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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
変貌
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歪まない信念

 それから女は、体を小刻みに痙攣させているもう一人の男を抱え、街角へと消えて行った。それを見送ったテンマは鎧を身につけ、兜を被った。大剣を歪みの中へ放り込みつつ、男が垂れ流していた血液を指に付着させ、その匂いをかぐ。


「鉄の匂い。これ以上現実に近づけて、どうするつもりだ……」


「終わったか?」


 テンマが振り向くと、店のドアからアキとクオンが顔をひょっこりと出していた。軽く手を挙げ、近寄って行く。


「ああ、彼女との話から、今回の黒幕が誰か、見当はついた」


「そうか。ひとまず続きは、俺の部屋で話そう。クオンも一応来てくれ」


「もっちろん!」


 避難させていた客達を解放し、ベルとエンジェルに営業を再開させた。アキ達三人は、二階にあるアキの部屋へと向かった。部屋の中は、店に関する様々な資料が山積みになっており、雑然としている。


「まあ、どこでも好きなところに座ってくれ」


「騎士団長になってから、こんな雑な扱いをされるのは初めてだ」


 そう言ったテンマは可笑しそうに笑いながら、床へとあぐらをかいた。クオンはベッドへ、アキは椅子へと腰掛ける。


「それで、黒幕ってのは?」


「恐らく、このオータムストアの商売敵だ」


「商売敵……滅多にいるもんじゃないけど」


「女はこう言っていた。報酬は復活薬だと。今の需要を見てわかるとおり、おいそれと出せる品ではないだろう。しかし今回の場合、報酬として提示している」


「そっか! 自分達が使う分がたくさんあるからってことだね!」


「でも、それだったら、商売敵とは限らないんじゃないか? 商売をしてない人が、依頼した可能性だってあるし」


「それは私も思った。しかし、よく思い返してみろ。奴らはどうやって、大きな音も出さず外にいた客を退かした?」


 クオンは眉間にシワを寄せながら腕を組んでいる。アキがふと顔を上げて、テンマへと視線を向けた。


「もっと良い条件の店を提示した?」


「その通りだ。そして、出てきた私にわざわざ襲いかかってきたのも、この店の印象を悪くさせるためだ」


「まあ確かに、戦いの渦中にある店なんか、いくら安くても行きたくないよな」


「よって、今回は私ではなく、オータムストアに対する攻撃と判断して然るべきだ」


 クオンはベッドに横たわり、だらしない体勢のままテンマへと質問した。


「これからどうするの? 商売敵が相手っていうのがわかっても、どの商売敵かわからないよー」


「それは至極簡単。今、復活薬が売れている店を探し回れば良いだけの話だ」


 この時、アキは街中を駆けずり回る想像をしたが、ノーマッドを極めたプレイヤーが授かる能力の二つ目を思い出した。ワームホールの召喚。

 自らの想像した位置へ、自在にワームホールを出現させることができる。入口と出口、合わせて八つまでワームホールを出現させることができる。有効範囲は半径二十メートル。大きさは約二メートルほどまで広げられることが、過去にテンマによって確認された。ワームホールの中を通過出来るのは、テンマとアイテムの扱いになるもののみである。このテンマが探し回るとしても、ワームホールで心当たりのある店に訪れるなら、一時間も経たずに探し終わるだろう、とアキは思った。


 そういや、ステータス覗きとワームホールの能力が発見された当時は散々チート扱いされてたっけ。でも公式の発表で、仕様であることが判明した。それでもテンマしかいないのは、スキル面でもステータス面でもとんでもなく弱い職業で、一年以上ほぼ毎日数時間、狩り場でモンスターを倒し続けてレベル上げをする努力が必要だからなんだよな。

 ファイターなら一発の敵も、ノーマッドはいちいち三発、四発攻撃を当てなくちゃいけない。そんなの、誰だってやる気なくすに決まってる。テンマのロールプレイは、そこから始まってたのかもしれない。


「今回は、俺らが出るだけ足手まといか」


「ああ、足手まといだ。お前が幻の竜使いでもなければ、是非とも遠慮してほしい」


「はは、相変わらずツンだけが多いな」


「あ、デレを忘れていた。それでは、また会おう。世話になったな」


「はいよ」


「まったねー!」


 テンマは立ち上がり、片手を挙げ、そのまま床に出現した歪みの中へ落ちて行った。残留した歪みへ、アキは片足を置いてみるが、普通の床に足を置いた感覚に違いなかった。

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