表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/33

新たなる召喚者

「はぁ、ボクに押し付けすぎだよぉ、全く・・・。」


 ボクはダンジョン攻略から王都へ帰還する馬車の幌の中で一人ぼやいていた。


 ミオナと事務部長は二人とも馬に乗って隊列に混じって行軍している。


 昨日はリッセンの事を思い出して悶々した気分で過ごす羽目になり、今も気分は晴れない。


 今日は巨大な蛇のモンスター・ジャイアントパイソンがボスモンスターだったが、「せいどうの盾」でジャイアントパイソンの鋭い毒牙を防ぎつつ、ジャイアントパイソンの開かれた巨大な口の中に「せいどうの剣」をぶちかましてやると、ジャイアントパイソンの肉体は灰になり、やがて消滅した。


 いつも通りのパターンだ。


 ボスモンスターとの戦いは基本的にボクとボスモンスターの一騎討ちになる。


 ボスモンスターはボクのスキル「侮られし者」の効果でボクを優先的に狙ってくるわけだが、ボスの間に突入するとボクはボスの正面に進んでいくが、部隊員達はボスの間の入口から左右に別れ壁沿いに並び、防御の姿勢をとって待機する。

 事務部長いわく、「せいどうの盾」でボスモンスターの攻撃を正面から防ぐことで、ボスモンスターを至近距離に引きつけ且つ大きな隙を作ることができるため、容易に「せいどうの剣」を当てることができる。だから、自分達が余計な攻撃をしたりしてボスモンスターの気を紛らわすことはボスモンスターの攻略にとってマイナスにしかならないとのことだ。


 ボスモンスターを倒すと部隊員達はボクを大いに讃えてくれる。だが、王都に戻るとボクの手柄は矮小化され、部隊の手柄になってしまっている。

 ボスモンスターの単独撃破だけではなく道中のモンスターもボクが毎回相当倒しているというのに、ただ付いてきているヤツら、その場にいただけのヤツらが過大評価されている。


「リッセンもそうだ・・・ただ周りの人に恵まれていたというだけで、恵を与えてくれる人よりも評価されるんだよな。」


 そんなことをモヤモヤ考えていると馬車が動きを止めた。


 数分の後、馬車後方の出入口の幕がたくし上げられ、


「川本さん! 休憩だそうです!」


 とミオナが声をかけてきた。


「あ、うん。」


 幌の淵に背中を預け座った姿勢を崩さずボクは顔だけミオナの方に向けて返事をした。


 休憩とは言ってもボクは移動の最中、歩くわけでも馬に乗るわけでもなく幌の中で座っているだけなので大して疲れていない。

 休憩となると輜重隊が飲料や軽食を準備するが、幌の中には飲み物や軽食が備えつけられている。

 食事休憩やトイレに行くのでなければ態々幌から降りて面識のない人達に混じって休憩をとる方が面倒だ。

 ミオナもそんなボクのスタイルを良く理解しているので、ボクとの接点を持つために声掛けだけして早々に立ち去ってしまうのだが今日は違った、


「新たな召喚者の予言があったみたいですよ。ナモンさんとケンさんがその転移者の元に部隊を率いて向かっていたみたいで、たまたま街道でカチあったんで、両部隊で一緒に休憩をとることにしたんですよ。」


「あ、そうなんだぁ。」


 ボクは素っ気なく答えた、ナモンとケンが来ているから挨拶でもしたらどうですかってことだろうけど、ケンには一昨日、ナモンには昨日会っているから、たまたま外で会ったからって態々挨拶する必要なんてないだろうというのがボクの持論だ。


「それで、私が新たな召喚者のところに行ってみたいなって口にしたら、部隊長がこの部隊はダンジョン攻略を終えて王都まで帰るだけだから護衛を兼ねてナモンさんと同行されては? って言ってくれたので部長と一緒にナモンさん達と行くことになったんですが、川本さんはどうされますか?」


 え? 思わずボクは面倒くさいという表情を出してしまったが、すぐに取り繕って、


「そうかあ、ならボクも一緒に行こうかな・・・。」


 と返事をした。


 ダンジョン攻略を終えて王都でゆっくりしたいところだが、ミオナと部長を二人にするのは癪に障るし、二人がいない状態で王都に戻るとなればボクが部隊員や部隊長に気を遣わないといけなくなるのもイヤだ。


「じゃあいきましょう。手回り品だけ持ってナモンさんの部隊の幌馬車に乗ってください。」


「あ、うん。」


 ボクは食料や飲料の入ったリュックを持って幌を降りた。



「いやあ、川本さん達が来てくれて大変助かりやす。前みたくグリフォンが出てこないとも限りませんで。」


 ナモンの部隊の幌に乗ったボクの向かいにはケンが座っていた。ミオナと事務部長は馬に乗っているので、ここにはボクとケンとナモンの3人がいる。

 だいぶ慣れてきたとはいえ緊張を強いられてしまう。


「お疲れのところ申し訳ありませぬ。さほど遠い場所ではございませんので。」


 ナモンの言葉通り一時間もしなうちに目的についた。


 目の前にはボク達が召喚された時と同じような廃墟となった神殿のような建物があった。


「ここって・・・。」


 馬から降りて周囲を見回していたミオナが誰に言うでもなく呟いた。事務部長もミオナと同様に周囲を見回している。


「そうです。」


 ケンがミオナの呟きを拾って答えた、


「皆さんとあっしで初めて攻略したダンジョンがあったところです。」


「そうですよねぇ!」


 ミオナが喜びと驚きが混じった声をあげた。


 ボクはといえば・・・言われてみれば・・・そんな気もする・・・。

 でも、こんな神殿あったっけ?


「ということは、この廃墟のような神殿は突然現れ・・・?」


 と事務部長。


「そうです。皆さんが召喚された時にあった神殿も突然あらわれ・・・数日後にはなくなりやした。」


「なぜかはわかりませぬが・・・、恐らくダンジョンが生成され、攻略されると消滅するのと似たような原理ではないのだろうかと・・・。」


 ナモンが答えた。


 ボク達の時と同様、神殿の外に残る部隊と中に残る部隊に別れることになった。


 ただ、今回は異界の戦士が4人もいるので、ナモンとボク達4人が中に入り、他の護衛の兵士は外を固めることにした。

 本当は異界の戦士を半分に分けてもいいのだが、ケンは召喚された異界の戦士に同じ異界から召喚された者として初期対応をする仕事があるし、ボクらは召喚されるところを見学に来たわけなので、このような分け方をすることになった。


「なんか、ドキドキしますね。」


 神殿の中の薄暗い広間で召喚者が現れるのを待つボク達。ミオナはソワソワしながらそう言った。


「自分のことではないのに何か緊張するな。」


 事務部長はミオナの言葉に応えた。


 ピシッ! ピシッ!


 壁が軋む音が聞こえた。


「地震!?」


 ミオナが反射的に言うと、


「いや、地面は揺れていない。空気が揺れているのか?」


 と事務部長が落ち着いて答えた。


「もうじき、きやすぜ。」


 とケン。


 どうやらこれは召喚の予兆のようだ。軋みはさらに強くなる。


 そして•••。


 部屋の中心の地面から猛烈な光が湧き出てきた。


 本来ならば暗い部屋でこれだけの光量を受けたら目が眩んでしまうところだが、ナモンの「フラッシュシールド」という光の眩しさを防ぐスキルでボク達全員が覆われているため、眩しさは一切感じない。


 やがて湧き出た光の中に人の姿が現れてきた。


 今回はどうやら一人のようだ。


 光が消えていくと、召喚された男の異界の戦士はボク達が召喚された時同様に、その場で戸惑っている。


「こ、ここは•••どこだ!?」


「ここはパレモ王国。」


 異界の戦士の言葉にナモンが答える。


「パ、パレモ王国!?」


 異界の戦士はナモンの言葉を復唱し、辺りを見回す。

 動揺する異界の戦士をよそにナモンは言葉を続ける、


「そなたは神の意志によって当地に召喚されし、異界の戦士。」


「へ? え?」


 ナモンの言葉を全く理解できないでいる異界の戦士。それはそうだろう。

 ボクはミオナや事務部長がいたから、ある程度落ち着いていられたが一人だったらと思うと•••。


「ここはあっしにお任せを。」


 ケンがナモンに代わって異界の戦士と話をすべく前に進んだ。


「私達も一緒にお話しした方がいいですかね?」


 ミオナが事務部長に問いかける。好意でというよりも新たな来訪者に対する興味のようにみえる。


「いや、ケンさんが我々に声掛けしてくるようなことがない限りはやめておこう。相手が状況を理解していない時に複数人で話しかけるとややこしい事になるだけだから。」


「そうですね。」


 事務部長の言葉にミオナは納得したようだ。


 しばらくの後、


「じゃあ、いきやしょうか。」


 ケンと異界の戦士の話が一区切りついたようだ。ケンがこちらを振り返りボク達の方に歩み寄ってくる。異界の戦士はケンの後についてきた。


(ん・・・?)


 ボクは異界の戦士の服装に見覚えがあった。ボクは異界の戦士の顔を注視していた。


ケンがボク達の前に来て止まると異界の戦士はケンの隣に並ぶようにして止まった。


「こちらは徳田とくだ わたるさんという御仁です。」


 ケンが異界の戦士を紹介した。


「徳田・・・といいます。」


 異界の戦士はそういうと軽くあたまを下げ、ボク達の顔や服装をキョロキョロみだした。


(徳田・・・。)


 その名前に聞き覚えがあったボクは、徳田と目が合わないように徳田から視線をそらした。


「徳田さん。私は蒼騎士郎と申します。徳田さんと同じく日本からこちらに召喚されてきた者です。どうぞよろしくお願いいたします。」


「あ、こちらこそお願いします・・・。あなたもそうなんですね・・・。可知さんから話を聞いたものの現実感がまったくわかなくて・・・。」


「私も部長・・・じゃなかった、蒼騎とこちらにいる川本さんと一緒にこちらに召喚されてきた松田ミオナと申します。徳田さん! どうぞよろしくお願いします。」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」


 ミオナのテンションに徳田は少したじろいた感じで返事をした。


(チャンス!)


 ボクは徳田がたじろいた隙を見逃さず、


「ボクは川本です。よろしくお願いいたします。」


 と早口で言った。そのせいか普段よりも声は上ずってしまった。

 本当は言葉を発したくないくらいだったが、この流れで挨拶をしておかないと逆に注目されてしまう。


「あ、よろしくお願いします。」


 徳田は普通に挨拶を返してきた。


(ふーー。)


 ボクは心の中で溜息をついた。


「・・・・・・。」


(うっ・・・。)


 徳田の視線かボクをじっと捉えてるように見えた。


「さて、徳田様。」


「はい。」


 そのタイミングでナモンが徳田に声をかけた。

 徳田の視線は当然ナモンに向く。


 ナイスタイミング! ナモン!

 

 ボクは無意識のうちに事務部長の後ろに身を隠すかのように後ずさりしていた。


「突然こちらの世界に一人で召喚されてしまい、何が何だか分からぬところだとは思いますが、まずは我々と共にパレモ王国王都へと同行していただきたい。」


「ええ・・・、こうなっては日本から召喚された皆さんと同行する以外に選択肢はないですから・・・。」


 徳田の答えを聞くとナモンは大きくうなずき、


「では、参りましょう。」


 と言うと、出口へと踵を返した。


 ナモンの後にケンと徳田が横並びで続き、その後にミオナ、事務部長、ボクが続いた。


「今回はスグにでちゃうんですね。私たちの時には、その場で色々質問に答えてくれたりスキルツリーを見せてくれたりしたのに。」


 ミオナはやや前方を進むケンに向かって言った。


「ええ、前回、皆さんが召喚されたときにモンスターに襲撃されたもんですから。万が一の事を考えて狭くて暗い建てモンの中から、さっさと出ようって話になったんです。」


 なるほど、そういうことか。


「そういえば、徳田さん。」


 ミオナが徳田に話かけた。


「はい。」


「その服装・・・、どこのお店の服でしたっけ? 見覚えはあるんですけど・・・。」


(!?)


 そのミオナの問いかけによってボクの全身から汗が噴き出してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ