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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
3/63

プロローグ 女神の彼氏は死霊使い?

「ヴァレット様。人間はすべて殺しました。付近に生命体は確認できません」


 新月。漆黒の闇の中赤く燃え上がる町がある。

 城塞都市ルグナント。

 人間町では大きな方だ。四方にある町や国へ繋がる拠点の一つ。

 俺はその町を落とした。

 ヴァレット。俺の名だ。

 魔王様腹心の1人。死霊使い(ネクロマンサー)のヴァネット。

 5人の腹心の中でも最強の実力を持つ。なんといっても、世界に溢れる死体をいくらでも操れるからな。


「ご苦労。付近を固めろ。人間がいれば即抹殺せよ」


「御意・・・」


 俺の腹心、闇夜の死者ゴーストライダーは首のない愛馬に跨り燃えゆく街を走り回る。

 俺は町を見渡せる大きな建物の上から崩れ去る人間たちの作った町を見ていた。


「脆いな。人間が作ったものとは・・・」


 大きく音を立てて崩れる中には、人間の死体も混ざっている。将来、有望な兵士となることだろう。

 絶望・憎しみ・怒りなど負の感情をもったまま死んだ人間は展開へ行くことができずこの世を彷徨い、やがて我が軍門に下る。

 静かに崩れる町には、生きる屍が徘徊していた。

 俺はその光景を見届けると魔王城へ戻るために転送魔法陣を使った。




 魔王城。

 その響きから多くのものが気持ち悪くて、汚くて、臭い。

 いわゆる3Kと思わるだろうけど、実はそんなことない。

 今は綺麗で、明るく、仲間を大切に。それが今の魔王軍のスローガンだ。

 先代の魔王は『野望だ!世界征服!』『勇者を倒せ!』とバカみたいに言っていたが今時の魔王様は現実派だ。

 勇者が成長する前に探して殺せ!

 それが俺たちに命じられた最初のご命令だった。

 昔の魔王はプライドが高く、よく負けていたが初めから不穏な動きがあれば我々魔王様の腹心が赴けば全て解決。今の魔王様は合理主義なようだ。

 だが、勇者の姿が見当たらない。

 それがまたもどかしい。存在しているのか、いないのか。

 実際、我々が町や国を破壊しても誰も『救世主』は現れない。

 壊す俺たちが言うのもなんが、世も末だ。


「おかえりなさいませ!ヴァネット様!」


「あぁ。戻った。」


 門にはオークの門番が2人。

 紫色に輝く食虫花まで花壇に咲いている。もちろん。この花は魔界でしか咲かない花だが。


「どうだったんだ?随分早い帰りだったが?」


 城の入口では腹心の1人、獣王ガストが立っている。

 ガストは趣味で人間の姿をしている。しかも女の。本人曰く、人間界を歩くときはこれが一番楽しい。らしい。

 魔獣を統べる王、その力は俺にも匹敵する程の強さだ。5人の腹心でも俺がいなければ間違いなく1番の力を持っているだろう。


「あぁ。今回も骨がない。死霊兵が数十体で攻め込んで一晩で廃墟の出来上がりだ。」


「人間どもは、抵抗することをやめたのか?


「知らん。勇者が見つかる前に、人間界の国家がなくなるぞ」


「ちがいない!」


 笑いながら長い廊下を歩いていく。

 無駄に大きく作られた城に2人の声が響く。

 その長い廊下を歩くと、魔王城の心臓部とも言える場所、蒼き炎が燃え続ける広間にでる。

 魔王様のいる場所へ繋がる唯一の場所。とは知っているが実際に魔王様の姿を見たことはない。

 魔王様の魔力から創造され、力を与えられたのが始まり。

 人間とは違い、生まれた時からこのままの俺たちには誕生について深く考えることはない。

 この生は魔王様のために。

 それが根底に有る。それが行動原理だった。


「だれも、いないのか?」


 円卓の中央に腰を掛ける。

 ここが、俺のいつもの場所だ。魔王様の留守の間は俺がしっかりしなくては・・・。

 新しい人材の育成もある。いつまでも我らがトップではなく、常に新しい風も取り入れなければないないからな。勇者殺害意外にも、まだまだやることは多い。


「あぁ。私たち2人以外はみんな出ていたな。北の大陸、中央大陸、展開への視察まで、みなご苦労なことで」


「ガストは、何もしないのか?」


「ん?だって、かったるいじゃないか。それに、戦帰りの英雄をねぎらう美女が欲しいだろ?」


「それは人間界での話だ。俺には、その気持ちがわからん」


「相変わらずの堅物め!」


 ガストは俺の膝の上に座り、人間の女ならではのその細い、今にも折れそうな体を押し当ててくる。


「・・・なんの真似だ?」


「なんのって。わからないやつだなぁ。いいんだぞ?」


 ガストは俺の右手を無造作に掴むと、自分の右胸に押し当てる。


「どうだ?柔らかいだろ?」


「・・・だから、なんだというのだ?」


「ったく!ほんと遊び心がないんだなぁ!」


 苛立つ声をあげてガストは立ち上がる。

 俺には、何が気に入らなかったのかがよくわからない。


「もう、揉ませないっ!」


 ガストは俺に対して怒りをぶつけながら部屋を出ていった。

 何が、悪かったのだか・・・。

 書面で、『ルグナント制圧』と書き残し城下へ出ることにした。

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