☆
「あのね、前に明美ちゃんと春ちゃんのこと話したでしょ?」
「うん、聞いた」
佳奈の会社での友達だ。
「で、その二人の間に私がいるわけなんだけど。だいぶ前からそれぞれに恋愛相談をよくされるようになって」
「佳奈が?」
「私の他に誰がいるのよ」
「いや、佳奈がそんなアドバイスするのかなぁと思って」
確かに佳奈はモテるので、そういう話はよくされるのかも知れないが、佳奈がどんなアドバイスをしているのかがどうしても謎だ。
「アドバイスって言うか…聞くだけかな、私は」
それだったら、納得できる。佳奈は聞き上手だ。
「それでね、その二人はそのころから好きな人が一緒で。その二人に波風たったら嫌だからずっと黙ってたんだけど、最近二人ともお互いの好きな人がわかってきちゃったみたいで…」
「火花散らしてる、みたいな?」
「そう。こういうのってどうすればいいと思う?」
これは今度の小説に使えるかもしれないと頭の片隅に目もを取りながら「そんなことをいわれてもなぁ」と解決策も考える。
「だよねぇ。女の私がわかんないんだから男の直紀がわかんないのも当たり前だよねぇ」
「お前、中身はたまにおっさんだけどな」
「うるさい」
佳奈は冷蔵庫に入っている缶ビールを二つ持ってきて、1つを俺にわたし、もう一つの缶は早速開けてぐびぐびと一気に半分くらいは飲んだ。
「でも、その二人も気の毒だな。中学生くらいの好きか嫌いかわからないようなのじゃないんだろ?」
「そうなんだよ。そこがやっかいなんだよねー」
そして佳奈は残っていたビールを一気に流し込む。
つられて俺も半分くらい一気に流し込む。もともと、あまり酒は強くないけど、金曜日だし、佳奈しかいないしいいだろうと調子にのった。