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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第五章・王国編

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124・上陸侵攻開始します

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 魔王国の港町であるカーパルスを出港してから早くも一月。


 途中で何度かヴァイツァーシュバイン王国のモノと思われる軍艦団と遭遇し、戦闘に発展しはしたがその悉くを沈めて来た為に特にこちら側の損耗は無く、逆に相手側から積み荷である食料やら水やらを略奪する事で資源が充実し、そちらの方面でも特に貧窮する事無く、ヴァイツァーシュバイン王国側の港町である『ハーフェン』へと到着した。


 しかし、到着したからと言って敵国である魔王国籍の軍艦団を、そうホイホイと招き入れる事が在る訳もなく、到着してから丸一日経過した現在でも、まだ入港する事が出来てはいなかった。


「何でまた、こんな無駄な手間を掛けているんだろうな?」


 例の如く、船室に籠っているのにも飽きたし、かと言って船内をブラブラしていると船乗りさん方に『歓迎(意味深)』されてしまう為、またしても三人で固まって手摺からハーフェンの町並みを眺めつつ言葉を溢す。


「……戦争なのだ、綺麗事など言わずに、さっさと行ってさっさと殺ってしまえば良いモノを……」


「それでも~、周辺国には『侵略されたからし返した』って説明している以上は~、そう言う奇襲・強襲の類いはあまりやりたくないんじゃないの~?まぁ~、僕としても~、こんなにまどろっこしい事を目の前でされていると~、多少なりとも苛つくからさっさとして欲しくはあるけどね~?」


 その会話を聞かれたからか、今後の方針を決める為の会議に出席するために、この『魔導船メレゲトン』へと乗り込んでいたのであろう、あまり見覚えの無い偉そうな連中に睨まれてしまったが、こちらからも不機嫌さと殺気とを隠そうともしていない視線をモロに受けて気絶していたりした為、大した事も無かろうとそのまま放置しておく。


「タカナシ殿!方針が決まりましたので、早速良いでしょうか?

 それと、そこで何やら延びているのが居ますが、何かしましたか?」


 そうこうしていると、俺達の代表として会議に参加していたアストさんが戻ってきたので、恐らく会議は終わったのだろうと見当を付けて話を合わせる。


「いいえ?さっき、何をするでも無く、勝手にぶっ倒れただけですよ?

 それで?どう言う方針に決まりましたか?」


「えぇ、その事なのですが……」


 そこで一旦言葉を切ってしまうアストさん。

 そして、何故かチラチラと俺に対して探る様な視線を向けて来ていたので、俺からも視線にて『聞きたいことがあるんですか?』と返してみるが、結局何も聞かれずに会議内容の報告が続けられる。


 ……どうやら、あの時のアスモディアさんとの会話を聞かれてしまっていたらしく、あれから顔を合わせる度に、何かしらを聞きたそうにしては来ているものの、結局何も聞かれる事無く会話が終わり、アストさんも目に見えて肩を落としながら去って行く為、いい加減聞くならば聞いてきて欲しいモノだ。


 とは言っても、別段あの場に居た確たる証拠が在る訳でもなく、あの時の会話内容に触れてくる訳でもない為に、間違いなく、と言える程の証拠も無いのだけれど。

 まぁ、他に心当たりも無い以上、多分聞かれていた、って事で間違いは無いのだろうけどね?


 そんな事を考えつつも、アストさんからの説明を、聞き流す事無く頭に入れて行く。



 ……成る程ね。それは、動こうとしない訳だ。



 アストさんからの報告によると、最初危惧していた『敵方からの先制攻撃』については、あからさまな過ぎる魔法攻撃を何の宣告も無しにぶっ放してくれた為に、既にクリアしている状態になっているのだとか。

 実際に、ソレの処理(起点潰し)を俺がしているから、やられた事自体は間違いは無いと断言出来る。


 だが、その後にも続いている飽和攻撃により、今部隊を展開すると被害が半端無い事になるのは目に見えている為、港に接岸する訳でもなく、こうしてチマチマと遠距離から削り合いをしている、と言う訳であるらしい。


 そんな状況を打開するべく、半ば強制的に揚陸してこちらも部隊を展開する、と言う処までは決定したらしいのだが、その揚陸部隊の先鋒を何処が勤めるのか、で更に一悶着有ったのだとか。

 まぁ、わざわざ被害が最も大きくなるであろう役割に、わざわざ立候補する様な変態がそうそう居る訳もないのだから、そうなって当たり前と言うモノだろう。


 一応、総指揮官たるアスモディアさん率いる本隊が事に当たる予定となっている、と言う事らしいのだが、一応であれ今回の遠征軍の主力をこんな処で損耗するのは持ったいなさ過ぎる。

 それに、いい加減暇を持て余しているのだから、丁度良いと言えば丁度良いかね?


「……アストさん。俺達『独立遊撃隊』って、こう言う盤面で勝手に動いても良いんでしたよね?」


「……!えぇ、その通りですが、動かれるのですか?」


「……その方が良いだろう。損耗も少なく、暇を持て余す人員も減る。効率的だ」


「まぁ~、そうは言っても~、ほぼ確実に要らない嘴を突っ込んで来る阿呆が居るだろうから~、そっちへの対処はお願いする事になるだろうけど~、それでも良いですか~?」


「分かりました。その程度であれば、陛下の元に居た際に嫌と言う程経験しましたので、慣れてますから大丈夫です!

 処で、どうするおつもりですか?アスモディア閣下は、一隻程度であれば相手にくれてやるつもりで突っ込ませる、と仰って居られましたけど?」


「いや、なに。俺だけで良ければ、移動手段が無いでもないから心配ご無用。

 取り敢えず、俺が突っ込んだ後に、このメレゲトンを接岸させるか、もしくは小舟の類いで上陸するかは任せるから、その隙にお願いね?あと、おっちゃん達にも声掛けよろしく!」


「……了解した」


「気を付けてねぇ~」


「???」


 俺がタツとレオの二人に対して指示を出しつつ、何時もの如く俺の股間に頭を突っ込もうとしていたリルに跨がる。

 アストさんは今一理解出来ていない様子だが、二人には伝わっている様子なので多分大丈夫だろう。


 そう見切りを付けた俺は、レオが投げて寄越した相棒を脇に構えると、リルの頭を一撫でしてから首筋をポンポンと叩き、俺の方での準備が整ったことを伝えておく。


 すると、先程の会話を聞いていて、俺が何をしたいのかを理解していたリルは、一度甲板の端まで移動してからその四肢に力をみなぎらせると、甲板の板材を捲り上がらせながら疾走し、一瞬で反対側の端に到達すると、その勢いのままに跳躍する(・・・・)


「えぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!?」


 唐突過ぎる出来事に、流石のアストさんも許容量を超えたらしく、珍しい位に取り乱して叫び声を挙げている。


 しかし、当のリルは、そんなモノ知った事か、と言わんばかりの勢いで上空へと飛び上がっており、案外のこの空中の視点が楽しいのか、背後でバッサバッサと尻尾が振られているのであろう気配がしている。


 そんなハイテンションワンコ(但し巨大)と化しているリルを、普段の俺であれば即座に蕩ける程にモフり倒すのだが、既に戦闘状況時の思考に切り替わっている為に意識がそちらに対して食指を動かさず、高い視点によって得られた敵陣の分布だとか、ハーフェンに据えられた敵本陣の位置等を人の流れや動きによって推測し、効率的に自身へと注目を集める為にはどうするか、を検討して行く。


 そして、最初の助走によって得られた勢いが失われ、それまで上方へと向いていた勢いが今度は下方へと向けられる頃合いになると、次の足場(・・・・)として目を付けていた船の近くまで跳べていたので、出来るだけ着地の衝撃を和らげながら甲板を壊さない様に、ソッと端の方へと着地する。


 それでも、体高だけでも人の背丈を越える程のサイズを誇るリルが着地した事により、少なくない着地音と衝撃が船を揺らした為、船の内部で待機していたり、ハーフェンを攻撃するために甲板へと出ていた人達から戸惑いの声が挙がっており、耳を澄ませてみればヴァイツァーシュバイン王国側からの攻撃と勘違いしたらしき指揮官が、船に対する被害の程を確認させようと指示を出しているのが聞こえる。


 それを起こした張本人としては、多少申し訳無い気持ちが無いでもないのだが、わざわざ事情を説明しに行っている暇も余裕も有る訳ではない為に、罪悪感を圧し殺して再度リルへと指示を出す。


 すると、何も言わなくても理解してくれているらしく、最初の時のソレと同じ様な手順で加速し、ハーフェンの方向に合わせて甲板の縁にて踏み切って再び跳躍する。


 流石に、旗艦だけあって戦闘の行われている場所からは遠い位置に在ったメレゲトンからの出発により、それから数回は味方側の軍艦を足場にする必要が有ったが、こちら側への迎撃の為か、もしくは港の防衛の為かは定かではないが、それほど多くは無いまでも港と魔王国軍の軍艦団との間にヴァイツァーシュバイン王国側の軍艦も出撃していたので、それを次なる足場として目標に設定し、味方側での最後の跳躍を慣行する。


「き、来たぞ!撃ち落とせ!!」


 味方側の船にてある程度は隠れていたとは言え、流石にあれだけ目立つ事をしていれば気付かれるらしく、俺達が踏み切って跳躍し、重量に引かれて落下し始めた段階で着地予定の船とその周辺の船から号令が掛かり、まだ空中にて身動きの取れない俺達目掛けて魔法や矢と言った遠距離攻撃が殺到する。



「まずい!?」「どうにかならんのか!?」「早く!防御魔法を飛ばせ!!」「距離が有りすぎる!無理だ!?」「ダメだ、間に合わない……!?」



 俺達が通り過ぎて行った、足場としてしまった船の方からそんな言葉が聞こえて来た様な気がするが、然して問題でも驚異でも無い為に軽く手を振って『問題無い』とアピールしておく。


 そして、それから然程の時間を開けずに殺到してきた遠距離攻撃に対し、俺は左目で見付けた魔法の『起点』に対する攻撃で、リルは魔法で、リンドヴルムはブレスや自前の鱗による耐久性にて、カーラはその旋回性や機動性と言った回避性能にて対処し、一度は攻撃の爆炎にて姿を隠すものの、その次の瞬間にはその爆炎を切り裂いて無傷の姿を周囲に晒していた。


 そんな俺達の姿に対し、魔王国軍の方からは一瞬の静寂の後に、こちらでも爆発が起きたのかな?とでも問い掛けたくなる程の歓声が挙がり、ソレによって士気が上がったのか、まるで『あいつ(俺達)に続け!』とでも言わんばかりの雰囲気にてガンガン船を進め始める。


 一方ヴァイツァーシュバイン王国側の軍艦では、魔王国軍側とは打って変わって阿鼻叫喚の地獄絵図と化し初めていた。


 何せ、複数の軍艦にて分乗する程の人数にて火力集中を行ったにも関わらず、たった一人(と三頭)を仕留める事が出来ずに居ただけでも、士気に対する被害は甚大であったハズなのに、ソレだけでなく何処からともかく飛来した『何か』によって甲板から船底まで貫く様に大穴を開けられ、港に対する防衛線の最前列を構成していた軍艦の半数近くが一気に航行不能にさせられたのだ。

 流石に、頭おかしい国の頭おかしい軍人共だったとしても、そんな状況にて士気を保つのは難しいらしく、原因の解明も放り出してあたふたするだけの様子であった。


 そんな状態であった上に、その状況を作り出した存在である俺達に着地場所として選ばれてしまった軍艦では、俺達の着陸と同時に混迷の極みとでも表現しても間違いは無いであろう状態へと叩き込まれ、組織だった抵抗も碌にする事も出来ずに甲板上に展開していた人員は、草を刈るよりも簡単に俺達の手によってその命を散らせて行く。


「……ふむ、ここはもう良いだろう。リル、次を頼むな」


『グォン!!』


 軍艦内部にまで侵入し、中身を皆殺し(ブラッドバス)にする程手間隙を掛けてはいられない為に、粗方甲板上から人影が無くなるまで掃討してから、もののついでに周辺の船へと上空から行ったのと同じく『風切り』による遠距離攻撃を加え、ある程度数を減らした段階で跨がったままのリルへと声を掛け、次の船を目指して跳躍を慣行する。


「おっと、忘れる処だった」


 そして、リルが跳躍した事により、先程まで足場として利用していた船が用済みとなった為に、リルに跨がったまま腰を捻って後ろへと振り返り、上半身の力のみにて投槍を行い同じ様に甲板から船底まで貫く大穴をプレゼントしてやる。


 ……普通、槍を投げただけでそんな大穴は開かない?


 大丈夫、大丈夫。

 この世界に来てから強化された身体能力を持ってすれば、この世界の最強種である『龍』の鱗も貫けるだけの威力を発揮させる事が出来る(リンドヴルムのお墨付き)んだから、槍を使い捨てるつもりで投げれば、アレくらいは出来なくはないって!



 そんな感じでリルが跳躍し、その他の面子にて槍を降らせたり、丸焦げにしたり、モフっとしていたりしていると、漸く本来の目的地であったハーフェンの港その物に到着する。


 約一月振りの地面にホッとする暇もなく、リルから飛び降りながら今度はハーフェンの港に集められていた戦力から殺到した遠距離攻撃を捌いて行く。


「や、やれ!撃て!!」「そのまま動かせるな!」「いっそうの事、足場の桟橋ごと崩してしまえ!」


 流石に、俺達でほとんど沈めてしまった軍艦に乗っていた戦力よりも、こうして港に残っていた戦力の方が数が多いらしく、俺達でも捌きながらでは思った様に動けない程の弾幕を張られてしまう。


 こちらからも、回避しながらリルやリンドヴルムが放った魔法だとか、俺による魔法の『起点』に対する攻撃の際に放った投槍やら短剣やらを直接着弾させたり、場合によっては建物の類いを倒壊させたりする事により多少の被害は与えているが、それにしても先程の対軍艦の様に効率的にとは行かないのが現実であり、せめてもう少し広々と戦える場所だったり、もう少し多方面から展開出来ていれば、と思ってしまう。


 無い物ねだりだとは分かっているのだけど、と思いながらも、多少の期待を込めてちらりと後ろを覗き込むが、肝心の魔王国軍は俺が造った元軍艦の漁礁群を漸く抜けた処であり、俺が居る事で使用できない(弾幕が殺到するため)以上は他の桟橋へと移る必要を加味すると、恐らくは間に合わないだろう、と言う結論しか算出出来ない。


 ……一応、逆転の目が残っていない訳では無いし、手がない訳でもないのだが、今それを使ってしまうと後が面倒な事になる為に、さてどうしたものだろうか、と攻撃を捌き、時折反撃として『風切り』を打ち返しながら考えていると、背後から慣れ親しんだ気配が高速で迫ってくるのが感じられる。


 一体何事か!?と思って反射的に振り返るとそこには、舳先が喫水線を遥かに上回る様に上空へと跳ね上がり、後方へと水煙を撒き散らしながら、モーターボートもかくや、と言わんばかりの勢いと速度で突っ込んで来る一隻の小舟が目に予定飛び込んで来たのであった。


 流石に、そんな異常な事態を目の当たりにしても、平然としながら攻撃を続けていられる程に頭がおかしい訳でなかったらしく、ハーフェンからの攻撃も若干の衰えを見せる。


 その隙を突くかの様に更に一層の加速を見せた小舟だったが、流石にその極端な加速度には耐えられなかったのか、桟橋を目前としながら水面にて飛び跳ね、空中へと舞い上がってしまう。


 その、あまりと言えばあまりな光景に、俺も含めたほぼ全員が釘付けとなってしまったのだが、その船が地面へと墜落し砕け散る寸前に五つの影が飛び降り、呆然とその光景を眺めていたヴァイツァーシュバイン王国側の戦力へと襲い掛かった。


 その内の二つは嬉々として、その内の一つは殺意を周囲に撒き散らしながら、残った二つはフラフラとして動きに精彩を欠きながらも、それでも確実に二人掛かりで敵を倒して行く。


 そんな五人の姿に半ば呆れ、半ば救援をありがたく思いながらも、漸く接岸した魔王国軍の軍艦から味方側の戦力が展開し始めた事を確認した俺は、展開しきるまでの時間を稼ぐべく、先程の集中放火のお返しも兼ねて『独立遊撃隊』の仲間達が暴れている処へと駆け出すのであった。

面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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