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向上主任は誘えない

お話の中でアセクシャルについて扱う描写があります。ご注意ください。

 女性向けジャンルのコラボカフェ……。


 下手したら本屋のBLコーナーとかより全然近寄りがたい。間違って迷い込んじゃったとか好奇心で一度だけ来てみたみたいな理由じゃ絶対に到達しない場所だからだ。

 一緒に行く友達がいなかった俺は一度も来たことがなく、今回が初めてのコラボカフェなのだが。


「ギャッ!! ノイシュ様のパネルあるッ!!」

「うわ! めっちゃ顔良いっスね〜!」

「メニューぜぇんぶンガワイイ……ッッッッ!! 全部食べる……ッッ!!」

「うちも3日分食うから昨日から抜いてきたんで! 貪りましょう!」

「でもその前にあそこのパネルのところでぬい撮りさせてぇ!!」

「いいですねぇ! 今人もいないし撮っちゃいましょ撮っちゃいましょ!!」


 コラボカフェ楽しすぎる〜〜〜!!


 料理もドリンクも全部可愛いしコースターのミニキャラノイシュ様もぎゃんかわだしもうここに住んじゃおっかな!!


「……主任さん、ほんとにコラボカフェ来たかっただけなんですねえ」


 届いた料理を片っ端から撮ってると、ナカさんがしみじみとしたトーンで言った。


「えっ、そうだけど」

「急に誘われたからデートかと思っちゃいましたよぉ☆ もう!」

「でっ……!?」


 デートってあのデート!? 商業BLで見た! 恋人とかそれに近い二人が出かけるアレだ!

 少なくとも俺とナカさんは恋人に近くないので!!


「デートではない! です!」

「でも普通男女が二人で出かけるのはデートって思われますよ?」


 そうなの!? いやそっか!! 俺も男女二人で歩いてたらデートかーって思うわ!!

 ……そしたら、ちょっと待って?

 美澄のこと誘って二人で出掛けたりしてるあれって、はたから見たらデートなのか……ああ、それは誤解されるし迷惑かかりますね、はい……。


「今みっすーのこと考えてるでしょ?」

「えっ!? なんでっ!?」

「だって顔赤いもーん☆」


 指摘されて初めて自分の顔が熱いことに気付いた。


 あー……だめだこれ。周りから見たらすぐに分かるんだ……。


 頭を抱えると、ナカさんが楽しそうにけらけらと笑った。


「今日もみっすー誘ったらよかったのに〜。みっすーも結構主任さんのこと気に入ってると思いますよ? 主任さんと仲良くなってからみっすー変わったもん」

「変わった?」


 どこが? 見た目か? でもあれは仙太郎が髪切っちゃったからだし、美澄はずっと変わってないと思う。

 でもナカさんは「変わったよ」と続けた。


「みっすーはあたしと同じだと思ってたんだけど、同じじゃなかったんだなって。主任さんといるみっすー見て気付いた」


 この、物憂げな表情。迫り来るクソデカ感情の気配。オタクとしての本能が告げる。これって……。


「百合……!?」

「違う違う違う、オタク自重して♪」


 いやだってあれは誤解するだろ!!


「百合っていうか、あたし恋愛しないから」


 ナカさんはきっぱりとそう言い切った。


「……それは、迷ってるとかじゃなくて、決定の方の」

「そ。決定っていうか、性質?」

「私なんか的なネガティブな方じゃなくて」

「今も余裕でアタック受けてますよ〜」

「えっ」

「あ、主任さんじゃなくて、高校の頃の同級生ね?」


 淡々と喋りながら、ナカさんは飲むようにコラボメニューを食べていく。添えられてるキャラのイラストを丁寧に写真撮ってから食べるあたり、好きって感情が分からないとは思えない。

 でも、推しへの好きとそういうのって違うんだろうな。


「みっすーもそういう話しなかったから、あたしと同じなんだ〜って勝手に思ってたよ」

「えっ!? 美澄って」

「いやだから違うって言ってんじゃん。話聞いて♡」

「すいません……」


 心底ほっとしてしまった。

 よかった、美澄がそうだったらもう何の希望も……いや希望って何!?

 美澄は友達! 大事! 迷惑かけない!!

 自分に言い聞かせて深呼吸する。


「ま、なんで今日みっすーじゃなくてうち誘ったのか知らないけどさ! ちゃんとみっすーのことも誘いなよ!」

「えっ、いやそれは、美澄に迷惑だったりしたら悪いし」

「みっすーは迷惑ならそもそも来ないから! うちがV系バンド無理やり布教してライブ行こうっつって玉砕くらった話するぅ!?」

「あっ、それは断られそう」


 言われてみると、美澄は嫌な時は暴力に訴えてでも止める奴だった。上司だから断れないとか、そんなタイプに思えない。

 裏で周りから何か言われてるとかは分からないにしても、少なくとも美澄本人は迷惑だとは思ってないってことか……?


「んで、みっすーにも『城郭王子』布教していこ! あいつこういうのハマったら史実から調べ出すからいい感想聞けるよ!」

「それはハチャメチャに聞きたい! とりあえずオススメ動画送りまくっとく!!」



 主任から何の誘いもないまま、『城郭王子』のコラボカフェの期間が始まってしまった。

 こんなに気にするんなら自分から誘えばいいんだろうけど。


 でもそもそも自分の推しジャンルでもないのに「行きたいでしょ」って誘うのおかしくない?

 なんかそれだと私が主任と出掛けたいみたいな、いや出掛けたくないわけじゃないけどあくまで用事があればってだけで用事がなければ別に全然……。


 そんなことを考えながらベッドの上でごろごろしてたら、ナカから『通話できる?』と連絡がきた。

 どうしたんだろ、いきなり。いや、いつもいきなりか。

 こっちから電話をかけると、ナカはすぐに出た。


『あっ、みっすー! お疲れ〜♪』

「おつー。何、急に」

『最近主任さんとなんかあった?』


 ぎくっとしてしまった。何かあったわけじゃないけど、確かに私最近ずっと主任のことで悩んでる。いやしかし。


「なんでナカがそんなこと聞くわけ……」

『いや、こないだコラボカフェ二人で行ったんだけどさあ』

「えっ……あ、ふーん……」


 私のこと誘わないと思ったら、ナカのこと誘ってたんだ……。

 いや、別にいいんだけど。何も思ってない。何も。別にオタク同士だし、仲良くしたらいいじゃん。


『主任さん、みっすーが迷惑だったら悪いからっつってみっすー誘ってなかったっぽいよ? 喧嘩とかした?』

「え……してないけど」


 迷惑? そんなこと私言ったか?


「迷惑とか言ったことないし……」

『だよねだよね〜☆ それ主任さんにも言ってあげてよ、なんかすっごい気にしてたもん。コラボカフェにうち誘ってくんだよ!?』

「べ……別に仲良くしたらいいじゃん……」

『無理無理無理! 主任さんはいい人だけどさあ!!』


 電話の向こうでナカが大きな声を上げる。


『お互い逆カプなんだよ……』

「あっ……最重要事項だね……」


 オタクで腐だから分かってしまった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


向上優鷹:地雷は特にないけどキャラが異常に女々しく描かれてるのは嫌!! 受、男らしくあれ……。

美澄希空:地雷は女体化。女体化したらそれはBLじゃなくてNLじゃん!! BL、男×男たれ……。

中美良:地雷はバッドエンド。現実つらいのにBLすらあたしを救ってくれんのか!? 推しカプ、幸せたれ……。

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