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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
使命
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それぞれの目的と道

 程なくしてログアウトホールは消失した。

 目の前で人が死んでしまったにもかかわらず、テンマの目からはいまだに強い意志が感じられる。


「支部へ戻るぞ」


「……ああ」


 力なく答えたアキの背中を、テンマは一度叩いてから先を歩いて行った。

 それから支部内でテンマと別れ、自室のベッドで暫しの間物思いにふけった。


 人はきっかけ一つで変わり果ててしまうものなんだ。あんなに頼りなかったけど優しかったラインハルトが、一日足らずで冷徹な人間になってしまった。

 悪人は皆潰す。その動機は明らかに洋館での出来事のせいだ。何をもって悪とするかはラインハルトにしかわからない。だから、今の現状でラインハルトほど危険な人物はいないんだ。

 ラインハルトにとっての正義を示せなければ、命を賭してでも殺しにかかってくるのだから。


「自分の体を、あんな乱暴に使えるなんて……考えられない」


 俺がサイクロプスに足を強打された時、強い衝撃だったけれど足は飛ばなかった。でもプレイヤーが使う武器、スペルでは肉体に損傷がある。

 プレイヤー同士であれば人体欠損の描写が追加されるみたいだ。


「寝よう。目的は決まってる」


────翌日の朝。会議室にはラインハルトと白虎を除いた、アキ、クオン、テンマ、シン、カグネが集結した。


「二名ほどいないがそこは自己判断だ。別段気にすることではない。では、皆の目的を聞かせてほしい。明らかに出来ない者は濁してくれて構わん」


 テンマはちらとアキと目を合わせ、すぐに目線を正面に戻した。

 おもむろにシンが挙手して立ち上がる。


「ではまず私とカグネから。昨日の夜に再三話し合った結果、私達はやはりここに残ることにした。ログアウトホールは閉じてしまったが、再び開くことを想定してヴァルカンの支部長としてここの人々を導いていきたい。

 だがもちろん必要とあらば情報の提供は惜しまない。それにヴァルカンに関することであれば協力しよう。私達はそういう判断だ」


「よろしい。次は誰だ?」


「俺、良いかな」


 シンが着席したのを確認してから、アキは立ち上がった。


「俺は……人を救いたい。人助けのために、街を転々と回っていくことにするよ」


 本当の目的は西倉修の『協力者』やそれに関連することの調査だったが、ここで全て話してしまえばどこかで情報が漏れ、関係者に警戒されてしまうかもしれない。

 テンマもそれを理解したようで、納得したように頷いた。


「はいはーい! 私はアキを手伝いまーす!」


 元気良く挙手して立ち上がるクオンは、アキの肩に手を回した。視界の端に見えるシンとカグネの苦々しい視線が痛い。


「うむ、わかった。では最後に私の目的を話そう」


 テンマがこの世界に残る理由。それはこの世界を存続させるためだ。アキは昨日テンマから聞いた話を思い返した。


「私の目的、一つ目はとある騎士団員を止めること。二つ目はこの事件の真相を確かめること。三つ目はこの世界のために尽力することだ。私は私が良かれと思ったことをする」


 威風堂々。テンマはまさにその四文字が似合うプレイヤーであった。

 それを聞いていたシンが口を開く。


「では早速テンマの役に立ちそうな情報を二つほど良いかな?」


「うむ」


「まず、昨日話した洋館の犯人達のことなんだが、どうやらアビス方面へ遠回りして向かっているようなんだ」


「ほう?」


「アビス方面へ向かうため道に遠回りのルートがあるだろう? そこにある小さな農村から来たプレイヤーが話してくれたんだ。比較的安全な街道だから、若干名だがまだ人も行き交っている。そのプレイヤー達からも何か聞き出せるかもしれない」


「なるほど。もう一つの情報は?」


「もう一つは、ほんの今さっきだがアビスにそのとある騎士団員が現れたと、アドルフから連絡があった。一度顔を合わせたことがあるはずだから間違いないようだよ。テンマにもメッセージが行っているはずだ」


「そうか。奴は、アビスに行っていたのか」


「ユウはアビスにいるのか!」


 アキはあからさまに目を見開き、体を乗り出した。


「ははっ、せっかく名前を伏せていたのにしょうがないな。たしか君とユウ君は友人なんだってね。そのリアクションも仕方がないのかもしれない。これはテンマにだけでなく、玄武、君にも有用な情報だったようだ」


「アキもユウを止めにいくと言うのなら、しばらくは行動を共にしよう。そのほうが、互いに有益だろうからな」


 俺はテンマの戦力を加えることが出来るから有益だとして、テンマは俺と同行して何の得があるんだ?

 まだ俺を使って仮説の駒を進められるからか? テンマは疑り深い。真相を聞くことが出来ないことが歯痒いな。


「それでは、ここで解散する! シン、カグネ、また会おう。玄武の二人はついて来い」


 テンマは鎧を鳴らしながら扉を出て行った。

 アキとクオンもシンとカグネに別れを告げ、その場を後にした。外に出てみると、相変わらず青空が澄み渡っている。涼しげな空気が鼻腔を抜けていく。


「んー! 朝って感じ!」


「エタオンの朝は気持ち良いよな」


「さて二人とも、即時即行でアビスに向かいたいところだが、まずはアイテム類の準備を整えてからヴァルカンを出るとしよう」


 真相に近づいている気がする。アキはふとそう思った。それはテンマに対する信頼のせいか、単なる勘か、定かではなかった。

 しかし間違いなく、前に進んでいる気がした。

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