名前と奴隷事情
川で彼女が自分の見た目を確認した後、変な踊り?動き?みたいなのをしばらくやっていた。…何やってんだ。
すると彼女が元の場所に戻るような感じがしたのですぐさま元の場所へ戻った。
暫くすると確かに彼女も戻ってきた。信じられないものを見てきた、というのを顔に思いッきり浮かべて。
「あの……ご主人様」
「なんだ?」
「あの……川を除いたら、ですね?」
「うん」
どう聞いて来るかはある程度分かるけど一応頷いてみる。
「その……物凄く綺麗な人がいてですね?」
「それが気付いたら自分だった…と」
「うう……はい」
彼女はモジモジとしながら、尚且つ俯きながらそう答えた。
「……とりあえず、これで自分が凄い注目を浴びるって分かったよね?」
「…はい」
「まぁ……俺としても自慢したい。周りにものすっごく自慢したい。けどさ……ここまでとくると、なんか後が凄く怖い気がするんだよね…」
うん。まさしく本心。俺としてはこんな美少女を侍らせてるんだぞって自慢したい。けど……俺の直感がそれはヤメロって最大レベルで警報がなってるんだよなぁ…しかも嫌な方の。
「だから、とりあえず、裁縫スキルで体全体を隠すフードとか、そう言うのを作って着てくれると助かる。俺も素材とか探すからさ」
「は…はい」
「あ、今更だけど、俺はレイルズ。君は?」
うん。すっごい今更だけど自己紹介。
「名前……すみません。私には名前が無いんです。いつも「お前」とかしか言われていないので…」
彼女は悲しむこともなく、かといって喜ぶこともなく、ただただ、事実を述べた。
は?名前が無い?有り得ないだろ…またはこれが奴隷の中では平常って事なのか?有り得ねぇな。
っていうかこんな子に名前つけないのか。許さん。そいつらは全員即刻、公開処刑だ。
「じゃぁ、俺が名前をつけてやるよ。ううん……そうだなぁ…」
…げ。言いだしっぺだけど以外に浮かばねえ。ううん…黄金の髪、宝石の碧眼、最高級の生地のような肌…。………あ。
「じゃぁ、初代女王様の名前からちょっといじって、ルルーナ、でどう?」
うん。我ながらいいと思う。因みに初代女王様の名前はルーナ様って名前だ。今では話しか知らないけど、絶世の美女とも言えるお方だったらしい。永遠の若さとも言える見た目で、初代国王様が死ぬと同時に、一緒に死んだとか。なんか、運命ってこういうことを言うんだなぁって凄い思った。
「ルルーナ……ルルーナ……はい!気に入りました」
そう言って、彼女は確かにほほ笑んだ。
ぬおおおおおお滅茶苦茶可愛いいいいいい!!!もう悔いはない。このまま死ねる。
「じゃぁ、さ……ルル……って呼んでいいか?」
………あ。
何口走ってんだあああああ!!良い訳ないだろ!考えろおおお!
「ルル………」
暫く考えていると、ふと微笑んだ。そしてそのまま…
「はい。是非、ルルと呼んでくださいませ、ご主人様」
「…………」
暫く思考を止めた。これ以上考えるなんて無理。
かなり時間が経った後、俺はようやく気を取り戻した。その後、可能な限り素材を集めてそれでどうにかフード付きのローブを作ることに成功。と言っても周りの葉っぱを大量に使用してどこぞの原始民みたいな格好に近くなったけどね。糸は芋虫の吐く糸に近い性質の素材が近くにあった(というより燃えていなかった馬車の中にあった)ため、そこから色々また漁った。念のため他の動物の革とかも使おうと思ったが、これはこれで生臭くなりそうだから止めた。
でもこれで奇妙な目で見られても見惚れてって事は無くなったはずだ。
街の門を通るときは俺の奴隷という事で奴隷税なるものを払って入れた。ちと痛かったけど。その後、俺は服屋に行って安価なローブを1枚買った。それを緊急用の葉っぱローブと変えた後、葉っぱローブは裏路地に捨てて、古着屋で古着を買った。
その後、冒険者ギルドに行って一部の素材…まぁ、狼の皮や魔物の皮に魔物の心臓部にある魔石くらいだけど、それを売ってある程度懐を癒す。同時に彼女の冒険者登録もしておいた。奴隷という事で奴隷用冒険者登録だ。
奴隷は基本的に所有者の「物」扱いだ。…まぁ、俺はルルのあの女神の姿を見た時点でもうもはや自分の中で神格化しているからその考えは通用しないけど…。で、この奴隷用の登録をすると、奴隷の功績も全て主人である俺の元に来るって訳だ。大まかはこんな感じだな。細かいのはその時その時に聞くか。
ふぅ……これで俺は当面また……大丈夫とは言えないな。未だに収入が安定しないし、何よりかなり痛い出費を重ねた。まぁ、冒険者やっていると稼ぎは常に不安定だけど。
登録を済ました後、俺はルルを連れて宿に戻った。というよりもうすぐで夜になりそうだったからある種強制的に宿に向かった。ここで奴隷の事で騒がれるかと思ったけどそうでもなかった。一応宿の主人にはご飯を適当に頼んで、部屋に届けるように頼んだ。勿論、二人分である。
……部屋までは変えられない。そこまで金が無いのが現状なんだよな…。はぁ。
「一応、ここが今の俺の宿と部屋。まぁ……この通り、ベッドとテーブルとイスしかないけどな」
簡素な部屋だけど、それでも安い宿にしては十分な広さだ。
「まぁ…座って」
そう言って俺はルルをイスへ誘った。
そしたらルルは床に座った。
「ちょっと待って、俺はイスに座ってって意味だったんだけどどうして床に座るのかな」
「へ?私はてっきり床に誘ったんじゃないかと思ったのですけど…」
「どうしてそうなる」
「奴隷だからです」
「もしかして…この反応が奴隷にとって普通なの?」
「はい。普通です」
おおおう…また出た。奴隷事情。はぁ…こんなに色々あるんだな。
「とにかく、俺はイスに座ってって言ったんだからそっちに座れ。それが無理ならベッドの方でもいいからさ」
「っ!?」
すると彼女はいきなり床から立ち上がって、かなり警戒するように俺を睨んだ。
「………やっぱり、あなたはソウイウ目的で私を助けたんですね…?」
「……?ちょっと待て、どうしてベッドに座ることがそこまで警戒する理由になるんだ?」
「………へ?」
今度は警戒を忘れてポカン、という感じで俺を見てきた。なんだこの温度差っていうか変わり具合は。
「ん?どうした?俺なんか変な事言ったか?」
「うう………はう…」
なんだ?今度は顔を赤くして…。
「ご……ご主人さまは……よ……夜伽を……ご存じ、でしょうか」
「夜伽?夜、そういう事をするって…………!?」
そこで俺はようやく自分の発言に気付いた。“ベッドの方でもいい”。つまり、ルルはさっき俺が今から……ソウイウことを……ああああああ!!!
「違う違う!!今言った通り、座るだけでも!」
今、俺の顔は凄く赤いと思う。自分でも頭が熱くなってるのを感じるからな。って、どうしてこんな冷静に自己分析出来んだ!!
「と、とにかく、床じゃなくて、どっちでもいいからイスかベッドに座ってくれ…」
「無理です♪」
今度はどうしてそんなにこやかに微笑みながらなんだ…。
「奴隷にとって、主人と肩を並べることはある種の禁忌とされています。仕事など、そういった事態はその限りではないですが…。ですので、私がご主人様と一緒のイスに座ることは出来ません。ベッドならソウイウこと以外は触れません♪」
「なにそれ物凄くメンドクサイ」
「慣れてください♪」
誰が慣れるか誰が!
そうこうしていると、ドアから声が聞こえてきた。どうも夕食を持ってきてくれたらしく、返事をしてトレイを二つ分受け取った。そしてそれを机の上に置いた。…が、ルルは未だにイスに座ろうとしない。なぜ?
「どうした、ルル。食べないのか?」
すると今度は驚愕を目どころか顔に浮かべていた。
「え……いい、の?」
「え、なに。また俺の知らない奴隷事情?」
「ええ………奴隷の主人と一緒の食事なんて…常識の埒外よ。どこの酔狂な人が奴隷と一緒にご飯を食べるというのよ?」
「ちょっとまて!どんな常識だよ奴隷事情!はぁ…知れば知るほど理不尽じゃねぇか。それじゃぁその酔狂な人になろうじゃねぇの」
「え?」
「それに、ルル程美人な人と一緒に食べられるってだけで俺は嬉しいからな。だから一緒に食べてくれるとありがたいんだけど?」
まぁ、一部本心が入ってるのは否めないな。なんせ、こんな美少女だぞ?女神様だぞ?こんな人と食事出来るってそうそうないぞ?しかも、それが俺の奴隷だぞ?あ、やばい。もうこれだけで背徳感で痺れそう。いい意味…いや、変態的な意味で。
「ううん……でも…」
まだ渋るか。なら…!
「ルルーナさん?」
「ぅぅ…意地悪」
「どの口が言うか…」
何とかルルを説得して一緒にご飯を食べてくれた。その後も交互に水浴びをして一緒に寝た。勿論俺は手を出していないし、説得にはあまり苦労しなかったが、その後が苦労した。説得の内容は「寒いから一緒に寝てくれ」だ。嘘じゃない。春先だからまだ寒い夜は続く。でもな……ルルの寝顔がマジで可愛いんだ…。もうこのまま死んでイイ。これが俺の青春でいいわ。
と、思いながら疲れたのか、すぐさま眠気がやってきて、抗わずに寝た。いやぁ、それにしてもスキル貰ったその日にこんなかわいい子を奴隷に貰えるなんて、今日は良い日だ。
何気なくここで初めて主人公の名前が出るという…。レイルズ君とルルーナ(ルル)ちゃん。さて、どんな物語を刻んでくれるのか!
それは、作者次第←




