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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
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1 ネクロマンサー殺害計画?

 俺の行きつけは城下にある個室のある料亭。

 個室だと顔も見えない壁の向こうで繰り広げられている会話を心置きなく盗み聞き出来て案外1人でも楽しめるのだ。

 今日も、無事に仕事が終わったので1人盗み聞きご飯と行こうか。


「あら、ヴァネット様。今日は早いんですね?」


「あぁ。今日はいつも以上に骨がなくてな。部下たちも時期に帰るだろう。ひと足お先に休ませてもらおうと思ってな」


「そうですかぁ。では、こちらへどうぞ、いつものお部屋、空いてますよ」


 女将は俺を秘密の部屋に通す。

 ここは、前後左右全てを囲まれた部屋。

 いわば、俺だけのために作られたような部屋だ。

 地下への階段を下り、この部屋につながる1つの入口。地下からの扉を開けて部屋に入る。従業員通路を無理やり改造してもらったのだ。もちろん、注文などはめんどくさい。定期的にくる従業員に言うしかない。こちらからは呼べないからな。


「いつもどおり、適当に頼む」


「はぁい。任せてください!」


 優しい笑顔で女将は笑うと、地下へと戻っていった。

 次第に、少しづつ人が増えてきたのか周りが騒がしくなる。


「ガスト様、なんか怒ってでていったぜ?」


「何があったんだろうな?あの人に殴られたら死ぬからな。気を付けないと」


 確かに、普通の魔物ではガストに殴られる。蹴られるされれば即死だろう。

 相手は獣王だからな。

 怒ってる。もしや、俺のせいか?

 さっきの右手。・・・言われてみればやわらかったかな。でも、相手はガストだ。人間の女の姿をしているが元は・・・。

 あいつ。元の姿に触れるのも怒るからな。

 俺は女将が持ってきた地獄鍋セットを気軽につついている。

 まぁ。誰も死ななくてよかった。もと魔王軍の死霊はさすがに使いにくいからな・・・。

 ネクロマンサーである俺にしてみたら強い死骸は大歓迎だが、仲間を殺してまで増やしたくはない。


「はぁ!今日はよく殺した!」


「ライダーさん、めっちゃ走ってましたね!」


「いやいや、逃げるものを見るとついつい追いたくなるんだよ」


 聴き慣れた声が壁の向こうから聞こえてきた。

 ラ、ライダーさん?

 ゴーストライダーのことか?あんなフランクに話していたのか?俺の前だとあんなに堅物そうなのに?。


「それにしても、人間たちはドンドン弱くなりますね!このまま全滅するんじゃないですか?」


「そうだなぁ。そうなると、俺たちは次何するのかな。ライダーさん、ヴァネット様から聞いてないんですか!?」


「人間が消えたあと・・・。お前面白いこと言うな!考えたこともなかったぞ!よし、地獄鍋奢ろう!」


「マジっすか!あざぁっす!!」


 まるでどこかの肉体系の集まりのようだな。

 死霊とはクールで、何者も寄せ付けない恐怖が売りなのだが・・・。


「まぁ、人間が消えたあと・・・。そうだな。人間界に拠点を移すとか?」


「まじっすか?あそこ、空気悪いんですよね。こう、力が出ないっていうか」


「俺ら下っ端はヴァネット様の魔力を食わないとあんまり行動できないですからね。ライダーさんみたいに強い死霊が羨ましいっす!」


「俺だってなぁ。お前らと上司に挟まれて大変なんだよぉ!今日だってヴァネット様は先に帰っちゃうし。あのあと俺は町を一周したんだぜ?また残してると怒られちまうからな。お前たちまで後で言われちまうだろ?殺し残しがいると」


「ライダーさんめっちゃ気が利く上司じゃないっすかぁ!俺ら嬉しいっすよ!」


 普段聞かない同僚の言葉とは冷たく、俺にあるのか分からないが心が痛い。

 俺は、頼りになる部下に任せて帰ったつもりだが部下たちはそう思ってくれていなかったようだ。

 ライダーの方が人徳あるんじゃないか。


「俺、ライダーさんが上司で良かったぁ!」


「俺も!ヴァネット様だけじゃ俺たちまとまらないし、現場肌の上司が居ると違いますよ!」


「おいおい、あんまおだてるんじゃないよ」


 なんだ。ちょっと羨ましいぞライダー。

 部下から慕わられて、仕事帰りに飲みに行く。

 俺がやりたかったことだ!それ!!

 俺も部下に、『地獄鍋奢ろう!明日も頑張ろうぜ!』とか言ってみてぇー!!


「ここ最近、けっこう俺らの中で話があるんすけど、ライダーさん聞いてもらっていいっすか?」


「なんだ?いきなり真面目な相談か?」


 俺には相談しないくせに、ライダーには相談するのかよ。

 頼ったら俺に来いよ!

 俺は壁の向こうで『こっち!』と無言でジェスチャーを続けている。


「ヴァネット様、殺せないですかね」


 酔いが廻った俺の思考回路が急停止した。

 手も、止まった。


「今、なんて言った?」


「俺たち、限界なんすよ。いつも口だけで、自分は安全な後方で文句や命令ばっかり。直ぐに帰っちゃうし、怪我したやつほったらかしでしょ?ライダーさん、そこ

んとこ全くあいつと違うじゃないですか。」


 おおおぉぉ俺を殺す!?

 確かに、指揮官たるもの、後方で情報整理をしたり、新しく作戦を伝えたりするのが仕事だと考えているし、安全地帯にいたことは認めるが、殺すとな!?


「まぁ、俺は指揮官じゃないからな。お前たちの隊長として部下を守るのが俺の役目だ」


「そこなんすよ!そこが違うんですよ!俺たちはライダーさんみたいな部下思いな上司が欲しい!」


「そうっすよ!現場で最後まで頑張る姿。みんなライダー派ですよ!」


 み、みんなライダー派・・・。

 すでに、俺に味方はいないのか。あれだけの大群を率いているにも関わらず、みな俺に付き合いたくないと?実は独りよがりだったというのか?

 アンデット勢力は手堅く百戦錬磨の猛者集団。

 俺の夢が、皆のためにと思ってきたことは全て無意味。

 この数百年、仕事のみ頑張ってきたのに。


 そのあとのことは、よく覚えていない。

 今までの努力が報われなく、部下からも嫌われ、今ではアンデットのスターはライダーに奪われた。

 昨日までの部下の笑顔が急に嘘臭く思えてきた。

 あいつらが、俺を殺そうとしていたなんて・・・。




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