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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
日常
24/157

狐仮面女オルフェ

────ひとまず買い貯めている素材を半分ほど使い、回復薬と復活薬の在庫を補充した。錬金術とは言うが、その実は特定の大きさのフラスコに決められた素材を放り込み、それに精製スキルを唱えると出来上がるという、至極単純なものだった。

 息をついたアキは、単純作業で凝り固まった錯覚を起こしている体を、座りながら大きく伸ばした。コキコキと鳴る背骨や、その感覚さえもエタニティオンラインは再現に成功していた。


「ふう」


 カウンターの奥にあるこの部屋は、小窓が一つ付いているのみで、他の灯りは小さな蛍光灯だけの薄暗い部屋だ。床には回復薬と復活薬の入った木製のケースが積み上げられている。それを足でどかしながら、アキは部屋からカウンターへと出た。ベルとエンジェルが交代してレジや品出しを行っており、忙しないその雰囲気がアキにはどうしようもなく新鮮に見えた。


「アキさん、お疲れ様です。少し休憩してください」


「ありがとうベル。少し、散歩してくるよ」


 さて、散歩してくるって出てきたものの、行く当てもないなあ。お腹も空いてきたし、何か食べようか。もちろん、現実には反映されないわけだけどな。


 見慣れたメインストリートを考えもなく歩きながら、時計塔を眺め見た。時計の短針は午後十五時を指していた。考えていた以上に錬金術に時間をかけてしまったと後悔しつつ、不思議といやな感覚ではなかった。

 ふとメインストリートの端を見ると、珍しく行商人が自前の風呂敷を広げ、小さな店を開いていた。よく見ると、店主は先程アキの店で回復薬を買っていった狐仮面の女だった。その服は黒いローブに身を包んでおり、体型が全て隠れている。アキが店の前に立つと、びくりとお面の女は顔を上げた。アキの顔を見た途端にあたふたと店の物を整列させ始めた。


「さっき、うちに回復薬買いに来てくれた方ですよね? あ、今は店関係ないからタメ口で良いか……」


「は、はい……。先程ぶり、ですね」


「ソロプレイヤーなのかな?」


「ソ、ソロ? 一人ってことですか?」


「そうだよ。もしや初心者?」


 それを聞いた女は、お面の口元を手で隠しながら横を向いた。


「ローブで行商……まさか、後衛職で、しかもソロで行商をするつもりなのか」


「だ、ダメなんですか……?」


 アキは困ったように額に手を当て、やがてその場にしゃがみこんだ。


「行商ってのはその街を渡り歩いて行くプレイスタイルから、必然的に自衛できるプレイヤーや、仲間を連れてやる方が効率が良いんだ。手練れの後衛職ならまだしも、初心者の後衛職での行商プレイはあまり勧められないな」


「ご、ごめんなさい……」


「あ、あぁいや、謝らなくても良いんだけど……」


 ネットで事前情報を拾ってこない人か。少し厄介だな。


「この店に並ぶ物も、NPCの店で買えるものだから、あまり売れないかもしれない。どうしてもというなら、天馬騎士団というクランに行けば初心者に必要最低限の知識を教えてくれるから、そこのユウってメガネの男を探すと良いかもしれない」


「天馬騎士団……ユウ……」


「そう。俺の知り合いで少し気が弱いんだけど、初心者が相手でも一からしっかり教えてくれる。それと、後衛職で行商がしたいなら、用心棒を雇えるくらいのお金を貯めるか、もう少しクエストをこなして強くなってからとかでも遅くはないと思う」


「わかりました……すみません」


 女が荷物をまとめ始めたところを見てから、アキは立ち上がった。あまり世話を焼いても面倒臭がられるのはわかっているので、この辺で立ち去ろうと振り返った。その時、不意に背後の女から声をかけられた。


「あの! えっと、ここでのお名前は?」


 振り返るアキは首を傾げたが、やがて納得して自己紹介した。


「ここでの……? ああ、エタオンの名前か。アキって呼んで。そういう狐お面さんは?」


「オルフェ……です」


「オルフェさん、よし覚えた。いつかどこかで会えたら、今度は色々援助するよ。じゃあまた!」


 アキは快活に笑いながら手を振ると、オルフェは深々と礼儀正しくお辞儀をしてきた。もし本当にユウを探して、ユウに紹介されてオータムセキュリティに頼ってきたときは、最大限援助してあげようと、アキは心に決めていた。

 アキは、その親切の理由をあまり語りたがらない。

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