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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
使命
89/157

戦力拡散

 アキはアイテムチェストを開き、解毒薬に必要な材料を最大限取り出した。それでも合計して三つ分の解毒薬しか生成できない計算だった。


 仮面の奴ら、時間稼ぎのつもりか? どういうわけか知らないけど、今は目の前で苦しんでいる人を助けることが優先だ。

 一番入手が難しいのは墓人草。被害がこの村だったのは不幸中の幸いだ。


「アキ、材料が足りないのなら私とクオンで探してくるぞ」


「墓人草、それに解毒薬は……ゴブリン肉と、あと、あと……針葉樹の葉だ! 針葉樹はさっきの樹海とか草原にいくつか生えてたはず!」


「ゴブリン肉なら私がたくさん持っている。いくついるのだ?」


「解毒薬一本につき二つだ。もう三つ作れるくらいの材料持ってる。残り九本作らなきゃならないから、十八個は必要になる」


 テンマが素早く宙空に指を這わせると、テンマのアイテムチェストから緑色のゴブリンの肉が大量に出現した。ゴブリンの血の匂いが周囲に充満し始める。決して良い匂いではない、癖のある匂いだった。


「モンスター退治は常日頃やっていたから、こういうモンスター由来の素材ならば矢鱈にあるのだ。あとは針葉樹の葉と墓人草か」


「それは一つずつ使う。すでにそれぞれ三つ持ってるから、あと九つずつ持ってきてくれ」


「じゃあ私、針葉樹の葉ね! 墓人草気持ち悪いからテンマお願い!」


「うむ。墓人草は決まった場所に生えていないから、私が探した方が良いだろう。では行ってくる」


「じゃあアキも頑張ってね!」


 クオンは玄関から飛び出していき、テンマは歪みの中に入って行った。残されたアキはフラスコを取り出し、現状で作れる分の解毒薬を作り始める。


「解毒薬で治った人は、定期的に俺の回復薬で毒状態の人を回復させてあげてください! それと、プリーストいますか!」


 プリーストはある程度レベルが上がると毒治療のスペルを覚える。しかし、アキの予想通りこの場にはプリーストすら存在しなかった。


 やっぱりそうか。この村にプリーストのいない状況を作り出し、毒を容易に治療させないようにする。洋館の時とは違い、明らかな意図を感じる。時間稼ぎをするつもりか。

 となると、俺達が追っていることも気がついていることになる。この先の道中で待ち伏せされていないとは言い切れない。


 アキは暫しの間、作業する手を止めた。全身に悪寒が走る。全て計算の上でこの状況を作り出したのなら、俺が薬を作るために三人が散り散りになることだってわかっていたはず。

 目的が時間稼ぎじゃなく奇襲だったら……。もしそうなら……奇襲してくるのは今しかない。

 その考えに行き着き、スキルメニューを開いたその時、先程解毒薬を飲ませて回復させたプレイヤー達が、アイテムチェストに隠し持っていた武器をアキへ向けてくる。


「動くなァっ!」


 男の怒声とともに、アキは両手をゆっくり挙げた。やられた、完全に策にハマってしまった、とアキは落胆する。クオンとテンマのことも気になった。

 プレイヤー達は縄を取り出し、アキの手首と足首に巻きつけ、厳重に縛った。さすがに慣れているのか手際が良い。

 残りの毒を受けていた者たちも、回復した者たちから用意していた解毒薬を飲まされ、完治した。男女入り混じったプレイヤー達は洋館で見たような仮面を顔に被る。


「ここまでしなきゃ、お前らは信じなかったろう?」


「……ああ。まんまと騙されたよ」


 スキルメニューを表示できた。メニューは他のプレイヤーからは見えない、それだけが今のところ救いだった。

 この仮面の一味が隙を見せたところで、何かを喚起してそれを囮にすれば助かる道はまだある。そう考えながら、アキはスキルメニューを開いていることが視線でバレないよう俯いた。


「こいつ、さっきスキルメニュー開こうとしてなかったか?」


「本当か? おい、スキルメニュー開いてんのかお前」


 アキは仮面の男に顔を強く蹴り飛ばされた。唸りながらも、アキは俯き続ける。


「まあどちらにせよ、手足さえ縛れば何にも出来やしないだろう」


「ああそれもそうか」


 アキはスキルメニューをチラと見た。大きさの都合上、ここで喚起できないモンスターのアイコンは薄暗くなっている。その右下にあったアイコンを、アキは思わず凝視した。

 そして焦ったように視線を逸らした。


「こいつどうすんだよ。早くアビスの本部に合流してぇよ」


「他のメンバーが残りの女二人を捕らえたことが確認できればすぐ出発する。三人まとめて処分したのが楽だろ?」


「まあ確かにそうか……」


「その前に、こいつ毒にしちまうか。生かすための回復薬はここにあるわけだからな」


 男は自前の紫色に染色された毒瓶を取り出し、アキに差し出した。


「飲め。飲まなけりゃここで殺す」


 あとで処分するって言っておきながら、ここで殺されたくなきゃ飲めなんて、なんの脅しにもなってないじゃないか。

 でも、あとで外に出られれば好都合。隙なんていくらでも生まれる。毒の苦しみくらい、なんとか耐えてみせる。


 アキは素直に頷き、毒瓶を飲み干した。


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