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神童  作者: クロ
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出会い


父さんに呼ばれ居間に降りていくと、黒髪の男の子がそこにはいた。


「来たか、トキ。彼はユーリ・トリアノン、今日からお前の付き人だ。」


「付き人?今までそんな人はいなかったと思いますが。」


というか何をしてもらう人なのかよく分からない。


「今まで家では学費を援助する代わりに住み込みで使用人として働いてもらっていたのは知っているな?

今回彼を新たに雇うことにしたんだが、予想以上に優秀で、お前の良き話し相手になるだろうと思って、お前の専属にすることにした。

気に入らないか?嫌ならいつも通り家の使用人として雇うが。」


「いえ、うれしいです。トキ・サンジェルマンです。よろしく、ユーリ。」


「至らない点も多くあると思いますが、よろしくお願いします。」


うわっ可愛い。これで男の子か。なんか穢れない笑顔って感じだな。

彼となら上手くやっていけるかもしれない。


「トキ、彼の部屋はお前の部屋の隣だ。今から案内してやってくれ。」


「はい。じゃあ、ユーリ行こう。」


「ありがとうございます。」


そう言ってついてくる彼は姿勢もよく、むしろ歩いているだけなのに優美さすら感じる。

学費も出せないはずなのに、普通こんなに気品があるものだろうか。


「どうかなさいましたか?」


「いや、なんでもない。」


まあ父さんが認めた人なのだから、怪しい人でもないだろう。むしろこんな彼がいつでも僕の側にいてくれるのだからラッキーなのかもしれない。


「ここが今日からユーリの部屋になる場所だよ。何か足りないものがあったらいつでも言ってほしい。」


「すごい、素敵な部屋です。本当にありがとうございます。」


嘘ではなく心から言ってくれていることが分かる笑顔だ。

せっかくだからもっと話していたいけど、やっぱり疲れているよな。

だが、結局僕の口は正直だった。


「じゃあ、荷物の整理が終わったら僕の部屋に来てくれる?これからのこととか話したいし。」


「はい、すぐに伺います。」


「急がなくていいからね。」


そういうとユーリは部屋の中に入り、急いで荷物を整理しているような気配がした。

なにやってるんだよ。

見るからに真面目そうな彼なんだから、急がなくていいなんて言っても、慌ててくるに決まってるのに。どうせなら、時間指定した方がよかったかもしれない。



思った通り、それから程なくしてユーリはやってきた。


「早速だけど、ユーリはこれからの事についてどこまで聞いた?」


「卒業するまでここに住み込みで働き、その代わり卒業するまでにかかる学費をすべて負担して頂けるということです。」


「僕付きになることに関しては?」


「屋敷の仕事は一切する必要はなく、何事においてもトキ様が最優先で、いつでも、トキ様の望まれたことを実行するということです。」


「何でも?」


それじゃあ、普通の使用人として働く方が楽な気がする。


「はい、いつでも、何でも、絶対です。」


「じゃあ、その敬語とトキ様っていうのやめてくれる?

なんか一線を引かれているように感じるし。」


まぁいつでも、何でも言うことを聞くって言っても、僕が無茶な要求をしなければいい話なんだよね。

でもとりあえず堅苦しいのは勘弁してほしい。


「申し訳ありませんが、それはできません。」


「何でもいいんじゃないの?それにさっきは普通に笑ってくれたじゃないか。」


「先ほどは失礼致しました。これからは使用人としての分を弁えていきたいと思います。」


「ユーリ、さっき父さんが言っていたけどユーリは僕の話し相手でもあるんだよね?」


「はい、そのように伺っております。」


「もしユーリが逆の立場だったらどう思う?自分の話し相手になってくれるっていう人が、いつでも一線を引いていて、堅苦しい態度だったら。」


「・・・気まずいです。あまり話す気にはなりません。」


「そうなんだよ。だからそんな堅苦しい態度はとらないでほしいんだよ。

もう、この際様づけとか敬語とか妥協するからさ、せめてもっと気軽に接してほしいんだよね。」


本当は敬語とかもやめてほしいけどそこまで求めたらユーリも困るんだろうな。

今の言葉に考えているようなユーリは真剣だ。

だけどきっとこの表情なら僕の頼みを聞いてくれそうだ。


「分かりました。では、改めてこれからよろしくお願いします、トキ様。」


言葉は相変わらず堅苦しいのに、表情と声だけでこんなにも違う。

あぁ、でもやばいユーリは微笑むと本当に可愛い。


「よろしく。そうやって笑うとユーリは本当に可愛いね。」


「トキ様、なにを仰っていらっしゃるのですか!私は男ですよ!」


「すまない・・・今日はもう疲れただろうからおやすみ。明日からさっそく学校だからね。」


まさか思ったことが口から出ていたとは。だが、顔を真っ赤にしているユーリも怒っているというより照れているように見える。流石にそれを言ったら許してもらえない気がする。


「はい、お休みなさいませ。」


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