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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
日常
14/157

金持ち御曹司

 あれから、ログアウトするとともに眠りについた暁影が目を覚ました時には、すでに窓から日が差し込んできていた。明日からは夏休み。そう自覚させないほど、簡素な部屋にはクーラーが効いていた。


「あのまま寝てたっけ……」


 寝癖のひどい髪の毛を手で適当に直しつつ、部屋にあるパソコンへと向かった。時刻は午前六時半。今となってはマニアにしか使われていない液晶画面のノートパソコンを弄り、日課であるインターネットに公開されている小説の続きを書き始めた。

 アキの書いた小説の存在は、気恥ずかしさから知り合いの中でユウとクオンにしか紹介していなかった。内容は、かつてどこにでもあったようなハイファンタジー。しかし、機械が自然の代わりを果たし、科学技術がどこにでもある現代では、資料を読まなければ表現が難しいとされ、趣味で書く内容としては敬遠されつつある。


「よし、今回はこのくらいにしようか」


 大して物語も書かないうちにパソコンをシャットダウンさせ、廊下から一階へと降りた。母の京子はおらず、その代わりとしてジャクソンが母の席にポツリと座っていた。


「アキカゲ、起きましたか。朝食は出来ていますよ」


「ん、ありがとう」


 席を立ったジャクソンは、台所から皿に乗せられたフレンチトーストと、ボールに盛られたサラダ、コップいっぱいに入った牛乳を運んできた。それらを素早く食べ、ジャクソンに一言礼を言ってから、自室へと戻った。

 学校の制服に着替え、寝癖直しのスプレーを使い、髪の毛を強制的に元に戻した。それから洗面所にて冷水で顔を洗い、歯磨きと舌磨きをしてから、小さな一軒家である自宅を後にする。


 閑静な住宅街を抜け、駅への道を向かう。この景色は数十年前から何も変わらないと、京子が自慢げに話していたことを覚えていた。駅前の交差点で信号を待っていると、超低空に浮かぶ車が、次々と目の前を通り過ぎて行く。

 街路には木の役割や、姿形を模倣する機械が並べられていた。そんな景色にため息を吐いたところで、行き交う車から声をかけられた。


「暁影ー!」


 聞き覚えのある声を探すと、道路の端に止まった一台の高級車から、ユウこと宗像悠(むなかたゆう)が手を振っていた。そこへ駆け寄ると、後部座席の扉が開かれた。


「暁影も乗って行きなよ! 学校まで一緒に行こう!」


「お、ありがたいなあ」


 暁影が車内に乗り込むと、車体からふわりとした感覚が体に染み渡る。運転席に座る老人は、代々宗像家を支えてきた執事であり、悠の登下校を送り迎えする運転手でもあった。


「今日学校に行けば、夏休みだね」


「エタオンやりまくるしかないな!」


「クオンとばかりじゃなく、たまには僕もクエスト混ぜてよー。弱いけどさぁ」


 悠が自重気味に笑った時、会話を聞いていた運転手の執事が、しゃがれた声で話し始めた。


「安心してくだされ。悠様は、いざという時、真価を発揮されるのですよ」


「またまたー。僕に真価なんかあるわけないじゃないか」


「壺を棚から落としてしまいそうになった時、不意に隣の庭から球が飛んできた時、犬に追いかけられた時を思い出してくだされ。悠様は、壺を間一髪で受け止め、眼前にまで迫った球を首を傾げて避け、追いかけて来た犬の口を瞬時に抑え込んだ。私は知っていますよ、あなたが優秀であることを」


 鏡越しに執事の目が細まっているのがわかった。


「悠って意外と出来る奴なのか?」


「そんなことないってば」


「幼き頃、庭の虫をよく殺めていた時からすれば、随分立派になられました」


 暁影は引きつった笑みで悠から少しばかり遠ざかる。


「す、すごい趣味だったんだな……」


「それ僕もあんまり覚えてないんだよ。にしても嫌な趣味だね……」


 走行音のない車内には、薄っすらとクラシックの曲が流れ、ただでさえ高級感のある車内が、さらに輝き出したように見える。そのまま二人は県立新戸井(しんとい)高等学校へと向かっていく。

 かつて山の中腹に立っていたこの学校は、老朽化の影響を受け、数年前に新校舎として、山の下に建て直された普通科公立高校である。大道路沿いにある高校なので、車が校門前に泊まる光景がよく見ることが出来る。その中に、暁影達の乗った車があった。

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