11・離脱に成功したので湖を目指します
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タツを先頭にして暫く森の中を進み、殿の俺が殺気を放って威嚇しつつ、気配を消したレオが追跡されていない事を確認して合流を果たしてから、漸く一息つく。
そんな俺達の様子を不思議そうに見ている女性陣だったが、その中でも比較的俺達との交流が深い乾が代表するかの様に質問してくる。
「小鳥遊君、どうしたの?何だかホッとした様な感じだけど、何か有ったっけ?」
……まぁ、荒事とは無関係だった人間じゃあ、分からんかね。
「……いや、ね?実際に幼馴染みだったお前さんにこんな事を言うのはどうかとも思うけど、あの手の人間が今回みたいに『内心見下していた相手にやり込められた』場合、取る行動は一つだからね?」
「……まず間違いなく、報復一択だ」
「実行するのが遅いか早いかの違いは有っても~、基本的に考えてやることは~、大差無いよねぇ~、あの手合いって~」
今までに何度か同じ様な場面に出会した事が有るのだが、大神みたいな人間が、今回と同じ様な、リーダーである自身のグループから離脱者が発生した状況になった場合、取る行動は大体どいつもこいつも同じ様なモノだったからね。
まぁ、早い話が『追い掛けて見せしめに殺す』、大体がこれ一択。
その手の連中は、そうなった場合に考えることは大体『見限られた』では無く『虚仮にされた』と考えるため、自身の面子の為と称して大なり小なり追っ手を差し向ける。
まぁ、違いが有るとすれば、抜けた時点で即座に追っ手を差し向けて来て、時間を掛けずに捕まえようとするか、それとも最初は見逃すフリをして、逃げ切れたと安心した処を狙うか、もしくは協力者ごと血祭りに挙げるか程度だが、やはり大した違いは無いだろうね。
そして、それらの実体験から来る経験によって、多分何かしらの追っ手が来るだろう、と予測していたので、それを警戒していたのだが、どうやらすぐには来ない様子なので安心した、と言う訳なのである。
それらの経緯を説明してやると、若干顔を引きつらせながら、乾が俺達に聞いてくる。
「……そ、それって、ぶっちゃけると似たような状況に何度も遭遇しているって事だよね……?
……さっきの、素人目にも凄いって分かる槍捌きだとか、今の説明に出てきた体験だとか、こんな処でも快適に過ごせるサバイバルテクニックを持っている理由だとか、出来ればでも良いから教えてくれると有難いんだけど……?」
フム?
そう言えば、そこら辺は説明してなかったな。
なら、現時点で俺達が把握している情報と共に軽く披露しておくかね?
******
乾からの質問に答えるために、俺達の身の上を少々と、この島について得られた情報、それと、今居るここが異世界(推定)で、何故か俺達はスキル(仮称)が生えていた事も説明しておいた。もちろん、移動しながらだけど。
……まぁ、それらの情報を一気に開示したせいで、予め知っていた先生以外の女性陣はプチパニックを起こしかけたが、パニックを抑え希望を持たせるために『多分誰かが召喚した説』を披露し、多分では有るけれど、そんなにしない内に探しには来るんじゃない?と言ってみた処、どうにか治まってくれたので何よりだ。
そして、それらの情報を開示した際に
「そう言えば、乾と先生以外の女性陣の事って、名前すら知らねぇや」
と言う事実に思い至り、取り敢えず行動を共にする事になっているのだから、自己紹介よろしく、と振ってみた処、全員分の名前と簡単な特技を聞き出す事に成功したのだが、なんと嬉しい誤算として、女性陣の中で『武術』の心得が有る人間が数名居たのである。
そんな彼女達には、各人の扱える武器を俺のスキルで出し、それぞれで護身の為に使ってもらっている。
その中の一人である久地縄さんが、暫く進んでから休憩するために行軍を停めている時、俺達とは少し離れて素振りをしていたのだが、ある程度抜き打ち等の動作をした後、抜き身の刀身を鞘に納めながら、こちらへと向かって来た。
「……小鳥遊殿……。この刀、拙の腕前では過ぎた業物だと思うのですが、他には無かったのでしょうか……?出来れば、もう少し格を落として頂けると有難いのですが……」
そう言いながら、業物を扱える幸運を喜ぶのと、自身の腕前が刀に劣る事を悔いる慚愧の念をごちゃ混ぜにしたような表情で、その純和風な美貌を曇らせながら、綺麗に纏めたポニーテールを揺らしているのが、乾の友人の片割れでもある『久地縄 時雨』さんだ。
そんな彼女の実家は『久地縄流居合術』なる流派の道場を開いているとかで、本人曰く『そこそこの腕前』なのだそうな。
……まぁ、修行と称して生き地獄を味合わされた俺達から見れば、まだまだなのだけどね。
「……悪い、俺が出せる刀のレパートリーの中で、久地縄さんの体格に合いそうなのってそれしか無いから、それで我慢して貰えないか?」
そんな俺の一言に、どうしたら良いのだろうか?と言わんばかりの表情で固まる久地縄さん。
「あら?なら、遠慮なんてなさらずに、使ってしまえばよろしいのではなくって?……それに、自身の力量に武器が合って無いと仰るのでしたら、私も同じですことよ?まぁ、私としましては、守護剣が無いのが少々不満ではありますけど」
そんな久地縄さんに声を掛けたのは、同じく武器を扱える面子の一人であり、彼女と同じ様な表情を浮かべながら俺が渡した刺突剣の柄頭を撫でている『亜利砂・レイヴンクロー』さんだ。
さっき知ったのだが、どうやら父方の家系が外国の貴族様らしく、その名残からか護身術兼教養として、その父方の実家に伝わっていた剣術を学んだのだとか。
それと、ハーフ(母親は日本人)なだけあって顔立ちも整っており、綺麗な銀髪とスラリとした高身長(男子平均の俺と同じ位)から、どこぞでモデルにスカウトされたことも有るのだとか。
ちなみに、リアルお嬢様らしい。
……まぁ、全部ついさっき知ったのだけど。
「済まんな、刺突剣の方はある程度ストックが有ったんだが、守護剣の方はあまり触れる機会が無くてな。山刀の類いで良ければ多分イケるが、そっちにしておくか?」
「……いえ、それでしたら結構ですの。まぁ、こんな状況なのですから、刺突剣が有るだけマシだと思いましょう」
「そうか。なら、そいつだけで頑張って欲しい。
……そう言えば、音澄さんの方はどうだ?使えそうか?」
「……大丈夫」
そう、口数少なく答えつつ、この森の中で良くもそんなに振り回せるモノだ、と感心せざるを得ない程に見事な風切り音をさせながら、自身の身長を遥かに越える長さの長刀を振り回し、ついでと言わんばかりの動作で茂みの影に隠れていたウサギ(耳が刃になっておらず、額から角が生えている事から兎公とは別種と思われる)を仕止め、手早く血抜き加工して
「……お土産。あげる」
と渡してきたのが、乾達に続いて俺達へと合流を宣言した三人の内の一人である『音澄 京香』さん。
聞いた限りだと、部活で長刀部に所属しており、大会に出て優勝した経験も有るとか無いとか。
実戦経験こそ無い様なのだが、今回武器を渡した面子の中で、唯一得物に振り回されず使いこなすだけの力量を持っているみたいなので、実際の戦闘を経ての成長が大変期待出来る逸材でもある。
本人も、俺を同じ長物使いと知り、そして『なんとなく』であれ互いの力量を察したのか
『……落ち着いたら、手合わせ願える?』
とも言っていたので、実際に手合わせするのが今から楽しみで仕方がない。
尚、そんな彼女が兎の絞め方なんて知っているのは、移動中に俺達へとサバイバルのアレコレを質問し、知識を集めてそれを実行した結果だと思われる。
そんな彼女から角兎(仮称)を受け取っていると、『カァン!』と硬質的で高い音が鳴ると同時に、鋭い風切り音が発生し、それに少し遅れて『ズドン!』とも『ズガン!』とも取れる音が聞こえて来たので、それらの発生源へと視線を向けると、そこには和弓(試してみたら出せた)を携え、兎公の革から作った弓懸と矢筒を装備し、年相応の豊かさを持っていた部分を予備の服を巻いて抑えている先生の姿が有った。
「……うん、高校の時にやってた程度だけど、まだ射てない事は無い、かな?まぁ、動く相手に当てられる自信は無いけど」
「普通に射てて、俺達に当てないのなら、それで十分でしょう?」
一応、久地縄さんや亜利砂さんよりも、武器の格としては低い物を渡して有るが、それでも確りと使えているみたいだから、多分どうにかなるだろう。
尚、乾を含めた残りの三名は、武術の心得が無いそうなので、湖で拠点を確保してから、何か使えそうな物は有るか、又は何が出来るのかの適性を見ることになると思うが、それが出来ていない今は護衛対象となっている。
「ゴメンね?小鳥遊君。着いていくって言ったのに、いきなり足手まといなんて……」
そう声を掛けてきたのは、いつも浮かべていた笑顔を曇らせ、何処か落ち込んだ様な表情を浮かべている乾だった。
そんな乾に俺は
「……まぁ、『今は』足手まといなのは否定しないけど、湖に着いてからなら、何が出来るのかを調べることも出来るから、そう落ち込みなさんな。
出来ることをやる。
サバイバルで多人数行動する時の、割合と大事な心得だ。ホントだぞ?」
と慰め(?)の言葉を掛けてみる
そんな、慰めになっているのかすら怪しい言葉を受けた乾は「クスッ!」と微かに笑ってから、それまでの曇っていた表情を明るくさせて
「うん、分かった!
『出来ることをやる』
私も、そう出来る様に頑張ってみるね!
……それと、慰めてくれてありがとうね。下手くそだったけど、元気が出たよ!」
「……そいつはどうも」
……まぁ、からかわれている気がしないでもないが、元気になったのならそれで良しとするかね。
そんな事を考えていると、それぞれこれからのルート選定に出ていたタツと、念のため追手が出ていないかの確認をしてもらっていたレオが戻ってきた為、湖を目指しての移動を再開する事となった。
そして、移動の途中で度重なる魔物の襲撃が有り、それにぶちギレた久地縄さんと亜利砂さんが逆襲して殲滅したり(武器には慣れた模様)、何度目かの魔物の襲撃の際に、あの兎公並み……とは行かないモノの、アレに準ずるサイズのモノと遭遇してしまったのだが、俺が
「……あいつのレバーって旨いんだよな……」(ボソッ)
と呟いたのを聞いたのか、武器持ちの女性陣が覚醒してしまったらしく、多少苦労しながらでは有ったが、四人掛かりで大した負傷も無く倒しきってしまうと言うイベント(アクシデント?)は有ったが、それでも、太陽が登りきるかどうかの頃合いには、目的地であった湖へと誰一人欠けること無く辿り着く事に成功したのであった。
まだ紹介してない面子については、次回で紹介する予定です。
面白いかも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等していただけると、作者が喜んで投稿時間が早まる……かも?