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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
5/63

2 ぼっち

「どうしたの?顔色悪いよ?」


 子供のような無邪気な顔で海王リーヴァイが声をかけてきた。


「いや、なんでも―」


「あ、もう死んでるんだから顔色悪いのはもともとか!」


 人が落ち込んでいるのに、こいつはのんきなものだ。

 5人の腹心しか入れないこの部屋。

 獣王ガストはまだいない。

 せめて、さっきのことを謝まろうかと思ったのだが・・・。


 代わりにいたのは海王リーヴァイ。

 個人的には、5人の副審の中で一番苦手なタイプだ。

 考えがあるのかないのか。やつは魔法がもともと得意なのもあるが最後は一気に大魔法でなぎ払う。

 子供がおもちゃで負けそうになったらやるような最後の大技。ちゃぶ台返し。俺はそう呼んでいる。双六でも、ゲームでも、根本的になかったことにしてしまう。やつにはそれが出来るだけの魔力がある。

 俺みたいなコツコツと地道に積み上げるタイプが最も苦手な奴だ。


「ほっとけ」


「なんだよー。これでも心配してるんだぞ!」


「あぁ。そうかい。ありがとよ。でもなんでもない。考え事だ」


「考え事?」


「あぁ。勇者が現れないのならいっそどこかの国を滅亡させてみるのも悪くないかと思ってな」


「おぉ!さすがヴァネット!最強なだけあって耳が早いね!」


 俺はリーヴァイが言っていることが理解できなかった。

 耳が早い?俺は、ただ一人になりたくて。なんか落ち込んでいるのを悟られたくないから、それっぽいことを適当に言ってみただけなのだが・・・。


「近いうちに聖都エナイルで女神召喚が行われるって噂があったんだ。なんか予言でもなんでも人間側にプラスに働くことは間違いない。ここいらで1回潰しときたいんだけど、この役目はヴァネットに任せよう!」


「おま、待ってくれ。いきなり言われても」


「百戦錬磨の死霊軍なら、こんなの簡単だろ?」


 こいつ・・・さっきの料亭での話聞いていたんじゃないだろうな。

 しかも聖都エナイルって。闇属性で思いっきり魔族の死霊軍には文字通りの地獄だぞ。それ。


「ガストでも、リーヴァイでもほかの奴が行けばいいだろ?」


「あいにく、まだやることが残ってて。有能なヴァネットにはかなわないなぁ」


 なんとなく鼻につく言い方をするリーヴァイ。

 こいつ。やっぱり何か知ってるな。


「そ・れ・に。城塞都市ルグナントも、もう片付けたみたいだし?」


 リーヴァイは片手に俺が書いておいたメモ紙をひらひらとチラつかせ、俺が手を伸ばすと一瞬で燃やし尽くした。


「行く。・・・よね?」


「・・・」


「他の3人には僕から言っとくから。頼んだよ!」

 半ば強引に押し切られ、こ憎たらしいリーヴァイを置いて俺は再び戦場へ向かった。




 聖都エナイル。北の大陸で最大の都市。各大陸には聖王国が存在する。

 聖王国とは、神の信仰を行う国家。組織である。

 神々が世界を創造し、我ら魔族を滅ぼす役目を担う勇者を授ける。

 それが言い伝えの一文である。でも、実際にはどうだろうか。だいぶ殺されたと思うが・・・。

 魔族の喜びは恐怖。

 神々の喜びは信仰。

 どっちも人間の感情次第。魔族も、神も、やってることは変わらなそうだ。


「あー。急な連戦ですまないと思っている・・・」


 俺は、自分の部下たちが人仕事終えてからまだ1日しか経過していないことを知っていながら招集をかけた。

 普段、いつも3日程度は開けているのだが今回はリーヴァイからの挑発もあり断りきれなかったのだ。

 心なしか、みんなの視線が痛い。

 こいつらは、みんなライダー派。俺の味方はいない。

 もしかしたら、気を抜くと背後からこいつらに殺されるかもしれない・・・。


「みなには、いつも助けてもらって、無理を聞いてもらって感謝している。そこで、今日は我も前線にて皆

 と戦いたいと思う。ともに、ひとりでも多くの人間を殺そうではないか!」


 ・・・。

 あれ?

 ここで、『おぉー!!』みたいなノリが入るんじゃないの?普通は。

 あたふたする俺にライダーが声をかけてくる。


「あの、ヴァネット様。申し上げにくいのですが、大将はこちらで我々に指揮命令をくださればそれで十分でございます。万が一にもございますので、お気持ちだけでじゅうぶんです」


 あぁ?なにか。俺なんかと一緒に戦いたくないというのか。こいつら。

 腐ってる。ここまでこの軍は腐っていたか。

 俺を見る目が全て馬鹿にしたような視線に感じる。

 俺だって・・・俺だってやれば出来るんだ。死霊使いは死体を操ることしか能がないと思ったら大間違いだ!


「くどい!我が意志はお前たちと戦うと決めてある!我に続け!黄泉の戦士たちよ!」


 俺は、1人聖都エナイルへ突っ込んでいった。

 そのあとを、仕方なさそうに皆がついてくるのがわかった。

 俺の敵は、正面だけではなく、背後にも多数いるのかもしれない。

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