒に居る訳では無い。
別段、先程も言った組手で虐め過ぎたから脱走された、と言う訳ではもちろん無い。
ただ単に、組手していた四人が土埃にまみれたりだとか、単純に激しく動いた事による発汗等で、年頃の女性がしてはいけない様な姿になっていた為、衣服の洗濯と水浴びをするために、岩の影等で目隠しが出来る上に、そこまで深くない入り江となっていた部分を予め見付けて有ったので、そこへと移動しているからだ。
他の三人も、次いでに一緒に水浴びしに行っている。
……いや、ね?
最初の方は喉元だとか、急所に穂先を突き付ける形で死亡判定をしていたのだけど、途中から急所さえ守れば!みたいな動きをするようになってきてね?
だから、疎かになっていた足元を攻めてやったら、面白い位にコロコロ転がってね?
なので、それ以来転んだら死亡、みたいなルールが自然と出来たので、思いっきりコロコロしてやったのである。
ちなみに、俺は多少汗をかいた程度である。
……女性を足蹴にするのはどうかと思う?
俺も思わんでもないけど、まぁ、試合だし。
『死合』じゃないのだから、まだマシってモノだと思うけどもね?
それに、細心の注意の元に、土埃や泥汚れにまみれても、決して痣だらけになったり血達磨になったりはしない様に調整したのだから、割合とマシだと思うがね?
……気のせいか?
まぁ、そんな訳で女性陣が出ており、野郎しか残っていない拠点なのだが、そんなむさ苦しい処で何をしているのか?と言われると、『お夕飯』の準備である。
と言っても、別段押し付けられたとかではなく、ただ単に効率の関係で俺達が調理しているってだけである。
それに、彼女達が水浴びから帰ってきたら、調理の方は彼女達が引き継いで、俺達は水浴びに行くって事になっているので、別段不公平とも思ってはいない。
……覗きには行かないのか?
うーん……別に良いかな?
万が一バレたら厄介な事になるだろうし、そこまでの危険を侵してまで見たいと思える人も居ないしね。
そんな訳で調理を進めて行く俺達。
「……こんなモノか」
「沢山有ったお肉も~、下味付け終わって串に刺したし~、後は焼くだけだから一応は大丈夫だけど~、ちょっと此だけだと寂しいかな~?」
「調理器具がフライパン位しか無いから無理なのは当然だけど、やっぱり汁物とか欲しいよなぁ……」
そうなのだ。
スキルの実験の過程で、何故か出せたフライパンを除いて、俺達は調理器具を所持していない。
故に、俺達が出来る事は基本的に『焼く』か『炒める』しか無い。
サバイバルしている以上、贅沢は言えないとは分かっているが、それでも、ここに鍋の一つでもあれば、兎公の串焼きやステーキ(味付けは塩+採取した香草)だけでなく、スープの類いを足す事が出来る。それに、今しているみたいに、持ち込んでいた小型の蒸留器を竈へと突っ込んでチマチマ飲み水を作るよりも、効率的に安全な飲料水を確保出来るのだから、贅沢だと分かってはいても、やはり『有ればなぁ』と言いたくもなる。
……出してみるか?
前回の実験の時は、大概『出るかな~?』とか『出たら良いな?』程度の感じでやっていたので、もしかしたらだが、もっと強い気持ちでやれば出せるのではないだろうか?
……うん、なんとなく出せそうな気がする。
そうと決まれば、早速やってみるか!
取り敢えず、目を瞑って精神統一しながら念じてみるか。
さぁ、出て来い『鍋』!
鍋!鍋!鍋!鍋、鍋、鍋、鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋鍋…………
……ん?
お?
これは?
何だか知らないけど、何となく出せそうな感触?
お!?来たか?
来た、来た!来た!!
手の中に感じられる、この重み!
これは、間違いなく!
「良し!出たぞ!!鍋!!!…………うん?」
間違いなく成功したとの確信と、手の中に感じられた唐突な重みによって、スキルによる鍋の召喚(発生?)を確認した俺は、何が出てきたのかを確認するために瞑っていた目を開いて、その手に握っていたモノへと視線を向ける。
そこに有ったのは……
「……これは、狙ったのか……?」
「……この状況(サバイバル環境下)で~、何故に『中華鍋』~?」
そう、見間違う事なき中華鍋であった。
だが、別段俺としては中華鍋を狙っていた訳では無いし、意識していた訳でも無い。
そもそも、何で出てきたのかすら不明だ。
……カテゴリー的に、フライパンと同じく『打撃武器』って扱いなのかね?
そんなことを考えながら、出した張本人である俺を含めた三人揃って首を捻る事となったのである。
……本当に、何で出てきたんだ?コレ。
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小鳥遊達が中華鍋を出してしまい、首を傾げながらも取り敢えず使ってみるか、とお湯を沸かし始めた頃、水浴びをしていた女性陣達の方では、様々な話題で姦しい盛り上がり(?)を見せていた。
「……うぅ、痣にも擦り傷にもなっていないのに、痛みだけは何故か有りますわね……。しかし、小鳥遊さんも困った方ね。女性をこんなに痛め付けるなんて!」
そう溢しながら、手で掬った水を肩から掛けつつ、顔をしかめているのは、小鳥遊の地雷を踏み抜き、四人(実質三人)に地獄をもたらし、面子の中でも一番転がされた回数の多い亜利砂・レイヴンクロー。
直前までまみれていた土汚れから解放されたその銀髪と、まるで血が通っていない様にも見える白磁の肌、そしてハーフ故に発現している外国人特有の腰の高さから、こうして半ば湖に浸かっていると、まるで精霊か妖精の類いの様にも見てとれる。
「いやいや、亜利砂殿。流石に今回は拙達が悪かったかと思いますよ?あれだけ力量に差が有りながら、小鳥遊殿を弱者扱いしていたのは拙達なのですから、むしろあの程度で済んで良かった、と安堵すべきでしょう」
そう亜利砂を諌めるのは、普段は頭の高い処で纏めてポニーテールにしている髪を下ろし、腰まで届くほどのロングヘアーに髪型を変え、同性ながらも他の人の目が気になるのか、手で胸を隠しながら埃を落としている久地縄 時雨である。
何時もは動く時に揺れたりしない様に、サラシで押さえ付けているのだが、こうして身を清める際にはその戒めから解放された果実は、中々豊かな実りを付けると同時に、未だに熟しきらないソレとして、まだまだ発展の余地を残している。
「……確かに、あの言い方は不味かった。あれだけの相手に、あの物言いは『殺してください』と言っている様なモノ。生きているだけ儲け。
……そして、二人ともズルい……!」
そんな二人へと声を掛けたのは、今回小鳥遊との『手合わせ』の発生源であり、二人と同じく迂闊な発言をして小鳥遊の逆鱗に触れてしまった憐れな子羊の一人でもある音澄 京香だ。
そして、そんな彼女の先程の『ズルい』との発言だが、これはある意味致し方ない事だろう。
何せ、片や高身長でスラリとしていながらも、出る所はそこそこ出ている亜利砂に、大和撫子然として凛とした雰囲気を持ち、その上『脱いだらスゴイ』を地で行く久地縄が眼前で揃っているのだから、平均的な17歳のスタイルよりも、ホンの少しだけボリュームが足りない(本人談)音澄からすれば、羨ましくもなると言うモノだろう。
しかし、そんな三人の中では一番体重が軽い事が判明した音澄こそがズルい!と他二名と姦しくも百合百合しく縺れている様を微笑ましく眺めているのが、この一行……もとい今回この島に跳ばされた面子の中で唯一の成人である佐藤 寧子。
「若いって良いわねぇ。私も、学生の時はあんな事の一つや二つ……アレ?してたっけ?してたのかな?」
そんなすっとぼけた事を呟きながら、小鳥遊によって転がされた(ホンの数回だが)土埃を落とすために持ち込んだタオルで、その肌を軽く擦る。
その肢体は唯一成熟した大人の女性らしく、他の女性陣には見られ無い、ある種の『艶』とも言うべきモノが醸し出されており、同性であっても思わず目を奪われる程の美しさを誇っている。
また、そのスタイルは大人の女性として正に『出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる』を体現している様であり、ある意味『女性の理想的なスタイル』と言っても間違いでは無いだろう。
だが、そんな佐藤女史を横目にしながらも、特に気にせずに会話を広げる残りの三人。
「で?結局、あいつらは覗きに来ると思うか?ちなみに、オレは『多分来ない』とは思う。だけど、別に見たいなら見せてやっても良いとは思ってるけど、サチと桜木さんはどう見る?」
そう、豪快に言い放つのは、男兄弟ばかり居る関係上、男がどう言う生物か、何故女の子の裸を覗きたいのかを理解しており、それでいて小鳥遊を始めとした三人に対して『見せるだけならば』良いと言ってのける程度には気っ風の良い事を言ってのけているのが、阿谷 美樹だ。
そんな彼女の綺麗に焼けた褐色の肌と、この面子の中で群を抜いて豊かでありながら、それでいて『重力?なにソレ美味しいの?』と言わんばかりに、完全に物理法則へと喧嘩を売っているその胸部は、同性には絶望を、異性には行動阻害を与える最終兵器であり、その効果はこの場にいる面子へも確実に効果を発揮している。(タカ・タツ・レオは抵抗に成功している模様)
「……わ、私は、『来ない』とは思いますけど、来られても困りますし、な、何より、見られるのは……ちょっと……」
そう、その場面を想像してしまったのか、顔を赤らめながら水面へとその身体を隠すように浸かってしまったのは、どう見ても周りの女性陣よりも幼く見えてしまう桜木 奥瑠だ。
小鳥遊は彼女を『中学生程度にしか見えない』と表現したが、基本的には彼女は上に見られても中一か二。下手をすれば小六に間違われる事もある程の容姿であり、その体型もそれに準じたモノである、とだけ、彼女の名誉の為に言っておく。
……もっとも、その『幼い』と形容することも出来る見た目は、同性から見れば『可愛い!』と映るらしく、他の面子とは別の意味で羨ましがられる事が有るそうな。
「私は……そうだね。『来る』か『来ない』かで言えば『来ない』とは思うけど、来たら来たで良いんじゃない?大神君ならともかくとしても、ここに居る娘は全員、小鳥遊君達に助けられたんだから、むしろ見せて上げる位した方が良いかもよ?
……それに、小鳥遊君になら、見せても良いし……」
そう、悪戯っぽい表情で言いながら、最後の部分は誰にも聞かれない様に呟いて居たのは、この島に送られて来たクラスのクラス委員を勤めていた乾 紗知。
その見事なスタイルを誇る身体から汗や汚れを落としながら、何処か夢見る様な、陶酔する様な、それでいて何処か『艶っぽさ』とでも言うような色を見せる表情をしており、同性から見ても『ゾクリ』とさせられる様な、そんな雰囲気を纏っている。
その原因の一つとしては、幼馴染みであり、同じくクラス委員を勤めていた大神から離れられた事が挙げられるだろう。
昔はそうでもなかったのだが、最近は世話焼きと称して半ばストーカー紛いの行動まで取る上に、普段の特に助けを必要としていない時に限って周りに居るくせに、誰かに助けて欲しいと願っている時に限って居ない事が多かったので、いい加減ウンザリしていたのだが、今回助けて欲しかったタイミングで手を差し伸べ、更に鬱陶しかった大神から逃れるチャンスを作ってくれた小鳥遊達の事(特に小鳥遊の事)を、元々好意的に捉えていたのだが、それが彼女の中で大きく成りつつある事も関係していると言っても、強ち間違いでは無いだろう。
そんな彼女達の姦しくも愉しそうな水浴びは、夕陽が沈み掛けるまで続けられた。
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「……じゃあ、今度は俺達が水浴びしてくるから、火の番と鍋の様子だけ見ていて貰えるか?」
「……分かった」
そう、何処か不機嫌そうに答える乾に後を託して、タツとレオを伴い、水浴び場として指定しておいた入り江に向かう。
水浴びして気分が上向くならともかくとしても、何故かご機嫌ナナメな乾の不機嫌を直す為に、ここは行く前にジョークの一つも言ってから行くとするか。
「……乾」
「……何?小鳥遊君」
「……覗いても良いけど、バレない様にしろよ?」
そう言ってやると、乾を覗いた他の面子は吹き出したり何なりで笑いが取れていたみたいだが、乾だけは
『その手が有ったか!!』
と言わんばかりの衝撃を受けた様な表情で固まっていた。
何故に固まる?と俺が不思議そうな表情をしていると、タツとレオが俺の肩を叩きながら、まるで可哀想な奴を見るかの様な視線を向けつつこう言ってくる。
「……言った以上は、どうなっても知らんからな?」
「男に二言は無い以上~、ちゃんと責任取らないとダメだからね~?」
……?何を言っているんだ?こいつら?
こんな傷だらけな野郎の裸何て、本当に見ても何にも愉しく無い、だろうに?
そんなことを思いながら水浴びに行ったのだが、帰って来てみれば、何故か乾の顔が赤くなっていたり、他の面子から同情するような視線を向けられたり、女性陣からの視線が息子さんに向いている様な気がする様になったのだが、何故だろうか?
野郎の水浴びは需要が無さそうだったので省きましたが書いた方が良かったですかね?
面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価していただけると大変有難いですm(__)m