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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
日常
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契約成立

「あの時のフラメルさんは、今ほどの余裕はなかったんです。想像出来ないでしょ?」


「ホントだねー……。私も知らなかったや」


 さりげなくアキの分のココアを飲み始めたクオンが、大きく頷いた。妙に嬉しそうに微笑むフラメルは、時折キュータに視線を移しながら話し続けた。


「案の定、彼もまたお金がなかったのです。しかし今のうちにコネを作っておこうと思ったか、本当に私を気に入って下さったかは計り知れませんが、その初心者専用契約書をその場で作成して下さいました。『店が繁盛するまで人型のモンスターを貸し出して店番を手伝わせますよ』、とね。


 その時は使役したモンスターの中でも、ある程度言葉の使える人型であればNPCの擬似行為が出来るとは知らなかったので、アキさんを訝しんでしまいました」


 アキが話の合間合間に、キュータへと話しかける。


「酷いよなあー。モンスターのNPC代替機能は十回目のアップデートで可能になったんですよ。使役確率を下げられる代わりにね」


 キュータが答える前に、素早くクオンが答えた。


「あ、それってさっき言ってた『竜狩りの秘宝』だね!」


「そう。俺は皮肉なことにあの事件のおかげで、自分の店も続けられたし、フラメルさんも助けることが出来たんだ」


 ただただ圧巻されるようにキュータは話を聞いている。最近エタニティオンラインを始めたばかりだからか、全く話に入れずにいるようだ。フラメルはそんな彼に向かって、明確に言い放った。


「罪悪感がありますよね。人の力を借りて、何かを成そうとするのは。でも、人は一人では決して生きていけない。キュータさん、フラメラーズホテルの全名声を賭けて、彼が信頼できると断言します。このホテルの、この繁盛こそがその証明。


 ……それに罪悪感があるなら、借りを返せば良いだけのお話。だから私は今、彼にお願いし、このお店の部屋のスペースを使っていただいて、借りを返しているのですよ」


「こっちの場所のほうがわかる人が多いので……」


 フラメルの話に苦笑したアキはキュータの様子を見る。このフラメラーズホテルは急成長を遂げ、今やこの街で五本指に入るほどの人気宿であった。その店主がこんなにも熱弁したとあっては、決めないわけにはいかなかった。キュータは突然椅子から立ち上がり、勢い良く頭を下げた。


「ア、アキさん、よろしくお願いします!」


「その一言が聞きたかったんです。契約書のそこに名前と、決めた期間を書いて下さい。何日でも構わないので」


 改めて契約書を眺めたキュータは、意を決して筆をとった。さらさらと名前を書いた後、迷いなく期間を書き込んでいく。

 名前の欄にはキュータ、期間の欄には三十日と書かれてあった。これは、彼が一人で行商出来るようになるまでの、目標の期間でもあった。

 その両方を書き終え、アキへと契約書を渡した途端、その契約書が光り輝き、光の球となって宙に浮かんだ。その球は二分割され、アキとキュータの体内へと入り込んでいく。


「これにて契約成立!」


 アキはすぐさま瞳を閉じ、「スキルメニュー」と早口で呟いた。


 瞳を開くと、透明な翡翠色の画面に膨大なスキルがアイコンとして表示されていた。そのスキル欄の横に、別の枠で使役モンスターが縦に並べられてあった。数は全十五体ほどで、そのうち三つはアイコンが暗くなっている。それは貸し出し中や再使用時間前のモンスターなどであった。


 明るいアイコンのモンスターから二体を選び取り、欄外へとスライドさせた。二体のアイコンはそこから消失し、欄内には暗くなったそれらのアイコンが出現した。モンスターを呼び出す準備が完了した証拠だった。


「終了」


 瞳を閉じてからそう呟き、すぐさま床へと手をかざす。


「使役モンスター『プチゴーレム』『プチエンジェル』喚起」


 床に非現実的な歪みが生じ、そこに黒い穴が二つ開かれた。その中から体が岩石で形成された人型のモンスターと、神々しさのある白銀の翼の生えた可愛らしい天使が現れた。プチと名のつくだけはあり、二体とも腰ほどの高さである。


「キュータ、この二体は見た目こそチビですが、必ず旅の助けになるはずです。

 このプチゴーレムは、攻撃力と防御力とHPが高く、魔法耐性がないものの、普通相手ならこいつの力押しだけで十分こと足りるでしょう。

 そしてこのプチエンジェルは、弓攻撃と回復、さらにエンチャントが使える優秀な後衛です。


 貸し出したモンスターのHPがなくなった場合、モンスターは自動返却され、その時点で契約は終わってしまいます。しかしこのプチエンジェルがいれば、キュータはもちろんプチゴーレムも死ぬことはないでしょう」


 契約通り、プチゴーレムとプチエンジェルはキュータの元へと歩いて行き、その横に付いた。無愛想なプチゴーレムと、愛らしい笑顔の絶えないプチエンジェルが対照的であった。

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