僕を追放するなんて後悔してもしらないよ? 追放された僕は隠していた才能を発揮する
「てなわけで追放ー、反対のやついるー?」
「「「…………」」」
その言葉に反論するものはいなかった。
このパーティーで活動した期間はたった2年。それだけだ。だから思い入れはある、なんて思っていたが僕の周りの人間の冷たさにそれは失われた。
「大体さお前、後ろにいるだけだよな?」
「そうだけど、でも」
「黙れ、お前は追放だバルカ」
「あはははは! おい見ろ! 追放だってよ! あーあ冒険者の風上にみもおけないな!!」
パーティーメンバー以外からも嘲笑が飛んできた。
部外者は黙っててくれよ。って感じだがまあいいさ。
僕はS級冒険者、バルカ・リトルスターだ。嘲笑うといいさ。
「おいおい! 坊や! 追放かい? 俺んとこで荷物持ちをさせてやるぜ?!」
「あははははは! あっはははは!」
「おい! 行ってこいよ笑 お前に適任じゃん!」
そうかそうか、そこまで言ってくれるか。
そう言ってくれるなら、もうなんの未練もない。
ここはあえて伏せておこう。
「い、いや、これからはソロで腕を磨くよ……」
「ソロ!? おいおい! こいつ死ぬぜ?!」
「あなたが? 無理よ野垂れ死ぬわよ笑 まぁ雑魚にはお似合いね」
そう言ってレナからも言われた。
まぁみんな吠えてればいいさ。吠えれば吠えるほど僕にとってはありがたい。お前達がどんな顔をして僕を見るのか。楽しみでしかないよ。
「ほら、もう用済みださっさと出てけよ」
そう言ってあっさり捨てられた。
ギルドから出て俺は背伸びをする。背中には一振りの大剣。腰には小刀がある。
「まぁ、しばらくはここで滞在してちまちま奴らの様子を見ますか
さぁーて、どこまでいける雑魚ども……」
俺はニヤリと笑った。
冒険者にはZ→E→D→C→B→Aがある。右にいけばいくほど実力は高くなり、ミッションの難易度もそれに比例する。
だがA級の中でも竜族を単独で討伐した冒険者はS級という称号と二つ名が送られる。
僕の顔を知る人物にはたまにこう呼ばれる。
『竜王バモテスの再来』
個人的にはカッコいいとは思わないがまあいい。
次の日ーーー
「えぇっと、サレイントゴーストの討伐は夜限定だからな、じゃあ収集はってなるけどおもろくないし」
「あっれー? 追放者のバルカくーん?」
と何やらからかう声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、「マグヌスコートル」の面々がいた。何やら楽しそうだ。
「あらあら、収集にいくの? お似合いじゃないの」
とニルナに言われた。あのパーティーのヒーラーだ。
ヒーラーしか取り柄のない人間は黙ってて欲しいね。
「おいみんな! こいつ収集に行くらしいぜ!」
とリーダーのカルダが言いふらした。
「雑魚にはお似合いだよな!」
それに便乗するかのように言うのはアタッカーのガル
ふん、言うが良いさ。
どうせお前達はもうA級のミッションは受けられないしね。
その時だった。
ギルドの扉が開かれた。その瞬間、ギルド内の雰囲気が少し変わった。
どうやら周りの奴らはその雰囲気の異常さに呑まれ動けないらしい。
「おーバルカじゃん!」
「おぉ!?シセウムじゃん!」
俺は3年ぶりに再開を果たした仲間と手を取り合って席に着いた。
3年前に冒険者として活動していたときにたまたま出会った。中々に気が合うやつで相棒みたいな立ち位置だった。
「お、おい、あいつあのシセウムさんと話してるぞ」
「なんだよあいつ」
何やらボソボソ聞こえる。
それを聞いたセシウムは顔をしかめていた。いつもの穏やかな表情からは考えられない。
なので俺はアイコンタクトを送った。
その瞬間に俺はでかい声でセシウムと話し出した。
「いやー、あのさパーティーを追放されたんだよね」
「えぇー? お前を? 追放するとかどんな馬鹿だよ」
その時だったセシウムに取り入ろうとゴマすりをして入る雑魚がいた。
「あ、あのセシウムさん、そいつはですね」
「なんだ? お前が追放したのか?」
「い、いえ、あそこのマグヌスコートルってやつらです」
「おいおい、そのパーティーのやつらどこ?」
と言って席を立ち上がりそのパーティーメンバーを探し出した。そして全員の視線が集中したメンバー達は自ら立ち上がった。
「お、俺たち………です」
「お前達何ランク?」
「え、Aです」
「嘘つけよ、Aなわけないだろ」
と言ってズカズカとそのメンバー達に近づいて行く。
そしてリーダーまで近づくとポケットから何かを盗んだ。それを見て止める者はいない、抵抗すれば何されるか分からないからね。
「ほらね?Dじゃん」
「は?何言ってるんですか?」
そしてそのパーティーの冒険者カードを見せるとランクのところにはDと記されていた。
そしてそれを高く上げみんなに見せびらかす
「おいおい、みんな見ろよ! こいつDのくせにAって嘘ついたぞ」
それを聞き嘲笑がギルド内に響いた。それは昨日の俺とは立場が逆だ。
だがこんなのはまだまだ序の口だ。
「お前らがAなのはバルカがいたからだぜ?」
「し、しかしあいつは」
「はぁ……なんで分からないのかな?どこまで頭が悪いんだ? おい全員聞け!」
とデカい声を響かせた。そしてこちらを見てくる。
その顔の表情は笑っている。見せつけてやれってことか……まぁ良いだろう。
俺は立ち上がり冒険者カードを高くあげる。
「俺の名前はバルカ・リトルスター! 『竜王バモテスの再来』とも言われたS級冒険者だ!」
俺はこれまでにないほどの声量で言ってやった。それを聞いたセシウムを除く全員が驚きの表情をしていた。
そして俺の言葉に反論するやつがいた
「う、うそだ! 後ろにいるだけのざこが!?」
「あのな、俺はS級だぞ? A級のミッションだと敵が全員俺を気にしてまともに戦えないんだよ。
君はどこまで頭が悪いのかな?」
そしてセシウムはガルダの肩に手を回しニヤニヤと笑っている。相変わらず悪いことには乗り気なやつだ。
だがこの瞬間が最高だ。僕をみる目が一斉に変わる。そして誰もが悔しそうに地面を叩いたりする。
「つまり俺たちは……」
「そう、自分たちのランクが下がっただけ。まぁいいんじゃない?君たちの実力がDしかないことに気がつけたしね」
そう言って耳元でニヤニヤと笑っている。S級だからこそいえることではない、別に他の冒険者でも言えることだ。なによりこんな失態を犯すのはそうとうなバカだ。
俺もそのパーティー達に近づいていき。全員の顔を見る。先ほどまでの見下すような表情から、悔しそうな表情になっている。
俺は先ほどの言葉を言い返した。
「収集がお似合いなんじゃないの?」
と皮肉をこめて言った。まぁほんとにその通りだろう。Dの主なミッションは収集か討伐。討伐といえども低ランクの魔物だ。
「あ、あのバルカさん俺と……」
「は? 何? お前俺のこと笑ってたじゃん。俺より強いんでしょ?」
「い、いやあの……グラミアンゴーレムが」
「知らないって、俺はセシウムとS級にいくから」
そう言って俺はセシウムと肩を抱き、ギルドを出た。
まだ少しモヤモヤがあるが、これからS級のミッションをこなして報酬を持って帰れば黙らせられるか。
「あー、楽しかった!」
「だな、助かったよ」
まさか、自分たちが優位の立場だったのにいつの間にか逆になって罵られるのはさぞ泣けるだろう。
きっと今頃泣いてるんじゃないのかな。
「よーしじゃあ行くか!」
「はいはい」
俺たちはミッションへと向かった。