ヌルヌル罠仕掛けTIME!
ギルドでラバリス様から罠仕掛けやら喧嘩は日常やらを教わった後、俺たちは森に向かっていた。勿論、罠仕掛けの為である。
って言っても実はさほど難しい事じゃない。…と、思う。
「それにしても、空気がなんか染みるっていうか、なんていうか…」
「これが緊張感ですよ、ご主人様。覚えておいて下さい」
「…本当、ルルって色々知っているよな」
「奴隷時代に色々あるのは普通ですから。私もこういった空気は何度か感じたことはあります」
…奴隷時代、か。
いや、今はあまり考えないでおこう。
「ん?」
そう思っていたが、ふと、視界に何かが移った。
なんか、誰かが光ったような…?
「今、誰か光らなかったか?」
「はい?…ああ、恐らく付与魔法でしょう」
「えんちゃんと?」
「はい。いわゆる、魔法の付与です。効果は様々ですが、一般的なのが防御能力の上昇、移動速度の上昇、または攻撃能力の上昇…そう言ったものが出来るんですよ」
「へぇ」
「特徴的なのが一瞬ですが、魔法の光に包まれる事ですね。攻撃なら炎を示す赤、速度なら風を示す緑、防御なら水と大地で青色と茶色ですね。物理的な防御なら茶色、魔法的な防御なら水色です。他にも色々ありますが、これが一般的な種類ですよ。後は治癒を促進させる黄色かな」
「す、すごいな」
「ただし、これは一時的なものですし、これが切れれば一気に戦闘で不利になる可能性だってあるし、これに頼り切るとそれもそれで危ないですよ?」
ああ、確かにそれもあるな。
………ん?
付与……つまり「付けて」「与える」って事だよな…?
…………そういえば狩りにもたまに毒を使った方がいいって魔物いたっけ。
「ご、ご主人様?なんか…凄い悪い笑みを浮かべてるけど…?」
ふっふっふ……そりゃそうさ。
「このアイディアなら罠仕掛けも捗るかも…」
「っ!?」
「よし!善は急げだ!行くぞルル!」
「ご、ご主人様あああ!?」
さぁ、魔物ども!!かかってこい!俺が最強の罠を作っておいてやる!!
ええっと…とりあえず糸と………あ、アレも一応…。
~~偵察部隊側~~
ちっ。運が悪すぎるな。
一応、俺が早馬代わりなわけだが、最悪は当たっちまうな。
山岳部、森林部は想定内だったが、まさか別エリアも氾濫を起こすなんてな…。こんな氾濫の仕方は初めてだぞ!?過去に何度3つ以上のエリアで氾濫が起きるよ?
たく、最近、ついてねぇな。嫌んなっちまうぜ。現に後ろからウルフ系の魔物が追ってくるしよ…ち。
っと、そうこう考えていたらもう王都が見えてきやがったか。さてさっさと報告しねぇと……ん?
なんだこりゃ?臭い?
「わおおおおおおおおおおおおん!!」
「ぎゃん!ぎゅあん!」
「ぐるるるるるるるるるる!!!」
な、なんだ!?
そう思って俺は後ろを振り返ってみたが……。
「は?」
思わず疑問を口に出さざるを得なかったぜ。
一気にウルフ系が足を止めた。あの、狩りにおいて獲物は逃がさないと有名のウルフ系が、足を止めた!?なにが起こってんだ!?
ん?……ちょっと待て!よく見るとあの狼ども、苦しんでねぇか!?
そう思って俺は周りを見渡してみた。すると、木の幹に何かが括られてた。
「ん?………糸?なんか…妙にテカってんな…。この変な臭いも…あれから出てる?」
それに、なんか他の部分も、地面含めてテカテカしてる気がするが…。
な、なにが起きてんだ?まぁいい。今はとりあえず、こいつらが戸惑ってる間に街に行くとすっか。
~~レイルズ側~~
「ふぅ~!出来たああああ!!…っていっても一部だけど」
仕掛けは至って単純!
まず、森の一番氾濫に近い側を全体的に俺のヌルヌルで作った“魔物にだけ効く毒”を周りにぶっかける。
その次にそこから更に街に近い方角になると、“魔物にだけ効く、めちゃくちゃ臭いヌルヌル”を“付与”した糸を木の幹に巻き付ける。勿論、これも全体的にスキが無いようにする。中には幹から幹に糸が繋がるようにすればそうそう動ける物じゃないだろう。
そこから更に街に近い方になると“魔物だけに効くめちゃくちゃ臭い麻痺毒”と化したヌルヌルを外側みたいにバラバラ撒く!ばらまき方法はバケツにヌルヌルを入れてばしゃ~!って撒く!以上!
勿論、“魔物だけ”に効くから後から食料として使っても人間には問題なし。噂の獣と人間のハーフみたいな獣人?も食えるし、お好みとあらばエルフ様やドワーフ族も食える!ってワケ。
後は自然を壊さないからさらに安全!
アシスタントは勿論、我らが女神のルル様です。
と、軽く考えてこれなので、今はルルと二人でこの3つのエリアを広げようと努力中。勿論、中には二つの罠が混合するような地帯も考えている。
「ご主人様ぁ!こっちも終わりましたぁ!」
「了解!それじゃぁ、一旦戻るか。これだけでも相当足止め出来るはずだからね」
「ですねぇ。私としてはご主人様がご主人様でよかったと思えるくらいデス…」
あれ?なんか怯えられてる…?
………。
うん。確かに思い返せば色々エゲつないかもしれない…。
「大丈夫。俺はルル様を守るためだけにこの力を使うから」
「ご、ご主人様?奴隷に様付けするのは…」
いや、俺の中ではルルは女神さまだああああ!!!
と、まぁ一悶着あったが、俺たちはパイルケインスに戻ってきた。とりあえず、報告もしておくとしよう。
という訳でギルドに向かった。
「ん?あれ?」
…うん、向かったんだけど、なんかラバリス様の顔が優れないな…。どうしたんだろう?
ちょっとあの雰囲気に声かけるのは怖いけど、一応声かけよう。
「あの…どうかしたんですか?」
「ん?ああ、君は確か…レイルズだったかな」
「は、はいっ!」
うおおお、二つ名持ちの冒険者に名前を覚えてもらえてた!純粋に嬉しい!
「うむ。実は、妙なことが起こってな」
「妙な事…ですか?」
なんだろう?妙な事って。
「おい、そいつに言っていいのか?新人だろ?」
ん?あれ?誰だろう?
…あ、もしかして例の偵察隊の人かな?身軽な鎧っていうか革鎧着てるからそうかもしれない。
「大丈夫だ。今回は氾濫だ。可能な限り意見は欲しいところだ」
「そりゃそうだけどよぉ…」
「あ、あまり話したくない事でしたら…」
うん。あまり込み入った話は面倒だからな。取りあえず避けるに限る。
「いや、実は彼が偵察隊の早馬でな。持ち帰ってきた情報に相当危ない情報があったのだ」
「え!?」
え?そんなに危ない情報?
「だがまぁ、そこは我々で判断するところだ。だが、頭を悩ませているのはこの奇妙な事なんだ」
まぁ…その危険な情報にも頭を抱えているけどそれには大まか予想はつくからいいとして…。
「どうも、彼がここに来るまでにウルフ系の魔物に追われていたらしいのだ」
「え!?でもウルフ系の魔物は…」
「うむ。ウルフ系の魔物は一度得物を狙ったら必ず仕留める…という流儀があるほどの狩人たちだ。だが、その魔物がとある地点に入った時、軒並み足を止めたらしい」
「足を止めた?」
「ああ。中にはもっと変な行動をしたウルフ系もいてな。あいつらの狩りの命とも言える鼻を抑えてる奴らもいた。それも、変な臭いがした辺りから、だな」
………ん?
臭い……苦しい…………??
なんか……思い当たるのが物凄おおおおおおおおおおおおおく身近にいるというか本人というか……?
「ええっと……もしかして近くに糸が木の幹に括られてたりしませんでした?」
「おう、してたぜ。……おい、坊主。まさか…」
「は、はい…自分が仕掛けた罠です…」
「ほう…レイルズ。少々、話をしようではないか…」
ひ、ひぃいいいいいいいいいいいいい!!!笑顔が怖いいいいいいいいい!!っていうかなんか笑ってるのに笑ってない気がするううううううう!?
がしっ!
え?
「では、奥で詳しく話そうではないか」
「あああああああ頭痛いですラバリス様ああああああああああ!!!」
頭ああああああああああ!!
っていう訳でギルドの別室に連れていかれました。ラバリス様と、俺と、ルルを入れて…。
偵察隊の人は先に他のギルド員に情報を届けに行ってる。
「さて、種を明かして貰おうか?」
うううううう、頭がまだ痛いいいいい……でも前からの竜の如くの眼光にも逆らえないぃぃぃ…あ、気持ち悪くなってきた…。
「んん?どうした、種を明かせないのか?それとも…そんなに人には言えぬものを使っているのか?」
「っ!ち…違います!」
「ならなぜ言わぬ?」
そ、それはそうなんだけどぉ…。
ルルから一度聞いた話だと、他人にスキルを話すのはあまりマナーのイイことじゃない。自分のスキルを他人に話すって事は、自分の攻略法を相手に伝えてるのと同じで、最終的に自らの命を差し出すようなものだって。
例えそれが格上であったとしても。
なら、俺はどうしたらいいんだあああ!?




