同じ両親から産まれてきたのに、僕と弟の違いはどこにあったのだろうか?
同じ両親から産まれてきたのに、僕と弟の違いはどこにあったのだろうか?
僕が産まれた時は、僕の両親も心から喜んでくれていたと思う。
でも? 僕の弟が産まれたら? 僕よりも両親は弟を物凄く可愛がった。
まるで? “僕の存在は消えてしまったのかのように、、、。”
僕より一つ下の弟は、僕と違って大人しく本が好きでよく一人で本を
読んでいた。
両親も殆ど手間のかからない弟の方がとても愛おしく想える存在になっ
ていたんだと思う。
僕は夜泣きやお漏らし、よく病気にもなって両親からしたら凄く面倒が
かかる子供だったんだろう。
・・・でも? 僕が4歳になった頃から、両親は弟だけを可愛がった。
僕が泣いていても両親は僕に、“うるさい、何泣いてんの” と言って
慰めてくれる事もなかった。
一方弟は? 一人で泣いていると、母親は何をしていても直ぐに
弟の所へ駆け寄り、直ぐに慰め、その後はギュッと抱きしめていた。
僕が弟とキャッチボールをしたくて、ボールを弟に向けて投げた時、
弟の頭に当たり、弟が倒れてしまった。
それを見た父親は、弟に駆け寄り、“俺とキャッチボールをしよう”と
言って僕からグローブを奪い、弟とだけとキャッチボールをする。
僕は一度も! 父親とキャッチボールをした事がない!
何故なら? 僕が幼い時、父親に僕とキャッチボールをしてほしいと
言うと? 父親はこう言ったんだ!
“お前とはキャッチボールはしない” と、未だに何故そう言われたのか
僕にはまだ分からないでいる。
なにしろ! 両親の弟への愛情は異常だった!
『“なあ、涼介! 今から二人で家出しないか?”』
『えぇー!? ダメだよ、パパもママも心配するよ。』
『“心配するのは、涼介だけだ! 僕は関係ない!”』
『・・・兄ちゃん、』
『僕の誕生日の日は、いつもショートケーキが1個あるだけ!
ロウソクもいくつになっても1本刺さってるだけだよ!
誕生日プレゼントだってないし、何か親から貰ったモノなんてないんだ!』
『兄ちゃん、父さんも母さんも兄ちゃんの事を大事に想ってるよ。』
『僕はいい! 涼介が両親に愛されていれば僕はそれだけでいいよ。』
『・・・に、兄ちゃん、』
『涼介が泣いてると? 必ず両親は僕を疑って怒鳴りつけてきたんだよな。
“康介はお兄ちゃんなのに、なんで涼介を泣かすような事をするのよ!”
“お前ときたら、弟をそんなに泣かせて嬉しいか?” とかな! 僕は何も
してないからその事を話そうとしても、両親は一切! 僕の話を聞いて
くれなかったよ、あんな奴ら! 僕の本当の両親じゃない!』
『・・・に、兄ちゃん、ごめんな、』
『涼介のせいじゃないよ! 全部、両親が悪いんだ!』
『“・・・だから、二人で家出するの?”』
『僕が全部責任を取るよ! どうせ僕しか怒られないしな!』
『兄ちゃん、それなら家出をするのをやめようよ、』
『ダメだ! 両親を困らせないと気が済まない!』
『“兄ちゃん、いつから父さんや母さんを両親って言うようになったの?”』
『えぇ!?』
『兄ちゃん、もう父さんと母さんって言わなくなったから!』
『“僕にとって呼び方はどうでもいい! もうどうでもいいんだよ!”』
『・・・そ、そんな悲しいコト言わないでよ、兄ちゃん、』
『“僕は両親から愛されてない! 愛してるのは涼介だけ! 僕はなんの
為に産まれてきたんだろうな!”』
『兄ちゃんはボクにとって大切に兄ちゃんだよ。』
『そんな事を言ってくれるのは、涼介だけだよ、両親は僕が涼介の兄だから、
なんでもお兄ちゃんなんだから我慢しなさい! お兄ちゃんなんだから弟に
譲ってあげなさいって言うけど? 僕は別に好きでお兄ちゃんになった訳
じゃない! “僕を長男にしたのは母親だろう!” 勝手な事を言う
なって、直接あの母親に言ってやりたいよ!』
『・・・ご、ごめんね、』
『涼介! 僕はお前を嫌いじゃないんだ! それどころか、涼介が産まれて
きてくれて僕の拠り所になったんだよ。』
『兄ちゃん!』
『“両親からの愛は涼介だけに注がれている! 僕は一滴も愛されてないって
知ってる! だからもういいんだ! でもな? 両親への憎しみはこれからも
消えないだろう。”』
『・・・・・・』
『“なあ、涼介! お前は両親を大事にしろよ! 僕が出来なかった分、涼介
だけは両親を愛してやってほしい!”』
『兄ちゃんはどうなんだよ、父さんや母さんの事を愛してないのか?』
『“愛してないよ! 愛せない! 僕を愛してくれなかった両親を僕はこの先
も愛さないよ!”』
『そ、それは違うんだ! 父さんも母さんも兄ちゃんを本当は愛してる!』
『もういい! さあ、今から二人で家出するぞ!』
『・・・ううん、』
・・・僕と弟が家出をして3時間後、警察の捜査もあって直ぐに見つかった!
その日、僕だけ両親に今までにないぐらいに途轍もなく怒られた!
その日から僕は両親からの虐待も受けるようになる。
両親が気に喰わない時は、僕は両親から殴る蹴るといった暴力を受けた。
僕が痛いからやめてと言ってもやめてくれない!
こうやって僕も弟も大人になったが、相変わらず両親の愛情は弟にだけ。
僕は中学を卒業したら? 直ぐに住み込みの仕事をはじめて家を出た!
その日から僕は両親には一度も会っていない!
でも? 弟は違う!
弟だけは定期的に僕は会っていた。
僕は両親の助けを一度も借りず、既に25歳になった。
僕は家庭を持ち子供にも恵まれた。
僕と妻の間には、“息子が二人居るが、僕はどちらの子も同じように
愛する事に決めているんだ!”
同じだけの愛情を二人の子供達に注いで、二人共! スクスク元気に
育っているよ。
たまに、弟の涼介も僕の子供と遊んでくれるよ。
でも? 両親は僕の家族には一切! 会わせないと思っていたのだが、、、。
ふたりが同時に“末期の癌”になり。
僕はしぶしぶ、妻と子供たちを連れて、両親が入院している病院に行く事に、
【ドンドン】
『はい!』
『僕だ! 康介だ!』
『・・・・・・』
『入るよ。』
『・・・あぁ、』
『おじいちゃーん! おばあちゃーん!』
『“康介の子か?”』
『あぁ!』
『“初めまして妻の涼花です。”』
『・・・涼花さん? 孫を連れて来てくれてありがとう。』
『そんな義理の母!』
『おじいちゃーん! おばあちゃーん!』
『“孫の顔が見れて良かったな、”』
『・・・す、済まん、今まで康介、お前だけに冷たく当たって、』
『・・・・・・』
『康介、ありがとう! 最後に孫に会えて嬉しかったわ!』
『そんな義理の母、これからも、もっともっと、』
『涼花さんありがとう、でもね? 私も夫も、もうそこまで生きれない
と想うわ、康介! 彼女と孫たちを幸せにしてあげてね! 私達があなた
に出来なかった事は凄く今でも後悔しているのよ。』
『“じゃあ、二人共! 孫の顔をもっと見たいなら、長生きしろよ!”』
『・・・康介、』
『康介、!』
『・・・またお見舞いに家族で来ますね!』
『えぇ!』
『またね~おじいちゃん、おばあちゃん!』
『じゃあ、またね!』
『じゃあな!』
『あぁ!』
これが最後の僕たち家族と両親の最後になってしまった。
両親はほぼ同時に、“亡くなったと医師から聞いた。”
最後の最後で、“僕は両親からの謝罪を受けた! 僕も両親をこの時、
素直に許せた! そして妻や子供達を最後に両親に会わせてあげる事も
出来たし!” 今は僕の心の中に長年あった棘が取れた気がしたんだ。
“同じ両親から産まれてきたのに、僕と弟の違いはどこにあったのだろうか?”
きっとね? 僕の知らないところで両親は僕を愛してくれていたのだろう。
ただ素直にそのまま僕に愛情をぶつけて来れなかっただけ!
でも? “弟にはそれが簡単にできたのかもしれない。”
僕は何か? 癖があったのか、取っ付き難かったのか?
“両親からしたら僕にどうしたら愛情を注げるのか分からなかったのかも
しれないと思うようになった。”
僕もまた弟と同じように愛情を両親から貰っていたのかもしれない。
・・・両親が亡くなった今、僕はそう想うようにしているんだ!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。