12・湖に到着したので拠点建築と適性審査をします
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「ふん!(ダンッ!)ぬん!(ザンッ!)はぁ!(メキメキ……ズズン!)」
「よっ!(ガッ!)ほっ!(ザッ!)それ!(スコーン!)」
「え~い!(フッ)そ~れ!(ドスン!)よっこいしょ~!(コンコンコン)」
取り敢えず、誰一人欠けること無く、行動拠点として目を付けていた湖に到着出来た俺達は、早速生活の為の拠点を『建てる』事にしたのだった。
そのための材料である木材をタツが伐採(素手で)し、それを俺が板や柱等の建材へと加工(道具?もちろん相棒だけで)や木組み用の溝を掘り、それらをレオがスキルの特性(自身を中心とした半径10m以内であれば、内容物を好きに出せる)を生かして組み立てたり、固定のために木釘を打ったりして作業している処である。
……サバイバルってなんだっけ?
今俺達がしているのが、ソレのはずだけど?
そんな作業中の俺達を、少し離れた処から呆然と眺める女性陣。
「……せ、先生?私、夢でも見ているのかな?しぐちゃん、みきちゃん、私の頬っぺたつねってくれる?夢だったら痛くないハズなんだけど?」
「……乾さん、私も同じ夢を見ている訳じゃあ無いのなら、現実なんじゃないのかな?……多分」
「紗知殿、拙も同じ気分ではありますが、恐らくは現実かと……。では、紗知殿が仰られた事なので、失礼します」(プニッ)
「オレも、コレは『夢みたいな現実』だと思うけど、まぁ便利になりそうだから大した問題じゃあ無いんじゃないか?……まぁ、友達に頼まれたら、聞いてやらないと、な?」(ニヤリ)(ムニーー!)
「……みひひゃん、いはいっへ……痛いって事は、夢じゃあ無いんだねぇ……」
そうやってじゃれ合う乾を中心とした乾・先生・久地縄さん、それと、乾の友人の片割れであり、あの日突撃してきた面子の最後の一人でもある阿谷さんの四人。
「……あ、亜利砂さん!音澄さん!た、たたた建物が!建物が、あんなに素早く建てられるのって!おおおおお、おかしくないですか!!」
「……まぁ、おかしいと言えばおかしいですけど、あの三人に『常識』を問うのが間違っているとは思いませんこと?奥瑠さん?
音澄さんも、そうは思いませんこと?」
「……ん。確かに、あの三人は『異常』。……でも、『有害』では無く『無害』。むしろそれ処か『有益』なのだから、多少『おかしく』ても目を瞑るべき」
それと、俺達の手際の良さを見て混乱している桜木さんを宥め(?)つつ、本人達も死んだ魚の目と言うか遠い目と言うか、とにかくそんな感じの表情をしながら、それでもパッと見は冷静そうに対応している様にも見れる亜利砂さんと音澄さんの三人に別れているみたいだ。
……女性も居るから、と気を利かせたつもりで、夜も安心して寝るれる様に、と建築している訳なのだけど、これなら別段小屋でなくても大丈夫だったかな?なんて思いながらも作業を進めていたのだが、それでもやり始めた事なのだから、と手を止めず、只ひたすらに作業を続ける。
すると、建築開始からそれほど経ったとは言わないであろう程度に日が傾いた頃には、屋根もかけ終わって中で生活出来ないことも無いかな?程度の小屋が完成する事になったのであった。
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取り敢えず、小屋と呼べるだけのブツを作り上げ、後は入り口に設置する扉や、取り付けておいた窓に付ける木蓋等を作ったり、トイレ用のスペースを作ったりするだけになったので、残りの作業をタツとレオに任せた(投げて、とも言う)俺は、今のところ『非戦闘要員』の立場に置かれている乾達を、小屋と俺達用の塒予定地から少し離れた場所へと誘導していた。
……いや、まぁ、ね?
こう言うのは、スキル的な役割としては、タツが適任だ、ってのは分かっている。
まぁ、タツのスキルでは、直接的に持っているスキルの情報を知ることが出来ないみたいだけど、それでも身体能力のバランスだとかで、何が使えそうかの選定位は出来るハズだ。
……何故分かるのか?
そんなもの、既に俺達(俺とレオ)で試してみた後だからさね。
タツ曰く『モヤッとしか分からなかった』との事だったので、多分他の人も分からないのではないだろうか。
それに、スキルの事を置いておくとしても、残っている作業的には、後は割合細かな作業が多いから、結構大雑把なタツがやるよりも、そこそこその手の細工事が得意な俺が残ってやる方が、結果的には完成が早まるだろう事も、もちろん分かっている。
……分かっているのだが、それでもこうして俺が担当しているのには、それなりに『理由』があるのだ。
まぁ、『理由』と言っても、何故かタツが
「……断固拒否する」
と言って譲らなかったからなのだけど。
普段ならば、それが最善だと判断できれば、二つ返事で了承するハズなのだけど、この時ばかりは頑なに『No』を連呼するのみで、結局俺が担当する事になったのだ。
……何故か、そのやり取りの際にタツが冷や汗を滝のように流していたり、会話の相手は俺のハズなのに、まるで俺の後ろの誰かと話している様に、視線を不自然な方向に固定していたりだとか、その方向から変な圧力を俺も感じたり、恐る恐るその方向を見てみれば、何時もの通りの笑顔を浮かべた乾が立っていただけだったりなんて事は無かったのである。
……無いったら無いのである。
そんな訳で、現在保護対象となっている彼女達へと向き直る。
「……と、言う訳で、自分で『これなら出来る!』って事がある人~?」
まずは自己申告させてみるかね。
そんな事を考えていると、勢い良く一本の腕が上げられる。
「ハイッ!ハイ、ハーイ!オレ、元から力は強かったから、力仕事の類いなら出来ると思う!戦ったりする方は、時雨のを見ている限りだったら、そこまで怖くは感じ無かったから出来るかもだけど、何使えそうかとかは分かんない!」
そう、笑いながら言い切ったのは、乾の友人の片割れである『阿谷 美樹』さん。
180㎝近い長身に、部活で焼けた褐色の肌。ショートカットの髪に、一人称が『オレ』の、それらのパーツだけを聞いたのならば、男子と間違えそうなモノでは有るが、実際に目にして見れば、間違う事無き女性である。
確かに、本人が言う様に、部活で鍛えられたらしき体格からは、男性寄りの力強さ(筋肉)の存在が感じられるが、それでも『女性』を感じさせる様な『丸み』を失ってはいない、メリハリの効いたスタイルをしており、特に一部は凄まじいまでの自己主張をしているので、実際にその姿を見ていれば性別を間違えることはまずあり得ないだろう。
また、一人称こそ『オレ』と荒っぽそうな印象を受けるが、実際に接してみればそんなことは無く、どちらかと言えば面倒見が良いタイプだと分かるだろう。
尚、一人称についてだが、話を聞く限りだと男兄弟が多かった為、自然とそうなってしまったのだとか。
そんな阿谷さんへの聞き取りを続行する。
「『力は強かった』って話だったけど、どのくらいまでなら大丈夫か分かるか?具体的に言うなら、コレは扱えそうかね?」
そう言いながら出したのは、西洋の拵えであり、刀身が1mは有る、両手大剣に分類されるであろう武器だ。
見た目よりは軽く出来てはいるものの、それでもそれなり以上の重量は有るので、元々の力が強かったのであれば、扱える可能性が高いので、取り敢えず試してみるとしますかね。
それに、『大剣』って武器自体が、元々振り回して潰し斬るって武器である以上、素人でも重量問題が解決出来れば、使える目が出てくる武器でもあるからね。
……そう思って、渡してみたのだけど……
「なぁ、小鳥遊?コレ、軽くないか?」(ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュンヒュン、ブオン!)
なんと、その大剣を、風切り音を響かせながら、まるで小枝でも振り回すが如く振るいだしたのだ。しかも片手で。
……いやいや、こっちに来たら、身体能力が上がるっぽいのは、何となく分かっていたけど、そこまで上がるモノかね?
ぶっちゃけ、貴女のその行動、俺は出来る自信が無い。
「なぁ、これじゃあ軽すぎると思うんだけどさ、もっと重いのはないかな?そっちの方が良い気がするんだ」
……さいですか。
まぁ、もっと重いの、って注文ならば、幾らでも答え様は有るのだけど、何となく小刻みに上げるのは良い回答では無い気がする。
なので、知り合いの刀鍛冶が、ノリと勢いで作ってみたとか宣っていたアレを出してみるとするかね。
それは、剣ではあるが、剣と呼ぶにはあまりにも、大きく、重く、そして大雑把なモノ。
それは、本来ならば、『鉄板』や『鉄塊』とでも呼ぶべきであり、どうやっても『武器』の範疇には無いハズのモノ。
その名も
「来い、『竜殺し』!」
その瞬間、手の中に確かな重量感と剣の柄のそれと思わしき感触が沸き起こり、刀身も含めての全重量を感じたと思った通り時には、あまりの重量に先端が地面に突き刺さっていた。
あまりにも、あんまりなブツの急な登場に、静まり返る俺達。
「……取り敢えず、俺が出せる範囲で一番重いのを出してみたけど、使って……みるか?」
「……まぁ、出してもらった以上は一応……お?」
そう律儀に答えながら、俺が支えていた柄を受け取る阿谷さんだったが、そこで変な顔をしながら変な声を出して一瞬固まる。
が、次の瞬間には、先端が地面に突き刺さっていたその『竜殺し』を片手で引き抜きながら持ち上げると、そのまま『ブォン!ブォン!』と空気を引き裂きながら何度か素振りをし、そして目を輝かせながら振り返ると
「良いな、コレ!オレ、コレにするよ!」
と、とても良い笑顔で、俺に笑い掛けてきたのであった。
……マジですか……。
******
斯くして、阿谷さんが晴れて戦闘要員へとクラスチェンジを果たしたのだが、まだ役割の決まっていない人員が後二人居るので、彼女達の適性も見ておく必要がある。
「……で、他に誰か、何か有るか?」
「うーん、私は多分戦うのは無理かなぁ……。しぐちゃん達のを見ているだけでも『怖い』と思っちゃったから、実際には戦えないと思う。でも、家事の類いなら一通り出来るし、他の雑用とかでも手伝えると思うから、出来ればそっちの方面でお願い出来るかな?小鳥遊君」
「まぁ、一人位そんな奴がいても良いだろう。むしろ、そっち系(家事系統)が大丈夫って人間が居てくれると大いに助かるからね?
……下手をすれば、最大戦力であるハズの俺達が、そっち(家事)を担当とか言う事態になりかねないからね?」
昨今の女性の家事力低下は顕著だからね。
そんな訳で、乾は家事系統の担当で良いだろう。
むしろ、お願いしてやってもらっている、とても言うべきかね?
「さて、残るは桜木さんだけだけど、何か出来そうな事って有るかね?」
「……あ、あの、わ、私は、その……」
俺の質問に口ごもってしまっているのは、ここに居る面子の中でも最後になってしまった『桜木 奥瑠』さんだ。
その『小さい』と形容して間違いの無い体格(ぶっちゃけ中学生にしか見えない)と、オドオドとした行動から小動物染みた保護欲とでも言うべきモノを喚起させる様な存在である。
「……わ、私も、家事の類いは得意ですから、出来れば、乾さんと、同じ……方が良い……です」
「フム?なら、基本的に二人に任せる事になると思うけど、大丈夫かね?」
「うん、私は大丈夫だよ。奥瑠さんも大丈夫?」
「……は、はい。私も、大丈夫、です」
フム、なら、これで割り振りはお仕舞いって感じかね?
なら、皆のところに戻るとしますかね。
ちなみに、主人公グループで、家事(掃除・洗濯・料理)が出来るかどうかは
先生・一応出来る
乾・出来る
久地縄・出来なくはない
阿谷・料理は出来る
亜利砂・出来ない
音澄・出来ない
桜木・出来る
主人公・出来る
タツ・出来る
レオ・出来る
となっております。
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