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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
変貌
26/157

待機と金稼ぎ

 喫茶店の中にいたほとんどの客がメニュー画面を開き、オーブ型のアイコンを左へとスライドしていく。アキもまた同様に、メニュー画面の一番右から二番目にあるアイコンを見つけ出していた。そこには『入出管理』と書かれた銀色に輝くアイコンがあり、そこを指で押し込むと、『自己入出履歴』、『フレンド入出履歴』、『ログアウト』と縦に並べられている画面が表示されている。

 本来ならば、このログアウトという欄を押せば黒いワームホールのような『ログアウトホール』が出現し、そこへ入るとすぐさまログアウトすることができる。しかしこの時、この場のプレイヤーの誰一人としてログアウトホールが出現した者はいなかった。


「お前もダメか!?」


「ダメだ。ここの人全員がログアウトできないらしい」


 先ほどまで絡んできていた男が、焦った様子でアキへと聞いてきたので、アキはゆっくりと首を横に振った。しかし前例のない事態であっても、アキは特別焦っているわけではなかった。それがバグの一種だとしても、エタカプに強制ログアウト機能がある限りは、セーフティネットが張られているのだ。死ぬわけではないのだから、それほど躍起になることでもない、と冷静にこの状況を判断していた。


「アキさん、どうしましょう?」


 さすがフラメルさん。こんな時でも冷静だ。


「ひとまず問い合わせフォームから、運営に報告をして早急に修正してもらいましょう。運営から何かあるまで、自由行動で構わないでしょう。もし個人的な返答があったら、コピーして俺のメッセージに送っておいて下さい」


「的確ですね。わかりました」


 結局アキはココアを飲むことも忘れて、フラメラーズホテルを後にした。街の様子見る限り、特別変わりはない。まだ気付いていないプレイヤーのほうが多い証拠であった。アキはメニューを再び開き、ユウへとメッセージを送った。


『もうわかってるかもしれないけど、少し厄介なことになってる。ログアウトが出来ない。その旨を天馬騎士団の団長に伝えておいてほしい。暇が出来たらまた会おう』


 俺にはあまり関係はないけど、ない時間をやりくりしてプレイしてる人にとっては、大変なことなんだろうなあ。


「アッキー!」


「うお、クオンか」


 メニューを閉じたアキの正面から、クオンが手を振りながら駆けてきた。既にログインしていたようだ。クオンは、ログイン時にいつもメッセージを送ってくるが今日は何もなかったので、アキは意表をつかれた。


「ねぇねアキ、今何故かログアウト出来ないよね」


「あれ、もう知ってたんだ。思いのほか広まってるんだな……。そうだよ。今は運営からの連絡待ち」


「お店のほうにいないから、フラメルさんとこかなーって思って、走ってきちゃった!」


 いつも以上に明るい笑顔で、アキを見上げてきた。こういったトラブルをクオンが好むことをアキは知っていた。高揚している理由など、ログアウト以外ないだろう。


「そういえば、お店のほう結構混み始めてたよー」


「ああ。でもログアウトの件が解決しないことには……」


「うーん、ベルちゃんとエンジェルちゃん大変そうだったけどなぁー」


 確かに運営側から何か発表がない限り、ひとまず身動きは出来なくなる。この街のトップクランである天馬騎士団のメンバーでもないため、この状況に何をできるわけでもない。この状況下であっても、プレイヤーはいつも通りプレイするだろう。やがてアキは、オータムストアへと向かって歩き出した。


「……なら俺だって、いつも通りのことをするだけさ」

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