対悪魔特殊部隊
もうすぐ冬なのに日差しが強く、まだ暖かい…。
そんなことを思いながらふと目を開けるとその強い日差しが開けたばかりの目に直撃する。あまりの眩しさからか反射的に目を閉じようとする。
来年から俺も18なのか、と当の本人が驚くほどに歳をとるというのは早いものだ。となると今は17歳、そしてあの事件当時はまだ12歳だったということか。
そんなことを考えているとーーー
カーーン、カーーン、カーーン、カーーン……
「やばっ、もう8時か!そろそろ行かねぇと、入隊式に遅れるっ。」
鐘の音は午前8時を知らせていた。入隊式は9時からとなっており、開始30分前集合なので正式には8時半集合ということになる。
屋根の上で呑気に寝ていた少年は慌てて下りると中世風の街の中を一気に駆け抜け、入隊式が行われる対悪魔特殊部隊本部へと急ぐ。
「全隊員350名。よくぞ集まってくれた!ここは悪魔に対抗し、人々の希望を運ぶ場所。ここに来たからには世界に貢献して貰わないと困る。集まった者達は恐れを知らない勇敢な者達だと捉えている!呉れ呉れも期待を裏切らないでくれたまえ!」
マークスと名乗るこの部隊の隊長はそう告げると1つ咳払いをした後、話を続けた。
「まず、君たちには心得て貰いたいことがある。この部隊に入っている以上常に危険と隣り合わせだ。いつ死ぬかは分からない。だからこれだけは言っておく!死を恐れるな!立ち向かえ!己が信念を貫き通せ!」
名言のような言葉を残し、入隊式は無事閉式となった。短いように感じたが今の時刻は11時半を回っていた。精々2時間半ってとこか。
俺は昼食を取るため1人、レストランに向かっていた。その時ふと思った。あれは名言のような言葉じゃなくて助言だ。死を恐れること、それは悪いことではない。むしろ、当たり前の感情だ。しかし、恐れることは言い換えれば進まずに立ち止まる、あるいは後退するという意味にもなる。それを少しでも和らげるため、前に進ませるためではないかと思う。
そんなことを考えているといつの間にかレストランの目の前まで来ていた。俺はドアを開け、物静かな雰囲気の店内の1番端の席に座りメニューを開いたー。
昼食を済ませ、2時からの班編成に間に合うことを確認し、歩み始めた途端ーー。
「傷は消えても、傷痕が消えることはないーー。」
不意に声が聞こえた。なんだろう。この感覚。それに傷痕のことを知っている?一体誰の声なんだ。ただ一つ言えるのが、
「人間の声……じゃない…。」
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