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深夜の密会

 カーテン越しにわずかに届く月あかりを頼りにしながら、足音を極力立てずにミオナに近寄るボク。


 決してやましい思いから足音をたてないのではなく、疲れて眠っているミオナを気遣っての行為だ・・・と自分に言い聞かせる。


(おお!)


 眼前にミオナのすらりとした右足・・・生足が飛び込んできた。足の付け根のあたりから上は掛布で覆われているのでハッキリは分からないが、この足の露出の仕方から察するにショートパンツ・・・もしくは下着で寝ているのだろう。普段長ズボンを履いているミオナの生足を拝むのは初めてのボク。


 ミオナは頭を左に向けて眠っているのでボクはミオナのベッドの右側・・・ミオナの背後から接近しようと試みた。


(ミオナに勝利の報告と決闘前にボクを応援してくれたお礼を一刻も早く言いたくて・・・本当は起こしてでも伝えたい! って思ったけど、スヤスヤ眠っているミオナの寝顔を見たら傍にいてあげるだけでいいかなって思って・・・傍にいたんだ・・・。)


 ボクはミオナが目を覚ました時の言い訳・・・じゃなかったボクの気持ちを整理しながらミオナのベッドの脇に立ち、ミオナの寝顔を覗き込もうとした・・・瞬間、


「ぐえぇぇ!!!!」


 ボクの腹に鈍器のようなものが猛スピードで打ち付けられ、食い込んできた! ボクはその衝撃でコマのように高速で横回転しながら宙を舞い、壁と天井の境目くらいに打ち付けられ、壁に軽くめり込んだ。


 目の前にはミオナのすらっとした右足が屹立していた。そして、その右足には『ランク・A/名称・眠らぬ女王蜂/効果・寝込みを襲う敵の防御スキルを無効化し迎撃する』という表示が・・・。


(て、敵って・・・ボクのこと・・・!?)


 ボクは壁にめり込んだまま痛みが続く腹を抑え、ピクピク戸惑っていた。


「う・・・うーーーん。」


 ボクが壁に打ち付けられた音をきいたからか、ミオナが目を覚ましたようだ。

 ボクの全身から冷や汗がでる。どうみたってこれは恋人同士のイチャコラではなく、女性の寝室に侵入して来た変質者が撃退された光景である。ボクはまず壁から脱出した。

 するとミオナがムクッと起き上がり目をこすりながらボクを見る。


「う・・・ん? え!? か、川本さん!?」


 ボクを認識したミオナが大きな声でボクの名前を叫んだ。喜びの叫びではなく驚きの叫びである。

 さっきの壁に打ち付けられた音とあわせて今の叫び声で誰かくるんじゃないかと全身が焦りで熱くなり硬直する。


「な、何してるんですか!?」


「え・・・、えーと、事務部長にさっき廊下で会ったら、松田さんがボクの事、凄く応援してくれてたって聞いたんでお礼をいいたくて・・・。で、部屋を覗いたら布団がめくれてたんで直してあげようと思ってぇ・・・。」


 と、しどろもどろになりながら、言い訳にもならない言い訳をするボク。事務部長は決闘中にミオナがボクを応援したとは言っていなかったが何かそれっぽい言い訳しないと・・・という衝動から口走ってしまった。言葉を発する度にマズい事言っているという実感しか湧かない。


「あ、そうだったんですか。ありがとうございます。」


 すんなりボクの言い訳を信じてくれたミオナ。ボクは拍子抜けした。


「うん? 何か壁、崩れてますけど・・・。」


 ミオナがボクが先ほどまでめり込んでいた壁の崩れに気付いた。


「あ、えーとぉ、松田さんに布団かけようとしたら松田さんの『眠らぬ女王蜂』ってスキルが発動してぇ・・・、それで松田さんの蹴りでボクが壁に叩きつけられちゃったんだ・・・。」


「あ! そうだったんですか、ごめんなさい・・・、大丈夫でしたか?」


 ボクを心配してくれるミオナ。


「川本さんが私の寝込みを襲ってきたってきたってことですか?」


 って詰められても仕方ないと思っていたのに・・・。


「それよりも川本さん!」


 ミオナがいつものハイテンションで話しかけてきた。ボクはミオナの声の大きさに一瞬ビクッとしたが、先ほどと異なりミオナに誤解(?)されていないことが確信できているので、ミオナのデカい声を聞いた誰かが何事かとかけつけても問題はないのですぐに落ち着きを取り戻した。


「凄かったです! あの大鉄とかっていう、いかついヤツを簡単にあしらって倒しちゃっうだけじゃなく、あんな巨大な竜のモンスターを一瞬で倒しちゃうなんて!! 最初は川本さん大丈夫かな? ってハラハラしてましたけど・・・そんな心配無用でした!! 本当は川本さんが宮殿に入ってきたときに、やったねって声かけたかったけど、ケンさんにそれはダメって止められちゃって。」


 ミオナはまくしたてるように話をしてきた。大きな身振り手振りや口調からミオナの興奮が伝わってくる。


 それよりもミオナの恰好だ。下半身はショートパンツで、上半身はストラップレスブラのようなものをつけているだけ。足だけではなく、お腹周りやおへそ、デコルテが露わになっている。月の淡い光では肌の色や細かい質感まではハッキリわからないが、それがかえって色っぽくみえる。


 ミオナの熱弁が一息ついたタイミングでボクは、


「あ、ありがとう松田さん。松田さんがボクを応援して送り出してくれたおかげだよ。本当にありがとう。」


 とお礼を伝えた。ボクがここに来た第一の目的はコレだからね。


「いえいえ、川本さんの実力ですよ。こんなモンスターがいるような、わけのわからない世界にきちゃいましたけど、川本さんや事務部長が一緒でよかったです。川本さんのその力、これからも頼りにさせてもらいますね。」


 と言ってミオナは微笑んだ。


「ま、松田さん・・・。」


 ちょっといい雰囲気じゃないか・・・頼りにさせてもらうって、これってもしかしてミオナからの告白として扱ってもいいんじゃないか!? ここは男のボクがちゃんと好きって気持ちを伝えないと・・・。


「んーーー、なんだか急に眠くなってきちゃいました・・・。」ご


(え!?)


 ハイテンションで騒いでいたのに、電池がきれたおもちゃかように突然眠気を訴えるミオナ。


「ごめんなさい、寝ます。川本さん、お疲れ様です。また明日・・・おやすみなさい。」


 と言いながらミオナは横になって布団をはおる。


 あっけにとられるつつもボクは、


「お、おやすみさない・・・。」


 と挨拶をした。


「はーーい。」


 ボクの挨拶に条件反射のように半分寝ている声で返事をするミオナ。今日はこれ以上話すこともできなさそうだ。


 ボクはミオナの寝顔を拝んでいこうかと思ったが『眠らぬ女王蜂』のことを思い出したので大人しくミオナの部屋を出て自分の部屋に戻りベッドに横たわる。


 まあ、今日は気持ちをつたえられなかったけどミオナのボクを見る目は昨日までとは明らかに違っていた。明日以降も気持ちを伝えるチャンスは幾らでもある。


「頼りにさせてもらいますね。」


 と言ってミオナが月明かりに照らされてニコリとしたシーンを何度も思い出しながら、また、ミオナの極力布を排除した入眠姿を、ほんのわずかに思い出しながらボクは眠りについた。

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