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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
変貌
37/157

テンマの来訪

 さて、『今』出来ることはやった。最善を尽くした。このままある一定まで働き続けたなら、きっとフラメルさん達のチームにも引けを取らないほど儲けられるはずだ。食糧を買い込み、どこかでみんなと引きこもる。

 そうさ、昔あったライトノベルみたいに、無理してヒーローにならなくたって、誰かがこの事態を解決してくれる。大人はバカじゃあない。対策や解決方法なんて、きっとあっという間にすぐ見つけてくれる。そう、それまで待つだけだ。


「ほう、これは繁盛しているな」


 客が入り乱れる店内に、厳つい鎧を纏ったプレイヤーが入ってきた。武器は装着しておらず、顔は兜によって隠されていた。だが、その声と体格から、それが誰だかアキは瞬時にわかった。周りのプレイヤー達も、エタニティオンライン屈指の有名プレイヤーである彼女の来店に、動揺を隠しきれない。


「団長さん! どうしてこんなところに?」


「他の街の支部への連絡が終わったのでな、治安の確認がてらお前が本当にしがない薬屋の店主なのか、確認しに来たのだ」


「しっかり薬屋してるだろ?」


「本当に、しがない薬屋だ」


「悪かったなしがなくて。なんか用か? なんか買うなら、悪いけど列の最後尾から並んでくれ」


 プレイヤー達はただただ、目の前で交わされる会話を唖然として聞いているだけだった。こんなチンケな店の店主と、エタニティオンライン最強と言われるテンマが、あたかも対等であるかのように話しているのだ。困惑するのも無理はない。


「いや、そういうことで来たのではない。本当に散歩がてら立ち寄ってみただけだ。さっきはよく見えなかったが……そうか、『水神鞭』とは古参だな」


「そういうところから色々詮索するのはやめてくれよ。ほら、俺も復活薬作らなきゃならないし……」


 アキの言葉を遮って、テンマは短く手を叩いた。


「ああ、ちょうど今思い出した。昔、私のいたクラン『蒼龍月華(そうりゅうげっか)』にも、水神鞭を持っていたモンスターテイマーがいたな。そいつは腕が立つようだったが、チームワークというものを微塵も知っていないようだった。何にせよクランにとっては新参者。私は名前や顔すら覚えていない」


「いきなり何を話し出すんだ……。ほら、お客さん達だって混乱してるじゃないか」


 それでもテンマは余裕のある表情のまま、腕を組みながらアキを見つめて話を続けた。


「新参者とは言いつつも、その時は来るべき一周年記念イベント『竜狩りの秘宝』に向けて、戦力を増強中だったのだから、大して意識していなかったのも仕方のないことだ。そうだ、知っていたかアキ、私のいたクラン『蒼龍月華』は、あの『ダークネスドラゴン強奪事件』があったクランなのだ」


「それは初耳だな」


「その事件のせいでクランメンバーは一様に活力を失い、やがて解散……。それから程なくしてノーマッドを極めた私は、この天馬騎士団を設立したのだ。ところでアキ、ひとつ質問して良いか?」


「次から次へとなんなんだ一体」


「お前はなぜそんなにも強いのに、防具も装備せず、こんなところで身を隠すようにして商いをしている?」


 現在、ノーマッドを極めたプレイヤーはテンマ一人のみであった。その授かる能力は二つ。その一つは敵味方関係なく、そのプレイヤーの能力値を棒グラフにして閲覧できること。ステータスの概算値として、ネット上に公開されている数値は主にテンマの見えるグラフからの予測であった。結果、エタニティオンライン歴が長ければ長いほど、ステータスのグラフもよく伸びているというパターンが判明した。

 アキはそれを瞬時に理解した。恐らくステータスを覗かれていたのだ。今ではない。あの団長の部屋で。


「それは俺が、商売が好きだからだ」


「……いい加減に白状してしまえ。既にわかっているのだ」


「なにをだよ」




「────お前が、『幻の竜使い』なのだろう?」


「なっ……」


 その発言によって、店内はどこかひんやりとしたような空気が充満し始めた。列を成すプレイヤー達も、窓から聞き耳を立てていたプレイヤー達も、カウンターにいたベルもエンジェルも、部屋の扉からこっそりと話を聞いていたクオンでさえも、絶句し、空気が固まった。

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