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異界の戦士

「それで、私たちがこちらの世界に召喚? された理由とは・・・。」


 事務部長が話を仕切り直す。


「この世界は、さっきまでいた兵士達をみてもらえば分かるかと思いやすが、我々の世界でいうとこの中世ヨーロッパのような世界でして。ただ、我々のいた世界では想像上の存在とされていたモンスターが人間に害を与える生物として存在しているんですわ。」


「・・・・・・。」


モンスターって・・・。ボクもミオナも事務部長も、あまりの突飛な話に沈黙していた。


「ふむ。ここから先は私が話をしましょう。」


 ナモンがケンに代わって話をはじめた。


「ケン殿がこちらに召喚されてくる前からモンスターが人の住む町に襲ってくることがしばしばありましたので、我々は城壁を作り軍隊を用いて、その脅威に対抗しておりました。ですが、ある時から急にモンスターの動きが活発になり、また明らかに質の違うモンスターが現れるようになりました。それは、天啓の巫女のお告げによると予言書に記された千年前に封印されし魔王の復活の前兆であると・・・。」


巫女、予言書、魔王・・・モンスターがいる世界なら存在していてもおかしくはないか・・・。


「同時に天啓の巫女は、予言書に記された、魔王が復活する時に現れる、魔王に対抗しうる存在である異界の戦士達が、この地に神の導きにより召喚される事を告げられました。こちらにいるケン殿が召喚されてきたのを皮切りに何人かの異界の戦士の方々がこちらにやって来られました。そして、今回、巫女のお告げにより、この日、この時、この場所に新たな異界の戦士・・・あなたたちがこの地に召喚されてくる事を知り、お迎えにきたのです。」


 その話を受けて事務部長が、


「な、なるほど・・・。取り敢えず経緯はわかりました・・・。が、戦士と言われても我々は戦う訓練を受けてきた者ではありませんし、ましては魔王・・・などという人智を超えた存在と思われる物に対抗できるとはとても思えませんが・・・。」


 と答えるとミオナが続けて、


「そうですよ。川本さんは恰幅良くても相撲やラグビーなんかのフィジカル重視のスポーツをやってたわけじゃないですから! あ、今は恰幅良くないですけどね。」


 おいミオナ! ボクをディスる必要ある!? ボクを衆人環視の中で痛めつけるプレイ!? でもボクはこの雰囲気の中で反論の言葉を発する勇気はなかったので、取り敢えず苦笑いしてやりすごすことにした。


 今度はケンが話し出した、


「そうでしょう。あっしは向こうの世界では大工を生業にし、高校時代には柔道をやっていたんで、普通の人よりは身体能力やガタイはいい方だと思うんですが、剣や槍を振って戦うような訓練はもちろん受けてきておりやせん。でも、向こうの世界からコッチに召喚されてきた人間は、向こうの世界では持ちえなかった特別な力を授かっているんですわ。」


「特別な力?」


 ミオナが興味深げに聞き返した。


「説明するよりみてもらった方が早いと思いやす。司教お願いできますか。」


「うむ。」


 司教はケンの言葉に頷くと胸の前でメロン位の球体を両手で抱えるような仕草をし、


「スキルレビュー!」


 と声を発した。すると、司教の手の平の間にメロン位の大きさの光球が出現し、光球の中心から親指位の太さの2メートル位の長さの光線が天井に向かって解き放たれた。次の瞬間、ボク達の眼前に白い光の線で描かれたフローチャートのようなものが現れた。


「こ、これは・・・。」


 事務部長が驚きの声をこぼした。ケンが説明を始める。


「これは司教のスキルツリー。この世界の住人は自分が持っている特別な能力を目で見て確認することができるんです。例えば・・・。」


ケンがフローチャートのあるマスを指さす。


「スキルツリーは本来は自分のモノしか見ることができないんですが、このマスにある『スキルレビュー』のスキルを使うと自分以外の人にもツリーが見える状態にすることができやす。」


 ケンの指さしたマスには、「ランク・A/名称・スキルツリー/効果・スキルツリーを空間に表示することができる」と書いてある。


「ランクはそのスキルの希少性や効果の大きさなどによってきまるようです。ちなみに、あっしのスキルツリーですが・・・。いいですか、司教?」


 そういうとケンは司教が両手で抱えている光球に手を差し込んだ。すると、先どと同じように光球から光が発せられスキルツリーが現れた。同時に司教のスキルツリーは消え去った。


「おお! おっきい!」


 ミオナが驚きの声をあげた。眼前に現れたスキルツリーは司教のスキルツリーの三倍はあった。


「この世界の住人のスキルは4~6個位が平均のようでして、司教のように特別な修練を積み、特別な立場である人でも10個位。対して異界の戦士と呼ばれるあっしらは、30前後のスキルをもってやす。また、Aランク、Bランクのスキルも多いのです。」


「そう、この世界ではAランクのスキルを一つでも持っていれば、地位と役職が保障されるくらい、能力があることの証であり希少な存在なのです。」


 なるほど、「スキルレビュー」はAランクスキルだから、司教は司教という立場にいるわけだな。


 ケンのスキルツリーを見回すと、「ランク・A/名称・異界の言語/効果・異界の言語の読み書きを自由自在に行える」というものが目に留まった。なるほど、ボクらにもこのスキルがあるから異界の住人である司教と普通に会話ができているわけか。他にも「ジャンプ力20倍」等の身体能力が上がるスキルや、恐らくモンスターとの戦闘に使うのであろう戦闘スキル等が並んでいた。


 三人でケンのスキルツリーを見回していると事務部長が、


「そういえば、ケンさん、スキルツリーは本来は自分のものしか見えないと言っていましたが、スキルツリーは自分で見る・・・ことが・・・。」


 事務部長は言葉の途中で俯き左指でおでこをおさえた。


「でき・・・た。」


「見えたでしょう・・・。スキルツリーが。」


 ケンが呟いた。


 ミオナが興奮しながら、


「部長見えるんですか! スキルツリーが!?」


「あ、ああ、見える。君たちには見えてないのか。あ、自分の視線の先にスキルツリーはついてくるのか・・・。」


「え! 私も見たー・・・い・・・見えた!! キャー、これが私のスキルツリー!!」


 え!! ミオナも見えたのか!! ボクだけ見えてないのはマズイ・・・と思って焦りを覚えていると、


「み、見えたー!!」


 ボクの眼前にもスキルツリーが広がっていった。良かったー。ボクだけみえない・・・「スキル自体がない」ってことだったら、新世界に来た早々に無能判定をうけてしまうからね・・・。良いところはみせれなくてもマイナスは避けたい・・・。ボクはホッとした。

 どうやら、スキルツリーの概念を受け入れると見えるようになるようだ。この世界の人は生まれた時からスキルツリーの概念を知っているから見えて当たり前なのだろう。


 とそこに司教が、


「では、スキルツリーが見えたところで、皆様のツリーを拝見させていただいてもよろしいですかな。」


 事務部長が進み出て、

 

「承知しました。」


 というと司教の手のひらにある光球に手を差し込んだ。光球から光が発せられると事務部長のスキルツリーがボクらの前にあらわれた。


(あ、マズイ・・・。)


 スキルツリーが見れてホッとしたのも束の間、ボクは次の試練に臨むこととなった。

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