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就活の思い出

 ボク達は王に自分達の名前を紹介すると、王の間にナモンを残し、ケンの案内で王宮内の寝所に向かった。


 王の隣にいた褐色の肌をしたセクシーな女性はボク達と同じ「異界の戦士」で稲本いなもとミサトと名乗ってくれた。


 ケンの話ではミサトさんはケンの次に召喚されてきたのだが、持ち前のコミュ力で今ではすっかり王や大臣を始めとする国家の重鎮達のお気に入りになっていて、王が誰かと謁見する際には秘書兼護衛として常に脇に控えているそうだ。

 そういえば、王の間の入口には護衛の兵士がいたが王の間には護衛の兵士がいなかった。ミサトさんも「異界の戦士」なので戦闘力はコチラの兵士の比ではないだろうし、また、最高権力者である王の話を耳にする人間は一人でも少ない方がよいというのもあるだろう。


「ここです。お一人ずつ部屋がありやすんで、自由にお使いください。じきにメイドが替えの服をもってきやすんでサイズを確認して、着替え終わったらココに集合で。」


 広い廊下の左手側に入口が三つ並んでいて、ここがボク達の寝所のようだ。廊下の右手側には椅子とテーブルがおいてあり、ちょっとした休憩スペースになっている。


 ボク達は部屋に入りメイドが持ってきた替えの服に着替えると、外で待っているケンの元に集まった。


 ミオナの服もミサトさんみたいなビキニ仕様かと思いドキドキしていたがパンツスタイルの服装・・・。普段のスーツの時と大して変わらんじゃないか!


「ちょっと奇抜なヤツもありましたけど、これにしときました!」


 とミオナ。


 ビキニ仕様もあったのかな・・・。あ、そうかボク以外の野郎の目に肌をさらさないミオナの配慮か!


「さてと、夕食会までの間、王宮の主要なところを案内させていただきやす。で、案内しながらになりやすが。」


 ケンがボクに視線を向けてきた。ゴリラ顔、恐い。


「川本さん。さっきミサトさんから提案があったように、食事会の時に大鉄だいてつさんと力比べをしていただきやす。」


「力比べって・・・腕相撲とか?」


 ミオナがケンに楽しそうに聞くと、ケンは少し困った顔をして、


「決闘ってやつです。」


「えぇ!?」


 ケンの言葉にボクは思わず悲鳴をもらした。


 いや、だってボク、殴り合いのケンカなんかしたことないよ!? 一方的に殴られた記憶はあるけど・・・。


 たじろぐボクの様子を見てかケンが、


「まぁ、でも、川本さんのスキル群なら問題ないんじゃないかとは・・・思いますがね。」


 と自信のないフォロー。


「そーですよ! 川本さんの『せいどうの剣』と『せいどうの盾』なら楽勝ですよ!」


 と、ミオナがボクの背中をバンと叩いてくる。ちょっと痛い。


「ところで、ケンさんその大鉄さんっていうのは?」


 事務部長がケンに聞くと、


「ええ、大鉄さんもあっしらと同じ「異界の戦士」です。元々格闘技をやってたってのもあって、川本さんが来るまでは異界の戦士の中で最強の男です。その力ゆえに王都防衛の守護神として皆に称えられていやす。」


「その、最強ってことは・・・大鉄って人、ケンさんより強いってコト? ケンさんも相当強いと思うんだけど・・・。」


 ミオナの問にケンは、


「ええ、あっしなんか歯立ちやせん。それもあって、あっしは召喚されてくる異界の戦士の方を迎えにいったり小勢のモンスターの撃退といった細々した仕事をうけもってやす。大鉄さんは王宮に特別室を与えらえ、常にはそこに控え、大軍のモンスターが襲って来た時くらいしか戦いやせん。」


 異界の戦士にもヒエラルキーがあるようだ。


 ていうか、ケンが歯が立たないってヤツと戦わなくちゃならないって・・・。


 ボクの膝はガクガクと震えてきた。


 強力なスキルを持っている事は頭ではわかっているが、心はノースキル・ノーパワーの向こうの世界のままなのだから。


「でもぉ、ボクにSランクスキルがあれだけあるなら、それで「ボクが強い」って証明になるじゃないですかぁ。ナモンさんがその辺ちゃんと説明してくれれば決闘なんてしなくて済むと思うんだけどなぁ。」


 ケンにちょっと慣れてきたボクは普段の口調でケンに問いかけていた。


 ミオナは横目で、


「いつものヤル気ない感じですね・・・。」


 と呆れたように呟いた。


 いや、決闘するのは君じゃなくてボクなんだよ!


 ボクが言い返す前にミオナは視線をもどして、少しうつむきながら、


「せっかくカッコいいところ見れると思ったのに・・・。」


 とボヤいた。


 あ、そういうことだったかミオナ! ボクのカッコいいとこ見たかったんだね。ゴメンよ浅はかなボクで!


「まあ、川本さんがおっしゃることもわかりやすが、例えばあっしの『ジャンプ力20倍』のスキルなんかは、本来のジャンプ力に対して20倍ってことなんで、『本来の力』が基準になりやすよね。そうなるとスキルの評価もありやすが『本来の力』ってのも人物評価の基準になってきやす。」


「なるほど・・・、という事は、その大鉄って方は見るからに強そうなんですか?」


 事務部長が顎をさすりながら言った。


「そうです。みるからに強そうな御仁です。コッチの世界の人たちは、あっしらよりスキルを持っておりやせんから『本来の力』が強いヤツが強いっていう事がほとんどです。肉体強化系スキルも『本来の力』の特徴に応じて所持することが多いですから。王も強そうに見えるヤツは強いって見てると思いやす。」


 ケンの答えに事務部長は、


「コッチの世界でも見た目は大事ってことか・・・。」


「そうですね。川本さんには悪ィですけど、ちょっと背も低いし、体を鍛えているようでもねえし、あと、ちょっと挙動不審・・・なとこなんかが、弱そうに見えちゃって、王の印象を悪くしちまってるのかもしれねえですね。」


「うぅ・・・。」


 多分に事実かもしれないけど、そこまでハッキリ言わなくても・・・。


 そういえば大学の就職活動の時も、ボクの見た目や控え目な態度を見て適当に扱ってきた面接官がいやがったなあー。


 ボクは苦しかった就職活動を思い出した。


 学生五名、面接官二名の集団面接。


 内、一名は体育会系の学生で、一名はバイトやサークルで「充実した」学生生活を送っていた学生、ボクともう二人は、こういう場で異常に緊張してまうピュアな学生だった。


 面接官は体育会系の学生と充実した学生生活を送っていた学生とは楽しく話をしていた。ボクたち三名にも同じ質問をしてくるが、ボクらの返答に対しては、


「あ、はい・・・。では、次の方・・・。」


 と、明らかに冷淡で話にも興味ありませんという反応だった。


 そう、さっきの王の目・・・あの落胆が見て取れた王と同じ目を昔日の面接官達もしていた。


 面接の事と王の目を思い出すにつれボクの中で憎悪が渦巻いてきた。


 そして無意識に、


「くそぉ。」


 と口に出してしまった。


「川本君、どうした?」


 誰にも聞かれていないと思った呟きに事務部長が気付いた。


「あ、いやぁ・・・・。今日の力比べ・・・頑張ろうかなって・・・思ってたら息が漏れちゃったみたいでぇ・・・。」


 ボクはいつものように苦し紛れの言い訳を言う。ミオナと事務部長は目を丸くしている。


「か、川本さん!! ヤル気になってくれたんですかぁ!」


 ミオナが両手で拳をつくりながら、興奮した口調で言ってきた。


「これなら安心だな。よかった・・・。」


 と事務部長。


 そうだ。ボクはあの頃のボクとは違う! ボクを侮蔑してきた者どもを見返してやるんだ!!


 ボクの心はドス黒い思念に支配されていった。

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