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あの…お手柔らかに…

 

 罠仕掛けして、それを報告しようとギルドによったのはいいけど、俺の仕掛けた罠がどんなタネなのかを明かそうとして、ラバリス様が豹変した。


 うん!ごめん!俺も気が動転してるみたい!全く頭が働かないいいいい!


「さぁ、貴様のタネを洗いざらい吐かせてもらうぞ?」


 ひ…ひぃぃぃぃ!こえええ!!

 ルルは!?俺の唯一の心のよりどころのルル様はどこだああああ!!もう笑顔が俺の想っている笑顔とちがうううううう!?


「なぁに、大丈夫だ。ここには私と、お前と、貴様の奴隷しかいない。さぁ話せ」


 あああああ…………なんだよ…なんだよこんな展開!俺は知らねえよ!


「ご主人様、気をしっかり!」


 あああ、俺の女神さまがやってきてくれた…ああ、俺は…助かる…のか。


「なに勝手に死にそうな目をしてるんですか!?まだそんなくらいで死なないで下さい!」


「はっ!」


 そ、そうだ!俺は健敬なルルーナ教の使徒だ。これくらいで勝手に死んでたまるか!


「ふふふ…さぁ、吐け。貴様のあの罠の秘密を吐け。なに、悪いことはしない。さぁさぁさぁ!」


「あ……あ、悪魔ぁぁ……」


「……確かに今のラバリス様は悪魔って言われても納得ですね…」


「……今、そんなにひどかったか?」


「酷かったですね。同じ女性としてそんな顔が出来るんだとも思いました」


「うう……それは…すまん」


 あれ?なんかいつの間にか萎んでる…?い、いや!それすらも罠の可能性が…!


「む……」


 ひいいいいいいこっちみたああああ!今度は何される気ですかあああああ!!

 ああ、もう目の前が滲んできている…ルルの姿すらぼやけ始めてる……。


「俺…ここで死ぬのか…」


「「どこに死ぬ要素が!?」」


「もう…俺は死んでも構いません。が!せめてルルだけは許してくださいなにとぞおおおおおお!!」


 そう言って俺はもう思いっきり土下座を繰り出した!それはもう綺麗な俺自身では最高傑作と言えるであろう速度とフォームだ!

 くっ……俺もここまでか!


「ご主人様!?何がどうやったら死ぬなんてことになるんですか!?」


「そうだぞ!?確かに脅したのは悪いとは思うがすまん!そこまで怖がるとは思わなかった!」


 …へ?


「お…俺……許される……のですか?」


「許す許す!悪意ある行動ではない!だからその土下座を止めてくれ!」


「……は!そう言って俺は騙されて…」


「「どこまで深く傷ついてるの!?」」


「すまん……本当にすまん……私はただ、冒険者として生きてゆくなら、こういった恐喝…脅しのように情報を引きずり出そうとする輩がいるから、それの実演の為にやった演技なのだ。本当に聞き出そうとは何一つ思っておらん。仮に聞き出せても他言無用は約束するつもりだった」


「……へ?」


「見たところ、登録して間もないだろう?精々……今月の祝福の義くらいか?私もこの通り、王族だ。人となりを見る目はあると自負している。……流石にここまで怖がられたのはかなり傷ついたが…」


「…奴隷の身分で申し訳ありませんが、同じ女性として恐怖を覚えましたよ、その演技に…」


「…一応、褒め言葉と反省として受け取っておく。ふむ…度合いも確かに考えておくべきではあるな。まだまだ未熟だ」


 あの~…俺って結局助かったの?

 まだ頭が回らないです誰かタスケテ。


「む…まだ状況を理解できぬか」


「度々申し訳ありませんが、恐怖の後には多くの物事は入りずらいかと思いますが…」


「…確かに恐怖の後は何も入らぬか。そこな奴隷。彼の頭が復帰したらギルドマスターの部屋に彼を。それまでは休憩室で休ませておけ」


「は、はい!」


「すまん。本来は他人の奴隷に命令を実行させること自体が違法なのだが、事がコト…なのでな」


「だ、大丈夫ですっ」


「うむ。では、待っているぞ」


「はい!それでは…ご、ご主人様?取りあえず、休憩室に行きましょう?」


「ふぁ…ふぁい」


 本当、理解が追いつかないッス。







 しばらくギルドの休憩室で休んでいたらようやく俺の固まった頭が働き始めた。


「……はっ!ここはどこ?」


「あああ…ようやく正気になりましたか、ご主人様」


 その声は俺を心配しているような音色をしていたので、俺は頭をそっちに向けた。

 するとそこには見慣れているが、見慣れる気配が無い我らがルル様の姿があった。


「る…ルル?」


「はい、ご主人様。あ、ここはギルドの休憩室です」


 そう言われて俺は周りを見渡してみた。一応、小さな部屋でそこにベッドが一つあるだけの簡単な部屋だった。そこにルルはイスを持ってきて座っているような状態だった。

 ただ座っているだけなはずなんだが、それでもその神秘を詰め込んだ黄金の髪と母なる海の瞳が俺を優しく包み込んでくれてる気がした。


「本当、大変だったんですよ?ずっと動かないからここまで動かすのにラバリス様も手伝ってくれたんですからね?」


 暫く俺は放心していたが、どうやらそういうことらしい。なるほど…。


「俺は…生かされたのか」


「……まだ傷は深そうですね」


 こうして俺とルルは暫く休み、気付いたら夜に近かったが、今は食べる気にはならなかったので遠慮しておいた。その後は宿屋に戻って休もうと思ったが、ギルドの連絡員らしき人が俺を“ぎるどますたあ”という人の部屋に案内してくれという事だった。


 ん?


 ぎるどますたあ…。

 ギルドますたあ…

 ますたあ……?


 ギルドマスター!?

 なに!?俺ようやく生きたと思ったのに死ぬの!?もういやああああ!


「…これは……今日一日はゆっくりした方がいいかもね。魔物の氾濫(ハザード)のせいで本当の意味でゆっくりという訳には行かないけど」


 ルルからそんな言葉が放たれながらも俺たちはギルドマスターの部屋に向かった。








「ギルドマスター、夜分遅くに申し訳ありません。例の冒険者を連れてまいりました」


 {冒険者ギルド、ギルドマスター執務室}


 高そうな木札…にそのような文字が掘ってあって、その木札が1つの…主に俺たちの前の扉についていた。

 ついてきたギルド職員が軽いノックをした後、その言葉が出て来て、すぐに渋い声で「おう、入ってくれ」という言葉が扉越しから聞こえてきた。


「失礼します」


 ギルド職員がそう行った後、俺たちは職員に続いてその部屋に入った。


 中は広く、奥の壁際の1か所に窓があり、恐らくこの王都の街並みが見えるであろうところにあった。

 左右を見てみれば……右の壁には何かの魔物の標本なのか、頭だけがその壁から出ていた。一瞬声が出そうになったが、その右側にルルがいたため何とか声が出ずに済んだ。ルル様万歳!

 左の壁には本と思われるモノがずらりと並んでいて、あれを全部整えるまでにどれくらい費用がかかるんだろう…と考えそうだったが、考えるだけ無駄だろうと思って止めた。


 ……そして意図的に避けていた奥と中央に目を向ける。


 奥には豪華そうな木の机があり、そこにはいかにも冒険者をやっていた!というような見た目の男がいて、何か書いていた。髪色は段々白髪が混じりつつある…灰色?みたいで、目は鋭い感じで黄色い目をしている。


 神の声:ロマンスグレーですよ~。


 ん?なにか聞こえたような…まぁいいや。

 中央には柔らかい……あれイスなの?が、横たわっても大丈夫そうな大きなモノがあって、それがお互いに向かい合うように1つずつあった。…そしてその内の1つに…悪魔がいた。


 プルプル…。

 ぼく、わるいにんげんじゃ、ナイヨ。


 あれ?なんで今そんなこと思ったんだ?まぁいいけど…。


「おう、来たな……って、おいおい、まるで生まれたての小鹿みてぇじゃねぇか。おい、お前何やったんだよ」


「いや……私としてもまさかここまで怖がるとは思わなかったのだ…」


「やりすぎ…ってか。取りあえずそこ座れ。それは“ソファ”って言ってな、結構柔らけぇぞ?」


「は…はぁ」


「さて、まぁ小難しい話じゃねぇ。取りあえず、話を聞きてぇから座れ」


「ひゃいっ」


 そう言われて俺は“そふぁ”にこぢんまりと座った。その後ろ隣りにルルは立った。

 そしてそのまま話を始めようとしている男と悪魔を見て、これも俺が知らない奴隷の常識なのかなと一瞬考えた。


「ようし、まず、コイツの事なんだが…」


「待ってくれ。これは私自身の問題だ。私が先に話し、謝罪するべきであろう」


「そうかい」


 そう言うと男はそのまま喋らなくなってしまった。


「まず、最初にあのような脅しをしてしまって、申し訳ない」


 そういうと悪魔はその頭を下げた。


 ……え?おれっすか。


「え…ええっと…」


 ヒソヒソ

(ご主人様。何か返事をしないとずっとこのままですよ)


 俺が戸惑っていると後ろからルルが声をかけてきた。

 はっ!そうか。確かに返事しないといけないな。おかげで落ちつけたし、とりあえず簡単な段取りを…。


 なんか部屋についてきた

 ↓

 デカい部屋だった

 ↓

 “そふぁ”に座った

 ↓

 悪魔が頭を下げた:今ココ



 ……うん。訳が分からん。

 なんで悪魔が頭を下げるのかが分かってないし…


「…は!まさか頭を下げたというのは嘘で本当はこの場で俺を…」


「「「どうしてそうなる!?」」」


「だ…だって、そうとしか考えられない…」


「ちっとまてや。どうしてそう言う考えになるのか詳しく聞きたいんだが?」


「あ…あなたは悪魔の味方だと…!」


「誰が悪魔だ!」


「ああ…まぁアレを見れば分からなくは無いですが……ご主人様、ラバリス様をそういう風に見ていたと…」


「だってそうとしか考えられないし、見えないんだ…」


 だって、あの顔を思い出すだけでもう震えが止まらないよぉ…。


「……ラバリス。どうやらマジでやっちまったみてぇだな」


「……うむ。これは…どうしたらいいのか…」


「わりぃことは言わねぇ…が、シャア無いと思え。取りあえず、街の様子やらなんやらを頼むぜ。こいつは俺が何とかする」


「ああ……はぁ。すまない」


「次回から気を付けるんだな」


「ああ…本当に、難しいものだ」


「同情するぜ」


 そういう会話の後、あの悪魔は出て行った。

 ああ、後ろにルル様がいるというだけで落ち着く…。目の前に色々な意味で怖いはずのギルドマスターが怖くないのが不思議な感じ。


「…取りあえずよ…落ち着いたら罠仕掛けの方に専念してくれ、と言いたいがもうすぐで夕方…というより夜だが、お前飯食ってねぇよな?」


 言われてみたら確かにお腹減ってるかも。あ、でも今お金が…。


「飯は食って無さそうだな。取りあえず、俺のおごりだ。色々あいつが迷惑かけたお詫びだな。ギルドは混んでるだろうが、今から飯屋を探すって言われてもな。って言う訳でギルド内で食うぞ」


 そう言われて俺たちはギルドマスターに連れられてご飯を食べに行った。

 いやぁ、カツカツだったから有難い!


主人公はトラウマを植え付けられた?

あ、因みに脅されている時の顔は本当に世にもおぞましい笑みをイメージして書いてます。けれど本文の説明にはないのでここで明記。


いやぁ、鬼の形相に近いね、ラバリス様。そらトラウマ植えられるわ。だって日本で言う総理大臣とかに鬼の形相されながら尋問だよ?普通に怖いヨ色んな意味で。

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