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解説役

「ランク・B/名称・モンスターの記録/効果・モンスターの名前がわかり、一度見たモンスターの名前とイメージが記録される」


 このスキルのおかげでボクは目の前にあらわれたモンスターの名前が瞬時にわかったようだ。ただ、名前が分かり記録されるだけなのでモンスターに対して有効な対策を取れるわけではない。解説役のスキルだ。


 壁に叩き付けられたジャイアントバットの体は徐々に灰と化し崩れていく。


 チャリンチャリンー!


 ジャイアントバットの体から金色の物体が金属音を立てながら飛び出したかと思うと、ケンの体に吸い込まれていく。


「い、今のは?」


 ミオナがケンに質問する。


「ええ、皆も持っている『ゴールドコレクター』というスキルです。このスキルがあると自分が倒したモンスターが持っているゴールドを自動で回収してくれるんですわ。」


「ゴールド?」


さらにミオナが質問する、


「この世界での通貨です。おっと、そんな事より、ここにいたらモンスターに出口を塞がれてしまうかもしれねえ。外へ出ましょう!」


ケンの提案にミオナは心配そうな顔をしている。そりゃそうだろ、モンスターの大群がいるんだぞ! 事務部長! 危ないからボクらはここで待ってます! って言えよ!! と事務部長に無言で視線を送るボク。


「ケンさん。」


 事務部長が口を開く、おお! ボクの念が通じたか!


「私達の事を異界の戦士と言っていたが、この・・・ジャイアントバットだったら、今の私達でも何とか戦えるものか?」


 何言ってんだよ! 事務部長! ミオナ(とボク)の不安に苛まれた顔が見えねーのかよ!


 ケンはニヤリと笑って。


「皆様方のスキルを拝見させてもらいやしたが・・・。あっしらの連れて来た兵士達より明らかに強い。ジャイアントバットレベルなら苦戦する事ないと思いやすぜ。」


「分かった!」


事務部長は威勢よく返事をすると、ボクとミオナの方を振り返り。


「川本くん、松田君、行こう!!」


と言って来やがった。何考えてんだよこの野郎! 行くならお前一人で行けよと思った刹那、


「はい!」


とミオナの溌剌とした返事が聞こえる。さっきまでの心配そうな表情が嘘のように、目に勝ち気さを宿した満面の笑みを浮かべている。


「よし、では行きましょうぞ。」


 司教の声にボク以外の皆が頷くとケンを先頭に、先ほど駆け込んできた兵士、司教、事務部長、ミオナの順に走り出して行った。ボクもミオナの後ろについて走っていく。

 コッソリ残ろうかとも思ったが、さっきのようにモンスターが突っ込んでくるかもしれないし、敵中突破を図って逃げ出すって話になった時に置いていかれる危険性があるからだ。


 ボクは走りながら自分のスキルツリーを開きスキルを確認した。何とかこの場をやり過ごせるスキルはないか・・・。スキルに人生経験が反映されるのなら、目立たないように、自分の仕事を増やさないように、時間が過ぎるのを待っていた経験が反映されたスキルがあってもいいはずだろう・・・・。


 建物の出口から明かりが差してくると同時に喧騒が聞こえてくる。兵士達の怒号やモンスターの奇声、槍や盾の金属音・・・。


 取り敢えず見つけたスキルは、


「ランク・A/名称・不死身の戦士/効果・戦闘不能になると傷が癒えるまで痛覚以外を感じない別次元に送られ、傷が癒えた後に安全な場所で復活する」


 戦闘不能になれば数日間何もしないでいられる上に、モンスターのいない安全な場所で復活できるスキルのようだ。だが、戦闘不能は「死」って事だろうから、その状態まで持っていくことに苦痛が伴う。

 もしかするとこのスキル、事務部長も持っていて、復活できるならと調子に乗ってモンスターと戦う事に決めたんじゃ・・・。


「おっとぉ! すげえ数だなあ!」


 外に出たケンは驚きの声をあげる。


 ボクも外にでて周りを見回すと空飛ぶモンスターは100近くいるようだ。兵士達は20人そこそこで空飛ぶモンスターに背後を取られように建物の壁を背にして戦っているので防戦一方だ。


 ケンは出口の脇に停めてあった馬車の幌に駆け込むと幌の中から鉄の槍と鉄の盾を何セットか放り出した。


「もし良かったら使ってくだせえ!」


 ケンは幌から飛び出すと近くにいたジャイアントバットに飛び蹴りをかました。


「グエエー!!」


 地面に叩きつけらたジャイアントバットは灰になる。


「よし」


 事務部長は槍を拾うと片手でブンブン振り回すと両手で持ち直して構える、


「キエエエエー!」


 事務部長の左手側から襲ってくるジャイアントバット。事務部長はサッと向き直ると、


「せい!」


 ジャイアントバットを槍で一刺しにした。


「ギエエー!!」


 体を貫かれたジャイアントバットは断末魔の悲鳴をあげ灰になる。


「武器の知識か・・・。」


 ボクは呟いた。事務部長が槍を躊躇なく扱えたのは「ランク・A/名称・武器の知識/効果/一通りの武器を扱うことができる」のスキルを持っていたからだ。

 ちなみに事務部長のスキルをボクが知っていたのは、


「ランク・A/名称・スキルビュー/効果・目の前で発動したスキルのランク、名称、効果が表示される。スキルのオンが必要」


 というスキルのおかげ。ちなみに、このスキルは効果の末尾にあるように、オンの状態にしておかないと効果が発動しないタイプ。オン・オフの切り替えはスキルツリーの表示と同じように「表示しろ」「表示するな」と思考すれば良い。


 ・・・「モンスターの記録」「スキルビュー」といいボク「解説役」じゃないか・・・。

 でも待てよ・・・解説役なら矢面に立つこともないわけだから、ヤラれたり痛い目にあう事もないだろう・・・。

 これはいい流れなんじゃないか!?


「重ーい!」


 ミオナが槍を持ち上げる。だが、ミオナは「武器の知識」はないようで槍を地面に立てかけて構えるのがやっとのようだ。

 ケンと事務部長が幌を中心にジャイアントバットを屠って行ってくれているお陰で、幌の後ろにいるボクとミオナの周りは安全地帯になっている。

 司教はキズやケガを回復させる「ヒール」のスキルを使えるので壁沿いで戦っている兵士達の回復にあたっている。

 ここが安全地帯といっても相手が空飛ぶモンスターでは万が一の事もある。ミオナが槍を持っているのなら、ボ、ボクは盾を拾っとこうかな・・・解説役だし・・・と思い、ミオナの脇に転がっている盾を拾おうとしてしゃがんだ刹那、


「空から・・・何かくるーっ!!」


ミオナの叫び声が聞こえた、


「へ?」


しゃがみこんでいたボクはクビをめぐらして上空を見た、な、なんだあれは!! 上空に滞留しているジャイアントバットの群れを掻き分けて、ライオンのような肉食動物の体にワシのような翼と頭を持ったモンスターがボクめがけて空を駆けるようにして急降下してくるではないか。視界に捉えた時は距離があったので大きさがハッキリわからなかったが、体のサイズはゾウ位ある!


 グリフォンというモンスターのようだ。だが、名前が分かったところで解説以外の何の役にも立たない。


「うわっ!」


 ボクは左手をかざして、咄嗟に防御体制をとった。


「川本さんっ!」


 ミオナは槍を地面から垂直になるように構えると、槍を支えるようにしてしゃがみこんだ。グリフォンののサイズからしてグリフォンのクチバシがボクに届くか、届く前にグリフォンが槍の串刺しになる位置だ。

 槍を持ち上げて一刺しにして欲しいところだったが、あれだけの質量の物が落下してきたらミオナの腕力だけで支え切れるものではない。


「ひいいいいいい。」


 ボクは悲鳴をあげた。スキル「不死身の戦士」が発動すれば面倒ごとから暫く解放されるぜーと思っていた自分を恨んだ。

 「思考は現実化」するって事務部長が前言っていたなあ・・・うるせえよコイツって思って聞いていたのを思い出した。


「川本、松田ーッ!」


 事務部長の絶叫が聞こえると同時に、グリフォンはライオンのような右前足でミオナの構えた槍を容易く薙ぎ払った。


 終わったー・・・串刺しになるのはグリフォンでなくボクでした。


 ガッ、シャアアアアアアアアアン!!


 凄まじい音が戦場にこだまして、ボクの目の前に光が広がった。そしてボクの魂は別次元へと旅立った。

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